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Oracle® Solaris 11.3 リンカーとライブラリガイド

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更新: 2015 年 10 月
 
 

移動セクション

一般に、ELF ファイル内では、初期設定されたデータ変数はオブジェクトファイル内で維持されます。データ変数が非常に大きく、初期設定された (ゼロ以外の) 要素が少数の場合でも、変数全体はやはりオブジェクトファイルで維持されます。

FORTRAN COMMON ブロックなど、部分的に初期化された大規模なデータ変数を含むオブジェクトは、多大なディスクスペースオーバーヘッドを引き起こす可能性があります。SHT_SUNW_move セクションは、これらのデータ変数を圧縮するメカニズムを提供します。これにより、関連するオブジェクトのディスクサイズを減らすことができます。

SHT_SUNW_move セクションは、ELF32_Move または Elf64_Move 型の複数のエントリを含みます。これらのエントリは、データ変数を一時的項目 (.bss) として定義することが可能です。これらの項目はオブジェクトファイル内のスペースは使用しませんが、実行時にはオブジェクトのメモリーイメージに反映されます。移動レコードは、完全なデータ変数を構成するためにデータについてメモリーイメージがどのように初期設定されるかを確立します。

ELF32_Move および Elf64_Move エントリは次のように定義されます。

typedef struct {
        Elf32_Lword       m_value;
        Elf32_Word        m_info;
        Elf32_Word        m_poffset;
        Elf32_Half        m_repeat;
        Elf32_Half        m_stride;
} Elf32_Move;

#define ELF32_M_SYM(info)       ((info)>>8)
#define ELF32_M_SIZE(info)      ((unsigned char)(info))
#define ELF32_M_INFO(sym, size) (((sym)<<8)+(unsigned char)(size))

typedef struct {
        Elf64_Lword       m_value;
        Elf64_Xword       m_info;
        Elf64_Xword       m_poffset;
        Elf64_Half        m_repeat;
        Elf64_Half        m_stride;
} Elf64_Move;

#define ELF64_M_SYM(info)       ((info)>>8)
#define ELF64_M_SIZE(info)      ((unsigned char)(info))
#define ELF64_M_INFO(sym, size) (((sym)<<8)+(unsigned char)(size))

これらの構造の要素は次のとおりです。

m_value

初期設定値で、この値はメモリーイメージへ移されます。

m_info

初期設定が適用されるものに関連するシンボルテーブルインデックス、および初期設定されるオフセットのサイズ (単位: バイト)。このメンバーの下位 8 ビットにはサイズを定義します (1、2、4、または 8)。上位ビットにはシンボルインデックスを定義します。

m_poffset

初期設定が適用される関連シンボルからの相対オフセット。

m_repeat

繰り返し回数。

m_stride

スキップの数。この値は、繰り返し初期化を行う際にスキップされる単位数を示します。1 単位は m_info で定義された初期化オブジェクトのサイズです。m_stride が 0 の場合、初期化が連続した単位に対して行われることを示します。

次のデータ定義は、通常、オブジェクトファイル内で 0x8000 バイトを消費します。

typedef struct {
        int     one;
        char    two;
} Data;

Data move[0x1000] = {
        {0, 0},       {1, '1'},     {0, 0},
        {0xf, 'F'},   {0xf, 'F'},   {0, 0},
        {0xe, 'E'},   {0, 0},       {0xe, 'E'}
};

このデータを説明するために、SHT_SUNW_move セクションを使用します。データ項目は、 .bss セクションに定義されます。このデータ項目のゼロ以外の要素は、適切な移動エントリで初期化されます。

$ elfdump -s data | fgrep move
    [17]    0x20868   0x8000  OBJT GLOB 0   .bss       move
$ elfdump -m data

Move Section:  .SUNW_move
  symndx     offset   size repeat stride            value  with respect to
    [17]       0x44      4      1      1       0x45000000  move
    [17]       0x40      4      1      1              0xe  move
    [17]       0x34      4      1      1       0x45000000  move
    [17]       0x30      4      1      1              0xe  move
    [17]       0x1c      4      2      1       0x46000000  move
    [17]       0x18      4      2      1              0xf  move
    [17]        0xc      4      1      1       0x31000000  move
    [17]        0x8      4      1      1              0x1  move

再配置可能オブジェクトから提供される移動セクションは連結され、リンカーにより作成されるオブジェクト内に出力されます。ただし、次の条件が成り立つ場合、リンカーは移動エントリを処理します。この処理は、移動エントリの内容を従来のデータ項目に拡張します。

  • 出力ファイルは、静的な実行可能ファイルである。

  • 移動エントリのサイズは、移動データの拡張先のシンボルのサイズより大きくなる。

  • –z nopartial オプションが有効です。