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Oracle® Solaris 11.3 での IP サービス品質の管理

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更新: 2015 年 10 月
 
 

IPQoS 対応ネットワークでのトラフィック転送

このセクションでは、IPQoS 対応ネットワークでのパケット転送に関係するいくつかの要素について簡単に説明します。IPQoS 対応システムは、着信先としてそのシステムの IP アドレスを持つ、ネットワークストリーム上のパケットを処理します。そして、IPQoS システムの QoS ポリシーをパケットに適用して、差別化サービスを確立します。

DS コードポイント

DS コードポイント (DSCP) は、マークされたパケットに対して Diffserv 対応システムが実行するアクションをパケットヘッダーに定義します。Diffserv アーキテクチャーは、使用する IPQoS 対応システムと Diffserv ルーターに対して一連の DS コードポイントを定義します。Diffserv アーキテクチャーでは、DSCP に対応する転送動作も定義します。IPQoS 対応システムは、パケットヘッダーにある DS フィールドの優先度ビットに DSCP を付けます。DSCP 値を持つパケットを受信すると、ルーターは、その DSCP と関連付けられた転送動作を実行します。次にパケットはネットワーク上に送出されます。


注 -  dlcosmk マーカーは、DSCP を使用しません。代わりに、dlcosmk は Ethernet フレームヘッダーに CoS 値を付加します。VLAN デバイスを使用するネットワークで IPQoS を構成する予定の場合は、マーカーモジュールを参照してください。

ホップ単位動作

Diffserv 用語では、DSCP に割り当てられる転送動作をホップ単位動作 (Per-Hop Behavior、PHB) と呼びます。PHB は、Diffserv 対応システム上で、マークされたパケットの転送がほかのトラフィックに比べて優先される度合いを定義します。この優先度によって、IPQoS 対応システムまたは Diffserv ルーターが、マークされたパケットを転送するかドロップするかが最終的に決まります。パケットが転送された場合、パケットがその着信先への途中で通過する各 Diffserv ルーターは、別の Diffserv システムが DSCP を変更していないかぎり、同じ PHB をそのパケットに適用します。PHB の詳細については、パケット転送での dscpmk マーカーの使用を参照してください。

PHB の目的は、指定された量のネットワークリソースを連続したネットワーク上のトラフィッククラスに提供することです。QoS ポリシーで、トラフィックフローが IPQoS 対応システムを離れたときのトラフィッククラスの優先順位を示す DSCP を定義します。優先度は、高い優先度 (ドロップ率が低い) から低い優先度 (ドロップ率が高い) の範囲になります。

たとえば、QoS ポリシーでは、ドロップ率が低い優先度の PHB をすべての Diffserv 対応ルーターから与えられ、このクラスのパケットの帯域幅が保証される DSCP をトラフィックの 1 つのクラスに割り当てることができます。QoS ポリシーに別の DSCP を追加して、ほかのトラフィッククラスにさまざまなレベルの優先度を割り当てることもできます。優先度の低いパケットには、パケットの DSCP に示された優先順位に応じた帯域幅を、Diffserv システムが割り当てます。

IPQoS は、Diffserv アーキテクチャーに定義されている 2 種類の転送動作、完全優先転送 (EF) と相対的優先転送 (AF) をサポートしています。

  • 完全優先転送

    このホップ単位動作は、EF 関連の DSCP を持つトラフィッククラスの優先順位がいちばん高いことを前提とします。EF DSCP のトラフィックは、キューに格納されません。EF では、低損失、低遅延、低ジッターのサービスを提供します。EF の推奨 DSCP は、101110 です。101110 が付加されたパケットは、着信先への途中で Diffserv 対応ネットワークを通過するときに、ドロップ率の低い優先度を与えられます。EF DSCP は、プレミアム SLA を持つ顧客またはアプリケーションに優先順位を割り当てるときに使用してください。

  • 相対的優先転送

    このホップ単位動作には、パケットに割り当てられる転送クラスが 4 種類あります。すべての転送クラスは、低ドロップ、中ドロップ、および高ドロップの 3 つのドロップ優先度を提供します。詳細は、表 5 を参照してください。AF コードポイントには、顧客やアプリケーションにさまざまなレベルのサービスを割り当てる機能があります。

diffserv 環境でのパケット転送

次の図は、Diffserv 対応環境を部分的に備えた企業のイントラネット部分を示しています。このシナリオでは、ネットワーク 10.10.0.0 および 10.14.0.0 上のホストはすべて IPQoS に対応しており、ローカルルーターは Diffserv に対応しています。しかし、間にある 2 つのネットワークは Diffserv 用に構成されていません。

図 2  diffserv 対応ネットワークのホップ間のパケット転送

image:このフロー図については次で説明します。

この図のパケットのフローは、ホスト ipqos1 に起因するパケットの進行で始まります。手順は数回のホップでホスト ipqos2 に続きます。

  1. ipqos1 のユーザーが ftp コマンドを実行して、3 ホップ離れたところにあるホスト ipqos2 にアクセスしようとします。

  2. ipqos1 は、結果生じたパケットフローに QoS ポリシーを適用します。ipqos1 は、ftp トラフィックを正常に分類します。

    システム管理者は、ローカルネットワーク 10.10.0.0 に起因するすべての発信 ftp トラフィックに対するクラスを作成済みです。ftp クラスのトラフィックには、AF22 ホップ単位動作 (クラス 2、中程度のドロップ優先度) が割り当てられます。ftp クラスには、2Mb/秒のトラフィックフロー速度が構成されます。

  3. ipqos-1 は、ftp フローを測定し、フローが 2M ビット/秒の認定速度を超過していないかどうかを判断します。

  4. ipqos1 上のマーカーが、発信 ftp パケットの DS フィールドに 010100 DSCP (AF22 PHB に対応している) を付加します。

  5. ルーター diffrouter1 は、ftp パケットを受信します。次に、DSCP をチェックします。diffrouter1 が輻輳している場合、AF22 でマークされているパケットは振り落とされます。

  6. diffrouter1 のファイルで AF22 に対して構成されている PHB に合わせて、ftp トラフィックが次のホップに転送されます。

  7. ftp トラフィックがネットワーク 10.12.0.0 を通って genrouter に進み、genrouter は Diffserv に対応していません。その結果、トラフィックはベストエフォートの転送動作を与えられます。

  8. genrouterftp トラフィックをネットワーク 10.13.0.0 に渡し、diffrouter2 がそのトラフィックを受け取ります。

  9. diffrouter2 は Diffserv に対応しています。したがって、ルーターのポリシーで AF22 パケットに対して定義されている PHB に合わせて、ftp パケットをネットワークに転送します。

  10. ipqos2 は、ftp トラフィックを受信し、ipqos2 は、ipqos1 のユーザーにユーザー名とパスワードの入力を促します。