この章では、Solstice Backup ソフトウェアの機能について説明し、Backup の構成方法と使用方法を紹介します。
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貴重なデータが失われるのを防ぐために、コンピュータシステムをバックアップすることは大切です。特に、ユーザーが共有データに依存していたり、新たなシステムの追加によりデータの量が急速に増大するネットワーク環境では、データの管理がきわめて重要になります。
Solstice Backup は、コンピュータネットワーク全体に分散しているデータを保護し、その管理を支援するネットワークストレージ管理ソリューションです。Backup を使用して日常的なストレージ管理操作を迅速に行い、単純化することで、管理者の貴重な時間を節約できます。ネットワークのストレージ管理と構成は、グラフィカルユーザーインタフェース (GUI) を介して行うこともできます。Backup では、データの管理を行うために、保存されたデータのデータベースが作成されるので、復旧時にも簡単にデータを見つけ出すことができます。さらに、ネットワークとデータの規模が大きくなっても、Backup はそれに対応できる容量とパフォーマンスを提供します。
Backup には、広範囲に及ぶストレージデバイスを高いパフォーマンスで処理できるストレージ管理アプリケーションが組み込まれています。Backup ソフトウェア製品は、次の 3 つのコンポーネントから構成されています。
Backup クライアントソフトウェア - 管理対象のデータのあるマシンにインストールされているプロセスとプログラムのコレクション
Backup サーバーソフトウェア - データのバックアップ、復旧、アーカイブ、および Backup HSM (階層型ストレージ管理) など、Backup サービスを実行するマシンにインストールされるプロセスとプログラムのコレクション
Backup ストレージノードソフトウェア - バックアップ、復旧、アーカイブ、および HSM など、Backup 操作の際に、対応するストレージデバイスの制御を行うマシンにインストールされているプロセスとプログラムのコレクション
Backup ソフトウェアを構成して Backup サーバーに直接に接続されているストレージデバイスをバックアップします。また、1 台以上のストレージデバイスが接続されている別のマシンを指定して、Backup ストレージノードを作成する方法もあります。この場合、Backup サーバーが Backup データを追跡するリソースとファイルを保守し、ストレージノードのマシンがストレージデバイスとメディアを制御します。
バックアップ、アーカイブ、および HSM のデータは、データの特性に応じて、特定のボリュームのコレクションに格納できます。
データのアーカイブを作成するためには、その前にフルバックアップを実行する必要があります。
Backup は、データをストレージメディアに書き込むと同時に、すべての管理対象のデータの位置を記録するデータベースを作成します。Backup はデータの状態を監視し、管理者が指定したさまざまなレベルの期限に達すると、追跡システム内でデータの格納場所を自動的に巡回させます。
管理者とユーザーは、復旧可能なファイルのインデックスを表示し、データまたはメディアの状態を記述するレポートを作成し、ユーザーが指定した時刻にデータの復旧を行うことができます。データ復旧要求が出されると、Backup ストレージ管理システムは要求されたデータを含んでいるボリュームを見つけ出し、そのデバイスに対して復旧用に適切なボリュームをマウントするように指示するか、ユーザーに対してボリューム名を指定するように求めるメッセージを送信します。このようにして、Backup はあらゆるストレージボリューム操作を管理します。
Backup はクロスプラットフォームのストレージ管理製品です。Backup がインストールされ、ネットワークに接続されている UNIX、Windows NT、Windows 95、MacOS、または NetWare のワークステーションから、Backup サーバーを管理できます。さらに、Backup サーバーとは異なるプラットフォームを使用している Backup クライアントが、自分のデータをサーバーにバックアップできます。
Backup では、Backup ソフトウェアがインストールされ、Backup サーバーによって認識されているネットワーク上のあらゆるクライアントまたはサーバーに対して、管理サービスを指示し実行します。Backup インタフェースには、対象となっている Backup クライアントに関連するオプションだけが表示されるので、個々のマシンの構成を知らなくても監視セッションを開始することができます。
Backup には、次に示す標準機能とオプションの機能があります。
並列処理 - サーバーまたはストレージノードに複数のセーブストリームを同時に流す
多重化 - 複数のセーブストリームを同じデバイスに対して同時に書き込み可能
クライアントの並列処理 - クライアントは複数のセーブストリームを同時に送信可能
セッション管理 - 1 つのデバイスあたりのセーブストリームの数を制御して、各デバイスのパフォーマンスを最大限に高める
ファイルデバイスへのバックアップだけでなく、オプションとして、ニアラインまたはオフラインボリュームへのステージングが可能
サポートされるオプションモジュール
オートチェンジャソフトウェアモジュール
サイロソフトウェアモジュール
アーカイブモジュール
いくつかのタイプのデータベースをバックアップするための Solstice データベースモジュール
簡易ネットワーク管理プロトコル (Simple Network Management, SNMP)
HSM
Backup には、重要なデータの保護を簡単に管理できるツールが用意されています。Backup には、次の機能があります。
Backup の管理に GUI あるいはコマンド行が使用可能
ネットワーク上の任意のマシンから Backup の機能の管理と構成が可能
クライアントデータを同じオペレーティングシステムの別のクライアントマシンへ復旧させるためのアクセス権の付与
オンラインヘルプとマニュアルページにアクセスすることで、疑問に対する解答を入手可能
自動メディア管理機能により、ボリュームのラベル付けや、バックアップに必要なボリュームのマウントが可能
ストレージ管理のニーズに対応して、現在使用している Backup ソフトウェアを拡張できます。たとえば、次のことができます。
サーバー機能の基本レベルをアップグレードする、さらに (大規模な) オートチェンジャを追加する、サポートされるクライアントの数を増やす、オプションのソフトウェアモジュールを追加するなどの操作を、サーバーソフトウェアをインストールし直さないで実行できます。
データベースやその他のファイルシステム以外のデータをバックアップするための特殊な Solstis データベースモジュールクライアントソフトウェアを追加できます。
データ管理タスクを制御元の Backup サーバーに集中させたまま、バックアップデバイスを制御するリモートストレージノードのサポートを追加できます。
Sun は、さまざまなサーバー、クライアント、データベース、および関連のバックアップ/復旧ソフトウェアを提供しています。
すべての Backup クライアント (自らクライアントとして機能して自分のデータをバックアップするサーバーも含まれる) は、次に示すプラットフォーム上で実行されている Backup サーバーソフトウェアを使用してバックアップできます。
UNIX (Solaris、HP-UX、AIX)
Windows NT
NetWare
Backup のサーバー製品には 3 種類のバージョンがあります。
Backup Server Edition - サーバーをローカルにバックアップ可能。16 台までのデバイスの並列バックアップをサポート。追加クライアントのサポートや、Backup Archive などのオプションのソフトウェア機能は含まれていない。後からこれよりも上位レベルの Backup ソフトウェアを購入した場合には、Backup Server Edition でバックアップしたすべてのデータは、どのレベルの Backup ソフトウェアでも復旧可能
Backup NetWork Edition - サーバーと、ユーザーが購入した数のクライアント接続を持つクライアントワークステーションをバックアップ可能。Backup NetWork Edition をアップグレードして、追加のクライアントのサポートとオプションのソフトウェア機能を追加可能
Backup Power Edition - 特に VLDB (大規模データベース) や大きな (テラバイト規模の) ファイルシステムアプリケーションをサポートする環境を対象として、データ保護およびバックアップ機能を提供するように調整されたサーバーソフトウェア製品。高速デバイスをサポートするようにアップグレード可能
サーバー製品にはいくつかの Backup クライアントが付属しています。購入したソフトウェアパッケージに付属しているクライアントの種類と、そのインストール方法については、『Solstice Backup 5.1 ご使用にあたって』を参照してください。また、プラットフォーム固有のクライアントのサポートも、Backup ClientPak ソフトウェアとして個別に販売されています。現在のところ、以下に示すプラットフォームとオペレーティングシステム用のクライアントが販売されています。
UNIX : Solaris、SunOSTM、SunOS、HP-UX、IBM AIX、IRIX、SCO UNIX および UnixWare
PC デスクトップ : OS/2 Warp、Microsoft Windows、Windows NT Workstation、Windows 95
Windows NT Server
Novell NetWare/IntranetWare
Macintosh
これ以外にも、Sun はストレージ管理のニーズに対応するための製品を提供しています。
Backup オートチェンジャモジュール - 1 台以上のオートチェンジャが接続されているときに、Backup の自動バックアップ機能をフルに活用
Backup アーカイブアプリケーション - 貴重なデータを長期保管するための高度なアーカイブ機能
Backup HSM アプリケーション - 種類も設置場所も異なる複数のメディア間で自動的にデータを移動する手段。ネットワーク管理リソースを節約
Backup SNMP モジュール - Backup イベントを、SNMP 準拠のネットワーク管理ステーションに通知
Solstice データベースモジュールおよびアプリケーションモジュール - Microsoft Exchange Server、SQL Server、Oracle、INFORMIX、Lotus Note、Sybase などの広く使われているデータベースを、高い信頼性でバックアップする
今後、これ以外のサーバー、クライアント、データベース、およびアドオン製品が提供される予定です。Sun の Web サイト (http://www.sun.com/) にアクセスして、最新の製品情報を入手してください。
Backup サーバーは、Backup サーバーソフトウェアを実行し、クライアントインデックスとメディアデータベースを保持し、ネットワーク上のクライアントに対してバックアップサービスと復旧サービスを提供するネットワーク上のマシンです。ストレージデバイスは Backup サーバーに接続することも、ストレージノードマシンに接続することもできます。Backup クライアントにはクライアントソフトウェアがインストールされ、サーバーのクライアントリストに含まれていなくてはなりません。クライアントのバックアップ先として使用するすべてのサーバーマシンとストレージノードマシンが、クライアントソフトウェアのインストール時に作成される nsrhost ファイルのリストに含まれていなくてはなりません。
Backup はクライアントデータをセーブセットと呼ばれる単位でバックアップします。セーブセットは、一般に、1 つのファイルシステムまたは論理ディスクからバックアップされるすべてのデータで構成されます。セーブセットは、サーバーに接続されているバックアップデバイスにマウントされたボリューム (テープや光ディスクなど) に保存されます。Backup は、データやボリュームのコレクションを管理しやすいように、プールを使用して、特定のデータを事前に選択されたボリュームに分けて格納します。
Backup はクライアントセーブセットとボリュームのレコードを、サーバー上にある各クライアント用のクライアントファイルインデックスと総合的なメディアデータベースに保持しています。Backup はこれらのレコードを使って、保存されたファイルと、ファイルが格納されているボリュームを追跡します。クライアントファイルインデックスとメディアデータベースには、データの格納先のデバイスがサーバーとストレージノードのどちらに接続されているかに関わらず、その Backup サーバーが制御しているすべてのデータの追跡情報が含まれています。
Backup がファイルをバックアップする際には、サーバーのバックアップデバイスに書き込み可能なボリュームをマウントするように求められることがあります。Backup がファイルを復旧する際には、特定のボリュームの名前が表示され、そのボリュームをマウントするように求められることがあります。いずれの要求に対しても、ユーザーはサーバーに接続されているデバイスに、要求されたボリュームをマウントします。オートチェンジャへバックアップを行なっている場合は、要求されたボリュームがオートチェンジャに格納されていれば、そのボリュームが自動的にロードされます。
このマニュアルでは、オートチェンジャという用語を、ジュークボックス、オートローダー、カルーセル、ライブラリ、ニアラインストレージ、データホイールデバイスなどのさまざまな種類の機械的なライブラリに対して使用しています。
Backup は、ネットワークのバックアップと復旧に必要な条件を満たした、高い性能と信頼性を備えた最新のバックアップデバイスを広範囲にサポートしています。サポート対象のデバイスの最新リストは、Legato Web サイト (http://www.legato.com) で入手できる『Legato Compatibility Guide』に収録されています。
Backup ソフトウェアは CD-ROM で配布されます。CD-ROM には、バイナリファイルと、Backup マニュアルの電子バージョンが含まれています。
ソフトウェア製品は、次に示す 3 つのソフトウェアライセンスモードのいずれかで使用できます。
Evaluation モード
Enabled モード
Authorized モード
Evaluation モードのソフトウェアは、30 日の有効期限付きの無償のトライアルバージョンとして配布されます。ユーザーは、マシンにソフトウェアをインストールしてから 30 日間、イネーブラコードを入力しないでソフトウェアのトライアル使用と評価を行うことができます。引き続き Backup を使用する場合には、使用したいすべての機能に該当するイネーブラコードを購入しなければなりません。評価期間が終わるまでに正しいイネーブラコードを入力しないと、Backup ソフトウェアのバックアップや構成の機能は利用できなくなります。ただし、30 日の評価期間中に Backup デバイスに書き込まれたデータの復旧は行えます。
すでに Backup 製品をインストールし、有効状態になっていて、それ以外の製品機能を評価したい場合には、個々の機能についての特殊な評価イネーブラを入力する必要があります。ただし、Backup 本体の評価を同時に行なっている場合には、この評価イネーブラを入力する必要はありません。本リリースの Backup の評価イネーブラコードの詳細は、『Solitice Backup 5.1 ご使用にあたって』を参照してください。特殊な評価イネーブラコードを入力すると、そのソフトウェアを 45 日間、評価、使用することができます。
Enabled モードには、購入した製品に添付のイネーブラ証明書に記載されているコードが必要です。Backup サーバーを有効にするためのコードは基本イネーブラと呼ばれます。イネーブラコードはどの製品リリースにも使用でき、Backup サーバーで入力します。Enabled モードでは、イネーブラコードを入力した日から 45 日間 Backup を使用できます。製品のイネーブラコードを入力した場合、45 日の期限が切れた後もソフトウェアを継続して使用したい場合は、この製品を登録する必要があります。製品登録に必要な情報を印刷する方法については、『Solstice Backup 5.1 ご使用にあたって』を参照してください。この製品登録情報には Backup サーバーマシンのホスト ID が含まれています。ライセンスセンターではこの ID を固有の認証コードに組み込み、ライセンス契約を特定のマシンに関連付けます。製品を登録しないまま、45 日の有効期間内に認証コードを入手し、これを登録ウィンドウに入力すると、この Backup ソフトウェアでは以後バックアップや構成の機能が利用できなくなります。ソフトウェアの有効期間が過ぎても、バックアップしたデータの復旧は可能です。
Authorization モードは、ライセンスセンターから入手した認証コードをユーザーが入力した時点で始まります。Sun 製品の認証コードを入力すると、ソフトウェアはそのマシンでそのままずっと使用できるようになります。ソフトウェアを別のマシンに移す (またはマシンを別の IP アドレスに移す) 場合には、ライセンスセンターから Host Transfer Affidavit を入手し、この書類を Sun に提出しなければなりません。Backup ソフトウェアを別のマシンに移した場合新しい認証コードを入手していないと、このソフトウェアは 15 日後に使用不可能になります。
ソフトウェアを移す前のマシンでは、サーバーソフトウェアを削除するか、nsrd デーモンを終了させなければなりません。別のマシン上で、同じ基本イネーブラを使って nsrd デーモンを起動すると、違法コピーのエラーメッセージが表示され、ソフトウェアは使用不可能になります。
この節では、ユーザーの環境に合わせて Backup を設定し、構成するためのロードマップを示します。このマニュアルの他の参照箇所も示してあります。
『Solstice Backup 5.1 ご使用にあたって』の指示に従って、Backup をインストールし、有効にします。
Backup サーバーを構成します。
詳細は、「Backup サーバーの基本構成」を参照してください。
1 台以上のデバイスを構成します。
スタンドアロンデバイスについては、「デバイスの構成」を参照してください。
オートチェンジャ内のデバイスについては、「オートチェンジャデバイスの構成」を参照してください。Backup でのオートチェンジャの管理方法についての説明は、第 7 章「オートチェンジャモジュール」にあります。
サイロ内のデバイスについては、 「サイロのインストールと構成」を参照してください。
ファイルデバイスについては、「デバイスの構成」と「セーブセットのステージング」を参照してください。
サーバーのクライアントリソースと、サーバーに接続するその他のクライアントの構成を行います。
詳細は、「「Clients」リソース」を参照してください。
有効になってから 45 日以内に Backup ソフトウェアを登録し、受け取った認証コードを入力します。
詳細は、「ソフトウェアを登録し認証を受けるには」を参照してください。
Backup ソフトウェアには、構成作業を行わなくてもデータのバックアップが行えるデフォルトの構成が用意されています。
詳細は、第 2 章「操作前の準備」に、Backup ソフトウェアを構成して使用するために必要な、デフォルトの構成値などの基本的な情報が記載されています。
Backup の操作に慣れ、ストレージ管理がデフォルトの構成では対応しきれない規模になったら、次のコンポーネントをカスタマイズすることができます。
バックアップグループ
サーバーのバックアップの負荷を分散させるには、スケジュールされたバックアップ用のグループを作成し、このグループに対して適切なクライアントを割り当てます。グループの構成方法については 「バックアップグループの構成」を、クライアントの構成方法については 「新しいクライアントの作成方法」を参照してください。
ボリュームプールとラベルテンプレート
バックアップしたデータを、バックアップ元のクライアントやバックアップのレベルなどの特性に従って分類するために、バックアップグループに関連付けるBackup プールを構成します。分類されたデータを保持する独自のプールの作成方法については 「プール」を、ボリュームに格納される内部ラベルの構成方法については 「ラベルテンプレートのカスタマイズ方法」を参照してください。
バックアップのスケジュールとポリシー
定義済みのバックアップレベルによってバックアップサイクルをカスタマイズする場合は、「バックアップレベルによる動作」に、バックアップレベルを使ってバックアップと復旧に必要なボリュームの数を減らす方法の説明があります。「ポリシーのカスタマイズ方法」には、セーブセットのブラウズと保存のためのカスタマイズしたポリシーを定義して、データのライフサイクルを管理する方法の説明があります。
ディレクティブのカスタマイズ
クライアントのセーブセットに対して特定の命令セットを使用する場合は、「カスタマイズしたディレクティブの作成」に、適切なクライアントリソースに使用されるカスタマイズしたディレクティブの定義方法の説明があります。
通知
登録、インデックスサイズ、テープマウント、およびスケジュールされたバックアップの完了といった Backup の動作に関する情報の入手方法については、「イベント通知」を参照してください。