この章では、次の項でこのリリースの新機能について説明します。
Warehouse Builderアーキテクチャの強化: 1つに統合されたリポジトリ
Warehouse Builderの以前のリリースでは、実行環境と設計環境には、実行リポジトリと設計リポジトリという別々のリポジトリが存在していました。このリリースから、両方の環境は単一のWarehouse Builderリポジトリを共有します。両方の環境を分ける必要がある場合には、複数のリポジトリを作成します。
ユーザー・インタフェースの強化
Warehouse Builderの以前のリリースでは、異なるタイプのオブジェクトを編集するには、異なるエディタを使用する必要がありました。このリリースでは、自動レイアウト、ドッキング可能なパネル、鳥瞰図、ズーム機能など、すべてのエディタに対応する1つの共通のルック・アンド・フィールが用意されています。新規のプロパティ・インスペクタでは、すべてのオブジェクトのプロパティ・インタフェースが標準化されています。
Oracle以外のデータおよびメタデータへのアクセスの強化
フラット・ファイル・ターゲットの作成: 以前のリリースでは、インポートするための既存のメタデータが存在しない新規フラット・ファイル・ターゲットを作成する場合、マッピング・エディタを使用していました。バインドされていないフラット・ファイル演算子をマッピング・キャンバスに追加し、演算子エディタを使用してフラットファイル用のフィールドを追加および定義していました。このリリースからは、フラット・ファイルの作成ウィザードを使用する方法をお薦めします。以前の方法と比較すると、フラット・ファイルの作成ウィザードを使用すれば、キャラクタ・セットの指定、1つまたは複数のレコード・タイプの定義など幅広い機能を利用できます。
ASCII以外のフラット・ファイルの取込み: 以前のリリースでは、Warehouse Builderへのバイナリ・ファイルのインポートは、ファイルの複雑さによっては非常に困難であるか、実行できませんでした。このリリースから、第14章「フラット・ファイルと外部表の定義」で説明するように、フラット・ファイルの作成ウィザードを使用して、ASCII以外のファイルをWarehouse Builderに取り込むことができます。
ASCIIフラット・ファイルのサンプリング: このリリースでは、GRAPHIC、RAW、SMALLINTなど新しいデータ型のサンプリングおよびインポートを含む機能が、フラット・ファイル・サンプル・ウィザードに追加されました。
カスタム・メタデータ・インタフェース: Warehouse Builderのこのリリースからは、第16章「データ定義のインポート」で説明するように、SQLベースまたはXMLベースのカスタム・メタデータ・ストアを定義および使用して、表やビューなどのソース・オブジェクトおよびターゲット・オブジェクトの定義を取得できます。
リモート・ターゲットおよびOracle以外のターゲットへの配布: このリリースから、リモート・データベースまたはOracle以外のデータベースにオブジェクトを配布できます。つまり、リモートのOracleのロケーションまたはOracle以外のロケーションを参照するマッピングに、ターゲット演算子を構成できます。
メタデータ管理の強化
影響分析および変更管理: 現在、Warehouse Builderでは、提案されたメタデータの変更に対して考えられる結果を分析するためのグラフィカル・ツールが提供されています。第31章「メタデータの依存性管理」で説明するように、提案された変更に対して考えられるコストを算出します。
ユーザー定義プロパティ(UDP)の定義: 以前のリリースでは、UDPを既存のWarehouse Builderリポジトリ・オブジェクトにしか割り当てることができませんでした。OMB Plusスクリプト・コマンドOMBDEFINEを使用してUDPを定義し、新規プロパティ名に接頭辞としてUDP_を付けていました。このリリースから、新規プロパティの他に、新規オブジェクトを定義できます。すべてのユーザー定義オブジェクトおよびプロパティに、接頭辞としてUD_を付けます。以前のリリースで接頭辞UDP_を使用して定義されたプロパティはすべて現在も有効です。ただし、現行ではプロパティおよびオブジェクトの接頭辞としてUD_を使用することをお薦めします。詳細は、第34章「Warehouse Builderリポジトリの拡張」を参照してください。
新規ユーザー定義オブジェクト: このリリースから、新規フォルダ、ファースト・クラス・オブジェクトおよびセカンド・クラス・オブジェクトを定義できます。各オブジェクトに対して、プロパティおよびアソシエーションの定義、Warehouse Builderリポジトリでの管理、および一意に認識するためのカスタム・アイコンの割当てを行うことができます。ユーザー定義オブジェクトはリポジトリ・オブジェクトであるため、メタデータ・レポートや系統および影響分析にアクセスできます。詳細は、第34章「Warehouse Builderリポジトリの拡張」を参照してください。
ユーザー定義アイコン: 既存のオブジェクトおよびユーザー定義オブジェクトのユーザー・インタフェースで、一意に表示するためのカスタム・アイコンをインポートできます。詳細は、第34章「Warehouse Builderリポジトリの拡張」を参照してください。
メタデータのセキュリティの強化
Warehouse Builderでは、このリリースから、メタデータ・セキュリティ・ポリシーの定義および実装のためのユーザー・インタフェースが提供されています。
ETL設計およびパフォーマンスの強化
スケジュール済プロセスの実行: 以前のリリースでは、Oracle Workflowを使用して、Warehouse Builderのマッピングおよびプロセス・フローの実行をスケジュールする必要がありました。このリリースから、Oracle Databaseリリース10g以上を使用する場合、マッピングおよびプロセス・フローの実行時間および実行頻度を計画するスケジュールを作成できます。第28章「ETLオブジェクトのスケジューリング」で説明するように、スケジュールは、1度実行するように定義するか、またはユーザー・インタフェースで定義する間隔に基づいて繰返し実行するように定義できます。
リモート・ソースからのデータ抽出における高いパフォーマンス: 以前のリリースでは、リモート・ソースからデータを抽出するマッピングを設計した場合に、データベース・リンクを介してデータにアクセスするため、パフォーマンスが低下する可能性がありました。このリリースから、第23章「大量データの移動」で説明するように、トランスポータブル・モジュールを使用してリモートのOracleデータベースをローカルのOracleデータベースにレプリケートできるので、高速にデータを抽出できます。
プラッガブル・マッピング: このWarehouse Builderの新機能により、様々なETLプロセスの組込みまたは設計担当者間での共有を可能にする再利用可能なロジックを通じて設計の生産性が向上します。詳細は、第6章「マッピングの作成」を参照してください。
セット・ベースの更新: 以前のリリースでは、UPDATEロード・タイプを使用してロードするようOracleターゲット演算子を設定すると、Warehouse Builderではターゲットが行ベース・モードで更新されました。このリリースから、10gのPL/SQLコードを生成するようOracleターゲット・モジュールを構成する場合、セット・ベース・モードで更新が実行されます。9i以下のバージョンのPL/SQLコードを生成するよう構成されたモジュールの場合、ターゲットの更新が行ベース・モードで実行されます。
ユーザー定義データ型: Warehouse Builderでは、このリリースから、ユーザー定義データ型を作成してWarehouse Builderでマッピングに使用するためのユーザー・インタフェースが提供されています。ユーザー定義型を使用して、データベースのオブジェクトとして顧客および発注などの実際のエンティティをモデル化できます。
品質情報の有効化に向けた強化
緩やかに変化するディメンション(SCD): Warehouse Builderでは、リレーショナル・タイプ1、2、および3のSCDの設計、配布およびロードがサポートされています。SCDの定義については、第13章「ディメンション・オブジェクトの定義」を参照してください。ディメンション演算子を使用したSCDへのデータのロードまたはSCDからのデータの取得については、第25章「ソース演算子とターゲット演算子」を参照してください。
新規のソースおよびターゲット: PL/SQLおよびJava APIを使用して、ソースからのデータの読込みまたはターゲットへのデータの書込みを行うことができます。また、テーブル・ファンクションおよびOracleストリームに対するデータの読込みまたは書込みを行うこともできます。
データ・プロファイリング: このWarehouse Builderの新機能により、BIシステムにロードする前に、データの構造内容の検出、セマンティクスの取得、および異常値または外れ値の判別を行うことができます。データ・プロファイリングでは、データ・クリーン用のビジネス・ルールおよびマッピングの導出、シックスシグマなどの品質索引の導出、および監査を使用した継続的なデータ品質のモニターを自動的に行うことができます。データ・プロファイリングをETLプロセスに統合できます。
ビジネス・インテリジェンスの有効化
ディメンション・オブジェクト: 以前のリリースでは、アナリティック・ワークスペースにディメンション・オブジェクトを配布するには、OLAPブリッジを使用する必要がありました。このリリースから、ディメンション・オブジェクトの論理設計は記憶域から切り離されました。同じメタデータを使用してリレーショナルとマルチディメンショナルの両方のデータ・ストアを作成および管理できます。ディメンション・オブジェクトを定義したら、それをリレーショナル・スキーマまたはアナリティック・ワークスペースに直接配布できます。ディメンション・オブジェクトの作成方法については、第13章「ディメンション・オブジェクトの定義」を参照してください。
ビジネス・インテリジェンス・オブジェクト: このリリースから、Oracle BI DiscovererおよびOracle BI Beansなどの分析用ビジネス・インテリジェンス・ツールと統合可能なビジネス・インテリジェンス・オブジェクトを定義または導出できます。Warehouse Builderを使用して定義したビジネス・インテリジェンス・オブジェクトをこれらのツールに配布して、ウェアハウス・データで特定の問合せを実行できます。ビジネス・インテリジェンス・オブジェクトの使用方法については、第15章「ビジネス・インテリジェンス・オブジェクトの定義」を参照してください。
専門技術の取込みに向けた強化
このリリースから、Warehouse Builderのコンポーネントを再利用して、独自のアプリケーションを作成可能にするエキスパートを作成できます。エキスパートは、エンドユーザーにより実行されるルーチン・タスクまたは複雑なタスクを簡易化するソリューションを、上級ユーザーが設計できるようにするソリューションです。エクスパートの使用方法については、第35章「最優良用法の実装」を参照してください。
用語の変更
調整から同期化に変更: Warehouse Builderでは、ソースおよびターゲット演算子、またはキー参照などの演算子の場合、リポジトリにオブジェクトのバージョンが保持されます。演算子とそのリポジトリ・オブジェクト間における変更の伝播は同期化と呼ばれます。以前のリリースでは、このプロセスは調整またはリコンシリエーションと呼ばれていました。今後、これらの用語は使用されません。
同期化からリフレッシュに変更: 複数のユーザーが同じリポジトリにアクセスする場合は、リフレッシュ・コマンドを使用してデザイン・センターの表示を更新します。以前のリリースでは、このコマンドは同期化と呼ばれていました。同期化は、現在、演算子と関連付けられたリポジトリ・オブジェクト間の更新処理を示します。
外部プロセスからユーザー定義プロセスに変更: 以前のリリースでは、外部プロセスを起動するためにプロセス・フローに定義したアクティビティは、外部プロセス・アクティビティと呼ばれていました。このリリースで、この用語はユーザー定義プロセスになりました。
ドキュメント・セットに対する改善
ドキュメント・セットが再編成され、改訂されました。
以前はOracle Warehouse Builderインストレーションおよび構成ガイドというタイトルだったマニュアルは、Oracle Warehouse Builderインストレーションおよび管理ガイドというタイトルになり、セキュリティの実装などの管理情報が記載されています。
Oracle Warehouse Builderユーザーズ・ガイドには、改訂された概要と概念情報が記載されています。
Oracle Warehouse Builder APIおよびスクリプト・リファレンスには、以前はユーザーズ・ガイドに記載されていたエキスパートおよびエキスパート・エディタの使用方法に関する情報が記載されています。