1 Oracle Multimediaの概要

この章では、Oracle Multimediaの概要を説明します。

Oracle Multimedia (以前のOracle interMedia)により、Oracle Databaseで、イメージ、DICOMフォーマットの医用デジタル画像とその他のオブジェクト、オーディオ、ビデオまたはその他の異機種間メディア・データを、他の企業情報と統合したフォーマットで格納、管理および検索できます。

Oracle Multimediaによって、Oracle Databaseの信頼性、可用性が向上し、従来のアプリケーション、医学アプリケーション、インターネット・アプリケーション、電子商取引アプリケーション、および様々なメディアを利用するアプリケーションでマルチメディア・コンテンツを管理できるようになります。Oracle Multimediaは、メディア・キャプチャや出力デバイスを制御しません。この機能はアプリケーション・ソフトウェアが担当します。

Oracle Multimediaでは、次のサービスおよびサポートが提供されます。

  • 2次元の静的ビットマップ・イメージの格納、検索、メタデータ抽出および処理のためのイメージ・サービス。イメージは、一般的な圧縮方法を使用して、デスクトップ・パブリッシング用の業界標準のイメージ・フォーマットで効率的に格納されます。

  • 医用デジタル画像およびその他のDICOMコンテンツの格納、検索、メタデータ抽出、処理、書込み、準拠検証および匿名化のためのDigital Imaging and Communications in Medicine (DICOM)サポート。注意: DICOMサポートは、Oracle Database 12cリリース2 (12.2)で非推奨になり、将来のリリースでサポートされなくなる可能性があります。

  • 一般的なオーディオおよびビデオ・ファイル・フォーマットの格納、検索およびメタデータ抽出のためのオーディオおよびビデオ・サービス。

この章では、次の内容を説明します。

関連項目:

1.1 Oracle Multimediaのアーキテクチャ

Oracle Multimediaは、イメージ、オーディオおよびビデオ・データを格納、管理および検索することによってデータベースを拡張する単体の統合機能です。

Oracle Multimediaアーキテクチャは、従来のデータとともに様々なメディアを利用するコンテンツをデータベースでサポートするために使用されるフレームワークを定義します。このコンテンツは、一般的な言語とツールで作成された複数のアプリケーション間で安全に共有でき、リレーショナル・データベース管理テクノロジによって簡単に管理でき、数千人のユーザーをサポートするスケーラビリティの高いデータベースで提供されます。

次の図は、データベースの観点からOracle Multimediaアーキテクチャを示しています。

図1-1 Oracle Multimediaのアーキテクチャ

図1-1の説明が続きます
「図1-1 Oracle Multimediaのアーキテクチャ」の説明

Oracle Multimediaを使用して、Oracle Databaseは従来のデータとともにリッチ・コンテンツを保持します。図に示すように、リッチ・コンテンツにはオーディオ、イメージ、ビデオ、およびX線などのDICOMコンテンツが含まれます。データベースに埋め込まれたJVMを通じて、サーバー側メディア・パーサーとイメージ・プロセッサがサポートされます。メディア・パーサーは、フォーマットとアプリケーション・メタデータの解析をサポートし、追加のフォーマットをサポートするように拡張できます。イメージ・プロセッサは、縮小サイズのイメージの生成、イメージ・フォーマットの変換、イメージ・ウォーターマーキングなどの操作のイメージ処理を提供します。

Oracle Multimediaのプロシージャまたはメソッドを使用すると、データベースと外部ファイル・ストレージ・システム間でインポート操作およびエクスポート操作を行うことができます。Oracle Databaseと外部ファイル・ストレージを結ぶ両方向矢印は、このデータ移動を示します。

Oracle Multimediaを使用すると、Oracle Databaseはデータベース表でDICOMコンテンツを格納、管理、処理および検索できます。DICOMコンテンツには、シングルフレームとマルチフレームのイメージ、波形、3Dボリュームのスライス、ビデオ・セグメントおよび構造化レポートが含まれています。

関連項目:

1.2 オブジェクト・リレーショナル・テクノロジ

Oracle Databaseはオブジェクト・リレーショナル・データベース管理システムであり、BLOBおよびBFILEに格納されているマルチメディア・データとOracle Multimediaオブジェクト型をサポートします。

リレーショナル・データの安全で効率的な管理における従来の役割に加えて、Oracle DatabaseはSecureFiles LOBを使用してラージ・オブジェクト(LOB)の安全で効率的な格納と管理をサポートします。

Oracle Multimediaは、Oracle Database内のバイナリ・ラージ・オブジェクト(BLOB)と外部ラージ・オブジェクト(BFILE)に格納されているイメージ、オーディオおよびビデオ・データを管理するためのファンクションとプロシージャを含む4つのPL/SQLパッケージを提供します。

  • オーディオ・データ用のORD_AUDIO

  • 異機種間データ用のORD_DOC

  • イメージ・データ用のORD_IMAGE

  • ビデオ・データ用のORD_VIDEO

また、Oracle Multimediaは医用デバイスによって生成されるDICOMコンテンツをサポートするORD_DICOM PL/SQLパッケージを提供します。

開発者は、PL/SQLパッケージを使用して次のような一般的な操作をアプリケーションに含めることができます。

  • 縮小イメージの作成

  • イメージの切取り

  • Webフレンドリなフォーマットへのイメージの変換

  • XML文字列またはXMLと個々の属性としての、マルチメディア・データからの情報の抽出

  • オペレーティング・システム・ファイルからOracle Databaseへのマルチメディア・データのロード

  • Oracleデータベースからオペレーティング・システム・ファイルへのマルチメディア・データのエクスポート

Oracle Databaseは、オブジェクトに関連付けられたデータや、そこで実行できる操作(メソッド)など、オブジェクト型の定義もサポートします。複合オブジェクトには、デジタル化されたオーディオ、イメージ・ビデオと、Digital Imaging and Communications in Medicine (DICOM)フォーマットの医用デジタル画像およびその他のデータが含まれます。

Oracle Multimediaは、ORDSourceと呼ばれるオブジェクト・リレーショナル型のデータ・ソース情報を格納する4つのオブジェクト・リレーショナル型を提供します。

  • オーディオ・データ特性用のORDAudio

  • 異機種間データ特性用のORDDoc

  • イメージ・データ特性用のORDImage

  • ビデオ・データ特性用のORDVideo

また、Oracle Multimediaは医用デバイスによって生成されるDICOMコンテンツの特性用のORDDicomオブジェクト・リレーショナル型を提供します。

関連項目:

1.3 Oracle Multimediaの機能

Oracle Multimediaの機能には、Oracle Databaseによって管理されるマルチメディア・データの格納、検索、管理および操作があります。

マルチメディア・アプリケーションには、共通する要件と固有の要件があります。Oracle Multimediaは、共通のアプリケーション要件をサポートし、アプリケーション固有の要件を満たすために拡張することができます。Oracle Multimediaを使用することによって、マルチメディア・データを一般的な属性データと同様に簡単に処理できます。

Java、C++または従来の第三世代言語(3GL)で記述されたデータベース・アプリケーションの場合は、最新のクラス・ライブラリ・インタフェース、またはPL/SQLとOracle Call Interface(OCI)を使用して、Oracle Multimediaと対話できます。

Oracle Multimediaは、DTPイメージおよびストリーミング・オーディオやビデオ・フォーマットを含む一般的なファイル・フォーマットのデータベースへの格納をサポートします。Oracle Multimediaには、オーディオ、イメージ、ビデオまたはその他の異機種間メディアの列やオブジェクトを既存の表に追加し、マルチメディア・データを挿入したり検索する機能があります。このサポートによって、データベース設計者は、マルチメディア・データを使用して既存のデータベースを拡張したり、新しくエンドユーザー向けのマルチメディア・データベース・アプリケーションを作成することができます。Oracle Multimediaの開発者は、ここで説明する基本機能を使用して、専門的なマルチメディア・アプリケーションを作成できます。

Oracle Multimediaでは、JavaやC++のクラスと同様のPL/SQLおよびオブジェクト型を定義して、マルチメディア・データを記述および処理します。PL/SQLパッケージの名前は、ORD_AUDIO、ORD_DOC、ORD_IMAGEおよびORD_VIDEOです。オブジェクト型はORDAudio、ORDVideo、ORDImageおよびORDDocという名前です。メディア・データをBLOBまたはBFILEに直接格納するユーザーは、Oracle Multimedia PL/SQLパッケージを使用できます。メディア・データと属性を単一オブジェクト型にカプセル化するユーザーは、Oracle Multimediaオブジェクト型を使用できます。

Oracle Multimedia PL/SQLパッケージには、イメージ、オーディオ、ビデオ・データなどのメディア・データを管理するためのファンクションとプロシージャが含まれます。PL/SQLパッケージは、BLOBおよびBFILEに格納されたメディア・データを操作します。BLOBは、メディア・データをトランザクション制御下のデータベースに格納します。トランザクションの制御下で、BFILEはトランザクションで制御されていない外部ファイルに格納されるメディア・データにポインタを格納します。PL/SQLパッケージには、メディア・データからメタデータを抽出するためのプロシージャが含まれます。メタデータは、オブジェクト長、圧縮タイプ、フォーマットなどのメディア・データに関する情報です。getProperties( )やscale( )など、メディア・データに対する操作を実行するプロシージャも提供されています。

Oracle Multimediaオブジェクト型のインスタンスは、メタデータメディア・データを含む属性およびメソッドで構成されます。メディア・データは、実際のオーディオ、イメージ、ビデオまたはその他の異機種間メディア・データです。メタデータは、オブジェクト長、圧縮タイプ、フォーマットなどのデータに関する情報です。メソッドは、getContent( )、setProperties( )などのオブジェクトに対して実行可能なプロシージャです。

Oracle Multimediaオブジェクト型には、共通のメディア・データ格納モデルがあります。これらのオブジェクトのメディア・データ・コンポーネントは、トランザクション制御を受けるBLOBで、データベース内部に格納できます。メディア・データは、トランザクション制御を受けない、データベース外部に格納することも可能です。この場合、ポインタはトランザクション制御下のデータベース内部に格納され、メディア・データは次の場所に格納されます。

  • ファイル・ベースのラージ・オブジェクト(BFILE)

  • HTTPサーバーベースのURL

  • 専用メディア・データ・サーバーまたはその他のサーバーにあるユーザー定義のソース

メディア・データをデータベース外部に格納すると、消去可能メディアまたは読取り専用メディアにフラット・ファイルで保存される、既存または新規の大規模メディア・リポジトリに対する管理メカニズムが容易になります。このデータは、トランザクション制御のために、いつでもBLOBにインポートできます。

Oracle Multimediaオブジェクト型を使用する場合、メディア・メタデータはトランザクション制御下のデータベースに格納されます。メディア・データがデータベース内部または外部のどちらに格納されている場合でも、Oracle Multimediaはすべてのメディア・オブジェクト型のメタデータを管理し、オーディオ、イメージおよびビデオ用にメタデータを自動的に抽出できます。メディア・データをBLOBまたはBFILEに格納し、Oracle Multimedia PL/SQLパッケージを使用する場合、メタデータの管理方法を決定するのはアプリケーションの責任です。

メディア・メタデータには、次の属性が含まれます。

  • ソース・タイプ、位置、ソース名、データがローカル(データベース内)または外部のいずれに格納されているかなどの情報を含む、オーディオ、イメージおよびビデオ・データまたはその他の異機種間メディア・データの格納情報

  • オーディオ、イメージおよびビデオまたはその他の異機種間メディア・データのタイムスタンプの更新情報

  • オーディオおよびビデオ・データに関する説明

  • オーディオ、イメージおよびビデオまたはその他の異機種間メディア・データのフォーマット

  • オーディオ、イメージおよびビデオまたはその他の異機種間メディア・データのMIMEタイプ

  • オーディオ特性: エンコーディング・タイプ、チャネル数、サンプリング・レート、サンプル・サイズ、圧縮タイプおよび再生時間(継続時間)

  • イメージ特性: 幅と高さ、イメージのコンテンツ長、イメージのコンテンツ・フォーマットおよびイメージの圧縮形式

  • ビデオ特性: フレームの幅と高さ、フレームの解像度、フレーム・レート、再生時間(継続時間)、フレーム数、圧縮タイプ、色数およびビット・レート

  • 映画の監督や製作者などの、XMLで抽出されたメタデータ

メタデータ抽出プロシージャおよびオブジェクト・メソッドに加えて、イメージ操作プロシージャおよびオブジェクト・メソッドのセットが提供されます。イメージの場合、これにはフォーマット変換、ページ選択、量子化操作、圧縮、スケール、切取り、コピー、反転、ミラーリング、回転、シャープ化、ガンマ(明度)調整、イメージへのウォーターマークの追加、イメージからのメタデータの削除およびイメージへのメタデータの埋込みが含まれます。

Oracle Multimediaは、エンドユーザー向けのアプリケーションというより、様々なマルチメディア・アプリケーションの構成部品として機能します。マルチメディア・データを管理および処理するための、PL/SQLパッケージ・プロシージャと、オブジェクト型および対応するメソッドから構成されます。次に、Oracle Multimediaを活用したアプリケーションの例を示します。

  • デジタル・チェック画像のリポジトリ

  • DICOM医用デジタル画像を含む電子健康レコード

  • コールセンター(たとえば、911および製品のコールセンター)

  • 有形資産

  • 遠隔学習およびオンライン学習

  • 不動産マーケティング

  • 貯蔵されている写真の保存(たとえば、デジタル・アート・ギャラリーやプロの写真家)

  • 画像化したドキュメントの保存

  • 金融情報サービスの顧客情報

  • Webパブリッシング

  • オーディオWebストアおよびビデオWebストア

関連項目:

イメージ処理操作の詳細は、『Oracle Multimediaリファレンス』を参照してください

1.3.1 CDBのOracle Multimediaサポート

Oracle Database 12cリリース1 (12.1)では、マルチテナント・コンテナ・データベース(CDB)が導入されました。

CDBは単一の物理データベースであり、顧客が作成するプラガブル・データベース(PDB)をゼロ個、1個または多数含むことができます。PDBは、Oracle Netクライアントに非CDBとして表示されるスキーマ、スキーマ・オブジェクトおよび非スキーマ・オブジェクトのポータブル・コレクションです。非CDBは、PDBを含めることができない従来のOracleデータベースです。Oracle Multimediaは、CDBアーキテクチャと非CDBアーキテクチャの両方でサポートされます。

関連項目:

1.3.2 Oracle MultimediaのData Guardローリング・アップグレードのサポート

ローリング・アップグレード中は、プライマリ・データベースとロジカル・スタンバイ・データベースで異なるリリースのOracleデータベースを実行しながら、プライマリ・データベースの停止時間を最短に抑えて各リリースを一度に1つずつアップグレードできます。

BLOBおよびBFILEに格納されるメディア・データのサポートに加えて、論理スタンバイ・データベースはData Guard SQL Applyを使用したデータベース・ローリング・アップグレード中に次のOracle Multimediaデータ型をサポートします。

  • ORDImage

  • ORDSource

  • ORDDicom

  • ORDDataSource

関連項目:

1.4 オーディオの概念

この項では、デジタル・オーディオの概念、およびORD_AUDIO PL/SQLパッケージとORDAudioオブジェクト型を使用したオーディオ・アプリケーションの作成方法について説明します。

この項の内容は次のとおりです。

1.4.1 デジタル・オーディオ

ORD_AUDIO PL/SQLパッケージまたはORDAudioオブジェクト型を使用すると、オーディオ・データをデータベースで格納、検索および管理できます。

オーディオ制作は、オーディオ・レコーダ、マイクロフォンなどのオーディオ・ソース、デジタル・オーディオ、他の特殊オーディオ録音用デバイス、またはプログラム・アルゴリズムを使用して行うことができます。オーディオ録音用デバイスは、マイクロフォンや磁気メディアに録音されたサウンドなどのアナログ(連続)信号を受け取り、特定のオーディオ特性(フォーマット、エンコーディング・タイプ、チャネル数、サンプリング・レート、サンプル・サイズ、圧縮タイプ、再生時間など)を持つデジタル値に変換します。

1.4.2 オーディオのコンポーネント

デジタル・オーディオは、オーディオ・データ(デジタル・ビット)、およびオーディオ・データの情報や特性を示す属性で構成されます。

オーディオ・アプリケーションは、データベース表内のオーディオ・クリップの説明、録音日、制作者およびアーティストなどのアプリケーション固有の情報を、属性またはデータベース表の列に説明文を格納することによって、オーディオ・データと関連付ける場合があります。

オーディオ・データは、そのデジタル録音の方法によって、データ・フォーマット、エンコーディング・タイプ、圧縮タイプ、チャネル数、サンプリング・レート、サンプル・サイズおよび再生時間が異なります。Oracle Multimediaは、サポートしているすべてのデータ・フォーマットのオーディオ・データを格納および検索できます。Oracle Multimediaは、一般的で多様なオーディオ・フォーマットのオーディオ・データからメタデータを自動的に抽出します。Oracle Multimediaは、アプリケーション属性をXML形式で抽出することもできます。

数値やテキストなどの従来のコンピュータで使用するオブジェクトに比べると、デジタル・オーディオのサイズ(バイト数)は、大きくなる傾向があります。このため、複数のエンコーディング方法でオーディオ・データを圧縮し、ストレージ・デバイスやネットワークの負荷を削減します。

関連項目:

ORDAudioで属性およびその他のオーディオ機能を抽出および格納できる、サポートされるデータ・フォーマットのリストは、『Oracle Multimediaリファレンス』を参照してください

1.5 ORDDocまたは異機種間メディア・データの概念

この項では、異機種間メディア・データの概念、およびORD_DOC PL/SQLパッケージとORDDocオブジェクト型を使用したアプリケーションの作成方法について説明します。

この項の内容は次のとおりです。

1.5.1 デジタル異機種間メディア・データ

Oracle Multimediaは、データベースの異機種間メディア・データの格納、検索および管理機能を統合します。

ORD_DOC PL/SQLパッケージまたはORDDocオブジェクト型を使用して、オーディオ、イメージ、ビデオなどの異機種間メディア・データをデータベース列に格納できます。オーディオ、イメージ、テキストおよびビデオ・オブジェクトを別々の列に格納するかわりに、1つのBLOB、BFILEまたはORDDoc型の列を使用して、マルチメディアのすべての型を表現することができます。

1.5.2 異機種間メディア・データのコンポーネント

異機種間メディア・データのコンポーネントは、データ(デジタル・ビット)および異機種間メディア・データの情報や特性を示す属性で構成されます。

異機種間メディア・データには、そのメディア・データを生成するアプリケーションに応じて、異なるフォーマットを割り当てられます。Oracle Multimediaは、サポートしているすべてのデータ・フォーマットのメディア・データを格納および検索できます。BLOB、BFILEおよびORDDocデータ型は、異なる種類の異機種間メディア・データ(オーディオ、イメージ、ビデオ、その他の種類のメディア・データ)を同じ列に格納する必要があるアプリケーションで使用できるため、すべての異なる種類のメディア・データで共通のメタデータ索引を作成できます。この索引を使用すると、異種環境のタイプの異なるメディア・データを一括で検索できます。異なる種類の異機種間メディア・データがリレーショナル表内の別々の列に様々なオブジェクト型で格納されている場合は、この検索方法を使用できません。

ORDDocは、一般的で多様なオーディオ、イメージおよびビデオ・データ・フォーマットのデータから自動的にメタデータを抽出します。また、アプリケーション属性を抽出し、XML形式でオブジェクトのコメント属性に格納することもできます。ORDDocは拡張可能で、その他の異機種間メディア・データを認識およびサポートすることができます。

関連項目:

1.6 イメージの概念

この項では、デジタル・イメージの概念、およびORD_IMAGE PL/SQLパッケージとORDImageオブジェクト型を使用したイメージ・アプリケーションの作成方法について説明します。

この項の内容は次のとおりです。

1.6.1 デジタル・イメージ

ORD_IMAGE PL/SQLパッケージまたはORDImageオブジェクト型を使用すると、デジタル・イメージをデータベースで格納、検索および管理できます。

Oracle Multimediaは、実世界のオブジェクトや情景をバイナリ表現で格納した、2次元の静的デジタル・ラスター・イメージをサポートします。イメージは、ドキュメントや写真のスキャナ、ビデオ・キャプチャ装置に接続されたデジタル・カメラやビデオデッキなどのビデオ・ソース、その他の特殊イメージ・キャプチャ・デバイス、またはプログラム・アルゴリズムを使用して制作できます。キャプチャ・デバイスは、カメラのフィルムに映写した光などのアナログ(連続)信号を受け取り、ピクセルと呼ばれるデータの点で構成される2次元グリッド上のデジタル値に変換します。イメージのキャプチャおよび表示を行うデバイスは、アプリケーションから制御します。

1.6.2 イメージの構成要素

デジタル化されたイメージは、イメージ・データ(デジタル化されたビット)とそのイメージ・データを記述して文字化する属性で構成されます。

イメージ・アプリケーションは、被写体の名前、イメージの説明、撮影日、カメラマンなどのアプリケーション固有の情報を、属性またはデータベース表内の列に説明文を格納することによって、イメージ・データに関連付ける場合があります。

イメージ・データ(ピクセル)は、イメージのキャプチャ方法によって、様々な深度(各ピクセルのビット数)を表現でき、様々な方法で構成できます。イメージ・データの構成は、データ・フォーマットと呼ばれます。ORDImageは、どのようなデータ・フォーマットのイメージ・データでも格納および検索できます。ORDImageは、一般的で多様なデータ・フォーマットのイメージのプロパティを処理し、自動的に抽出することができます。さらに、一部の外部イメージ(ORDImageがネイティブにサポートしていないフォーマット)でもイメージ処理を部分的にサポートしています。

デジタル・イメージに必要な記憶領域は、数値やテキストなど、従来の属性データに比べて大きくなる傾向があります。様々な圧縮方法によってイメージを圧縮し、ストレージ・デバイスやネットワークの負荷を減らすことができます。可逆圧縮を利用してイメージを圧縮すると、元のイメージとビット単位で同一になります。非可逆圧縮を利用した場合、展開後のイメージは元のイメージと同一ではありませんが、その差はごくわずかです。可逆圧縮に比べ、非可逆圧縮は、通常、より高い圧縮率を実現します。

イメージの互換フォーマットには、イメージの構成や使用方法、データおよび圧縮方法が完全に記述されているため、異なるアプリケーションでイメージを作成、変換および使用することができます。多くの場合、互換フォーマットはディスク・ファイルとして格納されます。これは、ネットワーク上で連続的に変換されるため、プロトコルとみなされます。デジタル・イメージの世界には、多数のアプリケーション・サブドメインがあり、その中には、デジタル・イメージを作成し、使用する多数のアプリケーションがあります。ORDImageは、すべてのイメージ・データ・フォーマットの格納および検索と、多くのイメージ・データ・フォーマットの処理および属性抽出をサポートします。

関連項目:

Oracle Multimediaが属性およびその他のイメージ機能を処理、抽出および格納できる、サポートされるデータ・フォーマットのリストは、『Oracle Multimediaリファレンス』を参照してください

1.6.3 イメージ・メタデータ

Oracle Databaseは、Oracle Multimediaでイメージ・メタデータ機能を提供しています。メタデータは、データベースへの格納、索引付け、検索が可能で、Oracle Databaseの標準的なメカニズムを使用してアプリケーションからも利用可能にできます。

イメージ・メタデータ機能は、イメージ内のアプリケーション・メタデータを読取り(または抽出)および書込み(または埋込み)する機能を追加します。また、この機能は、イメージ・ファイルから分離するときにメタデータを表現する標準的な方法を採用します。

1.6.4 医用デジタル画像(非推奨)

Oracle Databaseには、Oracle Multimedia DICOMでの医用デジタル画像フォーマットおよびプロトコルのサポートが含まれます。

医用デジタル画像フォーマットおよびプロトコル・サポートは、次のOracle Multimedia DICOM機能から構成されます。

  • DICOMデータと関連するビジネス・データを同期化するためのデータベースでの医用デジタル画像データの格納および検索

  • Oracle Multimedia DICOMサービスへの完全なPL/SQLおよびオブジェクト・インタフェース

  • ユーザーが指定可能なXMLドキュメントに従ったDICOMメタデータの抽出

  • 関連付けられたリレーショナル・データと抽出されたメタデータを使用した問合せ

  • 縮小イメージ生成などのイメージ処理

  • 新しいDICOMオブジェクトの作成

  • 一連のユーザー指定の一致ルールに基づいた一致検証

  • 匿名に設定する一連の属性とそれらの属性を匿名に設定する方法を指定した、ユーザー定義のルールに基づくDICOMオブジェクトの匿名化

  • 新しいリリースのOracle Databaseをインストールせずに、サポートされているバージョンのDICOM規格など、実行時の動作を更新する機能

  • DICOMプロトコル・アダプタ用のDICOMデータベース・ネットワーク・コンポーネント

関連項目:

Oracle Multimedia DICOMの詳細は、『Oracle Multimedia DICOM開発者ガイド』を参照してください

1.6.5 メタデータの抽出

Oracle Multimediaは、メディア・ソースからフォーマット・メタデータを抽出する機能を提供します。

メタデータが抽出されて格納されたら、メタデータを索引付けして、メタデータに基づくメディア問合せを実行できます。

関連項目:

メタデータ抽出の詳細は、『Oracle Multimediaリファレンス』のsetProperties( )メソッドに関する項を参照してください

1.6.6 イメージ処理

Oracle Multimediaでは、複数のタイプのイメージ処理がサポートされます。

Oracle Multimediaイメージ処理のサポートには、フォーマットのトランスコーディング、切取りとスケール、縮小イメージの生成、ウォーターマークの適用などが含まれます。また、Oracle Multimediaは、宛先イメージのファイル・フォーマットがロー・ピクセル(RPIX)またはMicrosoft Windowsビットマップ(BMPF)である場合に、フォーマット特性を変更するための複数の演算子をサポートしています。

関連項目:

イメージ処理の詳細は、『Oracle Multimediaリファレンス』を参照してください

1.7 ビデオの概念

この項では、デジタル・ビデオの概念、およびORD_VIDEO PL/SQLパッケージとORDVideoオブジェクト型を使用したビデオ・アプリケーションの作成方法について説明します。

この項の内容は次のとおりです。

1.7.1 デジタル・ビデオ

ORD_VIDEO PL/SQLパッケージまたはORDVideoオブジェクト型を使用すると、ビデオ・データをデータベースで格納、検索および管理できます。

ビデオは、ビデオ・レコーダ、ビデオ・カメラ、デジタル・アニメーション・ビデオ、その他の特殊ビデオ録画用デバイス、またはプログラム・アルゴリズムを使用して制作します。ビデオ録画デバイスは、ビデオ・カメラから取得したビデオや磁気メディアに録画されたビデオなどのアナログ(連続)信号を受け取り、ビデオ・フォーマット、エンコーディング・タイプ、フレーム・レート、フレーム・サイズ(幅および高さ)、フレームの解像度、ビデオの長さ、圧縮タイプ、色数、ビット・レートなどの特定のビデオ特性を持つデジタル値に変換します。

1.7.2 ビデオの構成要素

デジタル化されたビデオは、ビデオ・データ(デジタル化されたビット)とそのビデオ・データを記述して文字化する属性で構成されます。

ビデオ・アプリケーションは、アプリケーション特有の情報(ビデオ・トレーニング・テープ、記録日、講師名、制作者名など)をビデオ・データの中に関連付ける場合があります。

ビデオ・データには、ビデオ・データのデジタル記録方法に応じて、異なるフォーマット、圧縮タイプ、フレーム・レート、フレーム・サイズ、フレーム解像度、再生時間、カラー数、ビット・レートを割り当てられます。Oracle Multimediaでは次のことが可能です。

  • 一般的で多様なビデオ・フォーマットのビデオ・データからメタデータを自動的に抽出できます。

  • また、アプリケーション属性を抽出し、XML形式でオブジェクトのコメント属性に格納することもできます。

  • 追加のビデオ・フォーマットを認識およびサポートします(これは拡張できるため)。

数値やテキストなどの従来のコンピュータで使用するオブジェクトに比べて、デジタル・ビデオのサイズ(バイト数)は大きくなる傾向があります。このため、いくつかのエンコーディング方法でビデオ・データを圧縮し、ストレージ・デバイスやネットワークの負荷を減らすことができます。

関連項目:

Oracle Multimediaが属性を抽出および格納できるサポート対象データ・フォーマットのリスト、およびその他のビデオ機能の詳細は、『Oracle Multimediaリファレンス』を参照してください

1.8 マルチメディア・データのロード

Oracleデータベースを使用すると、マルチメディア・データを最も効果的に管理できます。データベースの信頼性、スケーラビリティ、可用性およびデータ管理能力を活用するには、マルチメディア・データをデータベースにロードします。

次の製品を使用して、マルチメディア・データをOracleデータベースにバルク・ロードできます。

  • SQL*Loader

    SQL*Loaderは、外部のマルチメディア・ファイルから、BLOBまたはOracle Multimediaオブジェクト型の列を含むデータベースの表に、データ(この場合は、マルチメディア・データ(LOBデータ))をロードするOracleユーティリティです。

  • PL/SQL

    SQLを手続き型に拡張したPL/SQLは、オラクル社が提供する高度な第4世代プログラミング言語(4GL)です。BLOB、ファイル・システムおよびURLのメディア・データ・ソースからBLOBまたはOracle Multimediaオブジェクト型の列にマルチメディア・データをロードするPL/SQLプロシージャを記述できます。

SQL*Loaderを使用すると、データのロード操作を制御する制御ファイルを簡単に作成およびテストできるというメリットがあります。

PL/SQLスクリプトを使用してデータをロードすると、縮小イメージの生成またはプロパティの抽出を実行するためのデータのロード時にプロシージャまたはメソッドをコールできるというメリットがあります。

関連項目:

1.9 マルチメディアの格納および問合せ

メディア・データは、BLOBまたはBFILEに直接格納することも、Oracle Multimediaのオブジェクト型に格納することもできます。

BLOBおよびBFILEに格納されたメディアに対しても、Oracle Multimedia PL/SQL APIを使用してOracle Multimediaの機能を使用できます。このPL/SQL APIでは、開発者はBLOBおよびBFILEに格納されているメディア・データでローカル・ファイル・システムとデータベース間でのデータの移動、メディア・データのプロパティの解析と抽出、XMLTypeまたはXML形式のCLOBおよびオプションで個々のリレーショナル列でのこれらのプロパティの格納を実行できます。開発者は、既存のアプリケーション・スキーマに変更を行ったり、PL/SQL APIを利用するようにOracleオブジェクト型をインスタンス化する必要はありません。Oracle Multimedia PL/SQL APIを使用して、切取り、スケール、圧縮、フォーマット変換などのイメージ処理操作を実行することもできます。

ORDAudio、ORDVideo、ORDImageおよびORDDocのすべてのオブジェクト型には、ORDSource型の属性、およびマルチメディア・データ・ソースを操作するためのメソッドが含まれます。

注意:

ORDSourceメソッドは直接コールしないでください。かわりに、ORDSourceメソッドに対応するメディア・オブジェクトのラッパー・メソッドを起動してください。ここでは、独自のユーザー定義ソースを記述するユーザーを対象に説明します。

次の各項では、格納と問合せについて簡単に説明します。

関連項目:

オーディオ、異機種間、イメージ、ビデオのメディア用のOracle Multimedia PL/SQL APIとOracle Multimediaオブジェクト型およびメソッドに関する参照情報、またORDSourceオブジェクト型およびメソッドの詳細は、『Oracle Multimediaリファレンス』を参照してください

1.9.1 マルチメディア・データの格納

Oracle Multimediaでは、マルチメディア・データを、データベースの内部ソースとして、トランザクション制御を受けるBLOBとして格納できます。また、ローカル・ファイル・システム内のオペレーティング・システム固有のファイルに外部ソースとして、HTTPサーバー上のURLとして、またはメディア・サーバーなどの他のサーバー上のユーザー定義ソースとして格納されたデジタル・マルチメディア・データを外部参照することもできます。このような外部格納メカニズムは、既存のマルチメディア・データ・セットをデータベースと統合するためには役立ちますが、データベース内に格納されていないマルチメディア・データはトランザクション制御することできません。

BLOBは、領域が最適化され効率的なアクセスが可能になるような形でデータベース表領域に格納されます。ラージBLOBは、他の行データとインラインでは格納できません(4KB未満のBLOBはインラインで格納できます)。BLOBのサイズに応じて、ロケータは行に格納され、実際のBLOB (ブロック・サイズに応じて最大8TBから128TB)は他の表領域に格納されます。ロケータは、BLOB値の実際の場所へのポインタと考えることができます。BLOBを選択する場合は、値ではなくロケータを選択しますが、これは透過的に行われます。この設計の利点は、複数のBLOBロケータが単一行に存在できることです。たとえば、トレーニング・テープのショート・ビデオ・クリップ、コンテンツの簡単な説明を含むオーディオ録音、コースのシラバス、インストラクタの写真、各トレーニング・センターへの地図と案内のセットをすべて同じ行に格納できます。

BFILEは、データベースのトランザクション制御下にないため、ユーザーはデータベースを更新せずに外部ソースを変更できます。このため、BFILEロケータの非一貫性が発生します。

Oracle MultimediaのORDAudio、ORDDoc、ORDImageおよびORDVideoオブジェクト型は、これらのソース関連機能を実行するためにBLOBおよびBFILE上にラッパー・メソッドを提供します。

  • ローカル・ソースまたは外部ソースとしてのデータ・ソースの設定

  • オブジェクトの最終更新時刻の変更

  • 外部ソースの種類、場所およびデータ名に関する情報の設定

  • データベース内部または外部へのデータの転送

  • ローカル・データのコンテンツ(長さ、位置、BLOBへの操作など)に関する情報の取得、一時BLOBへのコンテンツの挿入、または一時BLOB内のコンテンツの削除

  • ソース・データへのアクセス(オープン、読取り、書込み、トリミング、クローズなど)

関連項目:

1.9.2 マルチメディア・データの問合せ

データベース内に格納されたマルチメディア・データは、表の様々な英数字列またはオブジェクト属性を使用して目的のデータを含む行を検索することによって、問合せおよび検索することができます。たとえば、Training表からコース名が「Oracleデータベースの概要」であるビデオ・クリップを選択できます。

マルチメディア・データは、抽出されたメタデータとその他のリレーショナル表の列で問い合せることができます。

1.10 マルチメディア・データへのアクセス

アプリケーションは、SQL、PL/SQL、OCIまたはJavaを使用してマルチメディア・データにアクセスし、操作します。

SQL、PL/SQLおよびOCIアプリケーションは、PL/SQLパッケージORD_AUDIO、ORD_DOC、ORD_IMAGEおよびORD_VIDEOにアクセスすることで、またはORDAudio、ORDDoc、ORDImageおよびORDVideoのオブジェクト・リレーショナル型を通じてマルチメディア・データを操作および変更できます

任意の層(クライアント、アプリケーション・サーバーまたはデータベース)のJavaアプリケーションは、Oracle Multimedia PL/SQLパッケージまたはオブジェクト・リレーショナル型にアクセスする匿名のPL/SQLコード・ブロックを使用して、データベースに格納されているオーディオ・データ、イメージ・データ、ビデオ・データまたは異機種間メディア・データをアクセス、操作および変更できます。