Oracle Warehouse Builderでは、様々なソースからデータにアクセスできます。データ・セット抽出のプレカーソルとして、最初にそのメタデータをインポートします。
この章の内容は次のとおりです。
データ・ウェアハウスのソース・システムは通常、トランザクション処理のアプリケーションです。たとえば、売上分析のデータ・ウェアハウスは通常、現行のオーダー・アクティビティを記録しているオーダー・エントリ・システムからデータを抽出します。抽出プロセスの設計には問題が発生する場合があります。ソース・システムが複雑で文書化が不完全な場合、抽出するデータの決定は困難です。また、通常ソース・システムは変更できず、そのパフォーマンスまたは可用性も調整されません。これらの問題を処理するには、まずメタデータをインポートしてください。
メタデータはデータ・セット内の指定のオブジェクトの内容を表します。たとえば、表のメタデータは各列のデータ型を表します。メタデータをWarehouse Builderにインポートしたら、トランザクション処理アプリケーションから独立して、メタデータに注釈を付け、抽出計画を設計できます。
サポートされているソースおよびターゲットのリストを確認して、データの抽出元のソースがWarehouse Builderでサポートされているかどうかを判断します。
まだ実行していない場合は、「Oracle Data Warehouseの作成」の説明に従って、ソースのロケーションとモジュールを作成します。
モジュールを右クリックし、「インポート」を選択します。
「インポート・メタデータ・ウィザード」のプロンプトに従います。
ウィザードにより、選択したソースのタイプに基づいて情報を求められます。
後続の手順
正常にメタデータをインポートしたら、ソースからデータを抽出し、データを変換後、ターゲット・スキーマへロードするようETLロジックを設計できます。
ソース・メタデータは変更する可能性があります。この場合、Warehouse Builderを使用して、メタデータで変更されたために影響を受け、無効になる可能性のあるETLロジックを最初に識別できます。第31章「メタデータの依存性管理」を参照してください。
Warehouse Builderに変更したメタデータを取り込むには、目的のモジュールを右クリックし、「インポート」を選択します。「Oracle Databaseからの定義の再インポート」で説明されているように、ユーザーがメタデータを再インポートするとWarehouse Builderで確認されます。
表、ファイル、アプリケーションのいずれからメタデータをインポートするかにかかわらず、一般的なプロセスは同じで、常にメタデータをモジュールにインポートします。
プロジェクト・エクスプローラで、モジュールを右クリックして「インポート」を選択します。「インポート・メタデータ・ウィザード」のプロンプトに従います。
例: フラット・ファイルからのデータのインポート
3つの異なるドライブとディレクトリにわたって、多数のフラット・ファイルが格納されているとします。接続エクスプローラで、3つのロケーションを作成しています。ここでは、プロジェクト・エクスプローラで、「ファイル」ノードを右クリックして「新規」を選択し、新規モジュールを作成します。3つの各ディレクトリにこの操作を繰り返します。3つの各モジュールに対して、「インポート」を選択します。ウィザードでは、1つ以上のファイルを各モジュールにインポートする方法が指示されます。
表5-1に、Warehouse Builder 10.2がアクセスできるデータ・ストレージ・システムおよびアプリケーションをリストします。また、接続エクスプローラに表示される各「ロケーション」ノードでサポートされているソースおよびターゲットもリストします。
表5-1 Warehouse Builder 10.2でサポートされているソースおよびターゲット
接続エクスプローラの「ロケーション」ノード | サポートされているソース | サポートされているターゲット |
---|---|---|
データベース/Oracle |
Oracle db 8.1、9.0、9.2、10.1、10.2 |
Oracle db 9.2、10.1、10.2 |
データベース/Oracle以外 |
Oracle異機種間サービスを介してアクセスできるすべてのデータベース。DB2、DRDA、Informix、SQL Server、SybaseおよびTeradataなど。ODBC Data Source管理者を介してアクセスできるすべてのデータ・ストア。ExcelおよびMS Accessなど。 |
データをスプレッドシートまたはサード・パーティのデータベースにロードするには、最初にカンマ区切りまたはXML形式のフラット・ファイルに配布します。 |
ファイル |
デリミタ付きの固定長フラット・ファイル。 |
カンマ区切りおよびXML形式のフラット・ファイル |
アプリケーション |
SAP R/3 3.x、4.x Oracle E-Business Suite PeopleSoft 8、9 |
none |
プロセス・フローおよびスケジュール/OEM |
なし |
OEMエージェント9.0、9.2 |
プロセス・フローおよびスケジュール/Oracle Workflow |
なし |
Oracle Workflow 2.6.2、2.6.3、2.6.4、11i |
プロセス・フローおよびスケジュール/コンカレント・マネージャ |
なし |
コンカレント・マネージャ11i |
ビジネス・インテリジェンス/BI Beans |
なし |
BI Beans 10.1 |
ビジネス・インテリジェンス/Discoverer |
なし |
Discoverer 10.1 |
データベース/トランスポータブル・モジュールのソース |
「大量データの移動」を参照。 |
N/A |
トランスポータブル・モジュールのターゲット |
N/A |
「大量データの移動」を参照。 |
Warehouse Builderでは、Oracle以外のシステムと通信するときに、Oracle Database異機種間サービスとこれを補完するエージェントが使用されます。異機種間サービスでは、Oracle以外のシステムがリモートのOracleデータベース・サーバーとして表示されます。エージェントとして使用できるのは、Oracle Transparent Gateway、またはOracle Databaseに含まれる汎用接続性エージェントです。
Transparent Gatewayエージェントは、システム固有のソースです。たとえば、Sybaseのデータ・ソースの場合、エージェントはSybase固有のTransparent Gatewayです。2つのシステム間の通信をサポートするには、このエージェントをインストールして構成する必要があります。
汎用接続性の目的は、低コストのデータ統合ソリューションを実現することです。データの転送は、クライアント・マシンにインストールされている特定のODBCドライバまたはOLE DBドライバのルールに従います。この場合、個別のTransparent Gatewayを購入する必要はなく、Oracleデータベース・サーバーに含まれている汎用接続性エージェントを使用できます。ただし、使用する汎用接続性エージェントの初期化ファイルを作成してカスタマイズする必要があります。
分散処理システムの詳細は、「Oracle Database分散データベース・システム」を参照してください。
Warehouse Builderでは、エンドツーエンドのビジネス・インテリジェンス・ソリューションが提供されます。このソリューションを使用すると、様々なデータ・ソースからのメタデータを統合できます。さらに、そのメタデータを設計してデータ・ウェアハウスに配布し、該当する情報を意思決定やビジネス・レポート用の分析ツールで使用できるようにします。
Warehouse Builderでは、DiscovererやBusiness Intelligence(BI)BeansなどのOracleビジネス・インテリジェンス・ツールと統合可能なビジネス・インテリジェンス(BI)オブジェクトが取り込まれます。Warehouse Builderでは、BIオブジェクトを定義でき、ビジネス・ビューおよびプレゼンテーション・テンプレートの定義を格納できます。次に、これらの定義をOracleビジネス・インテリジェンス・ツールに配布し、データ・ウェアハウスのライフサイクルを拡張できます。
このトピックには、次の項目が含まれます。
Warehouse Builderを使用すると、Oracle DiscovererやBI Beansなどの分析用ビジネス・インテリジェンス・ツールと統合されるビジネス・インテリジェンス(BI)オブジェクトを導出して定義できます。これらのBI定義を分析ツールに配布することで、リレーショナル・データ・ウェアハウスで非定型問合せを実行したり、多次元データ・マートでダッシュボードを定義できます。
Warehouse Builderで導出または定義したBIオブジェクトは、Oracle DiscovererおよびBI Beans内の対応するオブジェクトを表します。これらの定義は、Warehouse Builderプロジェクト・エクスプローラの「ビジネス・インテリジェンス」ノードの下に格納されます。
「ビジネス・インテリジェンス」ノードには、「ビジネス定義」および「ビジネス・プレゼンテーション」という2つの追加ノードが含まれます。最初にビジネス定義モジュールを作成して、Discovererに配布する定義を格納します。詳細は、「ビジネス定義について」を参照してください。ビジネス・プレゼンテーション・モジュールを作成して、BI Beansに配布するプレゼンテーション・テンプレートを格納することもできます。詳細は、「ビジネス・プレゼンテーションについて」を参照してください。
ビジネス・インテリジェンスとは、データを分析してビジネス上の問題に対応し、将来の傾向を予測する能力です。Oracle Discovererは、ユーザーがデータを分析して、ビジネス上の意思決定に必要な情報を取り出すことができるBIツールです。Discovererでは、複数のユーザーが、各自のデータ分析の結果を様々な形式(チャートやExcelスプレッドシートなど)で共有することもできます。
Discovererでは、End User Layer(EUL)メタデータ・ビューが使用されます。このビューによって、エンド・ユーザーはデータベースの複雑さや物理的な構造から解放されます。このEULは、分析要件やビジネス要件にあわせて調整でき、SQLを生成して問合せを作成できます。EULには、レポート作成に役立つ豊富なデフォルト設定が用意されています。
Warehouse Builderでは、このデータ分析を容易にするデータ構造をBIオブジェクトを使用して設計できます。Warehouse Builderのビジネス・インテリジェンス・オブジェクトには次の利点があります。
Oracle DiscovererおよびBI Beansとの完全でシームレスな統合
Warehouse Builderコントロール・センターを使用したメタデータ・オブジェクトの拡張配布制御
Warehouse Builderリポジトリの情報に基づいたDiscovererオブジェクトのエンドツーエンドの完全な系統および影響分析
スナップショット、多言語サポート、コマンドラインによる対話など、Warehouse Builderメタデータ管理機能の利用
Discovererとの統合は、ウェアハウス設計メタデータからビジネス定義を直接導出することで実現できます。かわりに、独自のカスタマイズ・ビジネス定義をWarehouse Builderで作成することもできます。
Warehouse Builderのビジネス定義オブジェクトは、Discoverer EULオブジェクトに相当します。既存の設計メタデータからビジネス定義を導出すると、Warehouse Builderでは、アイテム・フォルダに定義が編成されます。このアイテム・フォルダは、Discovererのフォルダに対応しています。アイテム・フォルダには結合および条件を定義でき、Warehouse Builderのウィザードやエディタを使用して、格納されているアイテムを選択できます。さらに、アイテム・フォルダ内のアイテムに対して、ドリル・パス、代替ソート順序、ディテール・ドリル、および値リストを定義できます。
Warehouse Builderでは、Discovererに登録するファンクションの定義も可能です。定義は、複数のアイテム・フォルダを参照するビジネスエリアを定義することによって、サブジェクト領域別にソートすることもできます。これらのビジネスエリアは、コントロール・センターを使用して、ビジネス定義とともにDiscoverer EULに配布できます。ビジネス定義の配布の詳細は、「ビジネス定義の配布」を参照してください。
Warehouse Builderにおけるビジネス定義の作成、導出および配布の詳細は、 第15章「ビジネス・インテリジェンス・オブジェクトの定義」を参照してください。
Oracle BI Beansとの統合は、ビジネス・プレゼンテーションまたはBIレポートの構造を作成し、ウェアハウス設計メタデータから直接配布することで実現できます。
プレゼンテーション・テンプレートは、Warehouse Builderプロジェクト・エクスプローラの「ビジネス・インテリジェンス」ノードの下に作成される「ビジネス・プレゼンテーション」モジュール内に格納されます。Warehouse Builderでは、単純なクロス集計およびグラフィカルなプレゼンテーション・テンプレートを定義でき、これは何度でも配布できます。
ビジネス・プレゼンテーションの作成の詳細は、第15章「ビジネス・インテリジェンス・オブジェクトの定義」を参照してください。