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Oracle General Ledgerユーザーズ・ガイド
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E05999-01
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平均残高処理

平均残高処理の概要

Oracle General Ledgerの平均残高処理機能によって、組織における平均残高と日末残高を追跡し、平均貸借対照表をレポートし、また標準と平均の両残高を使用してカスタム・レポートを作成することができます。金融機関は種々の規制機構によって、標準貸借対照表の他に、平均貸借対照表が要求されるので、平均残高処理は特に重要です。平均残高を社内の管理レポート用や利益性の分析用として使用している組織も多くあります。

平均と標準の貸借対照表の違いは、残高が期末の実績額ではなく平均額として表されることです。平均残高は、貸借対照表勘定科目に対する日次実績残高の累計をレポート対象期間中のカレンダ日数で除算した額として計算されます。

Oracle General Ledgerによって、日ごと、四半期ごと、そして年度ごとに平均残高を管理して、レポートできます。Oracle General Ledgerでは、取引ごとに入力する有効日を使用して平均残高が追跡されます。

Oracle General Ledgerでは、平均残高と日末残高の両方が記録されます。これらの残高は、Oracle General Ledgerの他の機能、すなわち換算、統合、複数通貨会計、算式仕訳等にも適用できます。

Oracle General Ledgerのオンライン照会機能では、有効日を指定して平均残高の情報を表示させることができます。カスタム・レポートのみではなく、標準平均残高レポートを要求することもできます。

この概要で提示しているいくつかのコンセプトの詳細は、次を参照してください。

関連項目

基本的なビジネス・ニーズ

平均残高の例

主な機能

有効日の取扱い

設定および保守

複数通貨の処理

連結

オンライン照会

レポート

基本的なビジネス・ニーズ

Oracle General Ledgerでは、次のような基本的な平均残高ニーズを満たすために、必要な機能が提供されています。

関連項目

平均残高の例

主な機能

有効日の取扱い

設定および保守

複数通貨の処理

連結

オンライン照会

レポート

平均残高の例

次の数ページでは、平均残高処理の概念をいくつかの例を挙げて説明します。一般的な例から始めて日次期間平均、日次四半期平均および日次年度平均残高の例に進みます。各例ともに、Oracle General Ledgerで平均残高処理がどのように行われるかを説明します。

関連項目

一般例

総計残高と平均残高の関係

例: 日次期間平均残高

例: 日次四半期平均残高

例: 日次年度平均残高

一般例

3つの貸借対照表勘定(勘定科目A、勘定科目Bおよび勘定科目C)があると想定します。各期首残高はすべて0.00ドルとします。

1日目

会計期間の初日に発生する唯一の活動は、次の表に示す取引です。

1日目の活動
勘定科目 借方 貸方
勘定科目A 1,000  
勘定科目B   1,000

前述した活動により次の表に示す結果が生じます。

1日目の勘定残高
勘定科目活動日末残高総計残高平均残高
勘定科目A 1,000 1,000 1,000 1,000
勘定科目B (1,000) (1,000) (1,000) (1,000)

1日目の各勘定科目の総計残高は、日計残高と同額であることに注意してください。平均残高は、総計残高を当期通算日数1で除算した額に等しくなります。

2日目

2日目に、次の表に示す取引を転記します。

2日目の活動
勘定科目 借方 貸方
勘定科目A 100  
勘定科目C   100

前述した活動により次の表に示す結果が生じます。

2日目の勘定残高
勘定科目活動日末残高総計残高平均残高
勘定科目A 100 1,100 2,100 1,050
勘定科目B 0 (1,000) (2,000) (1,000)
勘定科目C (100) (100) (100) (50)

各勘定科目の総計残高は、1日目の日末残高に2日目の日末残高を加えた金額と等しいことに注意してください。別の言い方をすると、総計残高は前日の総計残高に当日の日末残高を加えた金額と等しくなります。

各勘定科目の平均残高は、総計残高を期間累計日数2で除算した額に等しくなります。

3日目

3日目に、次の表に示す取引を転記します。

3日目の活動
勘定科目 借方 貸方
勘定科目B 200  
勘定科目C   200

前述した活動により次の表に示す結果が生じます。

3日目の勘定残高
勘定科目活動日末残高総計残高平均残高
勘定科目A 0 1,100 3,100 1,066.66
勘定科目B 200 (800) (2,800) (933.33)
勘定科目C (200) (300) (400) (133.33)

各勘定科目の総計残高は1日目から3日目までの日計残高の合計額に等しいことに注意してください。各勘定科目の平均残高は総計残高を、当期通算の日数3除算した額に等しくなります。

関連項目

総計残高と平均残高の関係

例: 日次期間平均残高

例: 日次四半期平均残高

例: 日次年度平均残高

総計残高と平均残高の関係

Oracle General Ledgerでは、平均残高処理を有効化すると、当該元帳の各貸借対照表勘定科目ごとに、またカレンダ日ごとに3つの総計残高が算出また保存されます。3つの金額とは、期間累計、四半期累計および年度累計の総計残高です。Oracle General Ledgerでは、取引を転記する際に標準の期末残高が更新される他に、これら3つの総計残高も更新されます。

Oracle General Ledgerでは、平均残高や日末残高が実際には保存されないことに注意してください。そのかわりに、これら残高を必要とする場合はいつでも簡単な計算を迅速に実行します。たとえば、オンライン照会またはレポートを実行している場合は、必要な平均残高は次の簡単な算式を使用して迅速に総計残高から計算されます。

平均残高 = 範囲の日数で除算された総計残高。

日末残高 = 現在の総計残高から前日の総計残高を減算した額。

総計残高と平均残高とのこのような関係は、Oracle General Ledgerにおける平均残高処理の基本概念です。本文書で、平均残高の追跡、処理、管理等を参照することは、暗黙のうちにこのような関係を参照していることになります。

平均残高の各種タイプ

Oracle General Ledgerでは、レポートや分析についての必須条件を満たすために次の3つのタイプの平均残高を追跡できます。

関連項目

一般例

例: 日次期間平均残高

例: 日次四半期平均残高

例: 日次年度平均残高

例: 日次期間平均残高

次の表は、Oracle General Ledgerで日次期間平均残高が算出される方法を説明しています。

この例では、特定元帳の1つの勘定科目のみに対する活動と残高を考察します。5月31日の期末残高は100,000ドルでした。

例: 日次期間平均の計算
活動期末残高PTD総計残高PTD範囲
6月1日 $5,000 $105,000 $105,000 1
6月2日 $8,000 $113,000 $218,000 2
6月3日 $4,000 $117,000 $335,000 3

6月3日現在の期間平均累計残高:

= 期間累計総計残高(6月3日現在) ÷ 期間累計範囲(日数:期間累計)

= $335,000 / 3日

= $111,666.67

注意: 期間累計総計残高は、期首ごとにゼロにリセットされます。

関連項目

一般例

総計残高と平均残高の関係

例: 日次四半期平均残高

例: 日次年度平均残高

例: 日次四半期平均残高

日次期間平均残高の例に続いて、次の表は、Oracle General Ledgerでの日次四半期平均残高が算出される方法を説明します。

この例では、3月31日の期末残高は70,000ドルでした。

例: 日次四半期平均残高
日次活動期末残高PTD総計残高QTD総計残高QTD範囲
4月1日 $2,000 $72,000 $72,000 $72,000 1
4月2日 $3,000 $75,000 $147,000 $147,000 2
4月3日 ($1,000) $74,000 $221,000 $221,000 3
: : : : : :
: : : : : :
6月1日 $5,000 $105,000 $105,000 $5,145,000 62
6月2日 $8,000 $113,000 $218,000 $5,258,000 63
6月3日$4,000 $117,000 $335,000 $5,375,000 64

6月3日現在の四半期平均累計残高

= 四半期累計総計残高(6月3日現在) ÷ 四半期累計範囲(日数: 四半期累計)

= $5,375,000 / 64日

= $83,984.38

注意: 四半期累計総計残高は各四半期の期首ごとにゼロにリセットされます。したがって、各四半期の第1期は、期間累計と四半期累計の総計残高は同額です。

注意: いくつかの金融機関では、日次四半期平均残高に四半期の第3期の終了時日次平均を加えて、これを3で除算しています。Oracle General Ledgerの財務諸表生成プログラムにより、この日次四半期平均残高を算出する計算方法を使用して、カスタム・レポートを作成できます。

関連項目

一般例

総計残高と平均残高の関係

例: 日次期間平均残高

例: 日次年度平均残高

例: 日次年度平均残高

前の2例に続いて、次の表は、Oracle General Ledgerで日次年度平均残高が算出される方法を説明します。

この例では、12月31日現在の前年期末残高は50,000ドルでした。

例: 日次年度平均計算
日次活動期末残高PTD総計残高QTD総計残高YTD総計残高YTD範囲
1月1日 $4,000 $54,000 $54,000 $54,000 $54,000 1
1月2日 $2,000 $56,000 $110,000 $110,000 $110,000 2
1月3日 $0 $56,000 $166,000 $166,000 $166,000 3
: : : : : : :
: : : : : : :
4月1日 $2,000 $72,000 $72,000 $72,000 $5,711,000 91
4月2日$3,000 $75,000 $147,000 $147,000 $5,786,000 92
4月3日($1,000) $74,000 $221,000 $221,000 $5,860,000 93
: : : : : : :
: : : : : : :
6月1日 $5,000 $105,000 $105,000 $5,145,000 $10,784,000 152
6月2日 $8,000 $113,000 $218,000 $5,258,000 $10,897,000 153
6月3日 $4,000 $117,000 $335,000 $5,375,000 $11,014,000 154

6月3日現在の年平均累計残高:

= 年累計総計残高(6月3日現在) ÷ 年累計範囲(日数: 年累計)

= $11,014,000 / 154日

= $71,519.48

注意: 年累計総計残高は各年の期首ごとにゼロにリセットされます。したがって、年の第1期間は毎日、期間累計、四半期累計および年累計の総計残高が同額になります。

すべての資産、負債および資本勘定科目に関する3つの総計残高は、すべて新年度の期首にリセットされてゼロになることにも注意してください。

注意: いくつかの金融機関では、日次年度平均残高を、年度内のすべての期間の終了時の日次平均残高を合計して、これを修正期間を除く期間数で除算しています。別の方法として、4つの日次四半期平均残高を合計して、それを4で除算できます。Oracle General Ledgerの財務諸表生成プログラムでは、日次年度平均残高を算出するどちらかの計算方法を使用して、カスタム・レポートを作成できます。

関連項目

一般例

総計残高と平均残高の関係

例: 日次期間平均残高

例: 日次四半期平均残高

平均残高処理の概要

基本的なビジネス・ニーズ

主な機能

有効日の取扱い

設定および保守

複数通貨の処理

連結

オンライン照会

レポート

主な機能

特定の元帳に対する平均残高処理の有効化

Oracle General Ledgerで平均残高処理を使用する場合は、「会計設定マネージャ」を使用して、この機能を特定の元帳に対し有効化する必要があります。この機能により、平均残高処理を必要とする特定元帳にのみその機能が有効化されます。このため、平均残高処理が必要な場合を除き、間接費が余計にかからなくなります。

平均残高を記録

Oracle General Ledgerでは、任意の日付の現平均残高を算出できるよう、必要な総計残高を計算し、保存します。

有効日での取引処理

Oracle General Ledgerでどの日末残高と総計残高を更新させるかは、取引の有効日によって決定されます。次に、これらの残高により平均残高の算出値が決定されます。

取引カレンダの管理

金融機関のように平均残高処理を必要とする組織では、営業日にのみ取引を転記する必要があります。週末や祭日には転記は許可されませんが、組織によっては期末経過勘定を非営業日に転記する場合があります。

Oracle General Ledgerでは、取引カレンダで取引の転記を管理します。取引カレンダを定義する際は、週間の営業日を選択します。祭日も、同じように取引カレンダ管理用に用意されたフォームで指定します。

平均残高処理が有効化された各元帳に、取引カレンダが割り当てられます。取引を転記すると、Oracle General Ledgerにより有効日が取引カレンダと照合されます。日付が正当であれば、取引は転記されます。無効な日付である場合は、処理方法を指示できます。

取引カレンダによる管理には、その他に次のような機能があります。

有効日による取引残高の管理

Oracle General Ledgerでは通常、全期間について取引総額の貸借が一致することが必要です。平均残高処理が有効化されていると、有効日ごとに取引総額がチェックされ、借方と貸方とを必ず一致するようにします。一致しないときは、Oracle General Ledgerで取引が拒否されるか、または仮勘定の転記処理が有効化されていれば、仮勘定科目に貸借一致用の取引が入力されます。

前日付価額取引の許可

前日付価額取引日は、当期間以外にも設定できます。有効日がオープン期間に転記される限り、前期間や前年度の期間に設定できます。

前日付価額取引の転記は、次のように実行されます。

取引の例については、「前日付価額取引」を参照してください。

要約勘定科目の平均額の管理

要約勘定科目を使用していて平均残高処理が有効化してある場合は、要約勘定科目の標準残高とともに平均残高も管理されます。Oracle General Ledgerでは、標準平均残高とともに要約平均残高も自動的に更新されます。要約平均残高は、配賦および財務レポートにも使用できます。

オンライン照会

「平均残高照会」フォームを使用して、元帳または元帳セットの任意の貸借対照表勘定科目の平均残高と日末残高に関するオンライン情報が検討できます。要約残高からドリルダウンして詳細を表示することも、要約残高または詳細残高を表示することもできます。平均または日末残高の表示方法をカスタマイズして、必要な情報のみを必要な順序で表示することもできます。

標準レポート

Oracle General Ledgerには、次の2つの標準平均残高レポートがあります。

カスタム平均残高レポート

Oracle General Ledgerの財務諸表生成プログラムでは、平均残高を使用するカスタム・レポートを構成できます。平均残高および標準残高を含むレポートでも作成できます。

財務諸表生成プログラムでは、事業単位、利益センターおよびコスト・センターの職責レポートを含む、事業の分析に必要な複雑な財務諸表が定義できます。その他に、連結済および連結レポート、財源明細書およびキャッシュ・フロー・レポートを作成する場合もあります。財務諸表生成プログラムでは、平均残高と標準残高を使用して、これらすべてを作成できます。

配賦と定型仕訳の算式

平均残高処理が有効化されていると、一括配賦、一括予算配賦および定型仕訳の作成に使用する算式への入力として、平均残高を使用できます。日末残高の他に、3タイプの平均残高タイプ(「日次期間平均」、「日次四半期平均」または「日次年度平均」)のうちどれでも使用できます。

複数通貨による会計

Oracle General Ledgerでは、外貨換算、再評価および換算における平均残高の使用が完全にサポートされています。Oracle General Ledgerでは、元帳通貨のみではなく使用中の取引通貨のすべての平均残高および日末残高が保守されます。これらの機能を使用して、次を実行できます。

連結

Oracle General Ledgerでは、取引連結方法と残高連結方法の両方を含め、連結処理に対する平均残高の使用が完全にサポートされています。通貨、カレンダおよび勘定体系の異なる元帳の平均残高を連結できます。

関連項目

平均残高処理の概要

基本的なビジネス・ニーズ

平均残高の例

有効日の取扱い

設定および保守

複数通貨の処理

連結

オンライン照会

レポート

有効日の取扱い

取引転記の有効日は、平均残高の算出額に直接影響します。同様に、照会やレポート作成時に基準を選択するときも、有効日は重要な基準です。これは、レポートには指定した有効日現在の平均残高が表示されるためです。

前日付価額取引

前述のように、前日付価額取引を転記すると、Oracle General Ledgerでは、影響が出た勘定科目の日末残高と総計残高が有効日とそれ以降の全日付に対して修正されます。次の例では、一般例に引き続き(関連項目: 平均残高の例)前日付価額取引を転記するとどのような事態が生じるかを例示します。

前日付価額取引の例

次の表には、前の例での日末残高と総計残高を示します。

日次勘定残高
勘定科目Aの日末残高勘定科目Aの総計残高勘定科目Bの日末残高勘定科目Bの総計残高勘定科目Cの日末残高勘定科目Cの総計残高
1日目 1,000 1,000 (1,000) (1,000) 0 0
2日目 1,100 2,100 (1,000) (2,000) (100) (100)
3日目 1,100 3,200 (800) (2,800) (300) (400)

3日目現在の平均残高は次のとおりです。

勘定科目計算 平均残高
勘定科目A 3,200 / 3 = 1,066.66
勘定科目B (2,800) / 3 = (933.33)
勘定科目C (400) / 3 = (133.33)

次に、次の表に示す前日付価額取引が3日目に発生し、1日目にさかのぼることを想定します。

勘定科目 借方 貸方
勘定科目A 500  
勘定科目B   500

この取引により次の表に示す影響が発生します。

前日付取引後の日次勘定残高
勘定科目Aの日末残高勘定科目Aの総計残高勘定科目Bの日末残高勘定科目Bの総計残高勘定科目Cの日末残高勘定科目Cの総計残高
1日目 1,500 1,500 (1,500) (1,500) 0 0
2日目 1,600 3,100 (1,500) (3,000) (100) (100)
3日目 1,600 4,700 (1,300) (4,300) (300) (400)

各勘定科目の3日目現在の新平均残高は、次のとおりです。

勘定科目計算 平均残高
勘定科目A 4,700 / 3 = 1,566.66
勘定科目B (4,300) / 3 = (1,433.33)
勘定科目C (400) / 3 = (133.33)

週末と休日

取引カレンダを使用して、Oracle General Ledgerの会計カレンダに営業日と非営業日を設定します。非営業日は次のとおりです。

一般に、非営業日には取引は勘定に転記されませんが、Oracle General Ledgerでは非営業日についても営業日と同様に総計残高が管理また保存されています。

関連項目

平均残高処理の概要

基本的なビジネス・ニーズ

平均残高の例

主な機能

設定および保守

複数通貨の処理

連結

オンライン照会

レポート

設定および保守

平均残高処理の有効化

平均残高処理を有効化するには、「会計設定マネージャ」で元帳を定義する際に「平均残高使用可」オプションを選択します。会計設定を完了すると、元帳の平均残高と日末残高の計算に使用される総計残高の格納が自動的に開始されます。

取引カレンダ

「取引カレンダ」フォームを使用して、取引カレンダを定義します。取引カレンダを定義する場合には、まず名称とオプションの摘要を指定します。この情報を基にして、Oracle General Ledgerの日付範囲内で各カレンダ日への入力を含む取引カレンダが作成されます。各入力値には次の3項目があります。

取引カレンダを生成したら、「営業日」インディケータを非営業日に変更して休日を指定します。

取引カレンダと会計カレンダとは相互に完全に独立しています。たとえば、親会社と子会社すべてに共通の会計カレンダがあるとします。しかし、各子会社では、それぞれ異なった「休日」計画を持つ取引カレンダが必要な場合があります。

元帳

「会計設定マネージャ」で、元帳の属性(「会計カレンダ」、「元帳通貨」、「勘定体系」および「補助元帳会計処理基準」など)を定義します。平均残高処理を使用可に設定して元帳を定義するか、平均残高の連結に使用する連結元帳を定義できます。平均残高は標準残高から導出されるため、平均残高処理が使用可に設定されている通常の元帳では、標準残高と平均残高がリンクされています。このリンクを規定するために、General Ledgerでは平均残高を直接操作する仕訳の作成が禁止されています。

平均残高連結元帳では、標準残高と平均残高とのリンクは規定されません。そのため、消去入力などの仕訳を平均残高に対して直接作成して転記できます。

関連項目: 元帳平均残高オプション

平均残高処理を有効化するように選択する場合は、元帳を定義する際に次のような追加情報を指定する必要があります。

転記不可純利益勘定

留保利益には、どんな暫定会計期間にも適用できる次の2つの要素があります。

Oracle General Ledgerでは、留保利益の平均残高は、他の勘定科目の平均残高の計算と同じ方法で算出されます。しかし、収益と費用勘定の平均残高が管理されていないため、留保利益このような要素を取り扱うには少し特別な処理が必要です。

Oracle General Ledgerでは、すべての収益と費用勘定の活動正味額を把握するために、転記不能な特別な純利益勘定(要約勘定に類似した)が使用されます。この勘定科目は、「資本」勘定タイプで貸借対照表勘定科目として取り扱われます。これら3つの保存総計残高は、いかなる期間、四半期や年度を問わず、その留保利益の平均残高に純利益が与える影響を算出するのに使用されます。

注意: 転記不能な純利益勘定科目をレポートとオンライン照会で使用することもできます。

注意: 転記不能な純利益勘定科目とその他貸借対照表勘定科目との主な差異は、その残高が新年度をオープンすると繰り越されないことにあります。そのかわり、この勘定科目は、年度末で収益と費用が留保利益にクローズされると、Oracle General Ledgerでゼロにリセットされます。

非営業日の処理オプション

有効日が非営業日に当たるような取引処理の管理には、次の2つの方法があります。

新規期間のオープン

新規の会計期間をオープンする場合、Oracle General Ledgerでは、仕訳の新規期間が準備されます。平均残高処理が有効中に、新規の期間を開設すると次のようになります。

新年度をオープンすると、Oracle General Ledgerでは転記不能な利益勘定がゼロに設定されます。留保利益の期首残高は、前年度の期末残高と転記不可純利益勘定の期末残高の合計額で設定されます。

アーカイブとパージ

平均残高処理を使用すると、大量のデータがOracle General Ledgerのデータベースに蓄積されます。必要のなくなった情報はアーカイブおよびパージできます。Oracle General Ledgerでは、関連した安全性とセキュリティ機能も提供されています。たとえば、システムでは以下のことが行われます。

関連項目

平均残高処理の概要

基本的なビジネス・ニーズ

平均残高の例

主な機能

有効日の取扱い

複数通貨の処理

連結

オンライン照会

レポート

複数通貨の処理

Oracle General Ledgerでは、選択した元帳通貨により各元帳の平均残高が保守されます。取引の入力時に使用した外貨には、外貨別に平均残高が保守されます。次の項では、平均残高処理が有効化された場合に、Oracle General Ledgerで外貨の換算、再評価および換算が処理される方法を説明します。

注意: 仕訳レベルと補助元帳レベルの報告通貨については、平均残高処理を使用可能にしないでください。使用可能にすると、ソース元帳とその報告通貨の両方で平均残高を保守するためにオーバーヘッドが追加発生します。

仕訳レベルと補助元帳レベルの報告通貨に対して平均残高処理を使用可能にすると、平均残高は主要元帳または副元帳について保守されるのと同様の方法で保守されます。ソース元帳で標準仕訳が転記されるたびに、もう1つの仕訳が報告通貨用に作成されて転記されます。次に、ソース元帳と報告通貨の両方について、対応する総計残高が更新されます。報告通貨の詳細は、「報告通貨の概要」を参照してください。

換算

仕訳を入力すると、Oracle General Ledgerでは、外貨額が自動的に元帳通貨に換算されます。仕訳を入力する場合、勘定科目の標準残高は換算通貨額で更新されます。同時に、Oracle General Ledgerでは、入力済(外貨)額と換算済(元帳)通貨に対応する総計残高が更新されます。これらの残高は、平均残高を計算するのに使用されます。

再評価

外貨建の貸借対照表勘定科目を再評価すると、Oracle General Ledgerでは、未実現の為替差損益を記録する仕訳が自動的に生成されます。この仕訳が転記されると、再評価された勘定科目の標準残高と対応総計残高がOracle General Ledgerで更新されます。これら更新済残高は、同勘定科目の平均残高の計算のファクタとなります。

換算

平均残高処理を使用可能にして、連結またはレポート作成のために勘定を換算するように選択すると、General Ledgerでは、標準勘定残高と平均勘定残高の両方が、換算中に報告通貨として指定した残高レベルの報告通貨に換算されます。両方の残高を個別に換算する方法と、月末サイクルの一環として1回の換算処理で換算する方法があります。

Oracle General Ledgerでは、会計期間の日ごとに換算残高が残高レベルの報告通貨で保守されます。日ごとの平均残高を換算する際には、元帳通貨による平均にその期間の当日を含めた為替の日次換算レートの平均が乗算されます。次の表に例を示します。

日次換算レート平均の例
日次レート日次レートの平均主要元帳通貨の平均残高レベルの報告通貨で保守される換算済平均残高
1 1.10 1.100 1,000 1,100
2 1.12 1.100 1,000 1,110
3 1.15 1.123 1,000 1,123
: : : : :
: : : : :
31 1.17 1.148 1,000 1,148

特定の勘定科目には、必要に応じて、日次換算レートの平均ではなく取得時レートまたは金額が使用できます。取得時レートまたは金額を入力すると、次のようになります。

日次四半期平均および日次年度平均の換算

Oracle General Ledgerでは、勘定科目に対する四半期と年度の日次平均の計算方法が相互に異なります。これは日次平均残高の換算に、日次換算レート、取得時レートまたは金額のいずれが適用されるかで決まります。

関連項目

平均残高処理の概要

基本的なビジネス・ニーズ

平均残高の例

主な機能

有効日の取扱い

設定および保守

連結

オンライン照会

レポート

連結

Oracle General Ledgerでは、複数会社の元帳で異なる通貨、会計カレンダおよび勘定体系が使用されていても、それらの財務実績を統合できる連結機能が使用できます。Oracle General Ledgerでは、取引または残高連結方式を使用して、平均残高の連結がサポートされます。

標準残高と平均残高は、異なった詳細レベルまたは同じ詳細レベルで連結できます。たとえば、標準残高を詳細レベルで連結し、平均残高は要約レベルで連結する場合があります。

標準と平均の両残高を同じ詳細レベルで連結すると、同じ勘定体系マッピング・ルールおよび連結定義を両方に適用できます。異なる詳細レベルで連結する場合、それぞれに適切な勘定体系マッピング・ルールおよび連結定義を定義する必要があります。

取引の連結

取引を連結する際に使用できる使用タイプは、「標準」のみです。General Ledgerでは、連結元の取引および対応する有効日で構成される連結仕訳バッチが1つ作成されます。連結する仕訳を連結先元帳で転記すると、標準残高および対応する平均残高が(非連結仕訳バッチを転記する際と同様に)自動的に更新されます。

注意: 取引を連結するには、連結先元帳と連結元元帳に同じ元帳通貨を使用する必要があります。

残高の連結

残高連結方法を使用している場合に平均残高を連結するには、平均残高連結元帳を使用する必要があります。元帳を定義すると同時に、元帳を平均残高連結に使用できるかどうかを指定します。

平均残高連結元帳では、平均残高処理が有効化されている他の元帳とは異なり、標準残高と平均残高との間のリンク処理が強制されません。その結果、標準残高と平均残高は単独で更新できます。平均残高連結元帳として定義されていない元帳では、取引が転記されるたびに標準残高と平均残高の両方が自動的に更新されます。

標準残高または平均残高を、平均残高連結元帳に単独で連結できます。また、標準残高と平均残高を1回の連結実行で連結することも可能です。General Ledgerでは、連結の実行時に次の2つの連結仕訳バッチが作成されます。

平均連結仕訳バッチでは、仕訳の有効日は必ず会計期間の初日となります。バッチを転記すると、期間の初日に仕訳金額が平均残高として転記され、それ以降は毎日繰越しが続行されます。その結果、期間内のすべての日付において、連結元元帳の期末現在の平均残高が反映されます。

消去

仕訳手動入力、定型仕訳および一括配賦を使用して、平均残高連結元帳で消去入力を作成できます。標準残高や平均残高を消去できますが、これらの消去入力は相互に独立しています。たとえば、ある勘定科目の標準残高を消去しても、関連した平均残高は消去されません。同様に、平均残高を消去しても、関連した標準残高には影響はありません。消去入力の有効日は、常に期間の初日です。

連結階層

Oracle General Ledgerでは、連結先元帳が平均連結元帳として定義されているかぎり、標準残高と平均残高を複数レベルで連結処理できます。単一レベルにおける連結も同じ処理であることに注意してください。Oracle General Ledgerでは、両方のレベルにおいて連結元の標準残高が連結先標準残高に転送され、連結元の平均残高が連結先平均残高に転送されます。

平均日次残高元帳の特別な考慮事項

平均残高を連結する場合は、ダブル・カウントを防ぐために、現期間で前期間の連結を逆仕訳する必要があります。期間平均残高は、期間ごとの単独の残高を表し、同じ期間内の各日の残高は同じです。逆仕訳の調整を加えない場合、前期間の平均残高が現期間の平均残高に誤って含まれることになります。

たとえば、1月1日および2月1日に対して、PATD残高を使用して期間平均連結を実行するとします。1月1日を連結した後、2月1日を連結する前に、2月1日時点での1月1日のPATD平均連結仕訳を逆仕訳する必要があります。これによって、2月1日のPATD残高は0に設定されます。次に、2月1日に対してPATD平均連結を実行できます。

四半期QATD連結および年間YATD連結でも、同じ逆仕訳調整が必要です。現在の連結を実行する前に、現在の四半期の初日に前四半期のQATD平均連結を逆仕訳する必要があります。年間YATD平均連結では、現在の連結を実行する前に、現在の年度の初日に前年のYATD平均連結を逆仕訳する必要があります。

定期PATD連結を行う場合のように、頻繁に平均連結を実行する場合、QATDおよびYATD連結残高は自動的に提供されます。QATDおよびYATD情報は、PATD残高から導出されます。この方法で正しいQATDおよびYATD残高を検討するには、四半期または年度の最終日を選択する必要があります。範囲内のその他すべての日では、残高は正確になりません。

平均残高連結元帳の特別な考慮事項

連結仕訳

平均残高を連結元帳に連結する際、Oracle General Ledgerでは、次の表に示すプロパティで、標準残高と平均残高に別々の連結仕訳が作成されます。

 標準残高連結仕訳平均残高連結仕訳
仕訳ソース連結平均連結
有効日期間期間の初日
転記時の更新GL_BALANCES表の標準残高GL_DAILY_BALANCES表の平均残高

QATD残高とYATD残高の連結

日次四半期平均残高は、四半期の第1期間に必ず連結されます。日次年度平均残高は、年度の第1期間に必ず連結されます。残高は四半期または年度全体で繰り越されます。したがって、四半期または年度内のすべての日で同じ平均残高が表示されます。

使用タイプ、金額タイプ、日付および期間

標準残高のみ、平均残高のみ、または標準残高と平均残高の両方を連結することを選択できます。これらの3つのオプションは、使用タイプとして参照されます。選択する使用タイプは、下記の表で示すように、金額タイプ、日付および期間にも影響を与えます。

 「標準」使用タイプ「平均」使用タイプ「標準および平均」使用タイプ
金額タイプPTD、QTD、YTD、PJTD、EODPATD、QATD、YATDPTD/PATD、QTD/QATD、YTD/YATD、EOD/PATD
日付金額タイプがEODでない場合は使用不可。日付は連結元期間内の最も近い営業日。連結元期間内の最も近い営業日。連結元期間内の最も近い営業日。
期間「標準期間」は、連結先元帳のオープン期間または先日付入力可能期間に設定できます。「平均期間」は使用不可です。「標準期間」は使用不可です。「平均期間」は金額タイプに依存します。
PATD: 連結先元帳のオープン期間または先日付入力可能期間。
QATD: 連結先元帳の四半期の最初の調整不可期間。オープン期間または先日付入力可能期間である必要があります。
YATD: 連結先元帳の年度の最初の調整不可期間。オープン期間または先日付入力可能期間である必要があります。
「標準期間」は、連結先元帳のオープン期間または先日付入力可能期間に設定できます。「平均期間」は表示のみで、オープン期間または入力可能先日付期間である必要があり、金額タイプに依存します。
PTD/PATD: 「標準期間」と同じ。
QTD/QATD: 「標準期間」を含む四半期の最初の調整不可期間。
YTD/YATD: 「標準期間」を含む年度の最初の調整不可期間。

注意: 連結では、「連結データの振替」ウィンドウで指定された連結元期間に、標準残高が使用されます。連結では、指定した連結元日付には平均残高が使用されます。

標準残高は、「連結データの転送」ウィンドウで指定した「標準期間」の連結先元帳に連結されます。平均残高は、指定した「平均期間」に連結されます。

EOD残高は、連結元帳内に平均残高としてではなく標準残高として保存されます。

関連項目

平均残高処理の概要

基本的なビジネス・ニーズ

平均残高の例

主な機能

有効日の取扱い

設定および保守

複数通貨の処理

オンライン照会

レポート

グローバル連結システム

元帳の定義(『Oracle General Ledgerインプリメンテーション・ガイド』)

連結定義の定義

連結セットの転送

オンライン照会

Oracle General Ledgerでは、標準残高と平均残高のオンライン照会を実行することができます。次の基準を入力して、Oracle General Ledgerで表示される情報を管理することができます。

換算済平均残高を検討するには、「合計」通貨タイプによる平均残高換算中にターゲット元帳として使用した残高レベルの報告通貨を選択します。

Oracle General Ledgerでは、要約勘定を定義すると、オンライン照会時に使用する要約勘定を選択できます。要約レベルの照会から始めて、要約平均残高を構成する個々の勘定科目の平均残高までドリルダウンして表示することが可能です。

関連項目

平均残高処理の概要

基本的なビジネス・ニーズ

平均残高の例

主な機能

有効日の取扱い

設定および保守

複数通貨の処理

連結

レポート

レポート

General Ledgerを使用すると、標準レポートを要求するのみでなく、財務諸表生成プログラムを使用してカスタム・レポートを作成できます。この機能は、標準残高と平均残高の両方について完全にサポートされています。Applications Desktop Integratorを使用して、様々な書式のレポートを発行および公開することもできます。

標準レポート

Oracle General Ledgerでは、「平均残高試算表」および「平均残高監査レポート」の2つの標準平均残高レポートが提供されます。

平均残高試算表

このレポートは、ユーザーが指定した日付を基準にして、選択された勘定科目の標準残高と平均残高の一覧を提供します。レポートでは、さらに期間、四半期、年度の日次平均残高が表示されます。このレポートに貸借一致セグメントや勘定の範囲などのパラメータを指定すると、追加情報が表示されます。

平均残高監査レポート

このレポートでは、Oracle General Ledgerで管理される総計残高や関連平均残高で作成された詳細勘定活動が表示されます。Oracle General Ledgerで算出された勘定科目の平均残高を調べる際にこのレポートを使用できます。

レポートでは、指定範囲内の各日付ごとに、任意の勘定について日次平均残高情報が表示されます。レポート日付、平均残高タイプ(日次期間平均、日次四半期平均または日次年度平均)や勘定科目範囲等のパラメータを指定し、追加情報が要求できます。

財務諸表生成プログラム

財務諸表生成プログラムによって、カスタム平均残高レポートを簡単に設計できます。たとえば、以下が可能になります。

関連項目

平均残高処理の概要

基本的なビジネス・ニーズ

平均残高の例

主な機能

有効日の取扱い

設定および保守

複数通貨の処理

連結

オンライン照会