複雑な遡及処理について
このトピックでは、以下のような複雑な状況においてグローバル ペイロールによって実行される遡及処理の方法について詳しく説明します。
このトピックでは、次について説明します。
分割と遡及。
繰越遡及での支給キーの使い方。
遡及とポジティブ入力。
遡及削除。
遡及追加。
通貨変更。
分割は、以下のような場合に遡及処理に影響します。
分割された期間が遡及で再計算されていて、元の計算の分割日が再計算の分割日と同一日でない場合。
これは "セグメントの不一致" と呼ばれ、遡及デルタがどのように計算されるかに影響します。
遡及デルタが分割またはスライスされた期間に繰り越される場合。
注: 分割は、[遡及再計算オプション] の [再計算しない] オプションの管理方法にも影響します。
「分割の設定について」を参照してください。
セグメントの一致および不一致の場合のデルタの計算
グローバル ペイロールでのデルタの計算方法は、前回の期間の分割日と支給キーが再計算期間での分割日と支給キーに一致するかどうかによって変わります。
セグメントが一致する場合
セグメント日が一致し、支給キーが同じ場合は、元のセグメントの再計算により各セグメントの新しい値が求められ、各支給エレメントに対して新しい値から古い値を減算することにより遡及デルタが求められ、新しい結果が出力テーブルに書き込まれます。このトピックの「例 1: セグメントが一致する遡及」を参照してください。
セグメントが一致しない場合
セグメントが一致しない場合、古い値と新しい値は別々のセグメントに属しているとして処理されます。
前回の計算で存在した各セグメントに対して取り消しセグメントが作成され、その後、新しい再計算セグメントが作成されます。
取り消しセグメントでは総額/純額処理が行われないため、結果はありません。出力結果テーブルに書き出される結果は、デルタおよび残高累計に対するものだけです。デルタを計算するために、新しい値は 0 と仮定されます (デルタ = 新しい値 [0] - 古い値)。
新しい再計算セグメントでは総額/純額処理が行われ、新しい値が生成されます。新しい値は、出力結果テーブルに書き出されます。デルタを計算するために、古い値は 0 と仮定されます (デルタ = 新しい値 - 古い値 [0])。
例 1: セグメントが一致する遡及
再計算期間のセグメント日が元の期間のセグメント日と一致する場合、遡及処理は簡単です。遡及が、分割された期間にさかのぼって行われる例を以下に示します。
シナリオ:
元の 1 月の支給期間は支給グループの変更のために分割され、この変更は 1 月 16 日に有効になります。
1 月の支給期間は、支給 1 が 300 から 600 に変更されたため、遡及に対して再計算される必要があり、この変更は 1 月 1 日に有効になります。
画像: セグメントが一致する遡及
次の図は、セグメントが一致する遡及の例を示しています。

期間 1 |
---|
V1R1 |
セグメント 1 (1 月 1 日から 15 日)/支給グループ ABC 支給 1 = 150 セグメント 2 (1 月 16 日から 31 日)/支給グループ DEF 支給 1 = 150 |
V1R2 |
セグメント 1 (1 月 1 日から 15 日)/支給グループ ABC 支給 1 = 300 セグメント 2 (1 月 16 日から 31 日)/支給グループ DEF 支給 1 = 300 デルタ = 150、セグメント 1 (支給グループ ABC) デルタ = 150、セグメント 2 (支給グループ DEF) |
1 月の支給期間が遡及で再処理される際に、元の分割日は保存されます。これらのセグメントのデルタを求めるために、最初にセグメント 1 とセグメント 1、セグメント 2 とセグメント 2 が照合されます。次に、それぞれのセグメントの支給 1 の新しい値から古い値が減算されます (支給 1 は、比例配分されるように定義されています)。分割のない遡及の場合と同じように、期間内の各セグメントは再計算され、各セグメントの新しい値が出力結果テーブルに書き込まれます。
注: この例と後続の例では、元のカレンダーと計算済みのカレンダーに V1R1、V1R2 などのバージョン番号とレビジョン番号が付けられ、カレンダー期間の再計算が管理されます。
「再計算カレンダーの管理」を参照してください。
例 2: セグメントが一致しない遡及
再計算期間のセグメント日が前回の期間のセグメント日と一致しない場合は、既に「分割の一致および不一致の場合のデルタの計算」で説明した方法で遡及デルタが計算されます。
画像: セグメントが一致しない遡及
次は、分割された期間にさかのぼって行われる遡及の例です。この例では、遡及時にこの支給期間が再処理される際に、前回の分割日は次のように変更されます。

シナリオ:
受給者が 1 月 11 日を有効日として会社 ABC から会社 DEF に移ったため、元の 1 月の支給期間は分割されます。
受給者の会社変更の有効日が 1 月 11 日から 1 月 16 日に変更になったため、つまり分割日が 1 月 11 日から 1 月 16 日に変更になったため、元の支給期間は再計算されます。
受給者の支給 (支給 1) は 620 で、比例配分が定義されています。
期間 1 |
---|
V1R1 |
セグメント 1 (1 月 1 日から 10 日)/会社 ABC 支給 1 = 200 セグメント 2 (1 月 11 日から 31 日)/会社 DEF 支給 1 = 420 |
V1R2 |
セグメント 1 (1 月 1 日から 10 日)/会社 ABC (取り消し) 支給 1 デルタ = <200> セグメント 2 (1 月 11 日から 31 日)/会社 DEF (取り消し) 支給 1 デルタ = <420> セグメント = (1 月 1 日から 15 日)/会社 ABC (新しい再計算) 支給 1 デルタ = 300 セグメント 4 (1 月 16 日から 31 日)/会社 DEF (新しい再計算) 支給 1 デルタ = 320 |
この例では、受給者の会社 ID が 1 月 11 日を有効日として変更されるため、元の 1 月の支給期間が分割されます。その後、会社変更の有効日が 1 月 11 日から 1 月 16 日に変わったため、1 月のカレンダーが遡及処理のため再びオープンされます。つまり、元の期間と再計算期間のセグメント日が一致していないということです。1 月のカレンダー期間が再計算される際に、セグメント 1 およびセグメント 2 には既に再計算期間の正確な比較対照がないので、前の例のようなセグメントとセグメントの照合はできません。
セグメント 1 およびセグメント 2 の値は取り消され、セグメントごとにそれぞれ、-200 および -420 の負のデルタが作成されます。次に、再計算期間内に、独自のセグメント ステータス レコードを持つ新しい再計算セグメント (セグメント 3 とセグメント 4) が作成され、それぞれのデルタは 300 と 320 になります。各セグメントの新しい値は、出力結果テーブルに書き込まれます。取り消しセグメントでは、残高累計およびデルタ出力結果テーブルのみが更新されます。
注: スライス日が変更されても、元の期間と再計算期間の差額は遡及デルタの計算に影響しません。分割日を変更する場合のみ、取り消しセグメントが必要になります。
例 3: 支給キーの値の変更による不一致
会社 ID などの支給キーの値が前回の計算と再計算の間で変更される場合があります。これはセグメントの不一致と見なされ、前回の計算と新しい計算は、セグメントの日付が一致しないかのように、別々のセグメントに属しているものとして処理されます。
「繰越遡及での支給キーの使い方」を参照してください。
分割を伴う遡及での繰越調整
グローバル ペイロールで調整値を繰り越す方法は、遡及デルタがスライスまたは分割されたカレンダーに繰り越されるかどうか、また、支給キーが定義されているかどうかよって変わります。状況にかかわらず、以下のルールに従って処理されます。
分割を伴わない遡及の場合のように、現在の期間のカレンダーにデルタを繰り越せるかどうかを判断するため、遡及マッチング条件が使用されます。つまり、元のカレンダーの従業員 ID、レコード番号、支給元、支給グループ、および実行タイプが、現在の期間の繰越先カレンダーのそれらと一致する場合にのみ、デルタは繰り越されます。
注: この支給グループの一致は、遡及制限ページの [異なる支給グループ間のデルタ繰越可] オプションを選択して上書きできます。この条件を上書きすると、デルタに関連付けられた支給グループが受給者の現在の支給グループと一致しない場合でも、遡及デルタは現在の期間に自動的に繰り越されます。また、実行タイプの一致も上書きできます。これは、実行タイプ ページの [遡及調整ソース] グループ ボックスに他の有効な実行タイプを指定することで行います。実行タイプの一致を上書きすると、デルタが受給者の現在の実行タイプと一致しない場合でも、ここで指定した実行タイプについては、遡及デルタが現在の期間に自動的に繰り越されます。ただし、他の条件は全て満たす必要があります。
「遡及制限ページ」を参照してください。
全ての遡及マッチング条件が満たされると、現在の期間が分割されている場合は、現在のカレンダーの最初のセグメントにデルタが合計され繰り越されます。
このセグメントがスライスされている場合は、このセグメントの最初のスライスに調整値が繰り越されます。
会社 ID、契約番号、事業所、または部門 ID のような条件に基づいて支給キーを定義した場合、調整値は、全ての遡及マッチング条件を満たし、繰り越される調整値と同じ支給キーを持つ現在のカレンダーの最初のセグメントにのみ繰り越されます。
このセグメントがスライスされている場合は、このセグメントの最初のスライスに調整値が繰り越されます。支給キーが一致するセグメントがない場合は、調整値を繰り越すための新しいセグメントが現在の期間に作成されます。現在の期間が分割されているかどうかにかかわらず、新しいセグメントの日付は全てそのカレンダー期間の日付になります。
注: 遡及マッチング条件は、現在の期間に調整を繰り越すかどうかを決めるために使用されます。条件が全て満たされている場合、デルタは繰り越されます。標準マッチング条件に加えて、支給キーが使用されている場合は、調整値の繰越先を決めるためにこれらのキーが確認されます。現在の期間、または期間内のセグメントが同じキーを持つ場合は、一致した支給キーを持つ現在の期間内の最初のセグメントに調整値が繰り越されます。スライスの場合は、そのセグメント内の最初のスライスに繰り越されます。支給キーの一致するセグメントがない場合にのみ、調整値を繰り越すための新しいセグメントが作成されます。
「繰越遡及での支給キーの使い方」を参照してください。
例 1: 遡及を伴うエレメントの分割
以下の遡及を伴うエレメント分割の例では、デルタがどのように現在の期間に繰り越されるかを示しています。ここでは、全ての遡及マッチング条件が満たされ、支給キーはないものとします。
シナリオ:
1 月 16 日に支給 1 の値を月額 310 から月額 620 に変更するために、期間 3 で期間 1 にさかのぼる遡及です。このとき、支給 1 は比例配分されるように定義されているとします。
支給 1 はエレメントを分割するためエレメント リスト上にあり、本来分割されていない期間の中間で、スライス 1 およびスライス 2 に分割されることになります。
画像: 再計算期間でのエレメントの分割と現在のカレンダーでセグメントがない場合の例
次の図は、再計算期間でのエレメントの分割と現在のカレンダーで分割がない例を表しています。支給キーはなく、遡及マッチング条件は満たされています。

期間 1 |
期間 2 |
期間 3 |
---|---|---|
V1R1 |
V1R1 |
V1R1 |
セグメント 1 (1 月 1 日から 31 日) 支給 1 = 310 |
セグメント 1 (2 月 1 日から 28 日) 支給 1 = 310 |
セグメント 1 (3 月 1 日から 31 日) 支給 1 = 1085 [620 + (155 + 310)] |
V1R2 |
V1R2 |
|
セグメント 1 (1 月 1 日から 31 日) スライス 1 (1 月 1 日から 15 日) 支給 1 = 155 スライス 2 (1 月 16 日から 31 日) 支給 1 = 310 デルタ = 155 [(155 + 310) - 310] |
セグメント 1 (2 月 1 日から 28 日) 支給 1 = 620 デルタ = 310 (620 - 310) |
期間 1 の V1R2 で作成されたデルタ 155 は、期間 3 の V1R1 のセグメント 1 に繰り越されます。
期間 2 の V1R2 で作成されたデルタ 310 は、期間 3 の V1R1 のセグメント 1 に繰り越されます。
期間 1 の遡及デルタが計算される際に、期間 1 の支給 1 の古い値 310 がスライス 1 とスライス 2 の支給 1 の合計 (155 + 320) から減算されます。分割を伴わない遡及の場合と同じように、全てのデルタが現在の期間、つまり 3 月に遡及マッチング条件を使用して繰り越されます。
例 2: 遡及と期間分割の組み合わせ
以下の期間分割を伴う遡及の例では、分割された再計算期間から分割された現在の期間に遡及デルタが繰り越される方法を示しています。ここでは、遡及マッチング条件を使用して、繰越先には最初のスライスまたはセグメントが選択されています。
シナリオ:
1 月 16 日付けで部門 ID が部門 A から部門 B に変更されたために期間 3 で期間 1 にさかのぼる遡及を処理する際に、1 月の再計算カレンダーで期間分割が発生しています (元の期間は分割されていなかったものとします)。
支給 1 の値は、3 月に月額 310 から月額 620 に増加したため、1 月 1 日にさかのぼって遡及を行います (支給 1 は比例配分されるように定義されているとします)。
3 月 16 日に部門 ID が部門 B から部門 C に変更されます。これは、現在の期間のみに影響するため、現在のカレンダーが分割されます。
画像: 再計算期間と現在のカレンダーの期間分割の例
下記の図は、再計算期間と現在のカレンダーの両方における期間分割の例を示しています。支給キーはなく、遡及マッチング条件は満たされています。

期間 1 |
期間 2 |
期間 3 |
---|---|---|
V1R1 |
V1R1 |
V1R1 |
セグメント 1 (1 月 1 日から 31 日)/部門A 支給 1 = 310 |
セグメント 1 (2 月 1 日から 28 日)/部門A 支給 1 = 310 |
セグメント 1 (3 月 1 日から 15 日)/部門B 支給 1 = 930 [310 + (310 + 310)] セグメント 2 (3 月 16 日から 31 日)/部門C 支給 1 = 310 |
V1R2 |
V1R2 |
|
セグメント 1 (1 月 1 日から 31 日)/部門A 支給 1 (取り消しセグメント) = <310> セグメント 2 (1 月 1 日から 15 日)/部門A 支給 1 = 310 セグメント 3 (1 月 16 日から 31 日)/部門B 支給 1 = 310 デルタ = 310 [(310 + 310) - 310] |
セグメント 1 (2 月 1 日から 28 日)/部門B 支給 1 = 620 デルタ = 310 (620 - 310) |
期間 1 の V1R2 で作成されたデルタ 310 は、期間 3 の V1R1 のセグメント 1 に繰り越されます。
期間 2 の V1R2 で作成されたデルタ 310 は、期間 3 の V1R1 のセグメント 1 に繰り越されます。
1 月に対する遡及デルタの計算では、取り消しセグメントであるセグメント 1 のデルタがセグメント 2 および 3 と合計されます。そして、2 月のデルタが計算されるときは、V1R2 の支給 1 の値から V1R1 の支給 1 の値が減算されます。その後、1 月および 2 月の再計算期間からのデルタ (310 + 310) が、遡及マッチング条件を満たす現在のカレンダー、つまり 3 月の給与計算カレンダーの最初のセグメントに繰り越されます。
例 3: 遡及と期間分割の組み合わせ - 支給キー使用の場合
以下のシナリオでは、遡及マッチング条件が満たされ、標準遡及マッチング条件に加えて支給キーが定義されている場合の遡及デルタの処理方法を示しています。ただし、再計算期間の支給キーは、現在のカレンダーの支給キーと一致していません。
シナリオ:
支給 1 の値は、3 月に月額 310 から月額 620 に増加したため、1 月 1 日にさかのぼって遡及を行います。これによって、1 月および 2 月のカレンダーが再計算されます。
3 月 1 日に受給者は会社 ABC から会社 DEF に移ります。会社 ID が、支給キーとして定義されています。
3 月 16 日に部門 ID が部門 A から部門 B に変更されます。これは、現在の期間のみに影響するため、現在のカレンダーが分割されます。
画像: 会社が支給キーとして定義され、遡及マッチング条件が満たされている場合の例
次の図は、会社が支給キーとして定義された場合の例です。

期間 1 |
期間 2 |
期間 3 |
---|---|---|
V1R1 |
V1R1 |
V1R1 |
セグメント 1 (1 月 1 日から 31 日)、部門 A、会社 ABC 支給 1 = 310 |
セグメント 1 (2 月 1 日から 28 日)、部門 A、会社 ABC 支給 1 = 310 |
セグメント 1 (3 月 1 日から 15 日)、部門 A、会社 DEF 支給 1 = 310 セグメント 2 (3 月 16 日から 31 日)、部門 B、会社 DEF 支給 1 = 310 セグメント 3 (3 月 1 日から 31 日)、部門 A、会社 ABC 支給 1 = 620 (310 + 310) |
V1R2 |
V1R2 |
|
セグメント 1 (1 月 1 日から 31 日)、部門 A、会社 ABC 支給 1 = 620 デルタ = 310 (620 - 310) |
セグメント 1 (2 月 1 日から 28 日)、部門 A、会社 ABC 支給 1 = 620 デルタ = 310 (620 - 310) |
期間 1 の V1R2 で作成されたデルタ 310 は、期間 3 の V1R1 のセグメント 3 に繰り越されます。
期間 2 の V1R2 で作成されたデルタ 310 は、期間 3 の V1R1 のセグメント 3 に繰り越されます。
1 月および 2 月の遡及デルタが最初に計算される際には、遡及マッチング条件を基に、現在のカレンダー (3 月) の最初のセグメントへのこれらの遡及デルタの繰り越しが試行されます。しかし、これらのデルタは会社 ABC の従業員に対して作成されていますが、この従業員は 3 月 1 日付けで会社を移り、現在は会社 DEF に属しています。会社は支給キーとして定義されているので、他の遡及マッチング条件が全て満たされていても、デルタは現在のカレンダー (3 月) の最初のセグメントに繰り越されません。その代わりに、3 月の支給期間と同じ開始日と終了日を持つ別のセグメントが作成され、デルタがこの新しいセグメントに移されます。
注: これらの例では、繰越遡及だけを扱っています。これは、遡及方法が訂正で、エレメントを繰り越すように定義していない限り、現在の期間で処理される調整が繰越遡及でしか生成されないためです。分割と訂正遡及の組み合わせの場合は、上の例と同じように遡及デルタが計算されます。ただし、繰越遡及と異なり、そのエレメントに対して再計算された値は前回の計算値と置き換えられます。前回計算済みの期間と再計算済みの期間との純支給額の差は、銀行振込処理によって処理されます。
支給キーは、遡及処理の際、調整値がどのように現在の期間に繰り越されるかに影響します。
「組織構造について」を参照してください。
支給キーと繰越
現在の期間の支給キーが、再計算される期間の支給キーと一致しない場合、調整は現在のカレンダー期間の別の総額/純額として管理される必要があります。たとえば、会社が支給キーとして定義されているとします。会社 ABC で勤務する受給者が、現在の期間に会社 DEF に移ります。このような場合、受給者が会社 ABC に所属していた前回の期間にさかのぼる遡及処理と、受給者の前回のカレンダーから現在の期間のカレンダーへの調整値の繰越が可能です。調整値は会社 ABC に関連付けられており、現在の期間は会社 DEF に関連付けられています。この状況では、調整値は現在の期間の別の総額/純額として管理されます。
調整値の繰越の有無や繰越先が決定されるときには、以下の処理が行われます。
遡及マッチング条件が満たされているかどうかが判断されます。
マッチング条件が満たされている場合は、遡及デルタが調整値として現在の期間に繰り越されます。
会社 ID、契約番号、事業所、部門 ID などの条件に基づいて、支給キーが定義されているかどうかが確認されます。
支給キーが定義されている場合は、これらのキーが確認され、調整値の繰越先が決定されます。繰り越された調整値に関連付けられている支給キーの値が現在の期間での支給キーの値と等しい場合、調整値は、支給キーが一致する現在の期間の最初のセグメントに繰り越されます。そのセグメントにスライスが含まれる場合は、そのセグメントの最初のスライスに調整値が繰り越されます。
一致する支給キーを持つセグメントが見つからない場合は、調整値の繰越先として現在の期間に新しいセグメントが作成されます。
調整値は、現在の期間の別の総額/純額として管理されます。現在の期間が分割されているかどうかにかかわらず、新しいセグメントの日付はそのカレンダー期間全体の日付と同じになります。
新しいセグメントは、非アクティブ セグメントのステータスで、ほかの全ての総額/純額計算と同様にプロセス リストに従って処理されます。支給と控除は、このセグメントで再び処理されます。計算結果は、このタイプのセグメントに期待されるものではない場合もあります。このセグメントで支給と控除の再処理を防ぐ場合は、ジェネレーション コントロール エレメントを定義して、セグメント ステータスが非アクティブ セグメントのセグメントを除外できます。
このカレンダーを対象とするポジティブ入力 (PI) は、全ての作成済みのポジティブ入力トピックと同様に、ジェネレーション コントロールにかかわらず、非アクティブ セグメントのセグメントで再び処理されることはありません。
「計算エレメントについて」、「エレメントの処理について」、「ポジティブ入力について」を参照してください。
例 1: 支給キー値に変更がない場合
現在の期間の支給キーが再計算期間の支給キーと一致する場合、調整値は現在の期間に繰り越されます。新しいセグメントは作成されません。以下の例で、1 月にさかのぼる 2 月の遡及について考えてみます。
シナリオ:
会社 ID が、支給キーとして定義されています。
受給者の支給 (支給 1) は、1 月にさかのぼって 500 から 900 に変更されます。この結果、期間 1 は再計算される必要があります。
画像: 支給キーの値に変更がない場合
次の図は、支給キー値に変更がない場合の給与計算の例です。

期間 1 |
期間 2 |
---|---|
V1R1 |
V1R1 |
セグメント 1 (1 月 1 日から 31 日)/会社 ABC 支給 1 = 500 |
セグメント 1 (2 月 1 日から 28 日)/会社 ABC 支給 1 = 1300 (900 + 400) |
V1R2 |
|
セグメント 1 (1 月 1 日から 31 日)/会社 ABC 支給 1 = 900 デルタ = 400 (900 - 500) |
期間 1 の V1R2 で作成されたデルタ 400 は、期間 2 の V1R1 のセグメント 1 に繰り越されます。
「再計算カレンダーの管理」を参照してください。
例 2: 現在のカレンダー期間で支給キー値に変更がある場合
現在の期間の支給キーが、再計算された期間の支給キーと一致しない場合は、調整値が繰り越される新しいセグメントが現在の期間に作成されます。以下の例で、1 月にさかのぼる 2 月の遡及について考えてみます。
シナリオ:
会社 ID が、支給キーとして定義されています。
受給者の支給 (支給 1) は、1 月にさかのぼって 500 から 900 に変更されます。この結果、期間 1 は再計算される必要があります。
2 月 1 日付けで、受給者は会社 ABC から会社 DEF に移ります。
画像: 支給キーの値の変更がある場合
次の図は、現在のカレンダー期間で支給キー値に変更がある場合の給与計算の例です。

期間 1 |
期間 2 |
---|---|
V1R1 |
V1R1 |
セグメント 1 (1 月 1 日から 31 日)/会社 ABC 支給 1 = 500 |
セグメント 1 (2 月 1 日から 28 日)/会社 DEF 支給 1 = 900 セグメント 2 (2 月 1 日から 28 日)/会社 ABC 支給 1 = 400 |
V1R2 |
|
セグメント 1 (1 月 1 日から 31 日)/会社 ABC 支給 1 = 900 デルタ = 400 (900 - 500) |
期間 1 の V1R2 で作成されたデルタ 400 は、期間 2 の V1R1 のセグメント 2 に繰り越されます。
この例での受給者は 2 月に会社 ABC から会社 DEF に移っているため、現在のカレンダー (2 月) の支給キーは再計算されたカレンダー (1 月) の支給キーとは一致しなくなっています。その結果、期間 1 の V1R2 からの調整値が繰り越される新しいセグメント (セグメント 2) が 2 月に自動的に作成されます。この新しいセグメントの開始日および終了日は、現在の期間 (2 月 1 日から 28 日) と同じになります。
「再計算カレンダーの管理」を参照してください。
支給キーと遡及デルタ
定義済みの支給キーの値がさかのぼって変更された場合、支給キーの一方のセットに関連付けられたカレンダーは値が変更された支給キーを使用して再処理される必要があり、この状況は、セグメントの不一致と判断されます。前回の期間と現在の期間の間で支給キーが一致するセグメントがなければ、古い支給キーのデルタから求められた調整値を繰り越すために、現在の期間に新しいセグメントが作成されます。以下の例でこの処理を説明します。
シナリオ:
受給者は、2 月に会社 ABC から会社 DEF に移っています。この変更は、1 月までさかのぼって行われます。
会社 ID が、支給キーとして定義されています。
この受給者の支給 (支給 1) は、1 月にさかのぼって 500 から 900 に変更されます。この結果、期間 1 は再計算される必要があります。
画像: 支給キーと遡及デルタ
次の図は、給与計算中にセグメントの不一致が発生した場合の例です。

期間 1 |
期間 2 |
---|---|
V1R1 |
V1R1 |
セグメント 1 (1 月 1 日から 31 日)/会社 ABC 支給 1 = 500 |
セグメント 1 (2 月 1 日から 28 日)/会社 DEF 支給 1 = 1800 (900 + 900) セグメント 2 (2 月 1 日から 28 日)/会社 ABC E1= <500> |
V1R2 |
|
セグメント 1 (1 月 1 日から 31 日)/会社 ABC 支給 1 (取り消しセグメント) = 0 セグメント 2 (1 月 1 日から 31 日)/会社 DEF 支給 1 (再計算セグメント) = 900 デルタ = <500>、会社 ABC デルタ = 900、会社 DEF |
期間 1 の V1R2 で作成されたデルタ <500> は、期間 2 の V1R1 のセグメント 2 に繰り越されます。
期間 1 の V1R2 で作成されたデルタ 900 は、期間 2 の V1R1 のセグメント 1 に繰り越されます。
1 月の支給 1 の遡及デルタの計算では、通常の計算 (支給 1 の古い値 500 と支給 1 の新しい値 900 を照合し、900 - 500 = 400 のように差分を算出) が行われません。別のセグメントに属している支給 1 の古いバージョンと新しいバージョンは、それぞれ異なる支給キーにリンクされているので、対応関係はなくなります。デルタを求めるには、まず V1R1 の支給 1 の古い値を取り消す必要があります。つまり、期間 1 の支給 1 の前回の計算は、新しいセグメントの中に対応する値がないものとして扱われ、0 から 500 が減算され負の値 -500 が生成されます。同様に、期間 1 の支給 1 の新しい計算は、古いセグメントの中に対応する値がないと見なされるので、900 から 0 が減算され、新しい支給 1 の値 900 が生成されます。
注: 分割されていて、再計算期間のセグメント日が元の期間のセグメント日と一致しない場合も、"セグメントの不一致" が発生します。
支給キーによるデルタの合計
前述の例では、重要なルールを示しています。つまり、デルタの合計と繰越を行う場合、合計されるのは同じ支給キーを持つデルタのみであり、1 つの支給キーのセットに関連付けられているデルタを、別のキーに関連付けられているエレメントに繰り越すことはできないということです。前述の例では、期間 1 の V1R2 で作成されたデルタ (<500>) は、期間 1 の V1R2 で作成されたデルタ 900 に加算されません。これは、これらのデルタがそれぞれ異なる支給キーに関連付けられているためです。
ポジティブ入力のインスタンスを修正するには、元の入力を行った支給期間で調整を行います。たとえば、現在 7 月であるとして、5 月に行ったポジティブ入力を修正する必要がある場合は、5 月のカレンダーのポジティブ入力ページにアクセスして、該当するインスタンスを追加、削除、または修正します。
オンラインでの変更が検出されるように遡及トリガを定義した場合は、その受給者の次の給与計算サイクルを実行する際に、この変更を使用してカレンダー期間が再計算されます。
雇用終了、支給グループの異動、または給与計算システムの変更をさかのぼって行う際に遡及削除が発生します。これらの場合には全て、変更が実際に有効になってから、そのことを知らされることになります。結果として、本来計算されるべきではない期間について総額/純額が計算されてしまうため、その計算結果を完全に取り消す必要があります。
例 1: 繰越遡及を伴う支給グループの異動
シナリオ:
期間 1 で、受給者は支給グループ A に属します。支給 1 = 100 です。
期間 2 で、この受給者は期間をさかのぼって支給グループ A から支給グループ B へ異動します。この異動は期間 1 から有効になります。支給 1 = 200 です。
期間 2 で期間 1 にさかのぼって処理するために遡及計算を実行します。
期間 1 - 支給グループ A のカレンダー |
---|
V1R1 |
セグメント 1 支給 1 = 100 |
V1R2 |
セグメント 1/支給グループ A 支給 1 (取り消しセグメント) = 0 デルタ = <100> |
期間 1 の V1R2 の支給 1 は、完全に取り消されます。この受給者は、支給グループ A のこの期間に対して総額/純額が計算される必要がないため、新しいセグメントは作成されません。
期間 1 の V1R2 に対する支給 1 のデルタ <100> は、受給者が既に支給グループ A に属していないため、現在のカレンダー (期間 2) について処理されません。現在のカレンダーの支給グループが B である場合、手動で未処理のデルタを支給グループ B の繰越先カレンダーに割り当てるまでは、このデルタは調整値として繰り越されません。
採用または支給グループの異動がさかのぼって行われる場合は、遡及追加が発生します。遡及を伴う採用では、前回の計算 (前回の総額/純額) はありません。遡及を伴う支給グループ異動の場合、遡及追加では、受給者の異動先の支給グループが照会されます。
例 1: 繰越遡及を伴う遡及追加
シナリオ:
期間 2 で、新しい受給者を期間 1 で採用したという情報を受け取りました。
最初の遡及計算では、期間 2 で期間 1 にさかのぼって処理を行います。
期間 1 |
期間 2 |
---|---|
V1R1 |
V1R1 |
存在せず。 |
セグメント 1 支給 1 = 200 (100 + 100) |
V1R2 |
|
セグメント 1 支給 1 = 100 デルタ = 100 |
期間 1 の V1R2 は、この期間の遡及処理を表しています。バージョン番号 1 が存在しない場合でも、レビジョン番号は 2 となります。これは遡及方法が繰越のため、再計算が正しい結果を表さないためです。
期間 1 の V1R2 のデルタは、期間 2 の V1R1 へ調整値として繰り越されます。
グローバル ペイロールでは、カレンダーが遡及のために再処理される場合、最初に処理を行ったときの通貨を使用します。このことは、遡及処理では、支給期間の元の計算と同一の通貨を使用して前回の期間を再計算する必要があるため、重要と言えます。たとえば、再計算期間と現在の期間で支給元レベルで処理通貨を変更した場合でも、新しい値と古い値の差は元の計算の通貨で計算されます。つまり、遡及デルタは繰越先期間の処理通貨に換算されるということです。通貨の換算には、現在のセグメントの為替レート情報 (受給者レベルで定義された為替レート タイプと為替レート有効日) が使用されます。
たとえば、1998 年 1 月から 1998 年 6 月まで、通貨をフランス フラン (FRF) に設定したとします。7 月に、会社はユーロの使用を決定しました。7 月に、受給者に対し 1998 年 6 月に対する遡及があります。再計算に関する全ての処理が、フランス フランを使用して行われます。デルタが計算される場合は、まず FRF を使って計算され、その後現在のセグメントと同じ為替レート情報を使ってユーロに換算されます。遡及調整は、現在の期間にユーロ換算で繰り越されます。