Oracle WebLogic Server の紹介

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WebLogic Server システム管理の概要

WebLogic Server のシステム管理には、WebLogic Server ドメインの作成、アプリケーションのデプロイ、開発環境からプロダクション環境へのドメインの移行、実行時システムのパフォーマンスのモニタと管理、問題の診断とトラブルシューティングなどのさまざまなタスクがあります (WebLogic Server のドメインとは、特定の目的のために設計された WebLogic Server サービスの集合のことです。たとえば、従業員ポータル用に 1 つのドメインを作成し、顧客へのビジネス サービス用に別のドメインを作成する、といった使い方ができます)。

WebLogic Server の管理システムは Java EE およびその他の標準に基づいているため、他のソフトウェアおよびハードウェア コンポーネントの管理によく使用されるシステムと統合できます。さらに、WebLogic Server には独自の標準に基づいた拡張可能のユーティリティも複数用意されています。また、API を使用してカスタム管理ユーティリティを作成することもできます。

以下の節に、お使いの開発環境またはプロダクション環境の WebLogic Server コンポーネントにおけるシステム管理の概要を示します。

Weblogic Server のインストールについては、『インストール ガイド』を参照してください。

 


管理タスクに応じた適切な技術の選択

表 2-1 に、一般的なシステム管理タスクと関連する技術を示します。

表 2-1 適切な管理技術の選択
実行するタスク
使用する技術
ドメインの作成
コンフィグレーション ウィザードを使用して、対象の環境で使用するドメインを手順に従って作成または拡張する。『コンフィグレーション ウィザードを使用した WebLogic ドメインの作成』を参照。
ドメインの作成を自動化するには、コマンドラインから実行する Jython ベースのスクリプト インタフェースである WebLogic Scripting Tool を使用する。『WebLogic Scripting Tool ガイド』の「WLST オフラインを使用したドメインの作成」を参照。
または、WebLogic Server のスキーマに準拠するドメイン コンフィグレーションの XML ファイルを作成する。『ドメインのコンフィグレーションについて』の「ドメイン コンフィグレーション ファイル」を参照。
開発環境からプロダクション環境へのドメインの移行
Domain Template Builder の pack コマンドで、ドメインのスナップショットを JAR ファイルにアーカイブ化する。そのアーカイブを unpack コマンドで展開し、必要な起動スクリプト、特定のセキュリティ、およびコンフィグレーション ファイルを作成する。『pack および unpack コマンドを使用したテンプレートとドメインの作成』を参照。
ドメインのコンフィグレーションにおけるトラッキングの変更
アクティブなドメインに対してコンフィグレーションを変更できる環境では、コンフィグレーション ファイルのバージョンごとのアーカイブが自動的に保持される。『ドメインのコンフィグレーションについて』の「コンフィグレーション ファイルのアーカイブ」を参照。
ドメインのコンフィグレーションの変更を示すリアルタイム通知を受け取るには、コンフィグレーション監査機能を有効にする。『WebLogic Server のセキュリティ』の「WebLogic 監査プロバイダのコンフィグレーション」を参照。
厳重に管理されるプロダクション環境では、実行時ドメインを読み取り専用になるようにコンフィグレーションする (『ドメインのコンフィグレーションについて』の「コンフィグレーションの変更の制限」を参照)。ステージング環境でテストして承認された変更を組み込む必要がある場合、読み取り専用の設定を変更できる。または、ステージング環境を変更してテストしてから、Web サーバを使用してプロダクション環境からステージング環境にリクエストを再ルーティングできる。
Web サーバへの接続のコンフィグレーション

Web サーバ プラグイン。『Web サーバ プラグインの使用』の「WebLogic Server における Web サーバ プラグインの使い方について」を参照。

データベースまたは他のシステムへの接続のコンフィグレーション
個々のアプリケーション内で、JDBC を使用して独自のデータ ソースやデータベース接続を定義したり、リソース アダプタを使用して外部システムに接続したりできる。そうしたアプリケーションをデプロイする際には、WebLogic Server によってデータ ソースと接続が作成される。以下を参照。
アプリケーション内に独自のデータ ソースまたは接続を定義していない場合、Administration Console または WebLogic Scripting Tool を使用して作成できる。Administration Console オンライン ヘルプまたは『WebLogic Scripting Tool ガイド』の「WebLogic Scripting Tool の使用」を参照。
サーバのライフ サイクルの管理
管理サーバおよび管理対象サーバをリモート コントロールするユーティリティとして、ノード マネージャがある。WebLogic Server とは独立して実行され、管理サーバおよび管理対象サーバの起動と停止ができる。ノード マネージャの使用は任意だが、高可用性が要求されるアプリケーションを WebLogic Server 環境でホストする場合に使用すると、ライフ サイクル上のメリットが増大する。『ノード マネージャ管理者ガイド』の「ノード マネージャを使用したサーバの制御」を参照。
ノード マネージャを使用せずに管理サーバまたは管理対象サーバを起動するには、WebLogic Server と一緒にインストールされる WebLogic Scripting Tool (WLST) またはスクリプトを使用する。『サーバの起動と停止の管理』の「サーバの起動と停止」を参照。
アクティブなドメインに対するサービスの変更または追加
WebLogic Server Administration Console に、アクティブなドメインのサービスを変更したり追加したりするためのグラフィカル ユーザ インタフェースが提供されている。Administration Console オンライン ヘルプを参照。
コマンドライン インタフェースで作業するには、対話モードで WebLogic Scripting Tool を使用する。『WebLogic Scripting Tool ガイド』の「WebLogic Scripting Tool の使用」を参照。
アプリケーション サーバのサービスおよびリソースのモニタ
EJB コンテナ、サーブレット コンテナ、JDBC データ ソースなどのサービスのパフォーマンスは、WebLogic Server Administration Console からモニタする。
ユーザのオペレーション センタで SNMP を使用している場合、定義した実行時イベントについて SNMP 通知を送信するようにできる。『WebLogic SNMP 管理ガイド』を参照。
アプリケーションのデプロイ
WebLogic Server Administration Console に用意されている Web ベースの一連のデプロイメント アシスタントを使用して、デプロイ手順を実行できる。Administration Console オンライン ヘルプを参照。
アプリケーションのデプロイ作業を自動化するには、WebLogic Scripting Tool を使用する。『WebLogic Scripting Tool ガイド』の「デプロイメント コマンド」を参照。デプロイメント API を使用して、アプリケーションをデプロイする Java プログラムを記述することもできる。『WebLogic デプロイメント プログラマーズ ガイド』を参照。
デプロイメント ユーティリティおよび API の詳細については、『WebLogic Server アプリケーションのデプロイメント』の「デプロイメント ツール」を参照。
アクティブなドメインでのアプリケーションの変更
デプロイされているアプリケーションのコンフィグレーションを変更するには、テキスト エディタまたは IDE を使用してデプロイメント記述子を変更する。続いて、アプリケーションを再デプロイするか、デプロイメント API を使用して変更後のデプロイメント記述子をアップロードし、そのデプロイメント記述子をアプリケーション コンテナに再読み込みさせる。
アプリケーション内のアクティビティのモニタ
モニタするデータ ポイントを決めてから、JMX を通じてそのデータをエクスポーズする 1 つまたは複数の Bean を装備する。『JMX による管理の容易なアプリケーションの開発』を参照。
または、WebLogic Server 診断サービスを利用して実行中のアプリケーションにインスツルメンテーション コードを挿入し、そのアプリケーションのメソッドまたはそのアプリケーションと関わるトランザクションをモニタする。この技術は、利用可能なモニタ用のメトリックを精査しても発見できない問題の原因を見つけるために用いる。アプリケーション内に問題があると判明した場合、JMX を使用してアプリケーションの状態の低下を示す属性を公開することで、その問題の再発を防止できる。『WebLogic 診断フレームワークのコンフィグレーションと使い方』を参照。
アプリケーションのパフォーマンスの最適化とサービス レベル アグリーメントの維持
ワーク マネージャにより、アプリケーションにおいてどのように作業に優先順位を付けるかをコンフィグレーションする。ユーザが定義したルールと実際の実行時パフォーマンスのモニタ結果に基づいて、アプリケーションのパフォーマンスが最適化され、サービス レベル アグリーメントが維持される。
『WebLogic Server 環境のコンフィグレーション』の「ワーク マネージャを使用したスケジューリング済み作業の最適化」を参照。
管理通信のコンフィグレーションおよび保護
管理ポートを有効にすることにより、ドメイン内で管理トラフィックとアプリケーション トラフィックを分離できる。プロダクション環境では、この 2 つのトラフィックを分離すると、同じネットワーク接続上に大量のアプリケーション トラフィックがある状態で重要な管理操作 (サーバの起動と停止、サーバのコンフィグレーションの変更、およびアプリケーションのデプロイ) が行われることがなくなる。
管理ポートでは SSL を使用した通信のみが受け入れられるため、管理要求が保護される。『WebLogic Server 環境のコンフィグレーション』の「管理ポートと管理チャネル」を参照。
ロギングおよびログ ファイルの表示のコンフィグレーション
WebLogic Server の多くの操作では、そのアクティビティのログが生成される。各サーバには、標準の HTTP アクセス ログの他に、独自のログがある。これらのログ ファイルをさまざま方法でコンフィグレーションし、使用して、サーバやアプリケーションの状態とアクティビティをモニタできる。
デフォルトでは、ログ ファイルへのメッセージのフィルタリングおよび記述には標準の JDK ロギング API が使用される。『ログ ファイルのコンフィグレーションとログ メッセージのフィルタ処理』の「WebLogic ロギング サービスについて」を参照。
または、ログ メッセージの配信に Jakarta Project Log4j API を使用するように WebLogic Server をコンフィグレーションすることもできる。『ログ ファイルのコンフィグレーションとログ メッセージのフィルタ処理』の「Log4j と Commons Logging API」を参照。

 


システム管理ツールおよび API の概要

WebLogic Server には、独自の標準に基づいた拡張可能なユーティリティが複数用意されています。これらのユーティリティを使用してドメインを作成、管理、およびモニタできます。また、WebLogic Server の管理 API を使用してカスタム管理ユーティリティを作成することもできます。

表 2-2 に、WebLogic Server に同梱されているユーティリティを示します。

表 2-2 管理ユーティリティ
ユーティリティ
説明
Administration Console
Administration Console は、管理サーバでホストされる Web アプリケーション。アクティブなドメインの管理とモニタに使用する。以下のような管理機能がある。
  • アクティブなドメインのコンフィグレーション
  • サーバの起動と停止
  • サーバの状態とパフォーマンスのモニタ
  • アプリケーションのパフォーマンスのモニタ
  • サーバ ログの表示
システム管理者は Administration Console を使用することにより、JMX API や基底の管理アーキテクチャについて理解していなくても、WebLogic Server のすべての管理タスクを簡単に実行できる。管理サーバでは、属性の変更内容を管理対象のドメインの config.xml ファイルに保持する。
以下を参照。
WebLogic Scripting Tool
WebLogic Scripting Tool (WLST) は、コマンドラインから実行するスクリプト インタフェース。アクティブまたは非アクティブな WebLogic Server ドメインの管理およびモニタに使用する。WLST スクリプト環境は、Java のスクリプト インタプリタである Jython をベースとしている。WebLogic のスクリプティング機能に加えて、ローカル変数、条件変数、フロー制御文などの一般的なインタプリタ言語機能も使用できる。WebLogic のスクリプト言語は、Jython の言語構文に従って拡張できる。http://www.jython.org を参照。
コンフィグレーション ウィザード
コンフィグレーション ウィザードでは、WebLogic Server ドメインの適切なディレクトリ構造、config.xml ファイル、およびドメイン内のサーバを起動するためのスクリプトを作成できる。このウィザードではドメインの作成にテンプレートを使用する。テンプレートをカスタマイズすれば、ユーザ独自のドメインを複製できる。
コンフィグレーション ウィザードは、既存の非アクティブなドメインに対してサービスを追加または削除するためにも使用できる。
コンフィグレーション ウィザードは、グラフィカル ユーザ インタフェース (GUI) を通じて実行することも、テキストベースのコマンドライン環境で実行することもできる。このコマンドライン環境をコンソール モードと呼ぶ。このモードを Administration Console と混同しないようにする。コンフィグレーション ウィザードでは、ユーザ定義のドメイン コンフィグレーション テンプレートを作成することもできる。
Configuration Template Builder
Configuration Template Builder を使用すると、独自のドメイン テンプレートを簡単に作成できる。たとえば開発プロジェクト全体に標準ドメインを定義および伝達したり、あるいはドメインとそこで実行されるように開発されたアプリケーションとを一緒に配布したりといったことが可能になる。Configuration Template Builder で作成したテンプレートは、使用する環境向けにカスタマイズされたドメインを作成する土台となるように、コンフィグレーション ウィザードの入力として使用される。『Domain Template Builder を使用したテンプレートの作成』を参照。
Apache Ant タスク
WebLogic Server に用意されている 2 つの Ant タスクは、開発環境で一般的なコンフィグレーション タスクを実行するのに役立つ。Ant とは、Make に似た Java ベースの構築ツールである。コンフィグレーション タスクでは、WebLogic Server インスタンスの起動と停止、WebLogic Server ドメインの作成とコンフィグレーションを行える。他の WebLogic Ant タスクと組み合わせると、カスタム ドメインでアプリケーションの実証やテストを行うための強力なビルド スクリプトを作成できる。
『WebLogic Server アプリケーションの開発』の「Ant タスクを使用した WebLogic Server ドメインのコンフィグレーションと使用」を参照。
SNMP エージェント
WebLogic Server には、Simple Network Management Protocol (SNMP) を使用してエンタープライズ全体の管理システムと通信する機能がある。WebLogic Server SNMP エージェントを使用すると、WebLogic Server の管理を SNMP に準拠した管理システムに統合し、複雑に分散したシステムのさまざまなソフトウェアとハードウェアのリソースをまとめて表示することができる。

表 2-3 に、独自の管理ユーティリティの作成に使用できる API を示します。

表 2-3 管理 API
API
説明
JMX
Java Management Extensions (JMX) は、ネットワーク上でリソースをモニタしたり管理したりするための Java EE ソリューション。JMX は SNMP および他の管理規格と同様に公開された仕様であり、一般的に用いられるモニタ用製品を扱うベンダの多くでサポートされている。
JMX API は、Administration Console、WebLogic Scripting Tool、および他の WebLogic Server ユーティリティで使用される。
Java EE 管理 API
Java EE 管理 API 群 (JSR-77) を使用すると、ソフトウェア開発者は、JDBC 接続プールやデプロイされているアプリケーションなどのリソースをそれ 1 つで検出して参照できる Java プログラムを Java EE Web アプリケーション サーバ上に作成できる。この API 群は Java EE の管理仕様の一部。Java EE の管理仕様では、すべての Java EE Web アプリケーション サーバは標準データ モデルでリソースを記述する必要がある。
デプロイメント API
WebLogic Server のデプロイメント API は、JSR-88 のデプロイメント仕様を実装および拡張するものである。Administration Console、wldeploy Ant タスクなどの WebLogic Server のすべてのデプロイメント ツールでは、ドメイン内のアプリケーションのコンフィグレーション、デプロイ、および再デプロイにこのデプロイメント API を使用する。デプロイメント API を使用して、ユーザ独自の WebLogic Server デプロイメント ツールを構築したり、WebLogic Server のコンフィグレーションおよびデプロイメント操作を JSR-88 対応の既存のツールと統合したりできる。
WebLogic 診断サービス API
WebLogic 診断サービスには、サーバの内部を可視化できる高度なモニタ機能に加えて診断データへの動的なアクセスと制御もできる、標準化された一連の API がある。このインタフェース群は、サーバのコード ベースの整合性を維持しつつ、将来のサード パーティ製ツールの強化と統合を容易にするために標準化されている。このサービスは、サーバ、サーバのスタック製品コンポーネント、対象とする操作、および主要なユーザである管理スタッフに適している。
ロギング API
デフォルトでは、ログ ファイルへのメッセージのフィルタリングおよび記述には標準の JDK ロギング API が使用される。『ログ ファイルのコンフィグレーションとログ メッセージのフィルタ処理』の「WebLogic ロギング サービスについて」を参照。
または、ログ メッセージの配信に Jakarta Project Log4j API を使用するように WebLogic Server をコンフィグレーションすることもできる。詳細については、『ログ ファイルのコンフィグレーションとログ メッセージのフィルタ処理』の「Log4j と Commons Logging API」を参照。


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