TCP ラッパーは、特定のネットワークサービスを要求するホストのアドレスをアクセス制御リスト (ACL) と突き合わせて検査することによるアクセス制御の実装方法を提供します。要求は、状況に応じて、許可されたり拒否されたりします。このアクセス制御メカニズムを提供する以外に、TCP ラッパーは、ネットワークサービスに対するホストの要求を記録します。これは、有用な監視機能です。アクセス制御のもとに置かれるネットワークサービスの例として、rlogind、telnetd、ftpd などがあります。
version 8.12 より、sendmail で TCP ラッパーが使用できるようになりました。この検査によってほかのセキュリティー対策が省略されることはありません。sendmail で TCP ラッパーを有効にすることにより、検査が追加され、ネットワーク要求元の妥当性が検証されてから要求が許可されます。hosts_access(4) のマニュアルページを参照してください。
inetd(1M) および sshd(1M) での TCP ラッパーは、Solaris 9 リリースからサポートされています。
ACL については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』の「アクセス制御リストによる UFS ファイルの保護」を参照してください。
version 8.12 より、sendmail に新しい構成ファイル /etc/mail/submit.cf が含まれるようになりました。この submit.cf ファイルを使用して、sendmail をデーモンモードではなく、メール配信プログラムモードで実行できます。デーモンモードとは異なり、メール配信プログラムモードでは root 権限は必要ありません。そのため、この新しいパラダイムを使用すると、セキュリティーが向上します。
submit.cf の機能については、次を参照してください。
sendmail は、MSP (メール配信プログラム) モードでは submit.cf を使って実行します。submit.cf は、電子メールを送信したり、ユーザー以外の mailx のようなプログラムによって呼び出したりすることができます。-Ac オプションおよび -Am オプションについては、sendmail(1M) のマニュアルページを参照してください。
submit.cf は、次の操作モードで使用します。
-bm デフォルトの操作モード
-bs 標準入力を使用して SMTP を実行する
-bt アドレスの解決に使用されるテストモード
submit.cf を使用している場合には、sendmail は SMTP デーモンとして動作しません。
submit.cf を使用している場合には、sendmail はクライアント専用のメールキューである /var/spool/clientmqueue を使用します。このキューにより、sendmail デーモンに配信されなかったメッセージが保持されます。クライアント専用キューにあるメッセージは、クライアントの「デーモン」によって配信されます。実際には、このデーモンが、クライアントキューを実行します。
デフォルトでは、sendmail は submit.cf を使用して、定期的に MSP キュー (クライアント専用キュー) である /var/spool/clientmqueue を実行します。
/usr/lib/sendmail -Ac -q15m |
次の事項に注意してください。
Solaris 9 より、submit.cf は自動的にインストールされます。
Solaris 9 以降をインストールする前に、submit.cf について計画および準備をする必要はありません。
構成ファイルを指定しないかぎり、sendmail は、必要に応じて、submit.cf を自動的に使用します。基本的に、sendmail は各タスクについて、submit.cf と sendmail.cf のどちらを使用するのが適切かを判断します。
submit.cf を変更することはできません。
構成ファイル sendmail.cf は、デーモンモードで使用します。このファイルを使用すると、sendmail は、メール転送エージェント (MTA) として動作します。sendmail は、root によって起動されます。
/usr/lib/sendmail -L sm-mta -bd -q1h |
sendmail.cf 特有のほかの機能については、次を参照してください。
デフォルトでは、sendmail.cf がメールキュー /var/spool/mqueue を実行します。
submit.cf が追加されたため、次の機能が変更されました。
sendmail の version 8.12 より、root だけがメールキューを実行できます。この変更の詳細は、mailq(1) のマニュアルページを参照してください。新しい作業手順については、「キューディレクトリの管理 (作業マップ)」を参照してください。
メール配信プログラムモードは、root 権限がなくても実行されるので、sendmail が特定のファイル (.forward ファイルなど) にアクセスできないことがあります。したがって、sendmail に -bv オプションを追加すると、ユーザーが誤解するような出力を発生させる可能性があります。回避策はありません。
8.12 より前のバージョンの sendmail では、sendmail をデーモンモードで実行しない場合は、受信メールの配信を防止することしかできませんでした。version 8.12 より、デフォルトの構成で、sendmail デーモンを実行しない場合、送信メールの配信もまた防止することができます。クライアントキューランナー (メール配信プログラム) を設定して、ローカル SMTP ポートのデーモンにメールを送信できるようにする必要があります。クライアントキューランナーが SMTP のセッションをローカルホストで開こうとした場合で、デーモンが SMTP ポートで待機していないときには、メールはキューにとどまります。デフォルトの構成では、デーモンが実行されます。そのため、デフォルト構成を使用する場合には、この問題は発生しません。ただし、デーモンを無効にした場合の解決方法については、 「sendmail.cf の代替構成を使ってメール配信を管理する方法」を参照してください。
次の表では、 sendmail の追加されたコマンド行オプションまたは推奨されないコマンド行オプションについて説明します。コマンド行のほかのオプションについては、sendmail(1M) のマニュアルページを参照してください。
表 14–19 sendmail の version 8.12 から追加されたまたは推奨されないコマンド行オプション
オプション |
説明 |
---|---|
オペレーションモードが初期メール配信を示していない場合でも、構成ファイル submit.cf を使用します。submit.cf についての詳細は、「sendmail の version 8.12 からの submit.cf 構成ファイル」を参照してください。 |
|
オペレーションモードが初期メール配信を示している場合でも、構成ファイル sendmail.cf を使用します。詳細は、「sendmail の version 8.12 からの submit.cf 構成ファイル」を参照してください。 |
|
各キューのエントリ数を出力します。 |
|
コマンド行から送信されたメッセージが、初期送信のためでなく、中継のためであることを示します。アドレスが絶対パスではない場合は、メッセージは拒否されます。正規化は実行されません。ftp://ftp.sendmail.org で sendmail とともに配布しているリリースノートで説明しているように、将来のリリースでは、不適切な形式のメッセージが拒否される可能性があります。 |
|
指定された syslog メッセージに使用する識別子を タグ (tag) に設定します。 |
|
受信者にこの部分文字列 (substring) を含むジョブだけを処理します。オプションに ! を追加すると、受信者にこの部分文字列 (substring) を含まないジョブだけを処理します。 |
|
キュー ID にこの部分文字列 (substring) を含むジョブだけを処理します。オプションに ! を追加すると、キュー ID にこの部分文字列 (substring) を含まないジョブだけを処理します。 |
|
送信者にこの部分文字列 (substring) を含むジョブだけを処理します。オプションに ! を追加すると、送信者にこの部分文字列 (substring) を含まないジョブだけを処理します。 |
|
キューにあるメッセージをシステムコール fork を使用しないで一度処理し、フォアグラウンドでプロセスを実行します。fork(2) のマニュアルページを参照してください。 |
|
name で指定するキューグループにあるメッセージだけを処理します。 |
|
各キュー用にフォークされた子プロセスを使用して、キューに保存されているメッセージを指定した間隔で処理します。次にキューが実行されるまでの間、その子プロセスはスリープしています。この新しいオプションは -qtime に似ています。qtime は、定期的に子をフォークしてキューを処理します。 |
|
ftp://ftp.sendmail.org で sendmail とともに配付しているリリースノートで説明しているように、このオプションは version 8.12 以降では使用できません。メールユーザーエージェントでは、引数 -G を使用することをお勧めします。 |
次の表では、PidFile オプションおよび ProcessTitlePrefix オプションにおけるマクロ処理の追加引数について説明します。これらのオプションについては、sendmail(1M) のマニュアルページを参照してください。
表 14–20 PidFile オプションおよび ProcessTitlePrefix オプションの引数
マクロ |
説明 |
---|---|
${daemon_addr} |
0.0.0.0 などのデーモンアドレスを提供します。 |
${daemon_family} |
inet や inet6 などのデーモンファミリーを提供します。 |
${daemon_info} |
SMTP+queueing@00: 30:00 などのデーモン情報を提供します。 |
${daemon_name} |
MSA などのデーモン名を提供します。 |
${daemon_port} |
25 などのデーモンポートを提供します。 |
${queue_interval} |
キューを実行する間隔を提供します (00:30:00 など)。 |
次の表では、sendmail プログラムで使用するための追加マクロについて説明しています。マクロの値は、内部で割り当てられています。詳細は、sendmail(1M) のマニュアルページを参照してください。
表 14–21 sendmail に追加定義されたマクロ
マクロ |
説明 |
---|---|
${addr_type} |
現在のアドレスを、エンベロープの送信側または受信者アドレスと認定します。 |
${client_resolve} |
${client_name} の解釈処理コールの結果、 つまり OK、FAIL、FORGED、または TEMP を保持します。 |
${deliveryMode} |
DeliveryMode オプションの値ではなく、sendmail が使用している現在のデリバリモードを指定します。 |
${dsn_notify}、${dsn_envid}、${dsn_ret} |
対応する DSN パラメータ値を保持します。 |
${if_addr} |
インタフェースがループバックネット上にない場合に、受信接続用インタフェースのアドレスを提供します。このマクロは、特に仮想ホスティングに便利です。 |
${if_addr_out}、${if_name_out}、${if_family_out} |
${if_addr} の再利用を避けます。次の値を、それぞれ保持します。 送信接続用インタフェースのアドレス 送信接続用インタフェースのホスト名 送信接続用インタフェースのファミリ |
${if_name} |
受信接続用のインタフェースのホスト名を提供します。これは、特に仮想ホスティングに便利です。 |
${load_avg} |
実行キューにあるジョブの現在の平均数を確認して報告します。 |
${msg_size} |
ESMTP ダイアログにあるメッセージサイズの値 (SIZE=parameter) を保持してから、メッセージを収集します。その後、sendmail によって計算されたメッセージサイズを保持したマクロを check_compat で使用します。check_compat については、表 14–25 を参照してください。 |
${nrcpts} |
妥当性検査を行なった受信者の数を保持します。 |
${ntries} |
配信を試みた回数を保持します。 |
${rcpt_mailer}、${rcpt_host}、${rcpt_addr}、${mail_mailer}、${mail_host}、および ${mail_addr} |
引数 RCPT および MAIL を構文解析した結果を保持します。つまり、メール配信エージェント ($#mailer)、ホスト ($@host)、およびユーザー ($:addr) から解釈処理された RHS (Right-Hand Side) トリプレットを保持します。 |
この節では、構成ファイル sendmail を構築するのに使用する追加マクロについて説明した表を示します。
表 14–22 構成ファイル sendmail を構築するのに使用する追加マクロ
マクロ |
説明 |
---|---|
LOCAL_MAILER_EOL |
ローカルメールプログラムの行末を示すデフォルト文字列を置きかえます。 |
LOCAL_MAILER_FLAGS |
デフォルトで Return-Path: ヘッダーを追加します。 |
MAIL_SETTINGS_DIR |
メール設定ディレクトリのパスを格納します (末尾のスラッシュを含む)。 |
MODIFY_MAILER_FLAGS |
*_MAILER_FLAGS を拡張します。このマクロは、フラグを設定、追加、または削除します。 |
RELAY_MAILER_FLAGS |
中継メールプログラムの追加フラグを定義します。 |
次のマクロを使用して、受け入れ可能なコマンドを最大数設定し、sendmail による配信の遅れを防止することができます。これらの MAX マクロは、コンパイル時に設定できます。次の表にある最大値は、現在のデフォルト値でもあります。
表 14–23 追加された MAX マクロ
マクロ |
最大値 |
各マクロが検査するコマンド |
---|---|---|
25 |
未知のコマンド |
|
20 |
NOOP、VERB、ONEX、XUSR |
|
3 |
HELO、EHLO |
|
6 |
VRFY、EXPN |
|
8 |
ETRN |
マクロによる確認を無効にするには、マクロの値を 0 に設定します。
この節では、sendmail において追加または改訂された m4 構成マクロの表を示します。これらのマクロを宣言するには、次の構文を使用します。
symbolic-name(`value') |
新しい sendmail.cf ファイルを構築する必要がある場合は、「sendmail 構成を変更する」の 第 13 章メールサービス (手順)を参照してください。
表 14–24 sendmail において追加または改訂された m4 構成マクロ
m4 マクロ |
説明 |
---|---|
FEATURE() |
詳細は、「sendmail の version 8.12 からの FEATURE() の宣言についての変更点」を参照してください。 |
このマクロは、クラス w ($=w) にエントリを追加します。 |
|
マスカレードできないホストやサブドメインを定義する新しいマクロ。 |
|
このマクロは user@[host] のように、括弧で囲まれたアドレスに使用できます。 |
|
これらのマクロを使用する場合は、$=R に $={VirtHost} を含めます。$=R は、中継が許可された一連のホスト名です。 |
FEATURE() の宣言についての変更点については、次の表を参照してください。
FEATURE の新しい名前および改訂された名前を使用するには、次の構文を使用します。
FEATURE(`name', `argument') |
新しい sendmail.cf ファイルを構築する必要がある場合は、「sendmail 構成を変更する」の 第 13 章メールサービス (手順)を参照してください。
表 14–25 追加または改訂された FEATURE() の宣言
FEATURE() の名前 |
説明 |
---|---|
引数 : 次の段落の例を参照してください。 この新しい FEATURE() によって、送信者アドレスと受信者アドレスからなるアクセスマップ内でキーを検索できます。この FEATURE() は、文字列 <@> で区切ります。たとえば、sender@ sdomain<@>recipient @rdomain のようにします。 |
|
引数 : friend にすると、スパムメールの friend テストを実行できます。また、hater にすると、スパムメールの hater テストを実行できます。 すべての検査作業を遅らせる新しい FEATURE()。FEATURE(`delay_checks') を使用すると、クライアントが接続する場合、またはクライアントが MAIL コマンドを発行する場合に、ルールセット check_mail および check_relay は呼び出されません。代わりに、これらのルールセットはルールセット check_rcpt によって呼び出されます。詳細については、/etc/mail/cf/README ファイルを参照してください。 |
|
引数 : この FEATURE() は、最大次の 2 つの引数を受け入れます。
DNS 参照の戻り値を検査する回数を複数にできる新しい FEATURE()。この FEATURE() を使用して、参照が一時的に失敗した場合の動作を指定できます。 |
|
引数 : ドメイン名。 dnsbl の強化バージョンの新しい FEATURE() 。この FEATURE を使用して、DNS 参照の戻り値を検査できます。詳細は、/etc/mail/cf/README を参照してください。 |
|
引数 : なし。 genericstable を $=G のサブドメインに適用するのにも使用できる新しい FEATURE()。 |
|
引数 : 詳細は、http://www.sendmail.org の「リリースノート」を参照してください。 LDAP アドレスルーティングを実装する新しい FEATURE()。 |
|
引数 : LMTP (Local Mail Transfer Protocol) を使用できるメールプログラムのパス名。デフォルトは mail.local であり、今回の Solaris リリースでは LMTP を使用できます。 ローカルメールプログラムの DSN (delivery status notification) 診断コードのタイプを SMTP の正しい値に設定する FEATURE()。 |
|
引数 : なし。 ローカルメールプログラムをマスカレードしないようにするために使用する新しい FEATURE()。 |
|
引数 : なし。 アクセスマップの .domain を参照するのに使用する新しい FEATURE()。 |
|
引数 : canonify_hosts またはなし。 FEATURE() には次の機能が含まれます。 CANONIFY_DOMAIN または CANONIFY_DOMAIN_FILE で指定した、ドメインのリストを演算子 $[ および $] に渡して正規化することができます。 canonify_hosts がそのパラメータとして指定されている場合には、<user@host> など、ホスト名だけを含むアドレスを正規化できます。 複数のコンポーネントを持つアドレスの末尾にドットを追加できます。 |
|
引数 : なし。 sendmail のデフォルト設定を m4 構成ファイルでオフにする新しい FEATURE()。このファイルは、複数の異なるポート上で待機するために生成されたもので、RFC 2476 に実装されています。 |
|
引数 : reject にすると、! トークンを使用できません。 nospecial にすると、! トークンを使用できます。 ! トークンをアドレスのローカルの部分に使用するかどうかを決定する FEATURE()。 |
|
引数 : なし。 通常の構成ですべてのルールセットを提供する FEATURE()。スパムメール対策チェックを実行します。 |
|
引数 : なし。 sendmail がアドレスをローカル配信エージェントに渡す際に、アドレスの +detail の部分を保存できる新しい FEATURE()。 |
|
引数 : なし。 LUSER_RELAY を使用している場合に、受信者のホスト名を保存できる新しい FEATURE()。 |
|
引数 : なし。 電子メールのアドレス全体または受信者のドメインに基づいたキューグループを選択できる新しい FEATURE()。 |
|
引数 : ドメインは、任意の引数です。 メールの送信側がアクセスマップに RELAY として指定されており、それをヘッダー行 From: でタグ付けされている場合に、リレーを許可する新しい FEATURE()。省略可能な引数 domain を指定すると、メール送信側のドメイン部も検査されます。 |
|
引数 : なし。 $={VirtHost} を適用するのに使用する FEATURE()。$={VirtHost} は、VIRTUSER_DOMAIN または VIRTUSER_DOMAIN_FILE を使って生成できる virtusertable エントリを一致させるための新しいクラス。 また、FEATURE(`virtuser_entire_domain') を使用して、クラス $={VirtHost} をサブドメイン全体に適用することもできます。 |
次の FEATURE () 宣言はサポートされなくなりました。
表 14–26 宣言がサポートされていない FEATURE()
MAILER() を宣言すると、配信エージェントのサポートを指定できます。配信エージェントを宣言するには、次の構文を使用します。
MAILER(`symbolic-name') |
次の変更に注意してください。
この新しいバージョンの sendmail では、MAILER(`smtp') を宣言すると、メールプログラム dsmtp が追加されます。dsmtp により、メールプログラムのフラグ F=% を使用して、オンデマンドに配信することができます。dsmtp メールプログラムを定義する際には、新しい DSMTP_MAILER_ARGS を使用します。DSMTP_MAILER_ARGS のデフォルトは IPC $h です。
MAILER によって使用されるルールセットの番号は削除されました。MAILER(`uucp') を除いて、MAILER の表示順を自由に設定できます。uucp-dom および uucp-uudom を使用する場合には、MAILER(`smtp') のあとに MAILER(`uucp') を配置する必要があります。
メールプログラムの詳細は、「メールプログラムと sendmail」を参照してください。新しい sendmail.cf ファイルを構築する必要がある場合は、「sendmail 構成を変更する」の 第 13 章メールサービス (手順)を参照してください。
次の表では、配信エージェントの追加されたフラグについて説明しています。デフォルトでは、これらのフラグは設定されていません。これらの 1 文字のフラグはブール型です。このフラグを設定したりその設定を解除したりするには、次の例のように、フラグを構文ファイルの F= 文に含めるか除外します。
Mlocal, P=/usr/lib/mail.local, F=lsDFMAw5:/|@qSXfmnz9, S=10/30, R=20/40, Mprog, P=/bin/sh, F=lsDFMoqeu9, S=10/30, R=20/40, D=$z:/, Msmtp, P=[IPC], F=mDFMuX, S=11/31, R=21, E=\r\n, L=990, Mesmtp, P=[IPC], F=mDFMuXa, S=11/31, R=21, E=\r\n, L=990, Msmtp8, P=[IPC], F=mDFMuX8, S=11/31, R=21, E=\r\n, L=990, Mrelay, P=[IPC], F=mDFMuXa8, S=11/31, R=61, E=\r\n, L=2040, |
フラグ |
説明 |
---|---|
% |
このフラグを使用するメールプログラムは、ETRN 要求や次のいずれかのキューオプションを使ってキューにあるメッセージを選択しないかぎり、最初の受信者宛にメールを配信したり、キューを実行したりしません。 -qI、-qR、または -qS。 |
1 |
このフラグは、\0 などのヌル文字を送信するメールプログラムの機能を無効にします。 |
2 |
このフラグは、ESMTP の使用を無効にし、代わりに SMTP を使用するように要求します。 |
6 |
このフラグを指定すると、メールプログラムでヘッダーを 7 ビットにすることができます。 |
次の表では、配信エージェントを定義するコマンド M とともに使用できる新しい設定について説明しています。次の構文は、設定を新たに付加する方法、および構成ファイルの既存の設定に新しい引数を付加する方法を示しています。
Magent-name, equate, equate, ... |
次の例には、新しい設定 W= が含まれています。この設定は、すべてのデータが送信されたあとでメールプログラムが戻るまでの最長待ち時間を指定します。
Msmtp, P=[IPC], F=mDFMuX, S=11/31, R=21, E=\r\n, L=990, W=2m |
m4 の構成値の定義を変更するには、次の例のような構文を使用します。
define(`SMTP_MAILER_MAXMSGS', `1000') |
この例では、smtp メールプログラムで 1 回の接続で配信されるメッセージ数を 1000 に制限しています。
新しい sendmail.cf ファイルを構築する必要がある場合は、「sendmail 構成を変更する」の 第 13 章メールサービス (手順)を参照してください。
通常、mailer ディレクトリで、この設定の定義を変更するのは、微調整が必要な場合だけです。
本リリースでは、複数のキューディレクトリをサポートしています。複数のキューを使用するには、次の例のように、アスタリスク (*) で終わっている QueueDirectory オプション値を構成ファイルに追加します。
O QueueDirectory=/var/spool/mqueue/q* |
このオプション値 /var/spool/mqueue/q* は、「q」で始まっているすべてのディレクトリ (またはディレクトリへのシンボリックリンク) をキューのディレクトリとして使用します。sendmail の実行中には、キューのディレクトリ構造を変更しないでください。キューを実行すると、デーモン以外のキューの実行時に冗長フラグ (-v) を使用しないかぎり、各キューについての実行プロセスが作成されます。この新しい項目が、無作為にキューに割り当てられます。
この新しいキューのファイルの名前付けシステムで使用する名前は、60 年間一意であることが保証されます。このシステムでは、キュー ID が複雑なファイルシステムのロックを使用しないで割り当てられるため、キューにある項目を簡単にほかのキューに移動することができます。
version 8.12 より、root だけがメールキューを実行できます。この変更の詳細は、mailq(1) のマニュアルページを参照してください。新しい作業手順については、「キューディレクトリの管理 (作業マップ)」を参照してください。
エンベロープの分割に対応するために、キューファイルの名前は 14 文字ではなく、15 文字にします。14 文字までの名前を持つファイルシステムは、サポートされません。
作業手順については、「キューディレクトリの管理 (作業マップ)」を参照してください。
次に、LDAP (Lightweight Directory Access Protocol) を sendmail で使用する際の変更点について説明します。
LDAPROUTE_EQUIVALENT() および LDAPROUTE_EQUIVALENT_FILE() を使用して、同じホスト名を指定することができます。これらのホスト名は、LDAP ルーティング参照のマスカレードドメイン名と置き換えられます。詳細は、/etc/mail/cf/README を参照してください。
ftp://ftp.sendmail.org で sendmail とともに配布しているリリースノートで説明しているように、LDAPX マップの名前は LDAP に変更されました。LDAP には、次の構文を使用します。
Kldap ldap options |
本リリースでは、一度の LDAP 参照に複数の値を返すことができます。次の例のように、返す値を -v オプションを付加したコンマ区切りの文字列に配置します。
Kldap ldap -v"mail,more-mail" |
LDAP マップの宣言で LDAP 属性が指定されていない場合は、一致した属性がすべて返されます。
このバージョンの sendmail は、LDAP 別名ファイルに指定された引用符などで囲まれたキーや値の文字列内のコンマによって、1 つのエントリが複数のエントリに分割されるのを防止します。
このバージョンの sendmail には、LDAP マップ用の新しいオプションがあります。この -Vseparator オプションを使用して、区切り文字を指定できます。そのため、検索を行うと、該当する separator によって区切られた属性と値の両方を返すことが可能です。
%s トークンを使用した LDAP フィルタ指定の構文解析に加えて、新しいトークンである %0 を使用して、キーバッファーを符号化することもできます。%0 トークンは、LDAP の特殊文字に対して、文字どおりの意味を適用します。
次の例では、これらのトークンが「 *」検索でどのように違うかを説明します。
表 14–29 トークンの比較
LDAP のマップ指定 |
同等の指定 |
結果 |
---|---|---|
-k"uid=%s" |
-k"uid=*" |
ユーザー属性を持つ任意のレコードに一致します |
-k"uid=%0" |
-k"uid=\2A" |
「 *」という名前を持つユーザーに一致します |
次の表では、LDAP マップの追加されたフラグについて説明しています。
表 14–30 LDAP マップの追加されたフラグ
フラグ |
説明 |
---|---|
-1 |
一致したレコードが 1 つだけだった場合、そのレコードを返します。複数のレコードが一致して返される場合には、結果として、レコードが検出されなかったことと同じとなります。 |
-r never|always|search|find |
LDAP 別名の参照を解除するオプションを設定します。 |
-Z size |
一致したもののうち、返すレコード数を制限します。 |
前のバージョンに組み込まれていたメールプログラム [TCP] は使用できません。代わりに、新しく組み込まれたメールプログラム P=[IPC] を使用してください。プロセス間通信 ([IPC]) 組み込みメールプログラムで、それをサポートするシステム上の UNIX ドメインソケットへの配信を行えるようになりました。このメールプログラムは、指定したソケットで待機している LMTP 配信エージェントとともに使用できます。次に、メールプログラムの例を示します。
Mexecmail, P=[IPC], F=lsDFMmnqSXzA5@/:|, E=\r\n, S=10, R=20/40, T=DNS/RFC822/X-Unix, A=FILE /var/run/lmtpd |
[IPC] メールプログラムの最初の引数の値が妥当であるか検査されるようになりました。次の表では、最初のメールプログラム引数に設定可能な値について説明しています。
表 14–31 最初のメールプログラム引数に設定可能な値
値 |
説明 |
---|---|
A=FILE |
UNIX ドメインソケットによる配信に使用します。 |
A=TCP |
TCP/IP 接続に使用します。 |
A=IPC |
最初のメールプログラム引数としては使用できません。 |
次の表では、追加されたルールセットとその動作について説明しています。
表 14–32 新しいルールセット
ルールセット |
説明 |
---|---|
ヘッダーから収集した情報を相関させ、欠けているヘッダーを検査します。このルールセットは、マクロストレージマップとともに使用し、すべてのヘッダーが収集されたあと、呼び出されます。 |
|
check_rcpt が RCPT を使用するように、ETRN コマンドを使用します。 |
|
check_rcpt が RCPT を使用するように、EXPN コマンドを使用します。 |
|
check_rcpt が RCPT を使用するように、VRFY コマンドを使用します。 |
次に、ルールセットの追加機能について説明します。
番号が付けられたルールセットには、名前も付けられました。ただし、これらのルールセットに、番号でアクセスすることもできます。
H ヘッダー構成ファイルコマンドを使用して、デフォルトルールセットを指定し、ヘッダーを確認することができます。各ヘッダーに、独自のルールセットが割り当てられていない場合にだけ、このルールセットが呼び出されます。
ルールセット内のコメント、つまり括弧内のテキストは、構成ファイルのバージョンが 9 かそれ以上である場合には削除されません。たとえば、次のルールは、入力 token (1) を照合します。ただし、入力 token は照合しません。
R$+ (1) $@ 1 |
TCP ラッパーまたは check_relay ルールセットが原因でコマンドを拒否する場合でも、sendmail は SMTP RSET コマンドを受け入れます。
OperatorChars オプションを何度も設定すると、警告が送信されます。また、ルールセットを定義したあとで OperatorChars を設定しないでください。
無効なルールセットを宣言すると、行だけでなく、そのルールセットの名前も無視されます。そのルールセットの行は S0 に追加されません。
Solaris 10 以降のリリースでは、読み取り専用の /usr ファイルシステムをサポートするために、/usr/lib/mail ディレクトリの内容が /etc/mail/cf ディレクトリに移動されました。詳細は、「/etc/mail/cf ディレクトリの内容」を参照してください。ただし、シェルスクリプト /usr/lib/mail/sh/check-hostname および /usr/lib/mail/sh/check-permissions は、/usr/sbin ディレクトリに置かれるようになりました。「メールサービスに使用するその他のファイル」を参照してください。下位互換性を確保するために、シンボリックリンクが各ファイルの新しい位置を示します。
/usr/lib/mail/cf/main-v7sun.mc の新しい名前は /etc/mail/cf/cf/main.mc です。
/usr/lib/mail/cf/subsidiary-v7sun.mc の新しい名前は /etc/mail/cf/cf/subsidiary.mc です。
helpfile は /etc/mail/helpfile にあります。古い名前 (/etc/mail/sendmail.hf) には、新しい名前へのシンボリックリンクがあります。
trusted-users ファイルは /etc/mail/trusted-users にあります。アップグレード中に、新しい名前は検出されず、古い名前である /etc/mail/sendmail.ct が検出されると、古い名前から新しい名前へのハードリンクが作成されます。それ以外の場合には、変更されません。デフォルトの内容は、root です。
local-host-names ファイルは /etc/mail/local-host-names にあります。アップグレード中に、新しい名前は検出されず、古い名前である /etc/mail/sendmail.cw が検出されると、古い名前から新しい名前へのハードリンクが作成されます。それ以外の場合には、変更されません。デフォルトの内容は、ゼロ長です。
sendmail の version 8.12 より、アドレスを正しく識別するために、構成に使用する IPv6 アドレスの前に IPv6: タグを付ける必要があります。IPv6 アドレスを識別しない場合は、タグを前に付けません。