ハードウェアのアップグレード

ここでは、ご使用の環境の装置に対するハードウェアのアップグレードの準備について説明します。

一般的な前提条件

アップグレード手順を開始する前に、次の点を確認してください。

• ハードウェアの追加や変更によってソフトウェアアップグレードが必要になるかどうかを判別する。

  ソフトウェアのアップグレードが必要な変更の例としては、サーバークラスの変更や記憶容量の大幅な増加があります。ソフトウェアのアップグレードが必要ない変更の例としては、メモリーの追加やディスクキャッシュの増加があります。

• SPARC から AMD (または AMD から SPARC) にサーバープラットフォームを切り替える場合は、データが失われないよう事前に注意する。詳細は、「SPARC プラットフォームと AMD プラットフォームの切り替え」を参照してください。

• ハードウェアの製造元のインストールの指示をよく読む。Oracle Solaris OS のシステム管理者用のドキュメントで、ハードウェア追加に関する情報も読みます。

• 新旧の mcf ファイルで装置番号の値を調べる。mcf ファイルの詳細については、『Sun QFS and Sun Storage Archive Manager 5.3 Reference Manual』の「mcf(4)」を参照してください。

• 手元にあるバックアップコピーに問題がないかどうかを確認する。データおよびメタデータのバックアップについては、「ダンプファイルの設定」で説明されている手順を参照してください。

  • Sun QFS 環境では、qfsdump コマンドで、すべてのデータとメタデータのダンプが取得されます。この処理の詳細については、『Sun QFS and Sun Storage Archive Manager 5.3 Reference Manual』の「qfsdump(1M)」を参照してください。

  • SAM-QFS 環境では、samfsdump コマンドで、すべてのメタデータのダンプが取得されます。アーカイブする必要のあるすべてのファイルのアーカイブのコピーがあることを確認してください。各 SAM-QFS ファイルシステムで sfind コマンドを使用すると、アーカイブのコピーがないファイルを確認できます。次の例では、/sam1 がマウントポイントです。

    # sfind /sam1 ! -type d ! -archived > /tmp/notarchived.list

• システムにユーザーをログインさせない。

• SAM-QFS 環境では、アーカイバが wait モードになっており稼働していないことを確認します。

  次のいずれかの方法でアーカイバをアイドル状態にできます。

  • /etc/opt/SUNWsamfs/archiver.cmd ファイルに wait 指示を指定する。wait 指示と archiver.cmd ファイルの詳細については、『Sun QFS and Sun Storage Archive Manager 5.3 Reference Manual』の「archiver.cmd(4)」を参照してください。

  • samu オペレータユーティリティーを使用する。

  • 次のコマンドを発行します。

    # samcmd aridle

詳細は、『Sun QFS and Sun Storage Archive Manager 5.3 Reference Manual』の「samcmd(1M)」を参照してください。

SPARC プラットフォームと AMD プラットフォームの切り替え

SPARC と x86 のハードウェアプラットフォームを組み合わせたり、変更する場合の重要な考慮事項を次に示します。

• Sun QFS ソフトウェアは、x64 プラットフォーム (AMD 64 アーキテクチャー) 版の Oracle Solaris 10 OS のみでサポートされ、EM64T アーキテクチャーではサポートされません。Sun QFS 共有 Linux クライアントと Oracle Solaris 10 x86 共有クライアントを除いたすべての 32 ビット x86 アーキテクチャーでもサポートされません。

• SPARC プラットフォーム上の Sun QFS ソフトウェアでサポートされるすべての機能は、次の項目を除いて x64 プラットフォーム上でもサポートされます:

  • ADIC/Grau、Fujitsu LMF、IBM3494、および SONY のネットワーク接続ライブラリは、x64 プラットフォーム上ではサポートされません。Sun StorageTek ACSLS 接続自動ライブラリは x64 プラットフォームでサポートされます。

  • 光学 (MO および UDO) ストレージライブラリおよびドライブは、x64 プラットフォームでサポートされません。

  • SANergy ソフトウェアは x64 プラットフォームでサポートされません。

  • SCSI 接続のテープドライブは、x64 プラットフォーム上ではサポートされません。SCSI HBA 64 ビットドライバが大きなブロックサイズをサポートしていないためです。SCSI 接続ライブラリとファイバ接続ライブラリは、どちらもファイバ接続テープドライブでサポートされます。

• Sun QFS 共有ファイルシステムの構成に、x64 プラットフォーム版 Oracle Solaris 10 OS と SPARC プラットフォーム版 Oracle Solaris 10 OS の両方が含まれている場合は、すべてのディスクに EFI ラベルが必要です。ディスクの再ラベル付けについては、「共有 x64 および SPARC ボリューム用の EFI ラベルの構成 」を参照してください。

• SPARC と x64 の両方のプラットフォームの Oracle Solaris 環境から同じ SAN 接続のストレージにアクセスする場合は、注意を払ってください。x64 プラットフォームの Oracle Solaris OS は SPARC プラットフォームの Oracle Solaris OS で作成された SMI VTOC8 ディスクラベルを解釈できず、SPARC プラットフォームの Oracle Solaris OS は x64 の Oracle Solaris OS で作成された SMI VTOC16 ディスクラベルを解釈できません。その結果、実際にはディスクにラベルが付いていて、異なるアーキテクチャータイプのプラットフォームで使用されていても、ラベルがないと解釈されることがあります。たとえば、SMI VTOC8 でラベル付けされたディスクに、SPARC プラットフォームの Oracle Solaris でマウントされている使用中のパーティションがあっても、x64 プラットフォームの Oracle Solaris の format パーティションコマンドではラベルなしと表示されることがあります。format コマンドから要求され、誤って fdisk コマンドを実行した場合、そのディスクの内容が破棄されます。

• ファイルシステムのメタデータ操作の制御を担当するサーバー (sammkfs コマンドでファイルシステムを作成したサーバー) のアーキテクチャータイプは変更することができません。したがって、次のようになります:

  • Sun QFS スタンドアロンファイルシステムでは、ファイルシステムを作成したサーバーとは異なるアーキテクチャータイプのサーバーに、そのファイルシステムをマウントできません。

  • アーキテクチャーが異なると、使用するバイト順序スキーム (エンディアン) が異なるため、Sun QFS 共有ファイルシステムでは、メタデータサーバーまたは潜在的なメタデータサーバーのアーキテクチャータイプを変更できません。ただし、qfsdump コマンドまたは samfsdump コマンドを使用してファイルシステムを一時ストレージへコピーし、sammkfs コマンドを使用してファイルシステムを再作成してから、qfsrestore または samfsrestore を使用してファイルシステムを再生成することで、あるアーキテクチャータイプから別のタイプへデータを移行することはできます。

• Sun StorageTek Traffic Manager の入出力マルチパス機能 (MPxIO) は、SPARC プラットフォームの Oracle Solaris 10 OS ではデフォルトで使用不可、x64 の Oracle Solaris 10 OS ではデフォルトで使用可能です。この機能は、Sun QFS 共有ファイルシステム構成のすべてのシステムに対して同じように構成する必要があります。Oracle Solaris 10 OS では /kernel/drv/fp.conf で構成します。

• Sun QFS 共有ファイルシステム環境では、/etc/opt/SUNWsamfs/hosts.fs ファイルに潜在的なメタデータサーバーとして異なるアーキテクチャータイプのサーバー (SPARC と x64) が定義されていると構成エラーが発生します。

共有 x64 および SPARC ボリューム用の EFI ラベルの構成

prtvtoc コマンドを使用して、ディスクに SMI ラベルまたは EFI ラベルが含まれているかどうか判定します。出力の「Dimensions」セクションで、SMI ラベルにはアクセス可能なシリンダの数が表示されますが、EFI ラベルにはアクセス可能なセクタの数が表示されます。

EFI ラベルは先頭の 34 セクタを予約しますが、それによってパフォーマンス的には Sun RAID-5 ストレージの境界がずれます。ストレージの境界を再割り当てしないと、書き込み時の RAID-5 の読み取り/変更/書き込みパフォーマンスが低下します。このパフォーマンス低下を防ぐには、すべてのディスクパーティションでストレージ構成に適した開始セクタを選択します。たとえば、ブロックサイズ 64 K の 8+P Sun StorageTek T3 アレイでは、すべてのディスクスライスの開始セクターを 1024 の倍数にする必要があります((8 * 64 * 1024) / 512 = 1024)。同様に、ブロックサイズ 128 K の 5+P Sun StorageTek 3510 FC アレイでは、すべてのディスクスライスの開始セクターを 1280 の倍数にする必要があります ((5 * 128 * 1024) / 512 = 1280)。

ディスクラベルをデフォルトの SMI VTOC8 から EFI に変換する方法

1. qfsdump コマンドまたは samfsdump コマンドを使用して、ファイルシステムを一時ストレージにコピーします。
2. format -e コマンドを使用して、ディスクに EFI ラベルを付け直します。

   Oracle Solaris の format -e コマンドを使用して EFI ラベルを作成するときは、メニューからパーティションコマンドを選択し、パーティション (スライス) を作成および変更できます。これを行うときは、stand または unassigned ではなく、user という名前の EFI ラベル用タグ ID を指定する必要があります。

3. sammkfs コマンドを使用してファイルシステムを再作成します。
4. qfsrestore コマンドまたは samfsrestore コマンドを使用してファイルシステムを再生成します。