Backup のメディア保持ポリシーを使って、バックアップされたデータが誤って上書きされない期間を指定します。この保持期間が経過すると、セーブセットの状態は復旧可能から再利用可能に変わります。ただし、セーブセットの状態は、そのセーブセットと、それに依存するすべてのセーブセットの保持ポリシーの期限が切れるまでは、再利用可能には変わりません。Backup は、依存しているセーブセットが同じメディアボリュームに格納されているのか、別のボリュームに格納されているのかにかかわらず、セーブセットの依存関係を追跡しています。セーブセットの保持ポリシーの期限が切れても、セーブセットのエントリがメディアデータベースから削除されるわけではありません。
ボリューム上のすべてのセーブセットの保持ポリシーの期限が切れて、ボリューム上のすべてのセーブセットの状態が復旧可能から再利用可能に変わると、Backup はそのストレージボリュームのモードを再利用可能に変更します。ボリュームには、それぞれ異なる保持ポリシーを持つ複数のバックアップセッションのセーブセットを格納できるので、ボリュームのモードが長期にわたって再利用可能に変わらない可能性があります。再利用可能という言葉は「再利用の対象になりうる」という意味です。ボリューム上のすべてのデータは、セーブセットに対して recover コマンドか、scanner コマンドを使用することによって復旧が可能な状態で残っています。メディアデータベースには、このような再利用可能なセーブセットのすべてのエントリが残っています。
状態が再利用可能に変わるのは、条件が満たされればボリュームの上書きが可能であるという消極的なマークに過ぎません。ボリュームをオートチェンジャに入れるか、スタンドアロンデバイスにマウントして、Devices リソースの自動メディア管理属性を有効にすると、そのボリュームは Backup によってラベルが付け直されて使用できるようになります。ボリュームのラベルが付け直されると、既存のデータは復旧不可能になり、上書きされたセーブセットのエントリはメディアデータベースから削除されます。この自動メディア管理機能の詳細は、「Backup でのラベルを付け直すストレージボリュームの選択方法」を参照してください。
ユーザーが Backup のボリュームインベントリからボリュームを手動で削除した場合も、セーブセットのエントリがメディアデータベースから削除されます。ただし、手動で削除されたボリューム上のデータは、scanner プログラムによる復旧が可能です。scanner プログラムは、クライアントファイルインデックスまたはメディアデータベース、あるいはこの両方のエントリを再作成するために必要な情報を取り出します。クライアントファイルインデックスのエントリが再作成された場合は、適切なアクセス権を持つユーザーが Backup の復旧プログラム (nwrecover) を使ってデータを復旧することができます。メディアデータベースの中のセーブセットのエントリが再作成された場合は、Backup 管理特権を持つユーザーがセーブセット復旧機能を使ってデータを復旧することができます。scanner プログラムの使用方法については、付録 B 「コマンド行リファレンス」 か、scanner プログラムのマニュアルページを参照してください。
図 5-3 に保持ポリシーの動作を示しています。この例では、バックアップサイクルは 1 週間に、保持ポリシーは 3 週間に設定されています。
1 週目のセーブセットのエントリは、ブラウズポリシーと保持ポリシーの期限が切れても、ボリュームのラベルが付け直されるまでは scanner プログラムを使って復旧できます。ボリューム上のすべてのセーブセットのエントリの状態が再利用可能に変わると、ボリュームモードはフルまたは追加可能から再利用可能に変わり、ボリュームのラベルが付け直されて再利用できるようになります。ボリュームのラベルが付け直されると、そのボリューム上のデータは復旧できなくなります。
ストレージボリュームのモードの詳細は、表 4-3 を参照してください。
スケジュールの詳細は 「スケジュールの構成」を、バックアップレベルの詳細は 「バックアップレベル」を参照してください。