Oracle® Solaris 11.2 での TCP/IP ネットワーク、IPMP、および IP トンネルの管理

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更新: 2014 年 7 月
 
 

IPMP の動作方法

IPMP は、IPMP グループの作成時に構成されたアクティブインタフェースとスタンバイインタフェースの元の数を保持しようとすることによって、ネットワークの可用性を維持します。

グループ内の特定のベースとなる IP インタフェースの可用性を判定するための IPMP 障害検出は、リンクベースまたはプローブベース、あるいはその両方にすることができます。あるベースとなるインタフェースが故障したと IPMP が判定した場合、そのインタフェースは故障としてフラグが付けられ、使用できなくなります。次に、故障したインタフェースに関連付けられていたデータ IP アドレスが、グループ内で機能している別のインタフェースに再分配されます。さらに、使用可能な場合は、スタンバイインタフェースも配備され、アクティブインタフェースの元の数を維持します。

次の図に示すような、3 つのインタフェースを含むアクティブ - スタンバイ構成の IPMP グループ itops0 を考えます。

図 2-1  IPMP アクティブ-スタンバイ構成

image:itops0 のアクティブ - スタンバイ構成

    IPMP グループ itops0 は次のように構成されています。

  • このグループには、2 つのデータアドレス 192.168.10.10 192.168.10.15 が割り当てられています。

  • ベースとなる 2 つのインタフェースがアクティブインタフェースとして構成され、柔軟なリンク名 net0net1 が割り当てられています。

  • このグループにはスタンバイインタフェースが 1 つ含まれており、これにも柔軟なリンク名 net2 が割り当てられています。

  • プローブベースの障害検出が使用されるため、アクティブインタフェースとスタンバイインタフェースは次のような検査用アドレスで構成されています。

    • net0: 192.168.10.30

    • net1: 192.168.10.32

    • net2: 192.168.10.34


注 -  Figure 2–1Figure 2–2Figure 2–3、およびFigure 2–4のアクティブ、オフライン、スタンバイ、および障害発生の各領域は、ベースとなるインタフェースのステータスを示しているだけであり、物理的な場所を示しているわけではありません。この IPMP 実装内では、インタフェースまたはアドレスの物理的な移動や IP インタフェースの転送は一切発生しません。これらの領域の役割は、ベースとなるインタフェースのステータスが故障、修復のいずれかの結果としてどのように変化するかを示すことだけです。

さまざまなオプションとともに ipmpstat コマンドを使用して、既存の IPMP グループに関する特定の種類の情報を表示できます。その他の例については、IPMP 情報のモニタリングを参照してください。

次のコマンドは、Figure 2–1の IPMP 構成に関する情報を表示します。

# ipmpstat -g
GROUP     GROUPNAME     STATE     FDT        INTERFACES
itops0    itops0        ok        10.00s     net1 net0 (net2)

グループのベースとなるインタフェースに関する情報を表示するには、次のように入力します。

# ipmpstat -i
INTERFACE   ACTIVE     GROUP     FLAGS      LINK        PROBE     STATE
net0        yes        itops0    -------    up          ok        ok
net1        yes        itops0    --mb---    up          ok        ok
net2        no         itops0    is-----    up          ok        ok

IPMP は、アクティブインタフェースの元の数を維持できるようにベースとなるインタフェースを管理することで、ネットワークの可用性を維持します。したがって、net0 が故障すると、IPMP グループが引き続き 2 つのアクティブインタフェースを持てるように、net2 が配備されます。net2 のアクティブ化を次の図に示します。

図 2-2  IPMP でのインタフェースの故障

image:IPMP グループのアクティブインタフェースの障害を示す図

注 -  Figure 2–2 のデータアドレスとアクティブインタフェースとの 1 対 1 のマッピングは、図を単純化するためのものにすぎません。IP カーネルモジュールは、データアドレスとインタフェースとの間の 1 対 1 の関係に必ずしも縛られることなく、データアドレスをランダムに割り当てることができます。

ipmpstat コマンドは、この図の情報を次のように表示します。

# ipmpstat -i
INTERFACE   ACTIVE     GROUP     FLAGS      LINK        PROBE     STATE
net0        no         itops0    -------    up          failed    failed
net1        yes        itops0    --mb---    up          ok        ok
net2        yes        itops0    -s-----    up          ok        ok

net0 が修復されると、アクティブインタフェースとしてのステータスに戻ります。一方、net2 は元のスタンバイステータスに戻されます。

別の障害シナリオをFigure 2–3に示します。このシナリオでは、スタンバイインタフェース net2 が故障します (1)。そのあと、アクティブインタフェースの 1 つである net1 が管理者によってオフラインに切り替えられます (2)。その結果、この IPMP グループには、機能しているインタフェース net0 が 1 つ残されます。

図 2-3  IPMP でのスタンバイインタフェースの故障

image:IPMP グループのスタンバイインタフェースの障害を示す図

ipmpstat コマンドは、この図の情報を次のように表示します。

# ipmpstat -i
INTERFACE   ACTIVE     GROUP     FLAGS       LINK        PROBE     STATE
net0        yes        itops0    -------     up          ok        ok
net1        no         itops0    --mb-d-     up          ok        offline
net2        no         itops0    is-----     up          failed    failed

この障害では、インタフェースが修復されたあとの回復の動作が異なります。この回復プロセスは、修復後の構成と比較した IPMP グループのアクティブインタフェースの元の数に依存します。次の図は、回復プロセスを表します。

図 2-4  IPMP の回復プロセス

image:IPMP 回復プロセスを示す図

Figure 2–4で、net2 が修復されると、通常、スタンバイインタフェースとしての元のステータスに戻ります (1)。ところが、この IPMP グループは依然として、アクティブインタフェースの元の数である 2 個を反映していません。これは、net1 が引き続きオフラインのままになっているからです (2)。したがって、IPMP は代わりに net2 をアクティブインタフェースとして配備します (3)。

ipmpstat コマンドは、修復後の IPMP シナリオを次のように表示します。

# ipmpstat -i
INTERFACE   ACTIVE     GROUP     FLAGS       LINK        PROBE     STATE
net0        yes        itops0    -------     up          ok        ok
net1        no         itops0    --mb-d-     up          ok        offline
net2        yes        itops0    -s-----     up          ok        ok

FAILBACK=no モードも構成されたアクティブインタフェースが故障に関与している場合にも、同様の回復プロセスが発生します。その場合、故障したアクティブインタフェースが修復されても、自動的にはアクティブステータスに戻りません。Figure 2–2net0FAILBACK=no モードに構成されているとします。そのモードでは、修復された net0 は、最初はアクティブインタフェースであったとしても、スタンバイインタフェースになります。この IPMP グループのアクティブインタフェースの元の数である 2 個を維持するように、インタフェース net2 はアクティブのままになります。

ipmpstat コマンドは、回復情報を次のように表示します。

# ipmpstat -i
INTERFACE   ACTIVE     GROUP     FLAGS      LINK        PROBE     STATE
net0        no         itops0    i------    up          ok        ok
net1        yes        itops0    --mb---    up          ok        ok
net2        yes        itops0    -s-----    up          ok        ok

このタイプの構成の詳細については、FAILBACK=no モードを参照してください。