この章では、システムのシャットダウンとブートについて概要を説明します。Solaris 2.x ソフトウェア環境は、電子メールとネットワーク資源をいつでも利用できるように停止することなく動作するように設計されています。しかし、システム構成の変更、定期保守、停電などの理由で、システムをシャットダウンまたはリブートしなければならない場合があります。
この章の内容は次のとおりです。
二次ブートプログラム (ufsboot と inetboot) は、CacheFSTM ファイルシステムを読み取るように変更されました。この新しいブート機能によって、AutoClient システムは、より迅速に、そしてより少ないネットワークトラフィックでブートできるようになりました。
この新しい機能は自動的に有効になり、管理の必要はありません。
システムをシャットダウンおよびブートする手順については次を参照してください。
ここではシャットダウンとブートに関する用語について説明します。
実行レベルと init 状態 - 「実行レベル」を変更することにより、システムのシャットダウンまたはブートの方法を指定します。実行レベルとは、プロセスのソフトウェア構成と使用可能なサービスのことです。各実行レベルで使用可能なシステムプロセスの起動と停止を行うのは init プロセスなので、実行レベルは 「init 状態」と呼ばれることもあります。このマニュアルでは、これらの状態を実行レベルと呼びます。
ブートタイプ - 「ブートタイプ」とはシステムのブート方法を指すもので、オペレーティングシステムのシャットダウンを含む場合もあります。次のようなブートタイプがあります。
対話式ブート - システムのブート方法に関する情報 (カーネルやデバイスのパス名など) を入力するプロンプトが表示されます。
再構成用ブート - システムが再構成され、新しく追加したハードウェアまたは新しい擬似デバイスがサポートされます。
回復ブート - システムがハング状態になったとき、または無効なエントリがあるためシステムが正常にブートできないか、ユーザーがログインできないときに使用します。
システムをシャットダウンするときは次の点に注意してください。
システムのシャットダウンには、init および shutdown コマンドを使用します。これらのコマンドは、すべてのシステムプロセスとサービスを正常に終了させてからシャットダウンします。
サーバーをシャットダウンする場合は、shutdown コマンドを使用します。shutdown コマンドは、シャットダウンを実行する前に、サーバーにログインしているユーザーやサーバー資源をマウントしているシステムにシャットダウンを通知します。システムのシャットダウンについては、ユーザーが予定を立てられるようあらかじめ電子メールで知らせておくようにします。
shutdown または init コマンドを使用してシステムをシャットダウンするには、スーパーユーザー権限が必要です。
どちらのコマンドも実行レベルを引数に指定します。最もよく使用される実行レベルは次の 3 つです。
実行レベル 3 - すべてのシステム資源を使用でき、ユーザーもログインできる状態。デフォルトでは、システムをブートすると実行レベル 3 になります。通常の運用で使用されます。同時に NFS 資源が共有される状態のマルチユーザーレベルでもあります。
実行レベル 6 - システムをリブートして、実行レベル 3 (NFS 資源が共有される状態のマルチユーザーレベル) から実行レベル 0 (安全に電源切断できる状態) にし、再度実行レベル 3 に戻します。リブートは、特定のシステム設定の変更を有効にしたり、新しく追加されたソフトウェアサービスを使用可能にするために行います。
実行レベル 0 - オペレーティングシステムがシャットダウンされ、安全に電源切断できる状態。システムの設置場所を変更したり、ハードウェアを追加または削除する場合は、システムを実行レベル 0 にする必要があります。
実行レベルについての詳細は、第 6 章「実行レベルとブートファイルの手順」を参照してください。
シャットダウン後、システムを新しい実行レベルにするには、boot コマンドを使用します。
電源を切断したあと再投入すればシステムをリブートできます。ただし、この方法では、システムサービスやプロセスが突然終了してしまうので、きれいなシャットダウンとは言えません。緊急時の代替手段として使うことはできます。
SPARC および x86 では、システムのブート時に使用するハードウェアが異なります。これらのハードウェアの違いについては、第 10 章「ブートプロセスの参照情報」を参照してください。
再構成用ブートは、システムに新しいハードウェアを追加したときや擬似デバイスのサポートを再構成したとき (pty 数の増加など) に行います。表 5-1 は、どの場合にどの再構成手順を使用するかをまとめたものです。
表 5-1 再構成手順
システム再構成の内容 |
参照先 |
---|---|
ディスクの追加 | |
周辺装置の追加 | |
擬似デバイス数の変更 |
表 5-2 は、システム管理作業と作業を開始するために必要なシャットダウンの種類をまとめたものです。
表 5-2 システムのシャットダウン
管理作業 |
以下の実行レベルに変更 |
参照先 |
---|---|---|
停電のためシステムの電源を切断する。 |
実行レベル 0。安全に電源を切れる状態。 | |
/etc/system ファイル内のカーネルパラメータを変更する。 |
実行レベル 6 (システムのリブート)。 | |
ファイルシステムを保守する (システムデータのバックアップや復元など)。 |
実行レベル S (シングルユーザーモード)。 | |
/etc/system などのシステム構成ファイルを修正する。 |
「システムをブートする場合」を参照。 |
なし |
/etc/system ファイル内の擬似デバイスパラメタを変更する。 |
再構成用ブート。 | |
システムにハードウェアを追加する (または、システムからハードウェアを削除する)。 |
再構成用ブート (ハードウェアを追加または削除したら電源を切断する)。 | |
ブート失敗の原因となっている重要なシステムファイルを修正する。 |
「システムをブートする場合」を参照。 |
なし |
カーネルデバッガ (kadb) をブートして、システムの障害を調査する。 |
実行レベル 0 (可能な場合)。 | |
ハング状態から回復する。または、クラッシュダンプを強制する。 |
「システムをブートする場合」を参照。 |
なし |
サーバーまたはスタンドアロンシステムのシャットダウンの例については、第 7 章「システムのシャットダウンの手順」を参照してください。
表 5-3 は、システム管理作業と、その作業を行うのに必要なブートをまとめたものです。
表 5-3 システムのブート
リブート前に実行した管理作業 |
使用するブート種類 |
SPARC のブート手順の参照先 |
x86 のブート手順の参照先 |
---|---|---|---|
停電のためシステムの電源を切断した。 |
システムの電源を再投入する。 | ||
/etc/system ファイル内のカーネルパラメタを変更した。 |
システムを実行レベル 3 にリブートする (NFS 資源を共有できる状態のマルチユーザーモード) | ||
ファイルシステムを保守した (システムデータのバックアップや復元など)。 |
実行レベル S で Ctrl-d を押して、システムを実行レベル 3 に戻す。 | ||
/etc/system などのシステム構成ファイルを修正した。 |
対話式ブート。 | ||
/etc/system ファイル内の擬似デバイスパラメタを変更した。 |
再構成用ブート。 | ||
システムにハードウェアを追加した (または、システムからハードウェアを削除した)。 |
再構成用ブート (ハードウェアを追加または削除したら電源を投入する)。 | ||
カーネルデバッガ (kadb) をブートして、システムの障害を調査した。 |
kabd をブートする。 | ||
ブート失敗の原因となっていた重要なシステムファイルを修正した。 |
回復ブート。 | ||
ハング状態から回復した。または、クラッシュダンプを強制した。 |
回復ブート。 |
システムブートの例については、第 8 章「SPARC システムのブートの手順」または第 9 章「Intel:x86 システムのブートの手順」を参照してください。