アップグレードのための準備

このセクションでは、アップグレードの準備を行う方法について説明します。

アップグレードの考慮事項

ファイルシステム用に使用しているホストシステムをアップグレードする場合は、次の事項を考慮してください:

• 既存のホストがまだ作動している間に、新しいホストへ移行してください。こうすることで、新しいハードウェアプラットフォームのインストール、構成、およびアプリケーションに対するテストを行うことができます。

• 新しいホストシステムへの移行は、Sun QFS ソフトウェアをはじめてインストールするのと同じことです。SAM-QFS アーカイブ環境では、ソフトウェアを再インストールし、構成ファイルを更新する必要があります。このようなファイルには、mcf ファイルや /etc/opt/SUNWsamfs/inquiry.conf ファイルなどがあります。また、既存の archiver.cmd ファイルと defaults.conf ファイルを新しいシステムにコピーしたり、システムログを構成したりすることも必要です。

• 古いホストシステムの電源を切断する前に、手元にあるバックアップコピーに不備がないかどうかを確認します。新しいサーバー上にファイルシステムを再作成するには、新しいダンプファイルの取得が必要になる場合もあります。ダンプファイルの作成方法の詳細については、「ダンプファイルの設定」を参照してください。

• 最新の製品をサポートするために Oracle Solaris OS をアップグレードする必要がある場合は、「Oracle Solaris OS のアップグレード」を参照してください。

共有環境での順次アップグレードのサポート

個々の共有ファイルシステムクライアントを、ファイルシステムの残りの部分を停止せずにアップグレードすることができます。順次アップグレードを実行するには、環境に 1 つのプライマリメタデータサーバーと少なくとも 1 つの潜在的なメタデータサーバーが含まれている必要があります。

共有環境で順次アップグレードを実行する方法

1. 潜在的なメタデータサーバーをアップグレードします。
2. 潜在的なメタデータサーバーにフェイルオーバーします。
3. プライマリメタデータサーバーをアップグレードします。
4. プライマリメタデータサーバーにフェイルオーバーします。
5. クライアントをアップグレードします。

アップグレードのための情報の保持

環境内のディスク、コントローラ、またはそれ以外の機器を追加または変更する場合は、mcf ファイル内のすべてのファイルシステム記述を訂正または再生成するのが難しい場合があります。samfsconfig コマンドは、そのような変更を行なったあとに、ファイルシステムとファイルシステムコンポーネントに関する情報を生成する場合に役立ちます。

samfsconfig コマンドは、指定された各デバイスを検査し、いずれかのデバイス上に Sun QFS スーパーブロックが存在するかどうかを判定し、その情報を stdout に書き出します。検出されたスーパーブロックの情報を使用して、mcf ファイルと同様の書式で装置についてまとめます。この書式を保存して編集すると、mcf ファイルが破壊されるか、紛失するか、正しくない場合に、ファイルを再作成できます。

このコマンドでは、ベースデバイス (ファイルシステムそのもの) のファミリセット番号、ファイルシステムのタイプ (ma または ms)、ファイルシステムが共有ファイルシステムかどうかを検出できます。

異常がある場合は、次のいずれかの記号でフラグが付けられます:

• ファミリセットの情報が不完全であることを示すハッシュ記号 (#)。

• 複数のデバイス名が特定のファイルシステム要素を参照していることを示す不等号 (>)。

次の例は、samfsconfig コマンドの出力です。

この例では、システム管理者が装置名のリストをファイルに入力しています。これらの装置名は、環境内で考慮されていなかった装置の名前であり、したがって、システム管理者がファミリセットの有無を調べたいと考えた装置です。次のコード例に表示された結果には、ファミリセットの古いフラグメントと完全なインスタンスがいくつか示されています。

例 10-1 samfsconfig コマンドの出力

mn# samfsconfig -v *`cat /tmp/dev_files'*

Device `/dev/dsk/c5t10d0s0' has a SAM-FS superblock.
Couldn't open '/dev/dsk/c5t10d0s1': I/O error
Device '/dev/dsk/c5t10d0s3' has a SAM-FS superblock.
Device '/dev/dsk/c5t10d0s4' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t10d0s5' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t10d0s6' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t10d0s7' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t11d0s0' has a SAM-FS superblock.
Couldn't open '/dev/dsk/c5t11d0s1': I/O error
Device '/dev/dsk/c5t11d0s3' has a SAM-FS superblock.
Device '/dev/dsk/c5t11d0s4' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t11d0s5' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t11d0s6' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t11d0s7' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t12d0s0' has a SAM-FS superblock.
Couldn't open '/dev/dsk/c5t12d0s1': I/O error
Device '/dev/dsk/c5t12d0s3' has a SAM-FS superblock.
Device '/dev/dsk/c5t12d0s4' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t12d0s5' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t12d0s6' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t12d0s7' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t13d0s0' has a SAM-FS superblock.
Couldn't open '/dev/dsk/c5t13d0s1': I/O error
Device '/dev/dsk/c5t13d0s3' has a SAM-FS superblock.
Device '/dev/dsk/c5t13d0s4' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t13d0s5' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t13d0s6' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t13d0s7' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t8d0s0' has a SAM-FS superblock.
Device '/dev/dsk/c5t8d0s1' has a SAM-FS superblock.
Device '/dev/dsk/c5t8d0s3' has a SAM-FS superblock.
Device '/dev/dsk/c5t8d0s4' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t8d0s5' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t8d0s6' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t8d0s7' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t9d0s0' has a SAM-FS superblock.
Couldn't open '/dev/dsk/c5t9d0s1': I/O error
Device '/dev/dsk/c5t9d0s3' has a SAM-FS superblock.
Device '/dev/dsk/c5t9d0s4' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t9d0s5' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t9d0s6' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
Device '/dev/dsk/c5t9d0s7' doesn't have a SAM-FS superblock (SBLK).
13 SAM-FS devices found.

#
# Family Set 'qfs1' Created Mon Jun 25 10:37:52 2004
#
# Missing slices
# Ordinal 0
# /dev/dsk/c5t8d0s1 10 mm qfs1 -
#
# Family Set 'qfs1' Created Wed Jul 11 08:47:38 2004
#

qfs1 200 ma qfs1 - shared

/dev/dsk/c5t8d0s3    201      mm     qfs1 -
/dev/dsk/c5t9d0s3    202     mr    qfs1   -
/dev/dsk/c5t10d0s3    203     mr    qfs1  -
/dev/dsk/c5t11d0s3    204     mr    qfs1  -
/dev/dsk/c5t12d0s3    205     mr    qfs1  -
/dev/dsk/c5t13d0s3    206     mr    qfs1  -

#
# Family Set `sqfs1' Created Wed Nov  7 16:55:19 2004
#

sqfs1 100 ma sqfs1 - shared

/dev/dsk/c5t8d0s0    101      mm     sqfs1  -
/dev/dsk/c5t9d0s0    102     mr    sqfs1  -
/dev/dsk/c5t10d0s0    103     g0    sqfs1  -
/dev/dsk/c5t11d0s0    104     g0    sqfs1  -
/dev/dsk/c5t12d0s0    105     g1    sqfs1  -
/dev/dsk/c5t13d0s0    106     g1    sqfs1  -

#

次のコード例に示した出力では、不等号 (>) のフラグが付いたデバイスが重複しています。スライス s0 はディスクの先頭から開始し、ディスク全体 (s2) のスライスも同様になっています。このスタイルの出力は、Solaris 9 OS を実行しているシステムで取得されたものです。

例 10-2 コマンドの出力

# samfsconfig /dev/dsk/c3t*
#
# Family Set 'shsam1' Created Wed Oct 17 14:57:29 2001
#

shsam1 160 ma shsam1 shared
> /dev/dsk/c3t50020F23000055A8d0s2    161    mm   shsam1  -
> /dev/dsk/c3t50020F23000055A8d0s0    161    mm   shsam1  -
> /dev/dsk/c3t50020F23000055A8d0s1    162    mr   shsam1  -
> /dev/dsk/c3t50020F23000078F1d0s0    163    mr   shsam1  -
> /dev/dsk/c3t50020F23000078F1d0s2    163    mr   shsam1  -
> /dev/dsk/c3t50020F23000078F1d0s1    164    mr   shsam1  -