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Oracle® Solaris 11.3 での IP サービス品質の管理

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更新: 2015 年 10 月
 
 

IPQoS によるネットワーク効率の向上

IPQoS には、サービス品質の実装に伴ってネットワークパフォーマンスの効率を向上させるのに役立つ機能が含まれています。たとえば、企業や法人の場合は、効率的なネットワークを維持して、トラフィックに関する障害の発生を防ぐ必要があります。また、グループやアプリケーションが割り当てられた以上の帯域幅を消費しないようにする必要もあります。ISP や ASP は、顧客が料金分のレベルのネットワークサービスを確実に受けられるようにネットワークパフォーマンスを管理する必要があります。

超過したネットワークの症状には、データの損失やトラフィックの輻輳などがあります。どちらの症状も応答時間を遅らせます。以前は、システム管理者は、帯域幅、つまり、ネットワークリンクまたはデバイスが完全に使用された場合に転送できるデータの最大量を追加することで、ネットワークトラフィックの問題を処理していました。ただし、リンクごとのトラフィックのレベルには、大きなばらつきが見られがちでした。IPQoS を使用すると、既存のネットワーク上のトラフィックを管理しながら、ネットワークの拡大が必要かどうか、またどこに必要かを評価できます。

ネットワークトラフィックへの帯域幅の影響

サービス品質を顧客またはユーザーに提供するには、QoS ポリシーで、帯域幅の使用に優先順位を付ける必要があります。IPQoS のメータリングモジュールを使用すると、IPQoS 対応ホスト上の各トラフィッククラスへの帯域幅の割り当て量を測定および管理できます。

    ネットワークのトラフィックを効率的に管理する方法を判断する場合は、次の質問を考慮します。

  • ローカルネットワークのトラフィック問題の発生箇所はどこか

  • 帯域幅を最適利用するために行うべきことは何か

  • サイト内で最優先するべき、重要なアプリケーションはどれか

  • 輻輳が発生しやすいアプリケーションはどれか

  • 優先順位を下げてもよい、重要度の低いアプリケーションはどれか

サービスクラスを使ったトラフィックの優先順位付け

サービス品質を実現するには、ネットワークトラフィックを分析して、トラフィックを分類する大まかなグループ分けを決定します。次に、それぞれ特徴と優先順位を持つサービスクラスに各グループ分けを整理します。サービスのクラスは、組織の QoS ポリシーの基準となる基本カテゴリを形成し、制御する必要のあるトラフィックグループを表します。

ネットワークトラフィックを分析する場合は、次のガイドラインを考慮します。

  • 顧客にサービスレベル契約を提示しているか

    提示する場合は、顧客に提供する複数の SLA 間の相対的な優先レベルを評価します。保証されている優先レベルが異なる顧客に同じアプリケーションを提供する場合もあります。

    たとえば、企業が各顧客に対して Web サイトの運営サービスを提供するとします。この場合は、顧客の Web サイトごとに 1 つのクラスを定義する必要があります。SLA は、サービスレベルの 1 つとしてプレミアム Web サイトを提供するとします。別の SLA は、割引顧客に「ベストエフォート型」のパーソナル Web サイトを提供するとします。この場合は、Web サイトのクラスが異なるだけでなく、クラスに割り当てられる PHB も異なる可能性があります。

  • IPQoS システムでは、フロー制御を必要としそうなよく使われるアプリケーションを提供しているか

    よく使われるアプリケーションを提供しているために大量のトラフィックが生成されるサーバーの場合、IPQoS を有効にするとネットワークパフォーマンスが向上します。そのようなアプリケーションの例として、電子メール、ネットワークニュース、FTP などがあげられます。該当する場合は、サービスの種類ごとに着信トラフィックと発信トラフィックのクラスを別々に作成することを検討してください。たとえば、メールサーバーの QoS ポリシーに対して、mail-in クラスと mail-out クラスを作成します。

  • ネットワークでもっとも高い優先順位の転送動作を必要とする特定のアプリケーションを実行しているか

    優先順位がもっとも高い転送動作を必要とする重要なアプリケーションには、ルーターのキューでもっとも高い優先順位を与える必要があります。一般的な例は、ストリーミングビデオやストリーミングオーディオです。

    まず、優先順位の高いこれらのアプリケーションに対して、それぞれ着信クラスと発信クラスを定義します。次に、定義したクラスを、それらのアプリケーションを提供する IPQoS 対応システムと Diffserv ルーターの両方の QoS ポリシーに追加します。

  • 帯域幅を大量に消費するため、ネットワークで制御を必要とするトラフィックフローが発生したことがあるか

    netstatsnoop などのネットワークモニタリングユーティリティーを使用して、ネットワーク上で問題のあるトラフィックの種類を検出します。これまでに作成したクラスを確認し、問題のトラフィックカテゴリが未定義である場合は、このカテゴリに対して新しいクラスを作成します。問題のトラフィックカテゴリのクラスが定義済みである場合は、このトラフィックを制御するメーターの速度を定義します。

    問題のあるトラフィックのクラスは、ネットワーク上の IPQoS 対応システムごとに作成します。これによって、各 IPQoS システムは、問題のあるトラフィックを受け取った場合に、トラフィックフローをネットワークに送出する速度を制限できるようになります。また、Diffserv ルーターの QoS ポリシーにもこれらの問題のあるクラスを必ず定義してください。これによって、diffserv ルーターは、QoS ポリシーの構成に従って、問題のあるフローをキューに入れたりスケジュールしたりできるようになります。

  • 特定の種類のトラフィックに対して統計情報を取得する必要があるか

    SLA をざっと確認すると、どのタイプの顧客のトラフィックにアカウンティングが必要であるかがわかります。自分のサイトで SLA を提供している場合は、アカウンティングを必要とするトラフィックのクラスはおそらく作成済みです。また、クラスを定義して、モニタリングしているトラフィックフローの統計収集を可能にすることもできます。さらに、セキュリティー上の理由でアクセスを制限するトラフィックのクラスも作成できます。

たとえば、プロバイダがプラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズの各レベルのサービスをそれぞれ異なる利用料金で提供するとします。プラチナレベルの SLA では、プロバイダが顧客用に運営している Web サイト宛ての着信トラフィックに対して、もっとも高い優先順位を保証します。

企業では、次の例のようなサービスのクラスを作成できます。

  • 特定のサーバー宛ての電子メールや発信 FTP などの、よく使われるアプリケーション。アプリケーションごとに 1 つのクラスを構成できます。これらのアプリケーションは従業員によって絶えず使用されるため、QoS ポリシーで、電子メールと発信 FTP には少量の帯域幅と低い優先順位を割り当てます。

  • 一日 24 時間実行の必要がある注文入力データベース。企業にとってのデータベースアプリケーションの重要度に応じて、大量の帯域幅と高い優先順位を割り当てます。

  • 人事部門などの、極めて重要な業務または機密業務を行う部署。組織にとっての部署の重要度に応じて、割り当てる優先順位と帯域幅の大きさを決めます。

  • 企業の外部向け Web サイトへの呼び出し。このクラスには、適度な大きさの帯域幅と低い優先順位を割り当てる