Oracle Data GuardとともにデプロイされたオンプレミスのOracle Databaseのパッチ適用およびメンテナンスには、Oracle Fleet Patching and Provisioning (FPP)を使用することをお薦めします。

Oracle Fleet Patching and Provisioningの概要

フリート・パッチ適用およびプロビジョニング(FPP)は、Oracle Real Application ClustersおよびOracle Data GuardとともにデプロイされたOracle Databaseの推奨メンテナンス方法です。

フリート・パッチ適用およびプロビジョニング(FPP)は、アップグレードおよびプロビジョニングのパッチ適用のための本格的な自動化エンジンです。中央Oracle FPPサーバーを使用して、単一の中央サーバーからデータベースおよびグリッド・インフラストラクチャのフリートを操作できるため、数千のデータベースに同時に簡単にパッチを適用できます。特定のデータ・センターに対して単一のOracle FPPサーバーをデプロイし、それを使用してそのデータ・センター内のフリート全体にパッチを適用できます。

次の機能があります

  • Oracle Database (Oracle RAC、Oracle RAC One Nodeおよび単一インスタンス)、Oracle Grid Infrastructure、Oracle RestartおよびOracle Exadataエンジニアド・システム(DBNode、ストレージ・セルおよびネットワーク)に対して、メンテナンス・パッチ適用およびソフトウェア更新を実行します。
  • Oracle DatabaseおよびOracle Grid Infrastructureへのソフトウェア・アップグレードを実行します。
  • 高度な機能を多数備えており、グローバルなフリート標準化および管理を簡素化された方法で実現できます。

Oracle Databaseリリース更新パッチについて

Oracleでは、リリース更新(RU)の形式で四半期ごとの更新を提供して、新機能のリリース、既存の機能のアップグレード、セキュリティの強化またはサポートされているソフトウェアでの問題の解決を行います。

Oracle Database 23ai以降、RUは次の2つの形式で提供されます。

  • 新しいソフトウェア・リリースのようにアウトオブプレースでインストールできるゴールド・イメージとして。
  • OPatchまたはOPatchAutoを使用してインプレースで適用できるバイナリ・パッチとして。

次のステップを使用して、アウトオブプレースOracle Databaseパッチを適用できます:

  1. RUをゴールド・イメージとしてダウンロードします。
  2. runInstaller -setupDBHomeAsを使用して、ソースOracleホームと同じOracleベースに、古いOracleホーム(ソース)と同じ新しいOracleホーム(ターゲット)を作成します。
  3. Oracle Databaseを古いOracleホームから新しいOracleホームに移動します。

データベースを新しいOracleホームに移動すると、すべてのデータベース・サービスが新しいホームから開始されます。

Oracle Real Application ClustersおよびOracle Data Guardのフリート・パッチ適用およびプロビジョニング

デプロイメントを容易にするために、Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)およびOracle Data Guardとともにデプロイされたデータベースのメンテナンスには、Oracle Fleet Patching and Provisioningを使用することをお薦めします。

Oracle Fleet Patching and Provisioning(FPP)は、Oracle DatabaseとOracle Exadataを念頭に、データベース開発組織によって一から構築されています。FPPでは当初から、一元的なゴールド・イメージ・アウトオブプレース・メンテナンス方式が採用されており、多用性と柔軟性に富むMAA準拠のパッチ適用を最新のOracle Database機能を利用して実現します。

フリート・パッチ適用およびプロビジョニングを使用したOracle Data Guardのデータベース・メンテナンスの開始

メンテナンスを実行するには、Oracle Fleet Patching and Provisioning (FPP)サーバーを使用して、推奨されるイメージベースのアウトオブプレース・パッチ適用を実行します。

Oracleでは、ソフトウェア・イメージの管理およびOracle Data GuardとともにデプロイされたOracle Databaseへのパッチ適用(イメージベースのアウトオブプレース・パッチ適用)に、Oracle Fleet Patching and Provisioning (FPP)サーバーを使用することをお薦めしています。パッチ適用プロセスによりOracle Real Application ClustersデータベースおよびOracle Data Guardは、既存のソフトウェア・ホームから、新しいソフトウェアが含まれるターゲット・ホームに移動します。

このトピックでは、ソフトウェア・メンテナンスで次のステップを完了する方法について説明します:

  1. Oracle DatabaseまたはOracle Data Guardソフトウェアの更新は必要ですか。
  2. Oracle DatabaseまたはOracle Data Guardソフトウェアをどのリリース更新(RU)に更新しますか。
  3. Oracle DatabaseまたはOracle Data Guardソフトウェアの更新はどのように実行しますか。

Oracle DatabaseまたはOracle Data Guardソフトウェアを更新する前に、My Oracle Supportのドキュメント「Creating Gold Image for Oracle Database and Grid Infrastructure Installations」(ドキュメントID 2915366.2)に記載されているステップを使用してゴールド・イメージを作成する必要があります。次の情報を提供する準備をします:

  • ソースOracleホームでopatch lsinventoryを実行した結果。この結果には、適用済のパッチとOracleホームに関する追加情報が表示されます。
  • 適用するターゲットRUパッチ番号(候補パッチの入力テキスト・ボックスに入力します)。
  • データベース・リリースのターゲットRUと一緒にインストールする推奨個別パッチ。たとえば、My Oracle Supportドキュメント「Oracle Database 19c Important Recommended One-off Patches」(ドキュメントID 555.1)に記載されているOracle Database 19c用のパッチなど。
  • 自社のアプリケーションまたはデプロイメント環境に必要なその他のパッチ(候補パッチ入力テキスト・ボックス内)。
  1. ソフトウェア更新の準備をするには、FPPゴールド・イメージをダウンロードし、ソースOracleホームにインポートします。

    これらのステップは次の順序で実行します:

    1. 作成したゴールド・イメージをFPPシステムにダウンロードします。
    2. FPPコマンドrhpctl importを使用して、ゴールド・イメージをFPPサーバーにインポートします。importコマンドでデータベース・イメージ(ORACLEDBSOFTWARE)またはグリッド・イメージ(ORACLEGISOFTWARE)を参照する場合の詳細は、『Oracle Fleet Patching and Provisioning管理者ガイド』の「rhpctl import image」を参照してください。
    3. FPPコマンド"rhpctl add workingcopy"を使用して、新しいターゲット・ソフトウェア・ホームをデプロイします。add workingcopyコマンドの詳細は、『Oracle Fleet Patching and Provisioning管理者ガイド』の「rhpctl add workingcopy」を参照してください。
  2. ソフトウェアの更新を適用するための事前チェックを実行します
    パッチ操作中に問題が発生するのを回避するため、FPPコマンドrhpctl move . . . -evalを使用して、データベースまたはOracle Grid Infrastructureを新しいソフトウェア・ホームに移動するための事前チェック評価を実行します。データベースまたはOracle Grid Infrastructureに対するmove . . . -evalコマンド・オプションの詳細は、『Oracle Fleet Patching and Provisioning管理者ガイド』「rhpctl move database」または「rhpctl move gihome」を参照してください。
  3. RU更新を適用し、データベースまたはOracle Grid Infrastructureを新しいホームに移動します。
    FPPコマンドrhpctl moveを使用して、データベースまたはOracle Grid Infrastructureを新しいソフトウェア・ホームに移動します。データベースまたはOracle Grid Infrastructureに対するmoveコマンド・オプションの詳細は、『Oracle Fleet Patching and Provisioning管理者ガイド』「rhpctl move database」または「rhpctl move gihome」を参照してください。
  4. ソフトウェアの移動操作が正常に完了し、新しいターゲットのOracleホームまたはグリッド・ホームでデータベースまたはOracle Grid Infrastructureの機能を確認したら、FPPコマンドrhpctl delete workingcopyを使用して、使用しないソース・ソフトウェア・ホームを削除します。delete workingcopyコマンドの詳細は、『Oracle Fleet Patching and Provisioning管理者ガイド』の「rhpctl delete workingcopy」を参照してください。

    注意:

    新しいターゲット・ホームに再配置されたデータベースまたはOracle Grid Infrastructureの機能を確認したうえで、ソースOracleホームを削除してください。

手動モードによるゴールド・イメージを使用したOracle Databaseメンテナンス

ゴールド・イメージを使用した定期的なデータベース・メンテナンスの実行に使用できる手動のオプションについて説明します。

データベース・メンテナンス用のゴールド・イメージの作成

フリート・パッチ適用およびプロビジョニングを使用するか、手動パッチ適用を使用して、データベース・メンテナンス用のゴールド・イメージを取得する方法について説明します。

Oracleでは、データベース・メンテナンス・プランの一部としてゴールド・イメージ・リリース更新(RU)を使用することをお薦めしています。ゴールド・イメージは、より安定した標準化された環境を促進し、すべての重要な修正を含む単一のインストール可能なソフトウェア・イメージを提供することで、メンテナンス・プロセスを簡素化します。

例1-1 ゴールド・イメージの取得方法

ゴールド・イメージは、次の方法で取得できます:

ゴールド・イメージを取得したら、フリート・パッチ適用およびプロビジョニングを使用するか、データベース設定ウィザードを使用してゴールド・イメージをデプロイします。

イメージを作成するための設定ウィザードのインストール・オプション

Oracle DatabaseまたはOracle Grid Infrastructureのインストール用の設定ウィザードで使用するゴールド・イメージ作成オプション。

オプション

イメージベースのインストールでは、設定ウィザードrunInstallerおよびgridSetup.shをそれぞれ実行して、Oracle DatabaseのインストールまたはOracle Grid Infrastructureのインストールを開始できます。どちらのウィザードにも、次のイメージ作成オプションが用意されています。

表1-1 設定ウィザードのイメージ作成オプション

オプション 説明

-createGoldImage

現在のOracleホームからゴールド・イメージを作成します。

-destinationLocation

ゴールド・イメージが作成される完全パスまたは場所を指定します。

-exclFiles

新しく作成されるゴールド・イメージから除外するファイルの完全パスを指定します。

—help

使用可能なすべてのオプションのヘルプを表示します。

例:

./runInstaller -createGoldImage -destinationLocation /tmp/my_db_images -exclFiles /u01/app/oracle/product/23.0.0/dbhome_1/relnotes
./gridSetup.sh -createGoldImage -destinationLocation /tmp/my_grid_images -exclFiles /u01/app/oracle/product/23.0.0/dbhome_1/relnotes

説明:

/tmp/my_db_imagesは、イメージのzipファイルが作成される一時ファイルの場所です。

/tmp/my_grid_imagesは、イメージのzipファイルが作成される一時ファイルの場所です。

/u01/app/oracle/product/23.0.0/dbhome_1/relnotesは、新しく作成されるゴールド・イメージから除外するファイルです。

パッチの競合の解決

ゴールド・イメージのパッチ・メンテナンスを使用しない場合、他のプロアクティブなメンテナンス方法(カスタム・ゴールド・イメージなど)で使用された個別パッチが原因で、パッチ競合が発生する可能性があります。

ノート:

Oracleでは、データベースのメンテナンスに四半期ゴールド・イメージのデプロイメント方法のいずれかを使用することをお薦めしています。ゴールド・イメージのデプロイでは、パッチの競合解消およびマージがゴールド・イメージ作成の一部として含まれます。カスタム・ゴールド・イメージには、この最適化はありません。

四半期プロアクティブ・パッチ(四半期Exadataパッチ、RUおよびMRP)の場合、競合する既存のパッチに対して新しい個別パッチが予防的に生成されます。新しい個別パッチは通常、プロアクティブ・パッチと同時にリリースされます。

パッチ競合の解決の詳細は、パッチ競合に関するMy Oracle Supportノートを参照してください。

Oracle DatabaseおよびOracle GoldenGateへのパッチ適用

Oracle DatabaseとともにOracle GoldenGateを使用する場合は、Oracle GoldenGateプロセスが停止していることを確認してから、データベースにパッチを適用する必要があります。

Oracle GoldenGateを使用している状況でOracle Databaseにパッチを適用する場合は、Oracle GoldenGateプロセスを無効にしてから、データベースへのパッチ適用を開始してください。これは、パッチおよびアップグレードによりRDBMS内部表およびビューが変更され、それらをコールするストアド・プロシージャが無効になることがあるためです。依存オブジェクトもすべて無効になります。

ドキュメントのアクセシビリティについて

Oracleサポート・サービスへのアクセス

Oracle RACまたはOracle Grid InfrastructureのRU更新のロールバック

フリート・パッチ適用およびプロビジョニングで実行されたRUパッチ更新をロールバックするには、データベースまたはインフラストラクチャを古いOracleホームに移動します。

RU更新を元に戻すには、フリート・パッチ適用およびプロビジョニング(FPP)コマンドrhpctl moveを使用して、Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)データベースまたはOracle Grid Infrastructureを古いソフトウェア・ホームに移動します。rhpctl moveを使用して更新を元に戻す場合は、sourcehomeが新しいリリース・ソフトウェア・ホームとなり、desthomeが古いリリース・ソフトウェア・ホームとなるように、sourcehomeおよびdesthomeオプションを変更します。

例1-2 Oracle Grid Infrastructureの更新のロールバック

この例では、Oracle Grid InfrastructureのRUがロールバックされます。ここで、gi_homeはソース・グリッド・ホーム、dest_pathはターゲット・グリッド・ホームです:

rhpctl move gihome -sourcehome dest_path -desthome gi_home

例1-3 Oracle RACホームのロールバック

この例では、Oracle RACデータベースのRUがロールバックされます。sourcehomeはソースOracle RACホーム、dest_pathはターゲットOracle RACホーム、orclesはデータベース名です。

rhpctl move database -sourcehome dest_path -desthome source_home -dbname orcles