ブロック・ストレージ・データベース用の式の作成

この項の内容:

式および式計算の使用

式の作成プロセス

式の構文の理解

式での関数の使用

式での代替変数および環境変数の使用

パーティションでの式の使用

式の表示

この章の情報は、ブロック・ストレージ・データベースのみに適用され、集約ストレージ・データベースとは関係がありません。

関連項目:

この章のすべての例は、Sample.Basicデータベースに基づいています。

この章で参照される関数の詳細は、『Oracle Essbaseテクニカル・リファレンス』を参照してください。

式および式計算の使用

式により、データベース・アウトライン内のメンバー間の関係が計算されます。式を使用して、次のことができます:

  • データベース・アウトライン内のメンバーに式を適用。データベース計算の精度やパフォーマンスを慎重に制御する必要がない場合は、この方法を使用します。この方法では、式のサイズは64KB未満に制限されます。

    式での関数の使用を参照してください。

  • 計算スクリプトに式を挿入。データベース計算を慎重に制御する必要がある場合、この方法を使用します。

    計算スクリプトでの式の使用を参照してください。

図113は、Sample.Basicデータベースのメジャー次元を示しています。Margin %、Profit %およびProfit per Ounceメンバーは、それぞれに適用された式を使用して計算されます。

図 113. Margin %、Profit %およびProfit per Ounceの計算

この図は、この図の前のテキストで説明されている、式がMargin %、Profit %およびProfit per Ounceメンバーに割り当てられているアウトラインを示しています。

データベース・アウトライン内のメンバーに適用された式は、ユーザーが次のアクションを実行するときにEssbaseで計算されます:

計算スクリプト内の式は、Essbaseによって計算スクリプト内で検出された時点で計算されます。

動的計算済メンバーに式が関連付けられている場合、その式はユーザーがデータ値を要求した時点でEssbaseによって計算されます。計算スクリプト内では、動的計算済メンバーを計算したり、動的計算済メンバーを式の計算のターゲットに指定したりすることはできません。データ値の動的計算。を参照してください。

データベース・アウトラインや計算スクリプトに含まれる式内で動的計算済メンバーを使用すると、計算パフォーマンスが大幅に低下します。これは、Essbaseで動的計算を行うために通常の計算を中断するためです。

データベース・アウトラインに適用する式の中では、代替変数は使用できません。式での代替変数の使用を参照してください。

式の作成プロセス

アウトライン・エディタの「メンバーのプロパティ」ダイアログ・ボックス内のタブになっている式エディタを使用して、式を作成します。式テキスト領域に式を直接入力するか、式エディタのUI機能を使用して式を作成します。

式はプレーン・テキストです。必要に応じて、好みのテキスト・エディタで式を作成し、それを式エディタに貼り付けてもかまいません。

式を作成するには:

  1. アウトライン・エディタで、式を適用するメンバーを選択します。

  2. 式エディタを開きます。

    Oracle Essbase Administration Services Online Helpの「アウトライン内の式の作成および編集」を参照してください。

  3. 式テキストを入力します。

    式での関数の使用と、Oracle Essbase Administration Services Online Helpの「アウトライン内の式の作成および編集」を参照してください。

  4. 式の構文を検査します。

    式構文の検査を参照してください。

  5. 式を保存します。

    Oracle Essbase Administration Services Online Helpの「アウトライン内の式の作成および編集」を参照してください。

  6. アウトラインを保存します。

    Oracle Essbase Administration Services Online Helpの「アウトラインの保存」を参照してください。

式の構文の理解

メンバー式を作成するときは、次のルールに従います:

  • 式の各ステートメントは、セミコロン(;)で終わります。例:

                Margin % Sales;
             
  • 保存済のアウトライン・メンバー名のみを使用します。メンバー名として代替変数を使用する場合、代替変数値が保存済のアウトライン・メンバー名になっている必要があります。

  • メンバー名が次のいずれかの条件に該当する場合は、そのメンバー名を二重引用符(" ")で囲みます:

    二重引用符で囲む必要があるメンバー名の完全なリストは、計算スクリプト、レポート・スクリプト、式、フィルタ、代替変数値および環境変数値での命名規則を参照してください。

  • 式中の各IFステートメントは、ENDIFステートメントで終わります。

    たとえば、次の式には単純なIF...ENDIFステートメントが含まれます。この式をデータベース・アウトライン内のCommissionメンバーに適用できます:

                IF(Sales < 100)
       Commission = 0;
    ENDIF;
             

    別のIFステートメント内にネストされたIFステートメントを使用している場合には、各IFステートメントをENDIFステートメントで終了します。例:

                "Opening Inventory"
    (IF (@ISMBR(Budget))
       IF (@ISMBR(Jan))
       "Opening Inventory" = Jan;
       ELSE
       "Opening Inventory" = @PRIOR("Ending Inventory");
       ENDIF;
    ENDIF;)
             
  • ELSEステートメントまたはELSEIFステートメントは、ENDIFで終わらせる必要はありません。例:

                IF (@ISMBR(@DESCENDANTS(West)) OR @ISMBR(@DESCENDANTS(East)
       Marketing = Marketing * 1.5;
    ELSEIF(@ISMBR(@DESCENDANTS(South)))
       Marketing = Marketing * .9;
    ELSE Marketing = Marketing * 1.1;
    ENDIF;
             

    注:

    式中にELSEIF(1語)ではなくELSE IF(スペースあり)を使用した場合は、IFステートメントに対応するENDIFステートメントを記述する必要があります。

  • ENDIFステートメントをセミコロン(;)で終わらせる必要はありませんが、そのようにすることをお薦めします。

式を記述するとき、式エディタの構文チェッカを使用して構文を検査できます。式構文の検査を参照してください。

参照:

演算子

表47に、式で使用できる演算子のタイプをリストします:

表 47. 演算子タイプのリスト

演算子のタイプ

説明

数学

共通の算術演算を実行します。

たとえば、値の加算、減算、乗算または除算を実行できます。

算術演算を参照してください。

条件

条件テストの結果に基づいて式の実行フローを制御します。

たとえば、IFステートメントを使用して指定の条件をテストできます。

条件テストを参照してください。

次元間

特定のメンバー組合せのデータ値をポイントします。

たとえば、指定の地区の指定の製品の売上の値をポイントできます。

次元間にわたるメンバーの組合せの操作を参照してください。

#MISSING、ゼロおよびその他の値での演算子の使用方法は、『Oracle Essbaseテクニカル・リファレンス』のEssbaseの関数に関する項を参照してください。

次元名とメンバー名

式には、次元名とメンバー名を含めることができます。例:

  • Scenario

  • 100-10

  • Feb

定数値

メンバーに定数値を割り当てることができます。例:

      California = 120;
   

この式では、「California」は疎次元のメンバーで、120は定数値です。「California」のすべての存在可能なデータ・ブロックがEssbaseで自動的に作成され、すべてのデータ・セルに値120が割り当てられます。何千ものデータ・ブロックが作成される場合もあります。

疎次元で値が必要な交差のみに定数を割り当てるには、FIXステートメントを使用します。疎次元のメンバーに割り当てられた定数値を参照してください。

非定数値

疎次元のメンバーに定数以外の値を割り当てるときに、そのメンバーのデータ・ブロックが存在していない場合、Essbaseで「等式によるブロックの作成」を使用可能にするまでは、新しいブロックが作成されません。デフォルトでは、「等式によるブロックの作成」は無効になっています。

たとえば、計算を実行する前には存在していなかったWestのブロックを作成するには、次の式での「等式によるブロックの作成オプション」を有効にする必要があります:

      West = California + 120;
   

注:

データベースに対して「等式によるブロックの作成」が無効で、等式の左側または右側にデータ・ブロックが存在する場合、式によって結果が生成されます。

データベース・レベルで「等式によるブロックの作成」を使用可能にして、ブロックが常に生成されるようにできます。または、SET CREATEBLOCKONEQ ON | OFF計算コマンドを使用することで計算スクリプト内でブロック生成を制御できます。

  特定のデータベースに対するすべての計算スクリプトに対して、「等式によるブロックの作成」機能を使用可能にするには、次のツールを使用します:

ツール

トピック

場所

Administration Services

等式によるブロックの作成の有効化

Oracle Essbase Administration Services Online Help

MaxL

alter database

『Oracle Essbaseテクニカル・リファレンス』

ESSCMD

SETDBSTATE

『Oracle Essbaseテクニカル・リファレンス』

アプリケーションまたはデータベース・レベルで「等式によるブロックの作成」を使用可能にすると、不要なブロックが作成され、計算パフォーマンスに影響が出る場合があります。計算スクリプトを使用してブロックの作成を制御するには、SET CREATEBLOCKONEQ ON | OFF計算コマンドを使用します。疎次元のメンバーに割り当てられた非定数値を参照してください。

基本的な等式

式で算術演算を使用して、基本的な等式を作成できます。等式は、データベース・アウトラインまたは計算スクリプト内に含めることができます。

等式の構文は次のとおりです:

      member
       = 
      mathematical_operation
      ;
   

memberは、データベース・アウトラインのメンバー名です。mathematical_operationは、有効な算術演算です。

次の例では、Essbaseはデータベースのデータを循環しながら、Sales内の値からCOGS内の値を減算し、結果をMarginに配置します:

      Margin = Sales - COGS;
   

次の例は、データベース・アウトラインおよび計算スクリプトにおける等式の使用方法を示しています。アウトラインでは、次の式をMarkupメンバーに適用します:

      (Retail - Cost) % Retail;
   

次に、計算スクリプトで次の式を使用します:

      Markup = (Retail - Cost) % Retail;
   

Essbaseはデータベースのデータを循環しながら、Retail内の値からCost内の値を減算し、結果の値をRetailの値のパーセンテージとして計算し、その結果をMarkupに配置します。

式構文の検査

Essbaseには、式の構文エラーをユーザーに通知する、Essbaseサーバーベースの式構文検査機能が組み込まれています。たとえば、ユーザーが間違った関数名を入力すると、Essbaseによりそのことが通知されます。カスタム定義のマクロや関数名のリストに対して、不明な名前を検証できます。ユーザーがアウトラインに関連付けられたサーバーやアプリケーションに接続していない場合は、不明な名前を検証するため、Essbaseにより自動的に接続が確立されます。

式のセマンティク・エラーは、構文検査機能では通知できません。セマンティク・エラーは、式が期待どおりに動作しないときに発生します。セマンティク・エラーを見つけるには、計算を実行して、予想どおりの結果が得られるかどうかを確認します。

Essbaseにより、式エディタの下部に構文検査の結果が表示されます。Essbaseで構文エラーが検出されなかった場合は、「エラーはありません」というメッセージが表示されます。

Essbaseで1つ以上の構文エラーが検出された場合は、エラーのある行の行番号とエラーの短い説明が表示されます。たとえば、式の行末文字としてセミコロンを入力しなかった場合、Essbaseにより次のようなメッセージが表示されます:

      Error: line 1: invalid statement; expected semicolon
   

式エディタまたはアウトライン・エディタでの検証で式が承認されても、アウトラインが保存されるときにEssbaseサーバーでセマンティク・エラーが検出された場合は、次のような措置がとられます:

  • 誤った式は、エラーがあっても、アウトラインの一部として保存されます。

  • Essbaseサーバーにより、エラーの内容を示すメッセージがアプリケーション・ログに書き込まれ、誤った式が表示されます。

  • Essbaseサーバーにより、誤った式に関連付けられたメンバーのコメント・フィールドにエラー・メッセージが書き込まれます。このメッセージでは、誤った式がロードされなかったことが示されます。このコメントを表示するには、アウトライン・エディタで、アウトラインを閉じてから再度開きます。

  • メンバー式を訂正せずに、そのメンバーを含んでいる計算が実行された場合は、計算中にその式が無視されます。

式を修正し、アウトラインを保存すると、メンバー・コメント内のメッセージが削除されます。アウトラインを再度開くと、更新されたコメントが表示されます。

  式構文を検査する方法については、『Oracle Essbase Administration Servicesオンライン・ヘルプ』の「アウトライン内の式の作成および編集」を参照してください。

式での関数の使用

関数は、特別な計算を実行し、メンバーまたはデータ値のセットを戻す事前定義済のルーチンです。表48に、式で使用できる関数のタイプをリストします:

表 48. 関数タイプのリスト

関数のタイプ

説明

ブール

条件テストを実行できるように、TRUE(1)またはFALSE(0)の値を戻します。

たとえば、@ISMBR関数では、現在のメンバーが指定されたメンバーと一致するかどうかを判断できます。

条件テストを参照してください。

数学

特化された数学計算を実行します。

たとえば、@AVG関数を使用して、メンバーのリストの平均値を戻せます。

算術演算を参照してください。

関係

計算中に、データベース内のデータ値を検索します。

たとえば、@ANCESTVAL関数を使用して、指定したメンバーの組合せの祖先の値を戻せます。

メンバー関係関数を参照してください。

範囲

別の関数またはコマンドに対する引数として、メンバーの範囲を宣言します。

たとえば、@SUMRANGE関数を使用して、特定の範囲内のすべてのメンバーの合計を戻せます。

範囲関数を参照してください。

財務

特化された財務計算を実行します。

たとえば、@INTEREST関数を使用して、単利を計算できます。また、@PTD関数を使用して、期間累計値を計算できます。

財務関数を参照してください。

メンバーのリストおよび範囲の指定

複数のメンバーまたはある範囲のメンバーを指定します。

たとえば、@ISMBR関数では、現在計算中のメンバーが指定のリスト内のメンバーまたは範囲内のメンバーと一致しているかどうかをテストできます。

メンバーのリストおよび範囲の指定を参照してください。

メンバー・リストの生成

指定したメンバーに基づいてメンバーのリストを生成します。

たとえば、@ICHILDREN関数を使用して、指定したメンバーとその子を戻せます。

メンバー・リストの生成を参照してください。

文字列の操作

メンバー名および次元名の文字列を操作します。

たとえば、名前に接頭辞を追加したり、名前から接尾辞を削除したり、文字列として名前を渡してメンバー名を生成できます。

メンバー名の操作を参照してください。

次元間にわたるメンバーの組合せ

次元間演算子(->)を使用して、特定のメンバー組合せのデータ値をポイントします。

次元間にわたるメンバーの組合せの操作を参照してください。

相互依存値

同じ次元のメンバーの値を必要とするが、必要な値がまだ計算されていない式の場合。

相互依存値の使用を参照してください。

差異および差異のパーセンテージ

予定値と実績値との差異または差異のパーセンテージを計算します。

実績値と予定値との差異または差異のパーセンテージの計算を参照してください。

割当て

親レベルで入力される値を、子メンバー全体に割り当てます。同じ次元内の値または複数次元の値を割り当てることができます。

たとえば、@ALLOCATE関数を使用して、親レベルで入力される売上の値を親の子に割り当てることができます。ただし、それぞれの子の割当ては、前年の売上における占有率によって決まります。

値の割当てを参照してください。

予測

データの補整や補間、あるいは今後の値の計算を目的として、データを操作します。

たとえば、@TREND関数を使用して、過去の値に対する曲線近似に基づいて今後の値を計算できます。

予測関数を参照してください。

統計

高度な統計計算を行います。たとえば、@RANK関数を使用して、データ・セット内の指定したメンバーまたは指定した値のランクを計算できます。

統計関数を参照してください。

日付と時刻

計算式において日付や時刻の属性を使用します。

たとえば、@TODATE関数を使用して、日付文字列を計算式で使用できる数値に変換できます。

日付と時刻関数を参照してください。

計算モード

Essbaseで式の計算に使用される計算モード(セル、ブロック、ボトムアップおよびトップダウン)を指定します。

計算モード関数を参照してください。

カスタム定義

このタイプでは、計算操作用にユーザーが開発した関数を実行できます。このようなカスタム開発関数はJavaプログラミング言語で作成され、Essbase計算機フレームワークにより外部関数として呼び出されます。

カスタム定義関数を参照してください。

注:

関数の省略はサポートされていません。一部のコマンドは省略形式でも機能しますが、類似した名前の関数が複数存在する場合、Essbaseで誤った関数が使用される可能性があります。正しい結果が確実に得られるように、完全な関数名を使用してください。

条件テスト

単一の条件テストまたは一連の条件テストを行う式を定義すれば、計算のフローを制御できます。

IFおよびENDIFコマンドでは、条件ブロックが定義されます。IFコマンドとENDIFコマンドの間に置かれた式は、テストがTRUE(1)を戻す場合にのみ実行されます。テストがFALSE(0)を戻す場合は、ELSEおよびELSEIFコマンドを使用して代替アクションを指定できます。各ELSEコマンドに続く式は、前のテストがFALSE(0)を戻す場合にのみ実行されます。各ELSEIFコマンドに続く条件は、前のIFコマンドがFALSE(0)を戻す場合にのみテストされます。式の構文の理解を参照してください。

計算スクリプトで条件式を使用するときは、この項の例で示すように、その式を丸カッコで囲み、データベース・アウトラインのメンバーと関連付けます。

IFコマンドとともに、条件テストの結果に基づいて、TRUEまたはFALSE(それぞれ1または0)を戻す関数を使用できます。これらの関数は、ブール関数と呼ばれています。

ブール関数を使用して、使用する式を決定します。この決定は、現在のメンバーの組合せの特性に基づいて行われます。たとえば特定の計算を、入力データを含む製品次元内のメンバーのみに制限するには、計算の前に、@ISLEV(Product,0)に基づいたIFテストを配置します。

関数パラメータのいずれかが、@ISMBR(Sales -> Budget)のような次元間メンバーである場合は、TRUE(1)の値を戻すように、次元間メンバーのすべての部分を現在のセルのプロパティと合わせる必要があります。

表49に、条件を指定するブール型関数をリストします:

表 49. 条件をテストするブール型関数のリスト

関数

条件

@ISACCTYPE

現在のメンバーが指定された勘定科目タグを持っている(支出タグなど)

@ISANCEST

現在のメンバーが指定されたメンバーの祖先である

@ISIANCEST

現在のメンバーが指定されたメンバーの祖先であるか、指定されたメンバー自体である

@ISCHILD

現在のメンバーが指定されたメンバーの子である

@ISICHILD

現在のメンバーが指定されたメンバーの子であるか、指定されたメンバー自体である

@ISDESC

現在のメンバーが指定されたメンバーの子孫である

@ISIDESC

現在のメンバーが指定されたメンバーの子孫であるか、指定されたメンバー自体である

@ISGEN

指定された次元の現在のメンバーが指定された世代に存在している

@ISLEV

指定された次元の現在のメンバーが指定されたレベルに存在している

@ISMBR

現在のメンバーが指定されたメンバーのいずれかと一致している

@ISPARENT

現在のメンバーが指定されたメンバーで親である

@ISIPARENT

現在のメンバーが指定されたメンバーの親であるか、指定されたメンバー自体である

@ISSAMEGEN

(指定されたメンバーと同じ次元の)現在のメンバーが、指定されたメンバーと同じ世代に存在している

@ISSAMELEV

(指定されたメンバーと同じ次元の)現在のメンバーが、指定されたメンバーと同じレベルに存在している

@ISSIBLING

現在のメンバーが指定されたメンバーの兄弟である

@ISISIBLING

現在のメンバーが指定されたメンバーの兄弟であるか、指定されたメンバー自体である

@ISUDA

指定された次元の現在のメンバーに対して、指定されたUDAが存在している

データベース・アウトラインに式を配置するときは、IF、ELSE、ELSEIFおよびENDIFコマンドとブール関数のみを使用して、計算フローを制御できます。計算スクリプト内では、その他の制御コマンドも使用できます。

計算スクリプトの作成方法や、計算スクリプトを使用してEssbaseによるデータベース計算を制御する方法については、ブロック・ストレージ・データベース用の計算スクリプトの作成。を参照してください。個々のEssbase関数および計算コマンドについては、『Oracle Essbaseテクニカル・リファレンス』を参照してください。

条件テストの例

次の式を、データベース・アウトラインのCommissionメンバーに適用できます。

次の例の式では、売上が500000を超える場合、売上の1%の歩合が計算されます:

      IF(Sales > 500000)
   Commission = Sales * .01;
ENDIF;
   

この式を計算スクリプト内に記述する場合は、式とCommissionメンバーを次のように関連付ける必要があります:

      Commission (IF(Sales > 500000)
   Commission = Sales * .01;
ENDIF;)
   

Essbaseでは、データベース内を循環して、次の計算が実行されます:

  1. IFステートメントでは、現在のメンバーの組合せに対するSalesメンバーの値が500000を超えているかが確認されます。

  2. Salesが500000を超えている場合は、Essbaseによって、Salesの値に0.01が乗算され、結果がCommissionに置かれます。

次の例の式では、現在のメンバーの祖先をテストした後、適切なPayroll計算式が適用されています:

      IF(@ISIDESC(East) OR @ISIDESC(West))
   Payroll = Sales * .15;
ELSEIF(@ISIDESC(Central))
   Payroll = Sales * .11;
ELSE
   Payroll = Sales * .10;
ENDIF;
   

この式を計算スクリプト内に記述する場合は、式とPayrollメンバーを次のように関連付ける必要があります:

      Payroll(IF(@ISIDESC(East) OR @ISIDESC(West))
   Payroll = Sales * .15;
ELSEIF(@ISIDESC(Central))
   Payroll = Sales * .11;
ELSE
   Payroll = Sales * .10;
ENDIF;)
   

Essbaseでは、データベース内を循環して、次の計算が実行されます:

  1. IFステートメントでは、@ISIDESC関数を使用して、市場次元の現在のメンバーがEastとWestのいずれかの子孫であるかどうかを確認します。

  2. 市場次元の現在のメンバーがEastまたはWestの子孫である場合は、Essbaseによって、Salesの値に0.15が乗算されてから、次のメンバーの組合せが処理されます。

  3. 現在のメンバーがEastまたはWestの子孫でない場合は、ELSEIFステートメントで@ISIDESC関数を使用して、現在のメンバーがCentralの子孫であるかどうかを確認します。

  4. 市場次元の現在のメンバーがCentralの子孫である場合は、Essbaseによって、Salesの値に0.11が乗算されてから、次のメンバーの組合せが処理されます。

  5. 現在のメンバーがEast、WestおよびCentralの子孫でない場合は、Essbaseによって、Salesの値に0.10が乗算されてから、次のメンバーの組合せが処理されます。

多次元計算の概念についてを参照してください。@ISIDESC関数については、『Oracle Essbaseテクニカル・リファレンス』を参照してください。

算術演算

表50に、式内で多くの算術演算を実行できる数学関数をリストします:

表 50. 数学関数のリスト

関数

演算

@ABS

式の絶対値を戻す

@AVG

指定されたメンバー・リスト内の値の平均値を戻す

@EXP

e (自然対数の底)を指定された式でべき乗した値を戻す

@FACTORIAL

式の階乗を戻す

@INT

メンバーまたは式の2番目に小さい整数値を戻す

@LN

指定された式の自然対数を戻す

@LOG

指定された式の指定された底の対数を戻す

@LOG10

指定された式の10を底とする対数を戻す

@MAX

指定されたメンバー・リスト内の式における最大値を戻す

@MAXS

指定されたメンバー・リスト内の式における最大値を戻すが、ゼロ(0)および#MISSING値はスキップする

@MIN

指定されたメンバー・リスト内の式における最小値を戻す

@MINS

指定されたメンバー・リスト内の式における最小値を戻すが、ゼロ(0)および#MISSING値はスキップする

@MOD

指定された2つのメンバーの除算から得られる余りを戻す

@POWER

指定されたメンバーの指定された階乗の値を戻す

@REMAINDER

式の剰余値を戻す

@ROUND

指定された小数点以下の桁数で丸めたメンバーまたは式を戻す

@SUM

指定されたすべてのメンバーの値の合計を戻す

@TRUNCATE

式の切捨て値を戻す

@VAR

指定された2つのメンバー間の差異(差分)を戻す。

実績値と予定値との差異または差異のパーセンテージの計算を参照してください。

@VARPER

指定された2つのメンバー間の差異(差分)のパーセンテージを戻す。

実績値と予定値との差異または差異のパーセンテージの計算を参照してください。

メンバー関係関数

表51に、関係関数をリストします。この関数では、特定の値を検索するため、Essbaseで現在計算中のメンバーの組合せを使用できます:

表 51. メンバー関係関数のリスト

関数

検索する値

@ANCESTVAL

指定したメンバーの組合せに対する祖先の値

@ATTRIBUTEVAL

現在のメンバーに関連する、指定した数値属性次元または日付属性次元からの属性の数値

@ATTRIBUTESVAL

現在のメンバーに関連する、指定したテキスト属性次元からの属性のテキスト値

@ATTRIBUTEBVAL

現在のメンバーに関連する、指定したブール属性次元からの属性の値(TRUEまたはFALSE)

@CURGEN

指定した次元に対する現在のメンバーの組合せの世代番号

@CURLEV

指定した次元に対する現在のメンバーの組合せのレベル番号

@GEN

指定したメンバーの世代番号

@LEV

指定したメンバーのレベル番号

@MDANCESTVAL

複数の次元にわたる指定したメンバーの組合せに対する祖先の値

@SANCESTVAL

指定したメンバーの組合せに対する共有された祖先の値

@PARENTVAL

指定したメンバーの組合せに対する親の値

@MDPARENTVAL

複数の次元にわたる指定したメンバーの組合せに対する親の値

@SPARENTVAL

指定したメンバーの組合せに対する共有された親の値

@XREF

現在のデータベースからの値の計算に使用される、別のデータベースからのデータ値

@XWRITE

値を別のEssbaseデータベースまたは同じデータベースに書き込むために使用されます

個別のEssbase関数については、『Oracle Essbaseテクニカル・リファレンス』を参照してください。

範囲関数

表52に、特定の範囲のメンバーに対して式を実行できる範囲関数をリストします:

表 52. 範囲関数のリスト

関数

計算

@AVGRANGE

メンバーの範囲におけるメンバーの平均値

@CURRMBRRANGE

Essbaseで現在計算されているメンバーの組合せの相対位置を基準にしたメンバーの範囲

@MAXRANGE

メンバー範囲内のメンバーの最大値

@MAXSRANGE

メンバー範囲内のメンバーの最大値(ゼロおよび#MISSING値はスキップ可能)

@MDSHIFT

メンバー範囲内の次のメンバーまたはn番目のメンバー(複数の次元における現在のメンバーと同一の他のメンバーがすべて保持される)

@MINRANGE

メンバー範囲内のメンバーの最小値

@MINSRANGE

メンバー範囲内のメンバーの最小値(ゼロおよび#MISSING値はスキップ可能)

@NEXT

メンバー範囲内の次のメンバーまたはn番目のメンバー

@NEXT

メンバー範囲内の次のメンバーまたはn番目のメンバー(#MISSING、ゼロまたはその両方の値はスキップ可能)

@PRIOR

メンバー範囲内の直前またはn番前にあるメンバー

@PRIORS

メンバー範囲内の直前またはn番前にあるメンバー(#MISSING、ゼロまたはその両方の値はスキップ可能)

@SHIFT

@SHIFTPLUSまたは@SHIFTMINUSの場合もある

メンバー範囲内の次またはn番目のメンバー(現在のメンバーおよび指定された次元内で、同一の他のメンバーがすべて保持される)

@SUMRANGE

メンバーの範囲における指定したメンバーすべての値の合計

財務関数

表53に、式内に財務計算を含めることができる財務関数をリストします:

表 53. 財務関数のリスト

関数

計算

@ACCUM

指定したメンバーまでの値の累積

@COMPOUND

複利計算の収益

@COMPOUNDGROWTH

メンバーの範囲における指定したメンバーの複合成長を表す一連の値

@DECLINE

定率法を使用して計算される特定の期間の減価償却

@DISCOUNT

範囲内での開始期間から割り引く金額に達する期間まで、指定した率で割り引かれる値

@GROWTH

指定された値の線形増分を表す一連の値

@INTEREST

指定したメンバーに対する指定した率での単利

@IRR

時間次元または指定されたメンバー範囲内で計算されたキャッシュ・フローの内部利益率。少なくとも1つの投資(負)と1つの収入(正)が含まれている必要があります。最初の推測として0.07を算入します(最初の推測は構成できません)。

@IRREX

時間次元または指定されたメンバー範囲内で計算されたキャッシュ・フローの内部利益率。少なくとも1つの投資(負)と1つの収入(正)が含まれている必要があります。最初の推測とアルゴリズムの反復回数を構成するための機能を備えています。

@NPV

一連の収支に基づいた投資の正味現在価値

@PTD

時間としてタグ付けされた次元におけるメンバーの期間累計値

@SLN

当期の資産を減価償却する場合の期間当たりの償却額(期間全体で計算)。

減価償却法は定額法を使用。

@SYD

当期の資産を減価償却する場合の期間当たりの償却額(期間全体で計算)。

使用される減価償却方法は、算術級数法です。

注:

単一のメンバー式に複数の財務関数(たとえば@NPVと@SLN、@NPVの複数のインスタンスなど)を含めることはできません。複数の財務関数を必要とするメンバー式は、複数の式に分割して、各式に財務関数が1つのみ含まれるようにします(たとえば、MemberName(@NPV(...));Membername(@NPV(...)))。

メンバーに関連する関数

この項では、メンバーを参照する式の作成について説明します。

メンバーのリストおよび範囲の指定

一部の関数では、複数のメンバーまたはメンバーの範囲を指定する必要があります。たとえば、@ISMBR関数では、現在計算中のメンバーが指定のリスト内のメンバーまたは範囲内のメンバーと一致しているかどうかをテストできます。

表54に、メンバーを指定する構文をリストします:

表 54. メンバーのリストおよび範囲を指定する構文

メンバーのリストまたは範囲

構文

単一のメンバー

メンバー名。

例:

                     Mar2001
                  

メンバーのリスト

カンマ区切り(,)のメンバー名のリスト。

例:

                     Mar2001, Apr2001, May2001
                  

同じレベルにあるすべてのメンバーの範囲(2つのメンバー定義の間にあり、かつそれらのメンバー定義自体も含む)

コロン(:)で区切られた2つのメンバー定義の名前。例:

                     Jan2000:Dec2000
                  

同じ世代にあるすべてのメンバーの範囲(2つのメンバー定義の間にあり、かつそれらのメンバー定義自体も含む)

2つのコロン(::)で区切られた2つのメンバー定義の名前。

例:

                     Q1_2000::Q4_2000
                  

関数で生成したメンバーのリストまたはメンバーの範囲

メンバー・リストのコンテンツおよび対応する関数のリストはメンバー・リストの生成を参照してください。

範囲とリストの組合せ

カンマ(,)で区切られた各範囲、リストおよび関数。

例:

                     Q1_97::Q4_98, FY99, FY2000
                  

または

                     @SIBLINGS(Dept01), Dept65:Dept73, Total_Dept
                  

メンバー・リストまたはメンバーの範囲を必要とする関数で、メンバー・リストまたはメンバーの範囲を指定しなかった場合、Essbaseでは、時間のタグが付けられた次元のレベル0メンバーが使用されます。時間のタグが付けられた次元が存在しない場合、Essbaseでエラー・メッセージが表示されます。

メンバー・リストの生成

メンバー・セット関数では、指定したメンバーまたはメンバー・リストに基づくメンバー・リストを生成できます。表55に、メンバー・セット関数をリストします:

表 55. メンバー・セット関数のリスト

関数

メンバー・リストのコンテンツ

@ALLANCESTORS

指定したメンバーのすべての祖先(共有メンバーとして指定したメンバーの祖先を含む)。この関数には、指定したメンバーは含まれません。

@IALLANCESTORS

指定したメンバーのすべての祖先(共有メンバーとして指定したメンバーの祖先を含む)。この関数には指定したメンバーが含まれます。

@ANCEST

指定した世代またはレベルにある指定したメンバーの祖先

@ANCESTORS

指定したメンバーのすべての祖先(オプションで、指定した世代またはレベルまで)。指定したメンバーは含まれません

@IANCESTORS

指定したメンバーのすべての祖先(オプションで、指定した世代またはレベルまで)。指定したメンバーも含まれます

@LANCESTORS

指定したメンバー・リストのすべての祖先(オプションで、指定した世代またはレベルまで)。指定したメンバーは含まれません

@ILANCESTORS

指定したメンバー・リストのすべての祖先(オプションで、指定した世代またはレベルまで)。指定したメンバーも含まれます

@ATTRIBUTE

指定した属性次元メンバーに関連付けられたすべての基本次元メンバー

@WITHATTR

指定した条件を満たす属性に関連付けられたすべての基本メンバー

@BETWEEN

名前の文字列値が指定した2つの文字列トークンの間(2つのトークンを含む)に収まるすべてのメンバー

@CHILDREN

指定したメンバーのすべての子。指定したメンバーは含まれません

@ICHILDREN

指定したメンバーのすべての子。指定したメンバーも含まれます

@CURRMBR

指定した次元で計算中の現在のメンバー

@DESCENDANTS

指定したメンバーのすべての子孫(オプションで、指定した世代またはレベルまで)。共有メンバーの子孫および指定したメンバーは含まれません

@IDESCENDANTS

指定したメンバーのすべての子孫(オプションで、指定した世代またはレベルまで)。指定したメンバーは含まれますが、共有メンバーの子孫は含まれません

@LDESCENDANTS

指定したメンバー・リストのすべての子孫(オプションで、指定した世代またはレベルまで)。指定したメンバーは含まれません

@ILDESCENDANTS

指定したメンバー・リストのすべての子孫(オプションで、指定した世代またはレベルまで)。指定したメンバーも含まれます

@RDESCENDANTS

指定したメンバーのすべての子孫(オプションで、指定した世代またはレベルまで)。共有メンバーの子孫は含まれますが、指定したメンバーは含まれません

@IRDESCENDANTS

指定したメンバーのすべての子孫(オプションで、指定した世代またはレベルまで)。指定したメンバーおよび共有メンバーの子孫も含まれます

@EQUAL

指定したトークン名と一致するメンバー名

@NOTEQUAL

指定したトークン名と一致しないメンバー名

@EXPAND

メンバー・リスト内のメンバーごとにメンバー・セット関数を呼び出してメンバーの検索を拡張します

@GENMBRS

指定した次元の指定した世代にあるすべてのメンバー

@LEVMBRS

指定した次元の指定したレベルにあるすべてのメンバー

@LIKE

指定したパターンと一致するメンバー名。

@LIST

複数のリスト引数を必要とする関数で処理される、メンバーの個々のリスト

@MATCH

指定したワイルドカード選択に一致するすべてのメンバー

@MBRCOMPARE

比較基準と一致するメンバー名

@MBRPARENT

指定したメンバーの親

@MEMBER

文字列として指定された名前を持つメンバー

@MERGE

別の関数で処理される2つのメンバー・リストをマージしたリスト

@PARENT

指定した次元で計算中の現在のメンバーの親

@RANGE

ある次元の指定されたメンバーを別の次元の指定されたメンバー範囲と交差させたメンバー・リスト

@REMOVE

一部のメンバーが削除されたメンバーのリスト

@RELATIVE

指定したメンバーの上または下の指定した世代またはレベルにあるすべてのメンバー

@SHARE

指定したメンバーのすべての共有メンバーを識別するメンバー・リスト

@SIBLINGS

指定したメンバーのすべての兄弟。指定したメンバーは含まれません

@ISIBLINGS

指定したメンバーのすべての兄弟。指定したメンバーも含まれます

@LSIBLINGS

データベース・アウトライン内で指定したメンバーに先行するすべての兄弟。指定したメンバーは含まれません

@RSIBLINGS

データベース・アウトライン内で指定したメンバーに続くすべての兄弟。指定したメンバーは含まれません

@ILSIBLINGS

データベース・アウトライン内で指定したメンバーに先行するすべての兄弟。指定したメンバーも含まれます

@IRSIBLINGS

データベース・アウトライン内で指定したメンバーに続くすべての兄弟。指定したメンバーも含まれます

@SHIFTSIBLING

メンバーから指定した距離にある兄弟

@NEXTSIBLING

メンバーの次または右端の兄弟

@PREVSIBLING

メンバーの前または左端の兄弟

@UDA

Essbaseサーバー上に定義された共通のUDAを持つすべてのメンバー

@XRANGE

同じレベルにある2つの単一メンバーまたは次元間メンバーで指定されるメンバーの範囲(2つのメンバーを含む)を識別するメンバー・リスト

メンバー名の操作

メンバー名を文字列として操作できます。表56に、文字列の操作関数をリストします:

表 56. 文字列の操作関数のリスト

関数

文字列の操作

@CONCATENATE

メンバー名や指定した文字列を他のメンバー名または文字列に追加して、文字列を作成します

@NAME

メンバー名を文字列として戻します

@SUBSTRING

他の文字列またはメンバー名から部分文字列を戻します

次元間にわたるメンバーの組合せの操作

次元間演算子を使用して、特定メンバーの組合せのデータ値を指します。ハイフン(-)と大なり記号(>)を使用して、次元間演算子を作成します。次元間演算子とメンバーの間にはスペースを入力しないでください。

図114は多次元キューブを簡単に例示したもので、JanはX軸の1番目の列、SalesはY軸の4番目および最上部の行、そしてActualはZ軸の1番目の行に存在します。この例では、Sales -> Jan -> Actualが単一のデータ値の交差部です。

図 114. 単一のデータ値の指定

この図は、この表の前のテキストで説明されている、単一のデータ値の交差が示されたキューブを示しています。

次の例では、各市場の各製品に様々な支出を割り当てることにより、次元間演算子の使用方法を示します。すべての市場のすべての製品について、Misc_Expensesの値がわかっています。この式では、Product -> Marketの個々の組合せに、様々な支出(Misc_Expenses)の合計のパーセンテージが割り当てられます。割当ては、各市場の各製品のSalesの値に基づいて行われます。

         Misc_Expenses = Misc_Expenses -> Market -> Product * 
      

            (Sales / ( Sales -> Market -> Product));
      

Essbaseでは、データベース内を循環して、次の計算が実行されます:

  1. 現在のメンバーの組合せのSales値が、すべての市場とすべての製品のSalesの合計値(Sales -> Market -> Product)で除算されます。

  2. 手順1で計算された値と、すべての市場とすべての製品のMisc_Expenses値(Misc_Expenses -> Market -> Product)とが乗算されます。

  3. 計算結果が現在のメンバーの組合せのMisc_Expensesに割り当てられます。

次元間演算子を使用すると、パフォーマンスに重大な影響が出る場合があります。最適化のガイドラインについては、次元間演算子の使用を参照してください。

値に関連する関数

この項では、値に関連する式について説明します。

相互依存値の使用

Essbaseでは、同じ次元の特定の範囲のメンバーに対する複数の式を同時に計算することによって、計算パフォーマンスが最適化されます。ただし、一部の式では、同じ次元のメンバーから値を取得する必要があるにもかかわらず、これらの値がEssbaseでまだ計算されていない場合があります。

具体的な例として、キャッシュ・フローの相互依存値があります。この場合は、期首在庫高が、前月の期末在庫高に依存します。

期首在庫高(Opening Inventory)と期末在庫高(Ending Inventory)の値を月ごとに計算する必要があります。表57に示すとおりの結果を得る場合を仮定します:

表 57. キャッシュ・フローのデータ値の例

 

Jan

Feb

Mar

Opening Inventory

100

120

110

Sales

50

70

100

Addition

70

60

150

Ending Inventory

120

110

160

1月のOpening Inventoryの値がデータベースにロードされるとすると、表57の結果を得るために必要な計算は次のようになります:

      1. January Ending   = January Opening – Sales + Additions
2. February Opening = January Ending
3. February Ending  = February Opening – Sales + Additions
4. March Opening    = February Ending
5. March Ending     = March Opening – Sales + Additions
   

必要な計算結果を得るには、複数の相互依存する等式をデータベース・アウトラインの単一のメンバーに適用します。

データベース・アウトラインのOpening Inventoryメンバーに適用される次の式で、正しい値が計算されます:

      IF(NOT @ISMBR (Jan))
   "Opening Inventory" = @PRIOR("Ending Inventory");
ENDIF;
"Ending Inventory" = "Opening Inventory" - Sales + Additions;
   

計算スクリプト内に式を挿入した場合は、その式を次のようにOpening Inventoryメンバーと関連付ける必要があります:

      "Opening Inventory"
(IF(NOT @ISMBR (Jan))
   "Opening Inventory" = @PRIOR("Ending Inventory");
ENDIF;)
"Ending Inventory" = "Opening Inventory" - Sales + Additions;
   

Essbaseでは、月の値を循環して、次の計算が実行されます:

  1. IFステートメントと@ISMBR関数で、年次元の現在のメンバーがJanでないことを確認します。この手順が必要なのは、1月の期首在庫高の値が入力値になっているためです。

  2. 当月が1月でない場合、@PRIOR関数により、前月の期末在庫高の値が取得されます。この値は、当月の期首在庫高に割り当てられます。

  3. 当月の期末在庫高が計算されます。

注:

正しい計算結果を得るには、これらの式を単一のメンバー(Opening Inventory)に対して記述する必要があります。Opening InventoryとEnding Inventoryの別々のメンバーに対して式を記述した場合、Essbaseにより、すべての月の期首在庫高が計算された後、すべての月の期末在庫高が計算されます。これは、期首在庫高の計算時に前月の期末在庫高の値を使用できないことを意味します。

実績値と予定値との差異または差異のパーセンテージの計算

@VARおよび@VARPER関数を使用して、予定値と実績値との差異または差異のパーセンテージを計算できます。

差異は、正または負の値になることがありますが、これは、会計次元のメンバー(支出アイテムまたは支出外アイテム)に関する差異を計算しているかどうかによって異なります:

  • 支出アイテム。実績値が予定値に満たない場合(たとえば実際のコストが予定コストより低い場合)、Essbaseに表示される差異は正の値になります。

  • 支出外アイテム。実績値が予定値に満たない場合(たとえば売上実績が売上予想より低い場合)、Essbaseに表示される差異は負の値になります。

Essbaseでは、デフォルトで、メンバーは支出外アイテムであると想定され、これに従って差異が計算されます。

  Essbaseにメンバーが支出アイテムであると指定するには:

  1. アウトライン・エディタで、メンバーを選択します。

    このメンバーは、勘定科目としてタグ付けされた次元上に存在している必要があります。

  2. 式エディタを開きます。

    Oracle Essbase Administration Services Online Helpの「アウトライン内の式の作成および編集」を参照してください。

  3. メンバーに支出アイテムとしてタグ付けします。

    差異レポート・プロパティの設定を参照してください。

@VARまたは@VARPER関数を使用しているとき、実績値が予定値より低い場合、Essbaseに表示される差異は正の値になります。たとえば、Sample.BasicのTotal Expensesの子は支出アイテムです。シナリオ次元のVarianceおよびVariance%メンバーを使用して、実績値と予定値の差異を計算できます。図115を参照してください。

図 115. 差異の例

この図は、この表の前のテキストで説明されている、計算の差異を説明するアウトラインを示しています。

値の割当て

割当て関数では、親レベルで入力された値を同じ次元または別の次元の子メンバーに割り当てることができます。割当ては、指定された様々な基準に基づいて行われます。

表 58. 割当て関数のリスト

関数

割り当てる値

@ALLOCATE

メンバー、次元間メンバーまたは同じ次元内のメンバー・リストのメンバーからの値。

@MDALLOCATE

メンバー、次元間メンバーまたは複数の次元にまたがる値から生じる値。

@ALLOCATEを使用した計算スクリプトの例については製品をまたがるコストの割当てを、@MDALLOCATEを使用した計算スクリプトの例については複数の次元での値の割当てを参照してください。

予測関数

予測関数では、データを補間したり将来の値を計算したりする目的でデータを操作できます。表59に、値を予測する関数をリストします:

表 59. 予測関数のリスト

関数

データの操作

@MOVAVG

データ・セットに移動平均を適用し、リスト内の各期間を末尾平均で置換します。

この関数では、データのセットが補整目的で変更されます。

@MOVMAX

データ・セットに移動最大を適用し、リスト内の各期間を末尾最大値で置換します。

この関数では、データのセットが補整目的で変更されます。

@MOVMED

データ・セットに移動メジアンを適用し、リスト内の各期間を末尾メジアンで置換します。

この関数では、データのセットが補整目的で変更されます。

@MOVMIN

データ・セットに移動最小を適用し、リスト内の各期間を末尾最小値で置換します。

この関数では、データのセットが補整目的で変更されます。

@MOVSUM

データ・セットに移動合計を適用し、各期間を末尾合計値で置換します。

この関数では、データのセットが補整目的で変更されます。

@MOVSUMX

データ・セットに移動合計を適用し、各期間を末尾合計値で置換します。合計する数字を操作する前に、メンバーに値を割り当てる方法を指定します。

この関数では、データのセットが補整目的で変更されます。

@SPLINE

一連のデータ・ポイントに平滑化スプラインを適用します。

スプラインとは、データの平滑化または補間を行うための数学曲線のことです。

@TREND

経過値に対する曲線近似に基づいて、将来の値を計算します。

個別のEssbase関数については、『Oracle Essbaseテクニカル・リファレンス』を参照してください。

統計関数

統計関数では、Essbase内で高度な統計を計算できます。

表 60. 統計関数のリスト

関数

計算する値

@CORRELATION

2つの並列データ・セット間の相関係数

@COUNT

指定したデータ・セット内の値の総数

@MEDIAN

指定したデータ・セットにおけるメジアン、つまり中央値

@MODE

指定したデータ・セットにおけるモード、つまり最頻値

@RANK

指定したデータ・セットにおける指定したメンバーまたは値のランク

@STDEV

サンプルを基準にした、指定したメンバーの標準偏差

@STDEVP

母集団全体を基準にした、指定したメンバーの標準偏差

@STDEVRANGE

メンバーの範囲でクロスされた、指定したメンバーの標準偏差

@VARIANCE

サンプルを基準にした、指定したデータ・セットの差異

@VARIANCEP

母集団全体を基準にした、指定したデータ・セットの差異

日付と時刻関数

日付関数により、他の関数で日付を使用できます。

@TODATE: 日付文字列が、計算式で使用できる数値に変換されます

計算モード関数

計算モード関数では、Essbaseで式の計算に使用される計算モードを指定できます。

@CALCMODE: Essbaseで式の計算に使用される計算モード(セル、ブロック、ボトムアップまたはトップダウン)を指定する

注:

CALCMODE構成設定を使用して、データベース、アプリケーションまたはサーバーの各レベルで、計算モードをBLOCKまたはBOTTOMUPに設定することもできます。『Oracle Essbaseテクニカル・リファレンス』を参照してください。

カスタム定義関数

式および計算スクリプト内で使用するカスタム定義関数を作成して、Essbase計算スクリプト言語ではサポートされていない計算を実行できます。カスタム定義関数はJavaプログラミング言語で記述し、Essbaseサーバーに登録する必要があります。Essbase計算機フレームワークでは、カスタム定義関数は外部関数として呼び出されます。

カスタム定義関数は、計算スクリプト・エディタの関数ツリー内に表示されます。計算スクリプト・エディタを使用して、カスタム定義関数を選択したり、式に挿入したりできます。

カスタム定義計算関数の作成。を参照してください。

式での代替変数および環境変数の使用

代替変数は頻繁に変化する情報を参照する場合に使用されます。環境変数はユーザー固有のシステム設定のプレースホルダとして使用されます。参照:

式での代替変数の使用

代替変数は、期間情報など、定期的に変更される情報のプレースホルダとして機能します。データベース・アウトラインに適用する式の中で、代替変数を使用できます。

アウトラインの計算が完了すると、Essbaseにより、代替変数はユーザーが割り当てた値に置き換えられます。Administration Services、MaxLまたはESSCMDを使用して、代替変数を作成したり、代替変数に値を割り当てたりできます。

代替変数は、サーバー・レベル、アプリケーション・レベルまたはデータベース・レベルで設定できます。Essbaseでは、計算スクリプトを実行しているアプリケーションおよびデータベースから、代替変数にアクセスできる必要があります。代替変数の使用を参照してください。

式で代替変数を使用するには、アンパサンド(&)に続けて代替変数名を入力します。

Essbaseでは、&に続くテキスト文字列はすべて代替変数と見なされます。

たとえば、代替変数UpToCurrがJan:Junと定義されているとします。次の@ISMBR関数を条件付きテストの一部として使用できます:

      @ISMBR(&UpToCurr)
   

Essbaseでは、アウトラインの計算時に、次のように代替変数が置き換えられます:

      @ISMBR(Jan:Jun)
   

注:

新しいアウトライン・メンバーを表すための式内の代替変数は、アウトラインを保存するまで有効になりません。

式での環境変数の使用

アウトライン・メンバー式では、ユーザー固有のシステム設定のプレースホルダとしてシステム環境変数を使用できます。環境変数は、オペレーティング・システム・レベルで定義されているので、Essbaseサーバー上のすべての式で使用できます。

式での環境変数の使用方法は、計算スクリプトで環境変数を使用する場合と同じです。計算スクリプトおよび式での環境変数の使用を参照してください。

注:

環境変数は、集約ストレージ・アウトライン内のMDXクエリーやメンバー式では使用できません。

パーティションでの式の使用

パーティション・アプリケーションは、複数のEssbaseサーバー、プロセッサまたはコンピュータにスパンできます。

パーティション化の際、ローカル・データベースで使用するときと同様に式を使用できます。ただし、あるデータベース内で使用する式が別のデータベースの値を参照する場合、Essbaseでは、式の計算時にこの2番目のデータベースからデータを取得する必要があります。このため、参照値が最新であることを確認し、データベース計算全体へのパフォーマンスの影響を慎重に検討してください。パーティション用の計算スクリプトの作成を参照してください。

透過パーティションの場合、データ・ターゲットに対して式をどのように使用するかを慎重に検討してください。透過パーティションとメンバー式および透過パーティションのパフォーマンス上の考慮事項を参照してください。

パーティション・アプリケーションの設計パーティションの作成および管理を参照してください。

式の表示

  式を表示するには、次のツールを使用します:

ツール

トピック

場所

Administration Services

アウトライン内の式の作成および編集

Oracle Essbase Administration Services Online Help

ESSCMD

GETMBRCALC

『Oracle Essbaseテクニカル・リファレンス』

MaxL

query database

『Oracle Essbaseテクニカル・リファレンス』