Oracle Database アップグレード・ガイド 11g リリース1(11.1) E05758-02 |
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この章では、データベースのアップグレード処理の概要、および複数のリリースのOracle Databaseを実行する方法について説明します。
この章では、次の項目について説明します。
この項では、既存のOracle DatabaseのリリースをOracle Database 11gリリース1(11.1)にアップグレードするために必要な主な手順の概要を説明します。 これらの手順によって、関連アプリケーションを含む既存のOracle Databaseシステムが、Oracle Database 11gリリース1(11.1)システムに変換されます。 Oracle Database 11gリリース1(11.1)は、以前のすべてのリリースのOracle Databaseと互換性があります。 したがって、このマニュアルで説明する手順によってアップグレードされたデータベースは、以前のリリースと同様に機能し、Oracle Database 11gリリース1(11.1)の新機能を利用することもできます。
Oracle Database 11gリリース1(11.1)は、新しいリリースにデータベースをアップグレードするための次のツールおよび方法をサポートしています。
DBUAでは、Graphical User Interface(GUI)による指示に従ってデータベースをアップグレードできます。DBUAは、インストール中にOracle Universal Installerから起動することができます。また、将来データベースをアップグレードする際に、スタンドアロン・ツールとして起動することもできます。
手動アップグレードでは、SQLスクリプトおよびユーティリティを使用して、コマンドラインでデータベースをアップグレードできます。
Oracle Data Pump Export/Importユーティリティ(Oracle Database 10gリリース1(10.1)以上で使用可能)またはオリジナルのエクスポート/インポート・ユーティリティを使用してデータベースの全体または一部をエクスポートし、それを新しいOracle Database 11gリリース1(11.1)データベースにインポートします。エクスポート/インポートは、データベースを変更することなく、データベース内のデータのサブセットをコピーすることができます。
データベースから新しいOracle Database 11gリリース1(11.1)データベースにデータをコピーします。データのコピーによって、データベースを変更することなく、データのサブセットをコピーできます。
これらのツールおよび方法の詳細は、「アップグレード方法の選択」を参照してください。
図1-1に、アップグレード処理の主な手順を示します。
次の表に、アップグレード処理で実行する主な手順の概要を示します。詳細は、このマニュアルの該当する章を参照してください。
第2章「アップグレードの準備」では、手順1〜3までを詳しく説明します。
第3章では、手順4および手順5でのDBUAの使用方法、または手動アップグレードの実行方法について説明します。第4章では、アップグレード後のバックアップ手順およびその他のアップグレード後の処理について説明します。
アップグレード中、新しいリリースをテストしている間、既存のリリースを本番環境として使用するために複数のリリースのデータベース・ソフトウェアを実行することを検討してください。 「複数リリースのOracleの実行」を参照してください。
このマニュアルでは、Oracle Databaseサーバーの異なるリリース間での移行について説明します。図1-2に、リリース番号の各部分の意味を示します。
このマニュアルの本文にデータベースのメジャー・リリースが記載されている場合、その文は、そのメジャー・リリースのすべてのリリースに適用されます。 Oracle Database 11gの説明は、Oracle Database 11gリリース1(11.1)に適用されます。Oracle Database 10gの説明は、Oracle Database 10gリリース1(10.1)およびOracle Database 10gリリース2(10.2)に適用されます。Oracle9iの説明は、Oracle9iリリース1(9.0.1)およびOracle9iリリース2(9.2)に適用されます。
同様に、このマニュアルの本文にメンテナンス・リリースが記載されている場合、その文は、そのメンテナンス・リリースに含まれるすべてのコンポーネント固有のリリース(パッチ・セット・リリースとも呼ばれる)およびプラットフォーム固有のリリースに適用されます。 したがって、Oracle9iリリース2(9.2)の説明は、リリース9.2.0.1、リリース9.2.0.2、およびリリース2(9.2)のその他すべてのプラットフォーム固有のリリースに適用されます。
同一のコンピュータ上で異なるリリースのOracle Databaseを同時に実行できます。ただし、複数のリリースを使用する場合は次の条件を考慮する必要があります。
また、1つのOracleホームに複数のリリースをインストールすることはできません。複数のOracleホームを作成する場合、OFAを採用することをお薦めします。 詳細は、「Optimal Flexible Architecture(OFA)の使用」を参照してください。
たとえば、Oracle9iおよびOracle Database 11gリリース1(11.1)を同一のコンピュータにインストールしている場合は、Oracle9iのデータベース・サーバーはOracle9iデータベースにはアクセスできますが、Oracle Database 11gリリース1(11.1)のデータベースにはアクセスできません。また、Oracle Database 11gリリース1(11.1)のデータベース・サーバーはOracle Database 11gリリース1(11.1)のデータベースにはアクセスできますが、Oracle9iデータベースにはアクセスできません。
次の項では、複数のリリースのOracle Databaseを実行する際の概要を説明します。
同じコンピュータ上の複数の(異なる)OracleホームにOracle8i、Oracle9i、Oracle Database 10gおよびOracle Database 11gデータベースをインストールし、Oracle8i、Oracle9i、Oracle Database 10gおよびOracle Database 11gクライアントから、いずれかまたはすべてのデータベースに接続できます。
異なるコンピュータ上の複数の(異なる)OracleホームにOracle8i、Oracle9i、Oracle Database 10gおよびOracle Database 11gデータベースをインストールし、Oracle8i、Oracle9i、Oracle Database 10gおよびOracle Database 11gクライアントから、いずれかまたはすべてのデータベースに接続できます。
Oracle8i、Oracle9i、Oracle Database 10gデータベースをOracle Database 11gリリース1(11.1)にアップグレードして、Oracle8i、Oracle9i、Oracle Database 10gおよびOracle Database 11gリリース1(11.1)クライアントから、アップグレードされたデータベースに接続できます。
Oracle8i、Oracle9iまたはOracle Database 10gのクライアントのいずれかまたはすべてを、Oracle Database 11gリリース1(11.1)にアップグレードできます。 Oracle Database 11gリリース1(11.1)クライアントは、Oracle8i、Oracle9i、Oracle Database 10gおよびOracle Database 11gリリース1(11.1)のデータベースへのアクセスに使用できます。
この項では、Oracle Databaseの異なるリリース間で発生する可能性のある互換性の問題、および相互運用性の問題について説明します。これらの違いは、一般的なデータベース管理および既存のアプリケーションに影響する可能性があります。
この項では、次の項目について説明します。
異なるリリースのOracle Databaseソフトウェアで同じ機能がサポートされており、その機能が同様に動作する場合は、リリースが異なってもデータベースには互換性があります。
新しいリリースのOracle Databaseへアップグレードする場合、一部の新機能が原因で以前のリリースとの互換性が失われることがあります。アップグレードしたデータベースで以前のリリースとの互換性が失われるのは、次の場合です。
Oracle Databaseでは、COMPATIBLE
初期化パラメータを使用して、データベースの互換性を制御できます。 COMPATIBLE
初期化パラメータがパラメータ・ファイルに設定されていない場合、Oracle Database 11gリリース1(11.1)では11.0.0
がデフォルトで設定されます。 アップグレードしたデータベースの互換性を失わせる可能性のあるOracle Database 11gリリース1(11.1)の新機能は、COMPATIBLE
初期化パラメータを11.0.0に設定しないかぎり使用できません。
表1-1に、Oracle Database 11gリリース1(11.1)、およびOracle Database 11gリリース1(11.1)へのアップグレードがサポートされている各リリースのCOMPATIBLE
初期化パラメータのデフォルト値、最小値、最大値を示します。
Oracle Database 11gリリース1(11.1)にアップグレードする前に、COMPATIBLE
初期化パラメータを10.0.0
(Oracle Database 11gリリース1(11.1)で設定可能な最小値)以上に設定する必要があります。 COMPATIBLE
初期化パラメータが10.0.0に設定されている間は、Oracle Database 11gリリース1(11.1)のサブセットの機能のみが使用できます。
Oracle Database 11gリリース1(11.1)にアップグレードしたら、COMPATIBLE
初期化パラメータを新しいリリースのリリース番号と一致するように設定できます。このように設定すると、新しいリリースのすべての機能を使用できますが、以前のリリースにダウングレードすることはできません。
アップグレード後にダウングレードする場合は、アップグレード後も、COMPATIBLE
初期化パラメータの設定を次に示す値のままにしておく必要があります。
10.1.0
に設定
10.2.0
または10.1.0に設定COMPATIBLE
初期化パラメータは、次のように動作します。
COMPATIBLE
初期化パラメータを10.1.0
に設定してOracle Database 11gリリース1(11.1)のデータベースを実行すると、Oracle Database 10gリリース1(10.1)と互換性のあるデータベース構造がディスクに生成されます。つまり、COMPATIBLE
初期化パラメータの設定によって、新機能を有効または無効にできます。データベースの互換性を損なう新機能をCOMPATIBLE
初期化パラメータの操作によって使用しようとすると、エラーが表示されます。ただし、互換性を損なう変更をディスクに行わない新機能はすべて使用できます。
COMPATIBLE
初期化パラメータを、データベースに対する適切な値に設定する必要があります。データベースの互換性レベルは、COMPATIBLE
初期化パラメータの値に対応します。たとえば、COMPATIBLE
初期化パラメータを11.0.0
に設定すると、データベースは11.0.0の互換性レベルで実行されます。
現行のCOMPATIBLE
初期化パラメータ値を確認するには、次のSQL文を入力します。
SQL> SELECT name, value, description FROM v$parameter WHERE name = 'compatible';
アップグレードが完了したら、COMPATIBLE
初期化パラメータの設定をOracle Database 11gリリース1(11.1)の最大レベルまで増加できます。ただし、これを行うと、後でデータベースをダウングレードすることはできません。
相互運用性とは、異なるリリースのOracle Database間での通信および連動が分散環境において可能である状態を指します。 分散データベース・システムには異なるリリースのOracle Databaseを配置することができ、サポート対象すべてのリリースのOracle Databaseを分散データベース・システムに参加させることができます。ただし、分散データベースと連動するアプリケーションでは、システム内の各ノードで使用できる機能やファンクションが認識されている必要があります。
Oracle Database 11gリリース1(11.1)の最小要件によって一部またはすべてのホストのオペレーティング・システムをアップグレードする必要がある場合があるため、特にローリング・アップグレード時には、複数のオペレーティング・システム・バージョン間での相互運用性が問題となる可能性があります。 つまり、ローリング・アップグレード中のすべての中間的な状態において、ドライバ、ネットワークおよびストレージの互換性を確認する必要があります。
Oracle Databaseのインストールには、Optimal Flexible Architecture(OFA)規格をお薦めします。OFA規格とは、メンテナンスの手間がほとんどない、効率的で信頼性のあるOracle Database用の構成ガイドラインです。
OFAには、次のメリットがあります。
現在、OFA規格を使用していない場合、OFA規格への切替えには、ディレクトリ構造の修正とデータベース・ファイルの再配置が伴います。
以前は32ビットOracle Databaseをインストールしていた環境に64ビットOracle Database 11gリリース1(11.1)ソフトウェアをインストールすると、Oracle Database 11gリリース1(11.1)へのパッチ・リリースまたはメジャー・リリースのアップグレード中にデータベースは自動的に64ビットに変換されます。
ただし、次の作業を手動で実行する必要があります。
SGA_TARGET
、SHARED_POOL_SIZE
など)を増やします。
CONNECT AS SYSDBA STARTUP UPGRADE CONNECT AS SYSDBA SPOOL UPGRADE.LOG @catupgrd.sql
ローリング・アップグレードでは、異なるデータベースまたは(Oracle Real Application Clusters内)の同じデータベースの異なるインスタンスを、データベースを停止することなく1つずつアップグレードします。 選択した方法に応じて、データベースをほとんどまたはまったく停止することなく、Oracle Databaseソフトウェア・バージョンのローリング・アップグレードの実行、パッチ・セットの適用、または個々のパッチの適用(個別パッチとも呼ばれる)を実行できます。
Oracle Database 11gリリース1(11.1)では、次の方法でローリング・アップグレードを実行できます。
SQL Applyおよびロジカル・スタンバイ・データベースを使用すると、プライマリ・データベースの停止時間を最小限に抑えて、Oracle Databaseソフトウェアおよびパッチ・セットをアップグレードできます。 たとえば、Oracle Databaseソフトウェアをリリース1(10.1.0.n)のパッチ・セットから次のリリース1(10.1.0.(n+1))にアップグレードしたり、Oracle Database 10gリリース1(10.1)からOracle Database 11gリリース1(11.1)にアップグレードすることができます。
Streamsのソースと宛先データベースを使用すると、新しいバージョンへのOracle Databaseソフトウェアのアップグレード、異なるオペレーティング・システムまたはキャラクタ・セットへのOracle Databaseの移行、ユーザー作成アプリケーションのアップグレード、Oracle Databaseへのパッチの適用などができます。これらのメンテナンス操作では、データベースをほとんどまたはまったく停止することなく、Oracle Streamsの機能を使用します。
OPatchコマンドライン・ユーティリティを使用すると、データベースをほとんどまたはまったく停止することなく、Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)に対して、パッチのローリング・アップグレードを実行できます。OPatchユーティリティは個々のパッチを適用する場合にのみ使用できます。パッチ・セットには使用できません。 OPatchユーティリティの詳細は、『Oracle Universal InstallerおよびOPatchユーザーズ・ガイド』を参照してください。
Oracle RACのローリング・アップグレードには、パッチのアップグレードに伴うスケジューリングした停止時にも、Oracle RACインストールのいくつかのインスタンスが使用可能であるという利点があります。停止する必要があるOracle RACインスタンスは、その時パッチが適用されているもののみで、他のインスタンスは使用可能にしておくことができます。これで、スケジューリングした停止に伴うアプリケーションの停止時間はさらに短縮されます。OracleのOPatchユーティリティでは、Oracle RACインストールの異なるインスタンスに対し、連続してパッチを適用できます。
パッチ更新でダウンロードされるOracle Universal Installer(OUI)を使用すると、Oracle ClusterwareまたはOracle Cluster Ready Servicesのアップグレードにローリング・アップグレードを実行できます。パッチ・セット・リリースの適用にローリング・アップグレードを実行できます。
Oracle Clusterwareのローリング・アップグレードには、パッチ・セットのアップグレードに伴うスケジューリングした停止時にも、Oracle RACインストールのいくつかのインスタンスが使用可能であるという利点があります。停止する必要があるノードは、その時パッチが適用されているもののみで、他のインスタンスは使用可能にしておくことができます。これで、スケジューリングした停止に伴うアプリケーションの停止時間はさらに短縮されます。OUIでは、Oracle Clusterwareインストールの異なるインスタンスに対し、連続してパッチ・セットを適用できます。
Oracle Database 11gリリース1(11.1)以上では、Oracle Database 11gリリース1(11.1)から以降のリリースへのOracle Automatic Storage Managementソフトウェアのローリング・アップグレードを実行できます。ASMのローリング・アップグレードを使用すると、データベースの可用性に影響を与えることなく、クラスタASMノードに対して個別にアップグレードやパッチの適用を行うことができるため、より長時間の稼働が可能になります。ローリング・アップグレード中は、クラスタASM環境のすべての機能を継続して使用できます。これは、クラスタ内の1つ以上のノードが別のソフトウェア・バージョン上で実行されている場合でも同様です。この機能により、さらに優れた可用性を実現することができ、また、ASMソフトウェアのあるリリースから次のリリースへのアップグレードをより確実に行うことができます。
Oracle Database 11gリリース1(11.1)より前のリリースのStandard Editionデータベースを使用している場合は、Enterprise Editionをインストールし、このマニュアルで説明する通常のアップグレード手順を実行して、Enterprise Editionデータベースに変更することができます。
既存のOracle Database 11g Standard EditionデータベースをEnterprise Editionデータベースに変更するには、次の手順を行います。
たとえば、Standard Editionサーバー・ソフトウェアがリリース1(11.1.0.6)の場合、Enterprise Editionサーバー・ソフトウェアもリリース1(11.1.0.6)にアップグレードする必要があります。
OracleService
SID
(SID
はインスタンス名)を含むすべてのOracleサービスを停止します。
削除されたStandard Editionで使用されていたのと同じOracleホームを選択します。インストール中は、必ずEnterprise Editionを選択します。プロンプトが表示されたら、「データベース構成」画面から「ソフトウェアのみ」を選択します。
これで、ご使用のデータベースがEnterprise Editionへアップグレードされました。
「Standard EditionからEnterprise Editionへの移行」に説明されている手順を使用して、Enterprise EditionデータベースをStandard Editionデータベースに変換することはできません。 Enterprise Editionには、Standard Editionで使用できないデータ・ディクショナリ・オブジェクトが含まれています。 Standard Editionソフトウェアをインストールしたのみの場合、使用できないデータが含まれることになります。 一部のデータ・ディクショナリ・オブジェクトは無効になり、データベースのメンテナンスに問題を発生させる可能性もあります。
Enterprise EditionデータベースからStandard Editionデータベースへの適切な変換は、エクスポート/インポート操作によってのみ行うことができます。 エクスポート/インポート操作では、SYS
スキーマ・オブジェクトはエクスポートされないため、Enterprise Edition固有のデータ・ディクショナリ・オブジェクトは対象となりません。 このデータのエクスポートには、Standard Edition EXPユーティリティを使用することをお薦めします。
Standard Editionデータベースへのインポート後に必要な作業は、Enterprise Edition機能に関連するすべてのユーザー・スキーマ(Oracle Spatialで使用されるMDSYS
アカウントなど)の削除のみです。
Oracle Database 10g Express Edition(Oracle Database XE)をOracle Database 11gにアップグレードするには、Oracle Database XEと同じシステム上にOracle Database 11gをインストールし、Database Upgrade Assistantを使用してアップグレードを実行する必要があります。
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