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Oracle® Fusion Middleware Oracle WebCenter Portal開発者ガイド
11g リリース1 (11.1.1.6.0)
B72084-01
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2 Oracle WebCenter Portalの概要

この章では、Oracle WebCenter Portalの概要について説明します。この章は、WebCenterテクノロジを使用してアプリケーションを作成するときに、考慮する必要のある事項について理解するために役立ちます。

この章の内容は、次のとおりです。

対象読者

この章は、Frameworkアプリケーションの開発者を対象としています。開発者は、この章をよく読んで、どのようなオプションが使用できるかを見定める必要があります。

2.1 Oracle WebCenter Portalとは

Oracle WebCenter Portalは、企業ポータル、商取引用Webサイト、およびソーシャル・ネットワーク・サイトを構築するための設計時ツールと実行時ツールを提供しています。WebCenterの一般的なユース・ケースとして、従業員用イントラネット、顧客用エクストラネット、ダッシュボード、ブログやWiki、コミュニティ・ディスカッション・フォーラム、オンライン・ストアなどがあげられます。WebCenterには、このようなアプリケーションの作成に必要なツールが用意されています。

図2-1は、この製品を構成する主要コンポーネントを示して、Oracle WebCenter Portalアーキテクチャの概要を説明しています。

図2-1 Oracle WebCenter Portalアーキテクチャの概要

図2-1の説明が続きます
「図2-1 Oracle WebCenter Portalアーキテクチャの概要」の説明

2.2 WebCenter Portal: Frameworkの概要

Oracle WebCenter Portal: Frameworkは、ポータル固有の機能をFrameworkアプリケーションに提供します。これらの機能には、ページ階層、ナビゲーション・モデル、委任セキュリティ、カスタマイズなどが含まれます。ポータルには、ポートレット、コンテンツ管理システムの統合、パーソナライズ、ソーシャル・コンピューティング・サービス、検索、分析などの機能を含めることもできます。

エンド・ユーザーから見ると、ポータルは、タブなどのナビゲーション・フォームで編成されたページを持つWebサイトです。各ページには、ポートレット、静的コンテンツ、動的コンテンツ、タスク・フローなどが含まれます。また、許可されているユーザーは、独自のページを追加したり、各自が選択したポートレットを追加したり、インタフェースのルック・アンド・フィールを変更することで、ポータルのビューをカスタマイズできます。

Oracle WebCenter Portal: Frameworkの全体的な概要は、第9章「Frameworkアプリケーションの概要」を参照してください。

2.3 WebCenter Portal: Frameworkの主な機能

この項では、Frameworkアプリケーションで使用できる、いくつかの主な機能について説明します。これらの機能では、リモート・アプリケーションの統合、ページのカスタマイズ、コンテンツの統合、パーソナライズ、セキュリティなどをサポートします。

2.3.1 リモートのアプリケーションおよびサービスにアクセスするためのポートレットとページレット

このセクションでは、ポートレットとページレットという2つのテクノロジについて説明します。これらを使用すると、リモートのアプリケーションをポータル・ページに統合できます。

2.3.1.1 ポートレットとは

ポートレットとは、各種ソースからのコンテンツを描画できる、再利用可能なWebコンテンツです。ポートレットは、複数のソースからのデータを意味のある関連した方法で提示する手段を提供します。ポートレットでは、他のWebサイトからの抜粋の表示、主要情報のサマリーの生成、検索の実行および多様なデータソースの情報を収集したコレクションへのアクセスなどを実行できます。共通のページに様々なポートレットを配置できるため、ユーザーは単一のソースとして利用できます。実際には、コンテンツは複数のソースから導出されています。

WebCenter Portalで使用可能な作成済ポートレットを含む、ポートレットの様々な作成方法および使用方法は、第58章「ポートレットの概要」を参照してください。ポートレットをページで利用する方法およびポートレットをリンクする方法の詳細は、第64章「ポートレットの消費」を参照してください。

2.3.1.2 ページレットとは

ページレットとは、ポートレットと同様の再利用可能なユーザー・インタフェース・コンポーネントです。ただし、ポートレットはポータル専用に設計されていますが、ページレットはポータルやその他のWebアプリケーションなど、どのようなWebページ上でも実行できます。ページレットを使用すると、他のWeb環境にあるプラットフォーム固有のポートレットを公開できます。任意のHTMLの断片をページレットにすることができますが、ページレットの開発者は、ポートレットの開発者が使用できる多くの機能を利用して、パラメータ化した構成可能なページレットを作成することもできます。このようなページレットは、別のページレットと動的に相互作用し、Ajaxパターンを使用してユーザーの入力に応答します。

Oracle WebCenter Portalのページレット・プロデューサは、動的ページレットの開発を容易にする有用なツールと機能のコレクションを提供します。ページレット・プロデューサを使用したページレットの開発および構成の詳細は、第63章「Oracle WebCenter Portalのページレット・プロデューサを使用したページレットの作成」を参照してください。

2.3.1.3 ポートレットとタスク・フローの相違点

第2.3.1.1項「ポートレットとは」で説明したように、ポートレットは、各種のソースからのコンテンツを描画できる、再利用可能なWebコンポーネントです。ポートレットでは、静的HTMLから、複雑なWebサービスや処理負荷の高いアプリケーションのためのJavaのコントロールまで、どのようなものでも管理と表示が可能です。

1つのポータルに、複数のインスタンスを含めることもできます。つまり、ポートレットは1つのポータル内の様々なページに表示することも、そのポートレットのWeb Services for Remote Portlets (WSRP)が有効にされている場合は、複数のポータルに表示することもできるということです。ポートレットは、特定のユーザーやグループのニーズを満たすようにカスタマイズできます。

タスク・フローを使用すると、カスタマイズ可能なアプリケーションを、再使用可能なビジネス・ロジックのユニットで作成できます。これは、アプリケーションの制御フローをモジュール単位で定義するアプローチを意味します。それぞれのタスク・フローは、再利用可能な1つのビジネス・ロジックを表します。メモリーとトランザクションのスコープが分離されているため、タスク・フローとそれを囲むアプリケーションは分離されています。この分離より、Oracle WebCenter Portalのコンポーザなどにタスク・フローを含めることができます。

タスク・フローは、制御フローのルール、アクティビティおよびマネージドBeanをカプセル化して、ビジネス・モジュールを実装します。WebCenter Portalのアプリケーションでは、簡単にタスク・フローを再利用できます。タスク・フローは、カスタマイズ可能な任意のWebLogic Portalアプリケーション・ページにドラッグ・アンド・ドロップできます。このような意味で、タスク・フローは、任意のADFアプリケーションでの再利用や削除が可能な論理ポートレットとみなすことができます。

タスク・フローはビジネス・プロセスの高水準の実装ですが、データアクセスやビジネス・ロジックをホストすることはありません。そのためには、タスク・フローがデータ・コントロールや宣言バインディングと相互作用する必要があります。さらに、これらのデータ・コントロールやバインディングは、ADF Business Componentsフレームワークと相互作用します。

Oracleが提案した標準規格のJSR 329に従うことで、タスク・フローは標準ベースのポートレットとして公開できます。この方法では、1つのアプリケーションにベース・アプリケーション機能と、統合に利用するポートレットの両方を含めます。アプリケーションを改訂すると、その改訂に合せてポートレットは無理なく自動的に更新されます。個別の開発プロジェクトは必要ありません。JSR 329をサポートするために、Oracle WebCenter Portal: Frameworkでは、Oracle JSF Portlet Bridgeを提供しています。Oracle JSF Portlet Bridgeの詳細は、第59章「Oracle JSF Portlet Bridgeを使用したポートレットの作成」を参照してください。

タスク・フローをポートレットとして利用するだけでなく、タスク・フローをJSFアプリケーションの共有ライブラリとして利用することもできます。これにより、これらのJSFの断片を直接埋め込めるようになります。タスク・フローは、そのタスク・フローを含むアプリケーションの他の機能とともに、トランザクションでラップできます。詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Fusion開発者ガイド』の第14章「ADFタスク・フローの概説」を参照してください。

2.3.2 ユーザー・カスタマイズが可能なOracle WebCenter Portalのコンポーザ

コンポーザは、既存のJSFアプリケーションに追加できる、簡単なブラウザベースの環境です。エンド・ユーザーは、コンポーザを使用して、実行時にページを編集し、独自のマッシュアップを作成できます。この方法で実行時にページを編集できるようにする場合は、コンポーザの設計時コンポーネントをJDeveloperでページに追加します。コンポーザのコンポーネントのみを含む空のページをJDeveloperで作成すると、ユーザーは、編集モードのときにコンポーザを使用して、ページを再設計できるようになります。実行できるタスクには、次のものがあります。

  • ページの設定とパラメータの編集

  • ページへのコンテンツの追加

  • コンポーネントのプロパティとパラメータの編集

  • ページ・パラメータへのコンポーネントの関連付け

  • ページへのコンテンツの配置

  • ページのコンポーネントのレイアウトの変更

  • ページからのコンポーネントの削除

コンポーザ・タグ・ライブラリには、実行時にページを編集可能にして、ページ上のコンテンツの動作(コンポーネントの移動、配列、非表示など)を定義するために追加できるコンポーネントが用意されています。

コンポーザの「コンポーネント・カタログ」ダイアログ・ボックス(ページ上の「追加」ボタンをクリックすると表示されます)には、デフォルトの実行時リソース・カタログ・ビューアが表示されます。ユーザーは、このビューアでコンポーネントを参照して、そのコンポーネントをページに追加できます。ビューアには、デフォルトで、アプリケーションで使用可能なすべてのOracle ADFコンポーネントおよびポートレットが含まれるデフォルトのリソース・カタログが表示されます。ビューアでユーザーに表示するコンポーネントを制御するには、デフォルトのリソース・カタログを変更するか、独自のリソース・カタログを1つ以上作成します。リソース・カタログには、ポートレット、レイアウト・コンポーネント、タスク・フロー、ドキュメント、Oracle ADF Facesコンポーネントなどの項目を含めることができます。

アプリケーションにコンポーザ・コンポーネントを実装する方法の詳細は、第20章「コンポーザを使用したページの実行時編集の有効化」を参照してください。

2.3.3 サポート対象コンテンツ・リポジトリによるコンテンツの統合

JCR (Javaコンテンツ・リポジトリAPI、JSR 170とも呼ばれる)アダプタを使用すると、アプリケーションから使用可能なOracle WebCenter ContentやOracle Portalなどのコンテンツ管理システム、またはファイル・システムにデータを格納できます。

JDeveloperを使用すると、作成済のJCRデータ・コントロールを使用して、コンテンツを選択してからページにドロップできます。提供されている作成済のユーザー・インタフェースを利用して、Frameworkアプリケーションでコンテンツを表示できます。このアーキテクチャにより、ユーザー・インタフェースを一度作成すると、デプロイメント時または実行時に、アプリケーションを再コンパイルまたは再ビルドすることなく、必要とされるどのバック・エンドにでも切替えできるようになります。さらに、各コンテンツ管理システムのカスタムAPIに関する複雑な内容について理解している必要もなくなります。たとえば、JCR 1.0準拠のリポジトリまたはファイル・システムからコンテンツを選択するデータ・コントロールを作成できます。このデータ・コントロールが作成されると、そのコントロールを表としてJSPドキュメントにドロップできます。

Oracle Portal、Oracle WebCenter Content、またはファイル・システム以外のコンテンツ・リポジトリからデータを取得する場合には、独自のJCRアダプタを作成できます。データ・コントロールの作成ウィザードの「コンテンツ・リポジトリ・コンフィギュレーション」ページから、取得するデータが含まれるコンテンツ・リポジトリを選択します。

コンテンツ・プレゼンタ・タスク・フローを使用すると、コンテンツを簡単にアプリケーションに追加できます。コンテンツ・プレゼンタでは、1つのコンテンツ項目、複数のコンテンツ項目、またはコンテンツの問合せを選択してから、テンプレートを選択して、Frameworkアプリケーションのページにコンテンツをレンダリングできます。さらに、コンテンツ・プレゼンタ用のカスタム表示テンプレートも設計できます。第29章「コンテンツ・プレゼンタ表示テンプレートの作成」を参照してください。詳細は、Oracle Fusion Middleware Oracle WebCenter Portal: Spacesユーザーズ・ガイドのコンテンツ・プレゼンタを使用したコンテンツの追加に関する項、および第27章「コンテンツ・リポジトリ接続の管理」も参照してください。

2.3.4 検索フレームワーク

検索は、あらゆるWebアプリケーションの機能のうち、最も一般的で役立つ機能の1つです。Oracle WebCenter Portal: Frameworkには、直感的なユーザー・インタフェースで情報や人物を検索できる、拡張可能な統合検索フレームワークが備わっています。この強力な検索フレームワークを使用すると、エンタープライズ規模の検索機能をシームレスにアプリケーションに組み込めます。関係のある、すべてのセキュアな情報間を簡単にナビゲートできるため、ユーザーは、複数の検索を行っているアプリケーション間を行き来する必要がなくなります。第45章「検索サービスの統合」を参照してください。

2.3.5 開発エクスペリエンスの編成を支援するリソース・カタログ

リソース・カタログを使用すると、統合された検索および参照のユーザー・インタフェースに、本来であれば関連しない1つ以上のリポジトリのコンテンツの結合ビューが提供されます。各リソースは、それぞれのソース・リポジトリで作成および公開された後、JDeveloperの「リソース・パレット」を通じて開発者に公開され、リソース・カタログ・ビューアを通じてエンド・ユーザーに公開されます。「リソース・パレット」には、ポータル開発で一般的に使用される要素を含むWebCenterポータル・カタログが格納されています。

リソース・カタログには、次のコンポーネントを含めることができます。

  • レイアウト・コンポーネント。主要なレイアウト・コンポーネントは、Boxです。このコンポーネントは、その他すべてのタイプのコンポーネントを保持できるコンテナです。実行時に、コンポーネントをドラッグ・アンド・ドロップできるBoxを用意する必要があります。子コンポーネントの追加や配置、Boxからのコンポーネントの削除も可能です。『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Webユーザー・インタフェース開発者ガイド』を参照してください。

  • Oracle ADF Facesコンポーネント。TextImagePage LinkWeb PageおよびWebsite Linkコンポーネントをページに追加できます。これらは、それぞれJDeveloperの設計時コンポーネントであるRich Text EditorImageCommand LinkWeb PageおよびGo Linkと同様のものです。

    Textコンポーネントでは、ページにリッチ・テキストを追加できます。このコンポーネントを追加すると、サイズ変更可能でHTMLエディタに類似のテキスト・エディタが起動されます。テキストを追加し、エディタで使用可能なオプションを使用して書式設定できます。『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Webユーザー・インタフェース開発者ガイド』を参照してください。

  • ポートレット。JDeveloperに登録されている任意のプロデューサから、WSRP、JSF Portlet BridgeポートレットまたはPDK-Javaポートレットを追加できます。ポートレット・プロデューサの登録方法およびページへのポートレットの追加方法の詳細は、第64章「ポートレットの消費」を参照してください。

  • ページレット。Oracle WebCenter Portalのページレット・プロデューサは、動的ページレットの開発を容易にする有用なツールと機能のコレクションを提供します。ページレット・プロデューサを使用したページレットの開発および構成の詳細は、第63章「Oracle WebCenter Portalのページレット・プロデューサを使用したページレットの作成」を参照してください。

  • タスク・フロー。JDeveloperでタスク・フローを作成すると、実行時に、JARファイルのそれらのタスク・フローをページに追加できます。ADFのタスク・フローの詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Fusion開発者ガイド』を参照してください。

  • ドキュメント。アプリケーションにドキュメント・サービスを構成すると、このサービスからドキュメントを追加できます。ドキュメント・サービスの詳細は、第30章「ドキュメント・サービスの統合」を参照してください。

  • データ・コントロール。WebCenter Portalのサービスには、Frameworkアプリケーションやタスク・フローでカスタマイズしたユーザー・インタフェースを作成するためのデータ・コントロールを提供するものがあります。各サービスのドキュメントには、そのサービスのデータ・コントロールについての詳細な情報が記載されています。『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Fusion開発者ガイド』を参照してください。

2.3.6 アプリケーションのセキュリティ

Oracle WebCenter Portalに付属のOracle ADF拡張機能を使用すると、アプリケーション全体、ページ階層、ページ階層の一部分、ナビゲーション・コンポーネント、または単一のページにセキュリティを定義できます。カスタマイズ可能なコンポーネントで提供される個別のアクションに、セキュリティを定義できます。さらに、Webサービスを使用してバックエンド・サーバーに接続するOracle WebCenter Portal: Servicesに対しては、WS-Securityによるセキュアなアイデンティティ伝播を提供できます。

Oracle WebCenter PortalのセキュリティはJAAS標準およびJ2EE標準に基づいているため、Frameworkアプリケーションを保護するときに、既存のアイデンティティ管理ストアで定義されたエンタープライズ・ロールを直接利用できます。作成するアプリケーション内で、ロールを同期する必要はありません。定義済のユーザーとロールが、直接参照され使用されます。さらに、アプリケーションの開発段階では、ファイルベースのセキュリティも使用できます。その後のデプロイメント時には、簡単にエンタープライズ・アイデンティティ管理に切り替えられます。

Oracle WebCenter Portalには、アプリケーションのポリシーを表すために使用できる、アプリケーション・ロールも用意されています。ポリシー・ストアで定義されたアプリケーション・ロールに権限を関連付けることにより、その権限をアプリケーション内に保持しておくことができます。デプロイメント時には、ユーザーとエンタープライズ・ロールをアプリケーション・ロールに関連付けると、それらの権限をエンド・ユーザーに付与できます。

場合によっては、独自の認証メカニズム(電子メールなど)を備えた既存のアプリケーションを利用するほうが適していることもあります。電子メール・システムは、多くの場合、新しいアプリケーションとは別の認証システム(別のユーザー名とパスワード)を使用します。そのアプリケーションでは、電子メール・ユーザーをアプリケーション・ユーザーにマップして、エンド・ユーザーが情報を要求するたびにユーザー名とパスワードを入力する必要がなくなるようにします。Oracle WebCenter Portal: Frameworkには、このようなユーザー名とパスワードを、外部アプリケーション機能でセキュアに管理する方法が用意されています。

Frameworkアプリケーションを保護するオプションの詳細は、第69章「WebCenter Portal: Frameworkアプリケーションの保護」を参照してください。

2.4 Oracle WebCenter Portal: Servicesの概要

Oracle WebCenter Portal: Servicesは、サービスを通じてソーシャル・ネットワーキング機能と個人の生産性機能を公開し、タスク・フローを通じて、それぞれの機能のサブセットを公開します。

表2-1に、使用可能な各サービスを示します。

表2-1 Oracle WebCenter Portal: Services

サービス 説明

アクティビティ・グラフ

集約的なインテリジェンスを活用し、検索アプリケーションおよびソーシャル・アプリケーションに役立てます。

第46章「アクティビティ・グラフ・サービスの統合」


分析

Frameworkアプリケーションの使用状況とパフォーマンスのメトリックを表示できます。

第47章「分析サービスの統合」


お知らせ

認証されているすべてのユーザーに重要なアクティビティとインベントについてのお知らせを投稿する機能を提供します。

第33章「お知らせサービスの統合」


ブログ

アプリケーションのコンテキストにブログ・アプリケーションを簡単に統合できるようにします。

第32章「Wikiとブログの統合」


ディスカッション

スレッド化したディスカッションを作成する機能を提供します。このディスカッションでは、質問の投稿とそれに対する応答、および回答の検索ができます。重要なアクティビティとイベント用の効果的なグループ・コミュニケーション・メカニズムも提供します。

第34章「ディスカッション・サービスの統合」


ドキュメント

コンテンツ管理機能および記憶域機能を提供します。この機能には、コンテンツのアップロード、ファイルやフォルダの作成および管理、ファイルのチェックアウト、バージョニングなどが含まれます。

第30章「ドキュメント・サービスの統合」


イベント

より大きなユーザーのグループに関連するイベントのスケジュールを作成および保守する機能を提供します。イベントは、認証されたすべてのユーザーに公開されます。

Oracle Fusion Middleware Oracle WebCenter Portal: Spacesユーザーズ・ガイドのイベント・サービスの使用に関する項

第52章「イベント・サービスの統合」

インスタント・メッセージおよびプレゼンス(IMP)

他の認証ユーザーのステータス(オンライン、オフライン、ビジーまたは退席中)を確認し、そのユーザーとすぐに連絡を取る機能を提供します。

第35章「インスタント・メッセージおよびプレゼンス・サービスの統合」


リンク

関連情報の表示、アクセス、および関連付けの機能を提供します。たとえば、ディスカッション・スレッドから解決策のドキュメントへのリンクを作成できます。

第43章「リンク・サービスの統合」


リスト

リストを作成、公開および管理する機能を提供します。ユーザーは、作成済の構造からリストを作成することも、独自のカスタム・リストを作成することもできます。

Oracle Fusion Middleware Oracle WebCenter Portal: Spacesユーザーズ・ガイドのリスト・サービスの使用に関する項

第48章「リスト・サービスの統合」

メール

IMAPおよびSMTPのメール・サーバーと簡単に統合できます。この統合により、ユーザーは、メッセージの確認、添付ファイル付きメッセージの作成、既存のメッセージへの返信または転送、メッセージの削除など、簡単なメール機能を実行できます。

第36章「メール・サービスの統合」


ノート

短いメモを記入したり、個人的に必要な情報の断片を維持する機能を提供します。

注意: このサービスは、Oracle WebCenter Portal: Spacesでのみ使用できます。

Oracle Fusion Middleware Oracle WebCenter Portal: Spacesユーザーズ・ガイドのノート・サービスの使用に関する項

通知

サービス・オブジェクトおよびアプリケーション・オブジェクトへのサブスクライブの手段と、これらのオブジェクトが変更されたときに、1つ以上の選択済メッセージ・チャネルを通じて通知を受信する手段を提供します。

第49章「通知の統合」


ピープル・コネクション

ソーシャル・ネットワーキング機能を提供します。個人プロファイルの作成、現在のステータスの表示、他のユーザーの最近のアクティビティの確認などの機能があります。

第38章「ピープル・コネクション・サービスの概要」


投票

関係者にアンケート(意見や経験レベルなど)を実施したり、重要な情報を覚えているかどうかを確認したり、フィードバックを集めたりできます。

第37章「投票サービスの統合」


パーソナライズ

自分のアプリケーション内のコンテンツを、選択した条件に基づいて対象となるアプリケーション・ユーザーに配信できます。

第67章「WebCenter Portalアプリケーションのパーソナライズ」


最近のアクティビティ

最近変更したドキュメント、ディスカッションおよびお知らせのサマリー・ビューを提供します。

第50章「最近のアクティビティ・サービスの統合」


RSS

様々なWebサイトのコンテンツに1つの場所(ニュース・リーダー)からアクセスする機能を提供します。

第53章「RSSサービスの統合」


検索

サービス、アプリケーション、またはサイト全体を検索する機能を提供します(これには、WebCenter Portal検索のためのOracle Secure Enterprise Searchの統合も含まれます)。

第45章「検索サービスの統合」


タグ

個人的に関連する1つ以上のキーワードを、特定のページまたはドキュメントに割り当てる機能を提供します。

第44章「タグ・サービスの統合」


Wiki

様々な地域にいるチームがWebドキュメントを起点にしたりWebドキュメントでコラボレートできる機能を提供します。

第32章「Wikiとブログの統合」


ワークリスト

注目が必要なビジネス・プロセスを、個人用の一覧ビューにまとめて表示できるようになります(ドキュメント・レビューのリクエストや、エンタープライズ・アプリケーションから直接発生するその他のタイプのビジネス・プロセスが含まれます)。

第51章「ワークリスト・サービスの統合」



WebCenterは、これらのサービスのタスク・フローをOracle WebCenter Portal: Servicesカタログを通じて提供します。これらのタスク・フローを利用するようアプリケーションを準備する方法の詳細は、第7章「WebCenter Portal Services用アプリケーションの準備」を参照してください。

Oracle WebCenter Portal: Servicesを相互に統合する方法

WebCenter Portal: Servicesは、相互に統合されるように設計されています。次に、WebCenter Portal: Servicesを連動させる方法の例をいくつか示します。

2.4.1 WebCenter Portal: ServicesおよびREST API

多くのWebCenter Portalサービスには、それらのREST APIによりアクセスできます。REST APIを使用すると、豊富な対話型のクライアント側アプリケーションを作成できます。RESTコマンドでは、リクエストとして標準HTTPメソッドを使用して、使用するリソースを指定します。すべてのリクエストは、操作のステータスを含むレスポンスを返します。リクエストによりオブジェクトが取得、作成または更新されると、レスポンスにはそのオブジェクトの標準表現が格納されます。

REST APIを含むサービスの一覧と詳細は、第54章「Oracle WebCenter Portal REST APIの使用」を参照してください。

2.5 Oracle Application Development Framework (Oracle ADF)の概要

この項では、Oracle ADFについて簡単に紹介し、WebCenter PortalがOracle ADFテクノロジから得られるメリットについて説明します。

2.5.1 Oracle ADFとは

Oracle Application Development Framework (Oracle ADF)は、エンド・ツー・エンドのアプリケーション・フレームワークです。このフレームワークは、JavaプラットフォームのEnterprise Edition (Java EE)標準とオープンソース・テクノロジを基盤としているため、サービス指向のアプリケーションの実装が単純で簡単なものになります。Oracle JDeveloperとOracle ADFを連携使用することで、設計からデプロイメントまでの開発ライフ・サイクル全体をカバーする環境が得られます。この環境には、ドラッグ・アンド・ドロップによるデータ・バインディング機能、視覚的なUI設計機能、およびチーム開発機能が備わっています。

2.5.2 WebCenter Portal開発者にとってOracle ADFが重要な理由

ポータルの作成には様々なテクノロジやアプローチを使用できます。また、WebCenterは、ポータルを作成するための各種のオープンな業界標準をサポートしています。Oracle ADFは、WebCenter Portalの開発のための強固な基盤を提供します。この基盤により、Oracle Fusion Middlewareスタック全体との統合が可能になります。Oracle WebCenter Portalを使用すると、この全体的なアーキテクチャに接続して、他のスタックが提供する機能を活用するポータルを作成できます。

2.5.3 Oracle ADFテクノロジの内容

Oracle ADFでは、標準JSFコンポーネントのセットを使用しますが、このコンポーネントには組込みのAjax機能があります。Ajaxとは、非同期のJavaScript、ダイナミックHTML (DHTML)およびXMLを組み合せたものです。この組合せにより、ページ全体を完全に再レンダリングすることなく、サーバーにリクエストを送信できるようになります。Ajaxによってリッチ・クライアントのようなアプリケーションで標準インターネット・テクノロジを使用できるようにして、JSFによってサーバー側の制御を実現します。

Oracle ADFでは、150以上のリッチ・コンポーネントを提供しています。このコンポーネントには、階層データ表、ツリー・メニュー、ページ内ダイアログ、アコーディオン、区切り、ソート可能表などがあります。また、Oracle ADFには、データ視覚化コンポーネントも用意されています。これは、FlashおよびSVGに対応していて、基礎のデータをリアルタイムに確認できる動的なチャート、グラフ、ゲージおよびその他のグラフィックをレンダリングできる機能があります。各コンポーネントには、スキニングのサポートに加え、国際化とアクセシビリティのサポートもあります。

ADFタスク・フローは、アプリケーション開発で理解して使用する必要のある重要なコンポーネントです。これにより、モジュール単位でアプリケーションの制御フローを定義できるようになります。アプリケーションを単一の大規模なJSFページ・フローとして表すかわりに、再利用可能なタスク・フローのコレクションに分割できます。各タスク・フローでは、アプリケーション・アクティビティと、アプリケーションで完了するために実行する必要のある作業ユニットを識別します。アクティビティは、タスク・フローの実行中に処理できる作業を表します。タスク・フローは、パッケージ化してアプリケーションとともにデプロイできるという利点もあります。リモート・ポートレットのように、個別のデプロイメントは必要ありません。タスク・フローの詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Fusion開発者ガイド』を参照してください。

2.6 Oracle JDeveloperおよびWebCenter Portal拡張機能の概要

Oracle JDeveloperは、Java、XML、Webサービス、ポートレットおよびSQLの最新の業界標準を使用してサービス指向のアプリケーションを作成するための統合開発環境(IDE)です。JDeveloperは、アプリケーションのモデリング、コーディング、デバッグ、テスト、プロファイリング、チューニングおよびデプロイの統合された機能により、ソフトウェア開発のライフ・サイクル全体をサポートします。JDeveloperの視覚的および宣言型のアプローチとOracle ADFは、アプリケーション開発を単純化して、日常的なコーディング・タスクを削減できます。たとえば、多くの標準的なユーザー・インタフェース・ウィジェット(ボタン、値のリスト、ナビゲーション・バーなど)のコードは、事前にパッケージ化されています。適切なウィジェットをコンポーネント・パレットから選択して、そのウィジェットをアプリケーションにドロップするだけです。

WebCenter PortalのOracle JDeveloper用拡張機能には、Frameworkアプリケーションを作成するために必要なすべての開発機能が含まれています。Oracle WebCenter Portalのコンポーネントは、リソースのカタログからすぐに利用できます。

図2-2 Oracle JDeveloperおよびWebCenter Portal拡張機能

図2-2の説明が続きます
「図2-2 Oracle JDeveloperおよびWebCenter Portal拡張機能」の説明

WebCenter Portal拡張機能には、いくつかのウィザードも用意されています。これらのウィザードは、ポートレットの作成、既存のポートレットの利用、コンテンツ・リポジトリへのデータ・コントロールの作成、アプリケーションの保護など、主要な開発タスクに利用できます。コーディング量が大幅に削減されるため、JDeveloperとWebCenter Portal拡張機能を使用すると、開発者の生産性が飛躍的に向上します。

JDeveloperでは、アプリケーション・テンプレートを適用することが、アプリケーションおよびそのプロジェクトを適切なテクノロジ・スコープで適切に定義するための最も簡単な方法になります。アプリケーション・テンプレートにより、アプリケーションは、処理全体の論理的な区分を反映するプロジェクト単位に自動的に分割されます。WebCenter Portal拡張機能には、Frameworkアプリケーションを作成するために最適に構成された2つのテンプレートが用意されています。

テンプレートの使用は必須ではありません。必要に応じて、手動でアプリケーション・テクノロジをスコープ設定し、関連プロジェクトを作成することによって、独自のFrameworkアプリケーションおよびポートレット・アプリケーションを作成できます。詳細は、第3章「開発環境の準備」を参照してください。

JDeveloperの詳細は、JDeveloperの「開始ページ」にある多数の学習支援にアクセスしてください。このページは、JDeveloperの「ヘルプ」メニューからアクセスできます。

2.7 アプリケーション・ライフ・サイクルの概要

ポータルのライフ・サイクルとは、ポータルの開発から本稼働までの過程を表します。ライフ・サイクルのフェーズには、開発、テスト、ステージング、および本稼働が含まれます。ライフ・サイクルの詳細は、第10章「WebCenter Portalのライフ・サイクルの概要」を参照してください。

2.8 開始前に考慮する必要のある設計上の問題

Frameworkアプリケーションの設計時には、関係者のニーズを考慮に入れる必要があります。具体的には、Frameworkアプリケーションのエンド・ユーザー、管理者および開発者が求めている機能を考慮に入れることが重要です。Frameworkアプリケーションを実際に作成する前に、次の質問事項に目を通し、その回答をアプリケーションの計画に役立ててください。

この項の内容は、次のとおりです。

2.8.1 ユーザーに関する考慮事項

次に示すリストは、Frameworkアプリケーションのエンド・ユーザーに関して尋ねる必要のある質問を示しています。

  • ユーザーは何人存在するか。Frameworkアプリケーションで多数のユーザーに対応する必要がある場合は、デプロイメント環境を定義するときに、それを考慮に入れる必要があります。つまり、そのFrameworkアプリケーションにアクセスすると予想されるユーザー数に対応できるトポロジを選択し、各種サービスの構成パラメータをそれぞれ設定する必要があるということです。

    Frameworkアプリケーションに最適なOracle Application Server構成を決定するには、Oracle Fusion Middleware Enterprise Oracle WebCenter Portalデプロイメント・ガイドを参照してください。

  • ユーザーは、リソースの追加によって、ページを編集したり、エンタープライズ・マッシュアップを作成する必要があるか。ユーザーがページを編集できるようにする場合は、Oracle WebCenter Portalのコンポーザ・コンポーネントをアプリケーションに追加する必要があります。ユーザーが編集できる箇所や使用できるリソースなどについても検討する必要があります。

    アプリケーションの設計時、コンポーザ・コンポーネントを挿入して編集可能にするページの領域を選択する必要があります。ユーザーがページに追加できるようにするコンポーネントは、実行時にリソース・カタログに表示されている必要があります。複数のカタログを用意して、アプリケーション・コンテキストやユーザーの権限に応じて利用できるようにすることも可能です。

    ページを編集できるようにする場合、そのアプリケーションは、特定のユーザーとカスタマイズを関連付けできるようにする必要があります。つまり、アプリケーションのユーザーに対して、なんらかの認証が必要になります。さらに、ユーザーのカスタマイズはメタデータ記憶域(MDS)に格納されるため、デプロイメント・システムでは、MDSにアクセスしてカスタマイズの格納および取得ができるようにする必要があります。

    コンポーザおよびリソース・カタログの公開の詳細は、第20章「コンポーザを使用したページの実行時編集の有効化」を参照してください。

  • ユーザーがポートレットをカスタマイズする必要があるか。ポートレットには、認証されたユーザーが実行時にポートレットをカスタマイズできる、カスタマイズ・モード(「編集」モード)を必要に応じて組み込むことができます。「編集」モードでは、ポートレットのコンテンツに影響する項目(ポートレットのタイトルやパラメータなど)をユーザーが入力できます。たとえば、ユーザーが株式ポートレットに対してティッカー・シンボルを入力できるような「編集」モードを実装できます。ユーザーの変更内容が適用されると、ポートレットには、選択されたティッカー・シンボルの価格が表示されます。

    カスタマイズの実装を決定した場合は、ポートレットを利用するアプリケーションに、なんらかのセキュリティを実装することも必要になります。認証および認可されたユーザーのみが、アプリケーションをカスタマイズできます。

    ポートレットのカスタマイズを検討する場合は、ポートレットの負荷を分散するかどうかについても検討する必要があります。負荷分散する場合は、データベース・サポートされたカスタマイズを使用し、すべての中間層でユーザーのカスタマイズ・データにアクセスできるようにする必要があります。このようにしていないと、ユーザーは同じポートレットを何回もパーソナライズすることになります。

    詳細は、第58章「ポートレットの概要」を参照してください。

  • ユーザーがアクセスする必要のあるサービスはどれか。WebCenterは、ドキュメント、ディスカッション、検索、ピープル・コネクション、インスタント・メッセージ、プレゼンスなどの多様なサービスを提供します。これらのサービスのうち、ユーザーに必要なサービスを判断して構成する必要があります。必要なサービスをインストールして構成した後で、そのサービスにアクセスするアプリケーション・ページにタスク・フローを追加できます。どのサービスを実装するかが、トポロジの選択にも影響することがあります。たとえば、WebCenter Portalのディスカッション・サーバーとコンテンツ・リポジトリを異なるシステムに配置できますが、アプリケーションは、そのどちらにもアクセスできる必要があります。

    詳細は、表2-1「Oracle WebCenter Portal: Services」および第7章「WebCenter Portal Services用アプリケーションの準備」を参照してください。

  • 認証されたユーザーと認証されていない(パブリック)ユーザーが共存するか。 WebCenter Portalのサービスには、認証されていないユーザーに対して限定的な機能を提供するものがあります。たとえば、認証されていないユーザーは、ディスカッションの表示は可能ですが参加はできません。また、RESTサービス(このサービスのほとんど)は、認証されたユーザーのみが利用できます。このように使用できない機能があるため、認証されていないユーザー専用に設計したパブリック・ページを作成するほうがよい結果が得られることがあります。

    ポータル・ページ階層エディタを使用すると、個別のページまたは複数のページに委任管理のセキュリティ・ポリシーを設定できます。詳細は、第9.5.2項「ポータルのページの保護」を参照してください。

2.8.2 サイト管理者に関する考慮事項

次に示すリストは、アプリケーションの管理者に関して尋ねる必要のある質問を示しています。


注意:

アプリケーションの作成中は、Frameworkアプリケーションの管理者と開発者が意思疎通を図ることが非常に重要です。設計時、開発者は、管理者が実行時にアプリケーションに対して実行できる操作を決定するために、多くの選択を行う必要があります。たとえば、開発者がスキンを実装しないことを決定すると、管理者はアプリケーションのルック・アンド・フィールを制御できなくなります。このため、管理者と開発者は、これらの決定事項を設計時に協議しておく必要があります。


  • 管理者がユーザーまたはユーザー・グループのページおよびポートレットをカスタマイズする必要があるか。Frameworkアプリケーションの管理者がページやポートレットをカスタマイズしてユーザーにFrameworkアプリケーションのデフォルト・ビューを提供できるように設定することもできます。

    • Frameworkアプリケーションのルック・アンド・フィール。Frameworkアプリケーションにスキンを実装すると、管理者はアプリケーション内のページの外観を選択できます。

      スキンの実装方法の詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Webユーザー・インタフェース開発者ガイド』の第19章「スタイルおよびスキンを使用した外観のカスタマイズ」、および第15章「スキンの作成および管理」を参照してください。

    • カスタマイズ可能ページ。管理者はページのレイアウトをカスタマイズできます。

      カスタマイズ可能なコンポーネントの詳細は、第20章「コンポーザを使用したページの実行時編集の有効化」を参照してください。

    • ポートレット。オプションで、管理者がポートレットをカスタマイズできるカスタマイズ・モード(「デフォルトの編集」モード)をポートレットに組み込むことができます。管理者がカスタマイズした内容は、他のすべてのユーザーのポートレットのデフォルト・ビューとして処理されます。

      ポートレットの詳細は、第58章「ポートレットの概要」を参照してください。

2.8.3 開発者に関する考慮事項

次に示すリストは、アプリケーションに関与する開発者に関して尋ねる必要のある質問を示しています。

  • 開発者と管理者は、Oracle WebCenter Portal: Frameworkの機能をアプリケーションで使用するか。一般に、開発者は、Frameworkアプリケーションの作成にFrameworkアプリケーション・テンプレートを使用することを検討します。このテンプレートを使用すると、正しいFrameworkのテクノロジ・スコープと機能で新しいアプリケーションが適切にプロビジョニングされます。このようなポータル固有の機能には、ページ階層、委任管理、ナビゲーション・モデル、ページ・テンプレートなどが含まれます。さらに、実行時管理ツールを使用すると、権限のあるユーザーは、これらのポータル機能を変更することもできます。詳細は、第9章「Frameworkアプリケーションの概要」を参照してください。

  • 開発者は、タスク・フローまたはポートレットを再利用可能なコンポーネントとして構築するか。Oracle JSF Portlet Bridgeを使用すると、開発者は、タスク・フローをJSR 286のポートレットにできます。そのため、再利用可能なコンポーネントを、ブリッジによってJSR 286ポートレットにできるタスク・フローとして作成するか、直接JSR 286ポートレットとして作成するかを選択できます。コンポーネントの主な用途が1つ以上のポータルへの埋込みの場合、開発者はブリッジを使用せず、そのコンポーネントをJSR 286ポートレットとして直接作成します。コンポーネントの主な用途がJSFアプリケーションでのローカル実行の場合、開発者はタスク・フローとしてコンポーネントを作成してから、必要に応じてブリッジを使用して、そのコンポーネントをJSR 286ポートレットとして実行します。タスク・フローを作成することで、そのコンポーネントは、最初にポートレットとして再パッケージ化する必要なく、他のADFアプリケーションで使用できるようになります。

  • 開発者がコンテンツ・リポジトリ(Content Server、ファイル・システム、Oracle Portalなど)からのコンテンツを統合する必要があるか。Frameworkアプリケーション内に公開するコンテンツがコンテンツ・リポジトリ内にある場合、JCRアダプタおよびデータ・コントロールを使用する必要があります。

    JCRデータ・コントロールおよびアダプタを使用してコンテンツを組み込む方法の詳細は、第27章「コンテンツ・リポジトリ接続の管理」を参照してください。

  • WebCenter Portal: Frameworkアプリケーションの表示可能/編集可能コンテンツを、ユーザーのアイデンティティに応じて変更するか。一部のユーザーを対象にするコンテンツをFrameworkアプリケーション内に含める場合は、ログインおよびユーザー・ロールを使用したセキュリティ・モデルを設定して、アクセスを制御できるようにする必要があります。ユーザーのアイデンティティに応じて、コンポーネント、ポートレットおよびページの表示と非表示を切り替えることができます。コンテンツをすべてのユーザーに公開する場合(たとえば、すべての従業員が使用するコンテンツを持つ人事管理Frameworkアプリケーションなど)は、アクセス制御を実装する必要はありません。Oracle WebCenter Portal: Frameworkのページ階層機能を使用すると、ページ階層内の個別のページまたは複数のページにセキュリティ・ポリシーを設定できます。詳細は、第9.5.2項「ポータルのページの保護」を参照してください。

    さらに、コンポーザを使用すると、ユーザーがアプリケーション内でコンテンツを編集できるようになります。この機能についても特定のユーザーに制限するかどうかを検討する必要があります。制限する場合、セキュリティ・モデルには、その点を組み入れる必要があります。

    Frameworkアプリケーションのセキュリティ・モデルを実装する方法の詳細は、第69章「WebCenter Portal: Frameworkアプリケーションの保護」を参照してください。

  • WebCenter Portal: Frameworkアプリケーションで外部アプリケーションへのアクセスを提供する必要があるか。 Frameworkアプリケーション内に外部アプリケーションを表示する必要があることもしばしばあります。たとえば、ユーザーがアプリケーション内から電子メール・アプリケーション、人事管理アプリケーションまたは財務アプリケーションを表示できるようにする場合などです。ユーザーにシームレスな対話を提供するには、ある種の外部アプリケーション資格証明ストアを用意する必要があります。

    Frameworkアプリケーションから外部アプリケーションにアクセスする方法の詳細は、第69章「WebCenter Portal: Frameworkアプリケーションの保護」を参照してください。

    Oracle Portal用に構築された外部レガシー・アプリケーション・ポートレットがある場合は、これらのポートレットをFrameworkアプリケーション内で再利用できます。この機能を使用すると、ユーザーは、これらのポートレットをFrameworkアプリケーションから表示でき、各アプリケーションを個別に開いたり、Oracle Portalに戻る必要はありません。ただし、このようなポートレットを構築するときは、通常は、データを取得および表示する前に外部アプリケーションに対してユーザー認証を行う必要があることを覚えておいてください。前述のとおり、このような認証には、資格証明ボールトが必要です。Frameworkアプリケーションは、外部アプリケーションへのログインに必要な資格証明をここに格納できます。Oracle WebCenter Portal: Frameworkでは、Oracle JDeveloperで外部アプリケーションに基づくポートレットを取り込むことを選択できます。

    外部アプリケーション・ポートレットの詳細は、第69.13.3項「外部アプリケーションの管理」を参照してください。

  • 開発者のチームでWebCenter Portal: Frameworkプリケーションを開発するか。Frameworkアプリケーションをチームで開発する場合は、追加の設計上の考慮事項について検討する必要があります。たとえば、チーム開発を実行する場合、JDeveloperの各種アクションでアクセスするファイルに十分注意する必要があり、コード管理システムを統合するJDeveloperの機能を利用することもあります。

    チーム開発の詳細は、第4章「チームでの効率的な作業」を参照してください。また、第1章「開発者向けクイック・スタート・ガイド」も参照してください。

2.9 WebCenterアクセシビリティ機能の概要

アクセシビリティとは、視覚や聴覚など、身体的に制限のあるユーザーがアプリケーションを使用できるようにすることです。わかりやすく表現すると、マウスなしで(キーボードのみで)使用できるアプリケーション、視覚障害者に向けたスクリーン・リーダーを使用できるアプリケーション、さらに音声、色彩、またはアニメーションやタイミングに頼らないアプリケーションを作成するということです。

Oracleソフトウェアは、http://www.oracle.com/accessibility/standards.htmlの標準の解釈を使用して、Section 508およびWCAG 1.0 AAの標準を実装しています。

この項では、WebCenter Portalに固有のアクセシビリティ機能について説明します。アクセス可能なADF Facesページの作成方法の全般的な情報は、 『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Webユーザー・インタフェース開発者ガイド』のアクセス可能なADF Facesコンポーネントおよびページの開発に関する項を参照してください。JDeveloperのアクセシビリティ機能の詳細は、オンライン・ヘルプの目次から「JDeveloperの基本」の「JDeveloperのアクセシビリティ」ノードを選択すると表示される、ヘルプ・トピックを参照してください。

2.9.1 アクセス可能なHTMLの生成

WebCenter Portalには、アプリケーション・ページに追加することで、実行時にページを編集できるようにする、いくつかのコンポーザ・コンポーネントが用意されています。これらのコンポーネントには、アクセス可能なHTMLを生成するために使用する属性があります。作成するページをアクセス可能にするには、表2-2に示す属性を設定する必要があります。

表2-2 WebCenter Portalのコンポーザ・コンポーネントのアクセシビリティ属性

コンポーネント アクセシビリティ属性

pe:changeModeButton

アクセシビリティ属性はありません。

pe:changeModeLink

アクセシビリティ属性はありません。

pe:imageLink

shortDesc: 必須。この属性は、HTMLのalt属性に変換されます。

accessKey: オプション。この属性は、コンポーネントに簡単にアクセスするために使用するニーモニック文字を設定します。

pe:pageCustomizable

アクセシビリティ属性はありません。

pe:layoutCustomizable

shortDesc: 必須。この属性は、HTMLのalt属性に変換されます。

accessKey: オプション。この属性は、コンポーネントに簡単にアクセスするために使用するニーモニック文字を設定します。

cust:panelCustomizable

アクセシビリティ属性はありません。

cust:showDetailFrame

shortDesc: 必須。この属性は、HTMLのalt属性に変換されます。


2.9.2 実行時のアクセシビリティ機能

実行時にユーザーがページをカスタマイズできるようにする場合は、すべてのユーザーがどのようなカスタマイズにもアクセスできるようにする必要があります。実行時にユーザーが作成できるすべてのコンポーネントについて、プロパティ・インスペクタにはアクセシビリティ関連の属性がすべて表示されます。ユーザーはここで、これらの属性を適切に設定できます。

WebCenter Portal固有のコンポーネントに対するアクセシビリティ関連の属性のリストは、表2-2を参照してください。その他のコンポーネントのアクセシビリティ関連の属性のリストは、『Oracle Fusion Middleware Oracle Application Development Framework Webユーザー・インタフェース開発者ガイド』のアクセス可能なADF Facesコンポーネントおよびページの開発に関する項を参照してください。

2.9.3 ポートレットのアクセシビリティの考慮事項

IFrameは、現在のスクリーン・リーダーでは十分に対応していないため、一部のアクセシビリティ標準では許可されていません。


注意:

Oracle JSF Portlet Bridgeを使用して作成されたポートレットは、JavaScriptの問題により直接Oracle ADFページにレンダリングするには複雑すぎるため、requireIFrameコンテナ実行時オプションはtrueに設定されます。


WebCenter Portalでは、renderPortletInIFrameという名前のadf:portletタグで、オプションの属性を提供しています。この属性にfalseを設定すると、IFrameが使用できないようになります。詳細は、第64.4.12項「IFRAMEに関する必要な知識」を参照してください。