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Oracle® Automatic Storage Management管理者ガイド
12cリリース1 (12.1)
B71290-10
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Oracle ACFSファイルシステムのセキュリティ保護

この項では、LinuxでのOracle ACFSファイルシステムのセキュリティを管理するための基本操作について説明します。

この項のシナリオでは、Oracle ACFSセキュリティを使用して、メンテナンス期間中にメンテナンス・ユーザーだけが診療履歴ファイルにアクセスできるようにする方法を示します。Oracle ACFS暗号化も同じファイルシステムで有効になっています。

このシナリオでは、ファイルシステム用に作成したボリューム上のディスク・グループのASMおよびADVMの互換性属性は11.2.0.3以上に設定されています。ディスク・グループの互換性の詳細は、ディスク・グループの互換性を参照してください。

この項の例では、様々なオペレーティング・システム・ユーザー、オペレーティング・システム・グループおよびディレクトリが存在する必要があります。

セキュリティを管理するための基本手順は次のとおりです。

  1. Oracle ACFSのセキュリティを初期化します。

    acfsutil sec initコマンドを実行して、セキュリティ資格証明用のストレージを構成し、オペレーティング・システム・ユーザーを最初のセキュリティ管理者およびオペレーティング・システム・セキュリティ・グループとして識別します。セキュリティ管理者はオペレーティング・システム・グループに属する必要があります。このコマンドは、他のセキュリティ・コマンドの前に実行する必要があり、実行するにはrootまたはWindowsのAdministrator権限が必要です。

    acfsutil sec initコマンドは、1度実行して各クラスタのOracle ACFSセキュリティを設定すれば、クラスタ内の任意のノードから実行できます。他のセキュリティ・コマンドもクラスタ内の任意のノードから実行できます。セキュリティ管理者はクラスタ内のすべてのOracle ACFSファイルシステムで共通です。

    たとえば、次のコマンドで1つのクラスタに対するセキュリティを初期化し、最初のセキュリティ管理者(medHistAdmin1)を作成します。

    # /sbin/acfsutil sec init -u medHistAdmin1 -g medHistAdminGrp
    

    medHistAdmin1セキュリティ管理者はオペレーティング・システム・グループmedHistAdminGrpに属する必要があります。このグループはセキュリティ管理者用のセキュリティ・グループとして識別されます。

    rootユーザーまたはWindows Administratorユーザーはこのコマンドを実行するときに、セキュリティ管理者にセキュリティ・パスワードを割り当てます。最初のセキュリティ管理者はacfsutil sec admin passwordコマンドを使用してパスワードを変更できます。有効なパスワードの形式は、acfsutil sec initを参照してください。acfsutil sec admin passwordの詳細は、「acfsutil sec admin password」を参照してください。

    すべてのacfsutil secコマンド(acfsutil sec init以外)はOracle ACFSセキュリティ管理者により実行する必要があり、管理者は各コマンドの実行時にセキュリティ管理者のパスワードを求められます。

    注意:

    セキュリティ管理者のパスワードを求められる場合、次のテキストが表示されます。Realm management password

    要求されるパスワードはOracle ACFSセキュリティ管理者のパスワードであり、ユーザーのオペレーティング・システム・パスワードではありません。

    セキュリティ管理者は、基礎となるオペレーティング・システムの権限があるかどうか、またはレルムの確認で許可されるかどうかにかかわらず、Oracle ACFSファイルシステムのすべてのディレクトリを参照できます。これにより、セキュリティ管理者はファイルがOracle ACFSセキュリティ・レルムでセキュリティ保護されている場合にその場所を確認することができます。ただし、セキュリティ管理者は、適切なオペレーティング・システムおよびセキュリティ・レルム権限がなければ、個別のファイルの内容を表示することはできません。

    詳細は、acfsutil sec initおよびacfsutil sec admin passwordを参照してください。

  2. 必要に応じて、セキュリティ管理者を追加します。

    最初のセキュリティ管理者は、acfsutil sec admin addコマンドを使用して、Oracle ACFSセキュリティを管理するセキュリティ管理者を追加できます。

    たとえば、新しいセキュリティ管理者medHistAdmin2を追加します。

    $ /sbin/acfsutil sec admin add medHistAdmin2
    

    medHistAdmin2ユーザーはacfsutil sec initコマンドでセキュリティ管理者グループとして識別されるオペレーティング・システム・グループ(medHistAdminGrp)に属している必要があります。

    medHistAdmin2セキュリティ管理者はacfsutil sec admin passwordコマンドを使用して、割り当てられた一時的なセキュリティ・パスワードを変更する必要があります。medHistAdmin2管理者は新しいセキュリティ管理者を追加できます。

    詳細は、acfsutil sec admin addおよびacfsutil sec admin passwordを参照してください。

  3. セキュリティ用にOracle ACFSファイルシステムを準備します。

    セキュリティ・レルムを追加する前に、acfsutil sec prepareをOracle ACFSファイルシステムで実行します。

    たとえば、Oracle ACFSセキュリティ用に、/acfsmounts/acfs1にマウントされたOracle ACFSファイルシステムを準備します。

    $ /sbin/acfsutil sec prepare -m /acfsmounts/acfs1
    

    デフォルトで、このコマンドの実行後に、セキュリティがファイルシステムで有効になります。acfsutil sec disableまたはacfsutil sec enableコマンドを使用して、セキュリティを明示的に無効または有効にできます。詳細は、acfsutil sec disableおよびacfsutil sec enableを参照してください。

    このコマンドは自動的にSYSTEM_BackupOperatorsなどのセキュリティ・レルムを作成します。管理者はSYSTEM_BackupOperatorsレルムにユーザーを追加できます。このレルムはOracle ACFSファイルシステムにレルム保護されたファイルのバックアップを作成できる権限をユーザーに与えます。

    詳細は、acfsutil sec prepareを参照してください。

  4. このファイルシステムの暗号化を有効にします。

    ファイルシステムの暗号化はオプションですが、このシナリオでは有効にします。

    1. まず、acfsutil encr initコマンドを実行して、暗号化を初期化し、暗号化キーに必要なストレージを作成します。このコマンドは暗号化を設定するクラスタごとに1度実行する必要があります。

      たとえば、次のコマンドはクラスタの暗号化を初期化します。

      # /sbin/acfsutil encr init
      

      このコマンドは、他の暗号化コマンドの前に実行する必要があり、実行するにはroot権限または管理者権限が必要です。詳細は、acfsutil encr initを参照してください。

    2. 次に、acfsutil encr setコマンドを実行してOracle ACFSファイルシステムの暗号化を設定します。

      たとえば、次のコマンドでは、/acfsmounts/acfs1ディレクトリにマウントされているファイルシステムの暗号化を設定します。

      # /sbin/acfsutil encr set -m /acfsmounts/acfs1/
      

      acfsutil encr setコマンドは、acfsutil encr initコマンドで構成済のキー・ストアに格納されるボリューム暗号化キーを透過的に生成します。このコマンドを実行するにはroot権限または管理者権限が必要です。

    詳細は、acfsutil encr initおよびacfsutil encr setを参照してください。

  5. ファイルシステムにセキュリティ・レルムを作成します。

    acfsutil sec realm createコマンドを実行してファイルシステムのセキュリティ・レルムを作成します。

    たとえば、medHistRealmという名前のセキュリティ・レルムを作成します。これには診療記録ファイルが含まれ、レルム内のすべてのファイルは暗号化されています。

    $ /sbin/acfsutil sec realm create medHistRealm -m /acfsmounts/acfs1/ 
                                                   -e on -a AES -k 128
    

    -eオプションは、レルム内のすべてのファイルがAESアルゴリズムで暗号化され、キーの長さが128ビットに設定されることを指定します。ファイルシステムは最初にacfsutil encr initおよびacfsutil encr setコマンドを使用して暗号化用に準備される必要があります。acfsutil sec realm create-kオプションには、acfsutil encr setコマンドで入力したのと同じ値を入力する必要はありません。

    詳細は、acfsutil sec realm createを参照してください。

  6. セキュリティ・ルールを作成します。

    acfsutil sec rule createコマンドを実行して、セキュリティ・レルムのファイルおよびディレクトリへのアクセスを決定するルールを作成します。

    たとえば、medMaintenanceユーザーがファイルのメンテナンスのために、午後10時から午前2時の間に診療記録にアクセスできるルールを作成します。また、午前8時から午前9時の間に操作を拒否し、medBrowseユーザーに対して操作を拒否できるルールも作成します。

    $ /sbin/acfsutil sec rule create medHistRule1a -m /acfsmounts/acfs1/
          -t time 22:00:00,02:00:00 -o ALLOW
    
    $ /sbin/acfsutil sec rule create medHistRule1b -m /acfsmounts/acfs1/
          -t username medMaintenance -o ALLOW
    
    $ /sbin/acfsutil sec rule create medHistRule1c -m /acfsmounts/acfs1/ 
          -t time 08:00:00,09:00:00 -o DENY
    
    $ /sbin/acfsutil sec rule create medHistRule1d -m /acfsmounts/acfs1/ 
          -t username medBrowse -o DENY
    

    acfsutil sec rule editコマンドを使用してルールを編集できます。

    詳細は、acfsutil sec rule createおよびacfsutil sec rule editを参照してください。

  7. セキュリティ・ルール・セットを作成し、ルール・セットにルールを追加します。

    acfsutil sec ruleset createコマンドを実行して、ルールを追加可能なルール・セットを作成します。

    たとえば、medHistRealmセキュリティ・レルムのファイルおよびディレクトリでの操作のルールが含まれるmedRuleSet1およびmedRuleSet2という名前のルール・セットを作成します。

    $ /sbin/acfsutil sec ruleset create medRuleSet1 -m /acfsmounts/acfs1/
    
    $ /sbin/acfsutil sec ruleset create medRuleSet2 -m /acfsmounts/acfs1/
    

    既存のルールをルール・セットに追加します。

    $ /sbin/acfsutil sec ruleset edit medRuleSet1 -m /acfsmounts/acfs1/ 
               -a medHistRule1a,medHistRule1b -o ALL_TRUE
    
    $ /sbin/acfsutil sec ruleset edit medRuleSet2 –m /acfsmounts/acfs1/ 
               -a medHistRule1c,medHistRule1d -o ALL_TRUE
    

    ALL_TRUEオプションはデフォルトのアクションですが、各ルール・セットの両方のルールがtrueでなければならないことを強調するためにここに追加しています。

    詳細は、acfsutil sec ruleset createおよびacfsutil sec ruleset editを参照してください。

  8. セキュリティ・レルムにオブジェクトを追加します。

    acfsutil sec realm addコマンドを実行して、コマンド・ルール、ルール・セットおよびファイルなどのオブジェクトをセキュリティ・レルムに追加します。たとえば、medRuleSet1ルール・セットとmedRuleSet2ルール・セット、および/acfsmounts/acfs1/medicalrecordsディレクトリ内のすべてのファイルを、medHistRealmに追加します。

    ルール・セットをレルムに追加するときには、DELETEFILE:medRuleSet1などのコマンド・ルールが使用されます。各コマンド・ルールには1つのルール・セットしか含めることはできません。コマンド・ルールのリストを表示するには、acfsutil sec info-cオプションを使用します。acfsutil sec infoを参照してください。

    次のacfsutil sec realm addコマンドによって、medMaintenanceユーザーは、午後10時から午前2時の間は診療記録を削除できますが、午前8時から午前9時の間はファイルへの書込みがブロックされます。

    $ /sbin/acfsutil sec realm add medHistRealm -m /acfsmounts/acfs1/ 
            -l DELETEFILE:medRuleSet1 
            -f -r /acfsmounts/acfs1/medicalrecords
    

    このacfsutil sec realm addコマンドによって、medBrowseユーザーは、診療記録をいつでも書込みまたは削除できなくなります。

    $ /sbin/acfsutil sec realm add medHistRealm -m /acfsmounts/acfs1/ 
            -l WRITE:medRuleSet2 
            -f -r /acfsmounts/acfs1/medicalrecords
    

    このacfsutil sec realm addコマンドによって、バックアップ・オペレータを、acfsutil sec prepareコマンドで自動的に作成されたSYSTEM_BackupOperatorsセキュリティ・レルムに追加します。

    $ /sbin/acfsutil sec realm add SYSTEM_BackupOperators -m /acfsmounts/acfs1/ 
            -G sysBackupGrp
    

    sysBackupGrpオペレーティング・システム・グループに属するユーザーは、Oracle ACFSファイルシステムのレルム保護されたファイルのバックアップを作成できるようになります。

    詳細は、acfsutil sec realm addおよびacfsutil sec realm deleteを参照してください。

  9. セキュリティ情報を表示します。

    acfsutil sec infoコマンドを実行してセキュリティ・レルムの情報を作成します。たとえば、medHistRealmレルムのセキュリティ情報を表示します。

    $ /sbin/acfsutil sec info -m /acfsmounts/acfs1/ –n medHistRealm
    

    ファイルまたはディレクトリが属するセキュリティ・レルムを表示するには、acfsutil sec info fileコマンドを実行します。次に例を示します。

    $ /sbin/acfsutil sec info file -m /acfsmounts/acfs1/
                                   /acfsmounts/acfs1/medicalrecords
    

    詳細は、acfsutil sec infoおよびacfsutil sec info fileを参照してください。

  10. セキュリティ・メタデータをバックアップとして保存します。

    acfsutil sec saveコマンドを実行して、ファイルシステムのセキュリティ・メタデータを保存します。

    たとえば、/acfsmounts/acfs1ファイルシステムのセキュリティ・メタデータをacfs1_backup.xmlファイルに保存します。

    $ /sbin/acfsutil sec save –m /acfsmounts/acfs1 
                              –p acfs1_backup.xml
    

    acfs1_backup.xmlセキュリティ・メタデータのバックアップ・ファイルが/acfsmounts/acfs1/.Security/backup/ディレクトリに保存されます。保存されたXMLファイルは、acfsutil sec loadコマンドを使用してロードできます。

    詳細は、acfsutil sec saveおよびacfsutil sec loadを参照してください。

acfsutil sec batchコマンドを使用して、バッチ・ファイルでいくつかのacfsutil secコマンドを実行できます。たとえば、acfsutil sec ruleおよびacfsutil sec rulesetコマンドのグループを含むバッチ・ファイルを作成できます。詳細は、acfsutil sec batchを参照してください。

Oracle ACFSセキュリティの監査および診断データがログ・ファイルに保存されます。ログ・ファイルを含む、Oracle ACFSセキュリティの詳細は、Oracle ACFSセキュリティを参照してください。