1 GeoRasterの概要および概念
GeoRasterはOracle Spatialの機能で、ラスター画像およびグリッド・データとその関連メタデータの格納、索引付け、問合せ、分析および配信を行います。
GeoRasterは、Oracle Spatialのデータ型および1つのオブジェクト・リレーショナル・スキーマを提供します。これらのデータ型およびスキーマ・オブジェクトを使用すると、地表面またはローカル座標系での位置を参照可能な多次元グリッド・レイヤーとデジタル・イメージを格納できます。データが地理参照される場合、イメージ上のセルに対する地表の場所を検索したり、地表の場所に対して、その場所に関連付けられたイメージ上のセルを検索できます。
GeoRasterは、リモート・センシング、写真測量、主題図作成などの、イメージの取得または作成を行う任意のテクノロジからのデータに対して使用できます。ロケーション・ベースのサービス、地理イメージのアーカイブ、環境の監視とアセスメント、地質工学と地質学的調査、天然資源管理、防衛、緊急時対応、遠隔通信、輸送、都市計画、自国の保安などの広範囲な応用分野に利用できます。
ノート:
- GeoRasterを使用するには、Oracle Spatialの主な概念、データ型、使用方法、演算子、プロシージャおよびファンクションを理解しておく必要があります。これらの詳細は、『Oracle Spatial開発者ガイド』を参照してください。
- また、ラスターとイメージの概念と用語、およびラスター・データを取得、作成または処理する方法も理解しておく必要があります。
- Oracle Spatialの最初のインストール後、デフォルトではGeoRaster機能は無効になっており、GeoRasterを使用するスキーマごとに有効にする必要があります。GeoRasterを有効にするには、スキーマに
CREATE TRIGGER
権限が必要です。情報および手順の詳細は、スキーマ・レベルでのGeoRasterの有効化を参照してください。
この章では、GeoRasterの中核的な概念と機能(GeoRasterのデータ・モデルと記憶方式、地理参照モデル、メタデータのサポート、リサンプリングのアルゴリズム、ピラミッド、圧縮、パラレル処理、ロードおよびエクスポートの機能、Java APIなど)について説明します。内容は次のとおりです。
- ベクトル・データおよびラスター・データ
地理的な特徴は、ベクトル形式、ラスター形式、またはその両方で表現できます。 - ラスター・データ・ソース
ラスター・データは、リモート・センシング、航空写真測量、地図作成法およびグローバル・ポジショニング・システムなどの様々な地理情報テクノロジによって収集され、使用されています。 - GeoRasterデータ・モデル
ラスター・データには、次の要素の一部またはすべてを含めることができます。 - GeoRasterの物理記憶域
GeoRasterは、メタデータおよびデータの物理記憶域を最適化します。 - バンド、レイヤーおよびメタデータ
GeoRasterでは、バンドとレイヤーの概念は異なります。 - 地理参照
GeoRaster空間参照システム(SRS)は、GeoRasterオブジェクトのメタデータ構成要素であり、地理参照に関連する情報が含まれます。地理参照によって、GeoRasterデータのセル座標と実際の地上座標(またはいくつかのローカル座標)が関連付けられます。地理参照を実行すると、地上座標がセル座標に割り当てられ、セル座標が地上座標に割り当てられます。 - リサンプリングおよび内挿
イメージおよびラスターの様々な変換と操作には、ピクセルまたはセルのリサンプリングと内挿が伴います。 - ピラミッド
ピラミッドは、ラスター・イメージまたはラスター・データを様々なサイズおよび解像度で表す、GeoRasterオブジェクトのサブオブジェクトです。 - ビットマップ・マスク
ビットマップ・マスクは深度が1ビットの特別な矩形ラスター・グリッドで、各ピクセルの値は0または1のいずれかです。これは、別のイメージ内にある変則的な形をした領域を定義するために使用します。1ビットは領域の内部を定義し、0ビットは領域の外部を定義します。 - NODATA値および値の範囲
NODATA値は、不明または無効な値を持つセルで使用されます。 - 圧縮と解凍
GeoRasterには、GeoRasterオブジェクトに必要な記憶領域を縮小するために、JPEG (JPEG-F)、JPEG 2000およびDEFLATEの3つのネイティブの圧縮タイプがあります。 - GeoRasterおよびデータベースの管理
GeoRasterでは、データベース管理タスクを実行できます - GeoRasterでのパラレル処理
GeoRasterには、2つのタイプのパラレル処理があります。 - GeoRasterでの操作の進行状況のレポート
一部のリソース処理集中型の操作では、GeoRasterによってその実行の進行状況を監視およびレポートできます。 - GeoRaster PL/SQL API
GeoRasterは、SDO_GEOR、SDO_GEOR_ADMIN、SDO_GEOR_AGGR、SDO_GEOR_RAおよびSDO_GEOR_UTLというPL/SQLパッケージを提供します。これらのパッケージには、GeoRasterのデータおよびメタデータを処理するサブプログラム(ファンクションとプロシージャ)が含まれています。 - GeoRaster Java API
Oracle Spatial GeoRasterのJava APIは、Oracle SpatialのGeoRaster機能で使用可能な機能をサポートするインタフェースおよびクラスで構成されます。 - GeoRaster REST API
GeoRaster REST APIは、ユーザーがWebクライアントを介してGeoRasterデータおよびGeoRaster機能にアクセスできるようにする、一連のエンドポイントからなります。 - GeoRasterとPython
python-oracledb Python拡張モジュールを使用してGeoRasterデータベースを操作できます。 - GeoRaster Spatial Web Services
Webサービスを使用すると、Oracle Spatial GeoRasterアプリケーションの開発者は、アプリケーション・ユーザーに対してラスター・データおよびメタデータをWeb経由で提供できます。GeoRasterは、Open Geospatial Consortium (OGC) Webサービス(特にWeb Coverage Services (WCS)およびWeb Map Services (WMS))をサポートします。 - Spatial StudioおよびMap Visualization ComponentでのGeoRasterサポート
Oracle Spatial StudioおよびSpatial Map Visualization Componentの両方でGeoRasterデータを操作できます。 - GeoRasterツール: ビューア、ローダー、エクスポータ
Oracle Spatialには、GeoRasterデータを表示、ロードおよびエクスポートするツールが含まれています。 - GeoRasterのPL/SQL、JavaおよびPythonサンプル・ファイル
GeoRasterには、一般的な操作を示す、複数のPL/SQL、JavaおよびPythonサンプル・コード・ファイルが含まれています。 - Spatialおよび関連機能のREADMEファイル
Oracle Spatialには、README.txt
ファイルが含まれています。