サイレントインストールは、類似した設定を共有している複数のホストに、Sun JavaTM Enterprise System (Java ES) を対話処理なしでインストールする方法です。この章では、サイレントモードを使用して Java ES ソフトウェアをインストールする方法を説明します。
この章で説明する内容は、次のとおりです。
サイレントインストールを実行するには、最初に installer コマンドのサイレントインストール構文を使用して対話式インストールを実行します。対話セッションの間、インストーラへの応答がキャプチャーされ、名前と値のペアの集合として状態ファイルに記録されます。名前と値の各ペアとは、インストール処理における 1 つのプロンプトまたはフィールドを表します。この状態ファイルを入力として使用して、ほかのホストでインストーラを実行します。このプロセスにより、複数のホストに同一設定を配備することができます。
インストーラは、異なるバージョンの Java ES の状態ファイルを実行することはできません。つまり、Java ES 5 を使用して状態ファイルを作成した場合は、この状態ファイルを使用して Java ES 2005Q4 をインストールすることはできません。
次の表は、サイレントインストールでの主な作業の一覧です。右の列は、それぞれの説明へのリンクになっています。
表 5–1 サイレントインストールの作業
作業 |
説明の場所 |
---|---|
1. ホストが Java ES インストールの前提条件を満たしていることを確認します。 | |
2. 対話式インストールセッションを実行して、状態ファイルを生成します。 | |
- グラフィカルインストーラを使用する場合 | |
- テキストベースのインストーラを使用する場合 | |
3. 状態ファイルを別のホストにコピーして、そのホスト用に状態ファイルを編集します。 | |
4. (オプション) 状態ファイルが生成されたプラットフォームと異なるプラットフォーム上で実行するために、状態ファイルを編集します。 | |
5. 各ホスト上でサイレントインストールセッションを実行します。 |
状態ファイルを作成するには、インストーラの対話式セッションを実行する必要があります。インストーラが生成する状態ファイルを使用することで、リアルタイムの依存性チェックとエラーレポートを活用することができます。
状態ファイルは手動で作成しないでください。この方法では、インストール時、設定時、またはサーバーの起動時に問題が発生する可能性があります。
初期状態ファイルを作成するには、installer コマンドのパラメータを使用して対話式インストーラを実行し、インストーラにユーザーの回答を記録します。インストーラのページを進む過程で、回答がキャプチャーされ、状態ファイルが生成されます。製品コンポーネントのインストール順序はインストーラが決定するので、コンポーネントは任意の順序で指定できます。インストールが完了すると、指定された場所にある状態ファイルが利用可能になります。
このセッションでソフトウェアをインストールしない場合は、-no オプションを使用できます。
構文の例:
グラフィカルインタフェースを使用して状態ファイルを作成するには、次のようにします。
./installer -saveState statefile_path |
テキストベースのインタフェースを使用して状態ファイルを作成するには、次のようにします。
./installer -nodisplay -saveState statefile_path |
このセッションでソフトウェアをインストールせずに、グラフィカルインタフェースを使用して状態ファイルを作成するには、次のようにします。
./installer -no -saveState statefile_path |
installer コマンドの完全な構文については、付録 B 「インストールコマンド」を参照してください。
生成された状態ファイルの例については、付録 C 「状態ファイルの例」 を参照してください。
状態ファイルを作成したら、インストール先ホストに対してローカルパラメータが正しく設定されることを保証するために、生成された状態ファイルを編集する必要があります。これらのパラメータには、ホスト名、ドメイン名、IP アドレスなどの設定が含まれます。
サイレントインストール用に作成した状態ファイルの一部のパラメータには、管理者パスワードなどの機密データが指定されます。配備しても安全なように、ファイルが保護されていることを確認してください。
初期状態ファイルの生成元と異なるプラットフォームへのインストールを計画している場合、状態ファイルの ID の変更が必要になる場合があります。
この節で説明する内容は、次のとおりです。
状態ファイルを編集するときは、ここで示すガイドラインに従ってください。
値を編集する以外は、パラメータを変更しないでください。
値が指定されていない場合でも、パラメータを削除しないでください。
パラメータを追加しないでください。
パラメータの順序を変更しないでください。
元のタイプと形式に注意し、新しい値を入力するときはそれに従ってください。例:
古い値がホスト名の場合、ドメインの完全修飾名ではなく、ホスト名を入力します。
古い値の先頭にスラッシュ (/) が付いている場合、新しい値の先頭にも必ずスラッシュを付けます。
削除する値の代わりに、ほかの値を入力します。必須パラメータの場合、そのパラメータが削除されているとインストールまたは設定に失敗する可能性があります。
元の値の大文字/小文字の区別を維持します。
次の表は、インストールする製品コンポーネントやホストに応じて編集の必要があるパラメータを示しています。たとえば、状態ファイルを生成したホストが、インストール先のホストと同じドメインに含まれるか、などの条件が影響します。
各パラメータの説明については、『Sun Java Enterprise System 5 インストールリファレンス (UNIX 版)』の第 3 章「設定情報」にある表を参照してください。
表 5–2 サイレントインストールでよく編集される状態ファイルのパラメータ
構成要素 |
パラメータ名 |
---|---|
共通サーバー設定 |
CMN_HOST_NAME CMN_DOMAIN_NAME CMN_IPADDRESS CMN_ADMIN_USER CMN_ADMIN_PASSWORD CMN_SYSTEM_USER CMN_SYSTEM_GROUP |
Access Manager |
IS_WS_HOST_NAME IS_WS_INSTANCE_DIR (Web Server が Web コンテナの場合) CONSOLE_HOST IS_SERVER_HOST IS_DS_HOST IS_DS_HOSTNAME COOKIE_DOMAIN_LIST |
Application Server |
ASNA_ADMIN_HOST_NAME AS_WEB_SERVER_LOCATION AS_WEB_SERVER_PLUGIN_TYPE |
Directory Server |
CREATE_INSTANCE DSEE_INSTANCE_DIR DSEE_INSTANCE_PORT DSEEE_INSTANCE_SSL_PORT DSEE_DN_MANAGER DSEE_INSTANCE_USER DSEE_INSTANCE_GROUP DSEE_INSTANCE_PASSWORD DSEE_SUFFIX |
Portal Server |
PS_PORTALACCESS_URL 形式は //hostname.domainname :port+deploy_uri) PS_DEPLOY_INSTANCE |
Portal Server Secure Remote Access |
SRA_SERVER_DOMAIN SRA_GW_HOSTNAME SRA_GW_DOMAIN SRA_GW_IPADDRESS SRA_NLP_HOSTNAME SRA_NLP_DOMAIN SRA_NLP_IPADDRESS SRA_RWP_HOSTNAME SRA_RWP_DOMAIN SRA_RWP_IPADDRESS |
Web Server |
WS_ADMIN_HOST |
Web Proxy Server |
CMN_WPS_INSTALLDIR WPS_ADMIN_USER WPS_ADMIN_PASSWORD WPS_ADMIN_PORT WPS_ADMIN_RUNTIME_USER WPS_INSTANCE_RUNTIME_USER WPS_ISNTANCE_PORT WPS_INSTANCE_AUTO_START WPS_PROXY_DOMAIN |
状態ファイルは、状態ファイルが生成されたホストとプラットフォームの種類が同じであるホストでのみ実行できます。プラットフォームが異なる場合、状態ファイル ID を編集する必要があります。プラットフォーム別にタイプの異なる状態ファイルID が存在します。
この手順では、サイレントインストールを実行するプラットフォームでインストーラを実行することによって、状態ファイル ID を生成します。
次のコマンドは、コマンドを実行しているのと同じプラットフォームに対する ID を生成する場合にのみ正しく機能します。
root としてログインしていない場合は、スーパーユーザーになります。
インストーラが格納されているディレクトリに移動します。
cd installer-directory |
-id オプションを指定してインストーラコマンドを実行します。
./installer -id |
このコマンドにより、暗号化された ID が生成されます。
ID をコピーし、STATE_BEGIN パラメータおよび STATE_DONE パラメータの値として状態ファイルに貼り付けます。
次に、状態ファイル内の状態ファイル ID の例を示します。
[STATE_BEGIN Sun Java(tm) Enterprise System \ f31c7e86a64605bc5b9b629931a30b275a0eb447] . . . [STATE_DONE Sun Java(tm) Enterprise System \ f31c7e86a64605bc5b9b629931a30b275a0eb447] |
状態ファイルを生成したホストと同じオペレーティングシステムがインストールされているホストで、インストーラを実行するようにしてください。この操作を実行できない場合は、「プラットフォームに適した状態ファイル ID の作成」を参照してください。
インストール中に問題が生じる場合は、第 9 章「トラブルシューティング」を参照してください。
インストールしようとしている製品コンポーネントの数とタイプによっては、時間がかかる場合があります。
状態ファイルがホスト用に正しく編集されていることを確認します。
サイレントインストール用に作成した状態ファイルの一部のパラメータには、管理者パスワードなどの機密データが指定されます。配備しても安全なように、ファイルが保護されていることを確認してください。
root としてログインしていない場合は、スーパーユーザーになります。
インストーラユーティリティーが格納されているディレクトリに移動します。
cd installer-directory |
次の構文を使用してインストーラを実行します。
./installer -noconsole -state statefile |
ユーザーインタフェースを抑制し、インストーラをサイレントモードで起動します。
指定された状態ファイルをサイレントインストールの入力として使用します。
状態ファイルへの絶対または相対パス名を指定します。
インストールが完了したら、次のホストに進み、手順 1 〜 4 を繰り返します。
サイレントインストールを監視するには、次のログファイルディレクトリに移動します。
Solaris OS の場合: cd /var/sadm/install/logs
Linux および HP-UX の場合: cd /var/opt/sun/install/logs
現在のインストールのログファイルを探します。
最初に共有コンポーネントがインストールされ、次に製品コンポーネントがインストールされます。 timestamp 変数は、ログの作成時刻を表します。変数の形式はMMddhhmm です。
月を示す
日付を示す
時間を示す
分を示す
tail コマンドを使用して、ログに書き込まれるメッセージを監視します。
tail -f logfile-name |
tail プログラムを終了するには、Ctrl+C キーを押します。
インストーラによる Java ES のインストールが完了したなら、次の手順に進みます。
第 6 章「インストール後の設定の実行」には、インストール後の設定の手順が示されています。
「インストール後の確認」 には、ここで行ったインストール作業が正常に実行されたかを確認する手順が示されています。