この節では、マイグレートクライアントとマイグレートファイルの管理に関する注意事項を示します。
ファイルのマイグレートが行われたあと、Backup でクライアントファイルシステムのバックアップを行うと、クライアントマシン上に残っているスタブファイルだけがバックアップされます。スタブファイルがバックアップされても、マイグレートファイルは呼び戻されません。マイグレートデータのスタブファイルを含んでいるファイルシステムを復旧すると、スタブファイルだけがローカルディスクに復旧され、マイグレートデータは呼び戻されません。
ファイルをクライアントのローカルディスクに呼び戻すには、クライアントマシン上でそのファイルを開きます。Backup によってファイルがマイグレート記憶領域から自動的に呼び戻されます。マイグレートファイルが入っているメディアが現在マウントされていなければ、Backup から管理者に通知されます。
マイグレートクライアント上でスタブファイルを誤って削除した場合は、削除してから 60 日以内であれば、バックアップメディアからスタブファイルを復旧できます。スタブファイルを復旧しても、呼び戻しは行われません。スタブファイルが 60 日を超えても復旧されなければ、Backup によってマイグレートファイルのエントリがクライアントインデックスから削除され、データはこれ以上追跡できません。
すべてのデータを確実に復旧できるようにするためには、定期的にマイグレートメディアのクローンを作成します。Backup ではクライアントコンピュータ上のスタブファイルだけをバックアップし、マイグレートデータそのものはバックアップしないため、クローンファイルだけが、そのファイルの唯一のコピーとなることがあります。マイグレートプロセスの完了後に自動的にクローンを作成するためには、マイグレートクライアントのために作成したグループリソースで「Migration Clone」プールを選択します。マイグレートデータのクローンは、「Migration Clone」タイプのプールのボリュームに書き込まれなくてはなりません。詳細は、「「Migration」プールと「Migration Clone」プールの使用」を参照してください。
マイグレートファイルに対してバックアップによる保護をさらに強化するには、マイグレートクライアントに対してスーパーフルバックアップを定期的に実行します。スーパーフルバックアップでは、セーブセットの最新のフルバックアップのクローンと、すべてのマイグレートセーブセットのクローンが作成されるので、クライアント上にはスタブファイルが、マイグレート記憶領域にはデータファイルが保存されることになります。スーパーフルバックアップを実行するには、Backup サーバーでスーパーユーザーになり、シェルプロンプトで次のコマンドを入力します。
# nsrclone -c client-name -N save-set-name |
マイグレートデータは Backup サーバーによって管理され、プール、クローン作成、自動メディア検証などの通常のすべてのストレージ管理機能の対象となります。しかし、マイグレートファイルはユーザーがいつでも呼び戻せなくてはならないので、マイグレートデータは、Backup サーバーが自動的にデータを再利用するためのポリシーの対象からは除外されます。つまり、Backup は、スタブファイルがクライアントマシン上に存在する限り、マイグレートファイルの位置をクライアントインデックスとメディアデータベースによって追跡しています。ただし、マイグレートされたスタブファイルのバックアップには、Backup サーバーのデータ再利用ポリシーが適用されます。詳細は、「HSM による名前変更または削除されたファイルの処理」を参照してください。
スタブファイルがクライアントファイルシステムに存在する限り、マイグレートされたファイルは迅速に呼び戻せなくてはなりません。このため、スタンドアロンのテープドライブはマイグレート先として適していません。マイグレートメディアとしてはオートチェンジャかサイロを使用してください。
マイグレートボリュームとは、マイグレートされたデータを保持しているメディアのことです。マイグレートデータの格納には、事前構成されている「Migration」ボリュームプールを使うか、マイグレート記憶領域として使用する独自のマイグレートプールを作成できます。また、マイグレートデータの送信先のボリュームのクローンを自動的に作成することもできます。マイグレートデータは通常のバックアップデータとは異なる形式で書き込まれるので、マイグレートデータは「Migration」タイプのプールに関連付けられたストレージボリュームにしか書き込めません。マイグレートボリュームのクローンは、「Migration Clone」タイプのプールのストレージボリュームにしか書き込めません。Backup には、マイグレートデータのために「Migration」と「Migration Clone」という名前の事前構成済みのプールが用意されています。
マイグレートデータの形式は通常のバックアップデータとは異なるため、別のボリュームプールに書き込まなくてはなりません。このデータ形式の違いのために、事前マイグレート操作またはマイグレート操作の際に作成されたクライアントインデックスとブートストラップセーブセットは、マイグレートセーブセットと同じボリュームには書き込めません。ユーザーの環境でボリュームプールがどのように構成されているかにもよりますが、通常は「Default」プールのボリュームに書き込まれます。クライアントインデックスとブートストラップを「Default」プール以外のボリュームプールに送る必要がある場合は、「例 : クライアントインデックスとブートストラップを別々のプールに送る方法」を参照してください。
セーブセットのステージング機能を使って、マイグレートファイルをストレージメディア間で移動させることができます。たとえば、ファイルをファイルデバイスタイプにマイグレートしておいて、あとからセーブセットのステージング機能を使って、このマイグレートファイルを光ディスクに移すことができます。Backup は新しいストレージメディア上のマイグレートファイルの位置を追跡し、このファイルをスタブファイルの位置に呼び戻します。マイグレートデータの物理的な位置の変化は、ユーザーからは認識されません。バックアップ、HSM、セーブセットのステージング、およびアーカイブ操作の比較については、表 8-1 を参照してください。
バックアップデータのステージングには「Clone」タイプのプールのボリュームを使わなければならないように、マイグレートデータのステージングには「Migration Clone」タイプのプールのボリュームを使う必要があります。たとえば、マイグレートデータのステージングポリシーを設定するときには、事前構成済みの「Migration Clone」プールを使用できます。
特定のマイグレートセーブセットを「Migration Clone」プールに手動でステージングするには、次のコマンドを入力します。
# nsrstage -s server-name -b Migration Clone -m -S save-set-ID |
セーブセットのステージング機能の詳細は、「セーブセットのステージング」を参照してください。nsrstage プログラムの構文とオプションについては、nsrstage のマニュアルページを参照してください。
コマンド行を使って、手動でマイグレートクライアントのファイルを事前マイグレートまたはマイグレートできます。たとえば「Migration Attention」の通知が出されたときなど、ファイルシステムに空き領域がなくなったときは、手動によるマイグレートを行います。まず、nsrpmig コマンドを使ってファイルを事前マイグレートし、次に、nsrmig コマンドを使ってファイルをマイグレートします。マイグレートするファイルが大きいほど、それだけローカルディスクスペースを解放できるので、その効果も大きくなります。
ファイルをマイグレートするためには、その前に事前マイグレートが行われている必要があります。
ファイルを手動で事前マイグレートするには、次のコマンドを入力します。
# nsrpmig -s server-name -b pool -g group path |
-b と -g の両オプションは、省略してもかまいません。省略すると、「Migration」リソースのデフォルトの設定値が使われます。
パスを指定しないと、現在使用中のディレクトリが使われます。
ファイルを事前マイグレートしたあとに手動でマイグレートするには、次のコマンドを入力します。
# nsrmig -s server-name path |
パスを指定しないと、現在使用中のディレクトリが使われます。ファイルシステムの容量が、「Migration」リソースで指定されている下限値に達するまでマイグレートが続けられます。
上記の 2 つのコマンドの詳細は、nsrpmig と nsrmig のマニュアルページを参照してください。
nsrhsmck (HSM 整合性チェックコマンド) が、毎晩 2:00 a.m. に、HSM 管理下のファイルシステムの整合性を自動的に確認して修正します。
HSM 管理下のファイルシステムの整合性を手動で確認することもできます。この整合性の確認と修正には nsrhsmck コマンドを使いますが、マイグレートファイルのスタブ名が変更されている場合、あるいはスタブがクライアントのファイルシステムから削除されている場合にこのコマンドを使って対処することもできます。nsrhsmck コマンドの基本構文は、次のとおりです。
# nsrhsmck -cdfv -s server-name path |
nsrhsmck コマンドを実行する場合は、コマンド行にパスを指定します。そこで指定されたパスにあるファイルとインデックスエントリに対してだけ、整合性の確認が行われます。
クライアントマシンでスタブ名を変更すると、Backup によってそのマイグレートされたファイルを元のディスクに呼び戻すことはできません。手動でファイルを呼び戻すには、nsrhsmck -f コマンドを使ってクライアントのファイルインデックスを更新し、変更後の名前を登録してください。
クライアントマシンからスタブを削除した場合は、バックアップメディアに保存されているスタブファイルを復旧してから実際のファイルを呼び戻します。
マイグレートファイルを削除する場合は、ローカルディスクからそのファイルのスタブを削除し、次に nsrhsmck -d コマンドを使って、削除するファイルのインデックスエントリに、削除の可能性あり、というマークを付けます。60 日を経過したら、nsrhsmck -c コマンドを使って、有効期限の切れたエントリをクライアントのファイルインデックスから削除します。Backup は、もはやこのマイグレートファイルを追跡していないので、このファイルを呼び戻すことはできません。
HSM のファイルインデックスからエントリが削除される前に、Backup によって、ディスクからそのファイルが本当になくなっているかどうかが確認されます。削除の可能性ありというマークを付けられたファイルが、そのエントリが削除される前にまだディスクに残っていると、エントリの削除の可能性ありというマークは消されます。
Backup 管理プログラムの「Migration Control」リソースには、HSM サービスを受けるように構成されているクライアントの一覧と、最近 7 日間に行われたすべてのマイグレート処理の統計情報が表示されます。
HSM 処理についてのレポートは、次に示すコマンド行命令を使って作成できます。詳細は、各コマンドのマニュアルページを参照してください。
nsrinfo コマンド - セーブセット内のファイルを一覧表示する
mminfo コマンドまたはクローン作成ブラウザ - 過去 24 時間にどのセーブセットがマイグレートされたかを調べる
nsrmig -n コマンド - 実際にファイルをマイグレートせずに、マイグレート対象のファイルのレポートを作成する
nsrpmig -n コマンド - 実際にファイルを事前マイグレートせずに、事前マイグレート対象ファイルのレポートを作成する
「Migration Completion」通知をカスタマイズするには、この通知用に構成されているリソースを変更します。デフォルトでは、マイグレート完了の通知は、上限値に達するなどのマイグレートイベントが起こった時点で電子メールによってスーパーユーザーに送られます。詳細は 「イベント通知」を参照してください。