Oracle® Solaris 11.2 リンカーとライブラリガイド

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更新: 2014 年 7 月
 
 

SPARC: 再配置

SPARC プラットフォームでは、再配置エントリはバイト (byte8)、ハーフワード (half16)、ワード (word32)、および拡張ワード (xword64) に適用されます。

image:SPARC 基本再配置エントリ。

再配置フィールドの dispn ファミリ (disp19disp22disp30) は、ワード整列された符号拡張の PC 相対ディスプレイスメントです。すべてワードの位置 0 の最下位ビットで値をエンコードし、値に割り当てられたビット数についてのみ異なります。

image:SPARC disp 再配置エントリ。

d2/disp8 および d2/disp14 バリアントは、隣接しない 2 つのビットフィールド d2 および disp n を使用して、16 および 10 ビットのディスプレイスメント値をエンコードします。

image:SPARC d2/disp 再配置エントリ。

再配置フィールドの immn ファミリ (imm5imm6imm7imm10imm13imm22) は、符号なしの整数定数を表します。すべてワードの位置 0 の最下位ビットで値をエンコードし、値に割り当てられたビット数についてのみ異なります。

image:SPARC imm 再配置エントリ。

再配置フィールドの simmn ファミリ (simm10simm11simm13simm22) は、符号付きの整数定数を表します。すべてワードの位置 0 の最下位ビットで値をエンコードし、値に割り当てられたビット数についてのみ異なります。

image:SPARC simm 再配置エントリ。

SPARC: 再配置型

次の表に示すフィールド名は、再配置型がオーバーフローを検査するかどうかを通知します。計算される再配置値は意図したフィールドより大きい場合があり、再配置型によっては値の適合を検証 (V) したり結果を切り捨てたり (T) することがあります。たとえば、V-simm13 は、計算された値が simm13 フィールドの外部に 0 以外の有意ビットを持つことがないことを意味します。

表 12-16  SPARC: ELF 再配置型
名前
フィールド
計算
R_SPARC_NONE
0
なし
なし
R_SPARC_8
1
V-byte8
S + A
R_SPARC_16
2
V-half16
S + A
R_SPARC_32
3
V-word32
S + A
R_SPARC_DISP8
4
V-byte8
S + A - P
R_SPARC_DISP16
5
V-half16
S + A - P
R_SPARC_DISP32
6
V-disp32
S + A - P
R_SPARC_WDISP30
7
V-disp30
(S + A - P) >> 2
R_SPARC_WDISP22
8
V-disp22
(S + A - P) >> 2
R_SPARC_HI22
9
T-imm22
(S + A) >> 10
R_SPARC_22
10
V-imm22
S + A
R_SPARC_13
11
V-simm13
S + A
R_SPARC_LO10
12
T-simm13
(S + A) & 0x3ff
R_SPARC_GOT10
13
T-simm13
G & 0x3ff
R_SPARC_GOT13
14
V-simm13
G
R_SPARC_GOT22
15
T-simm22
G >> 10
R_SPARC_PC10
16
T-simm13
(S + A - P) & 0x3ff
R_SPARC_PC22
17
V-disp22
(S + A - P) >> 10
R_SPARC_WPLT30
18
V-disp30
(L + A - P) >> 2
R_SPARC_COPY
19
なし
この表のあとの説明を参照してください。
R_SPARC_GLOB_DAT
20
V-word32
S + A
R_SPARC_JMP_SLOT
21
なし
この表のあとの説明を参照してください。
R_SPARC_RELATIVE
22
V-word32
B + A
R_SPARC_UA32
23
V-word32
S + A
R_SPARC_PLT32
24
V-word32
L + A
R_SPARC_HIPLT22
25
T-imm22
(L + A) >> 10
R_SPARC_LOPLT10
26
T-simm13
(L + A) & 0x3ff
R_SPARC_PCPLT32
27
V-word32
L + A - P
R_SPARC_PCPLT22
28
V-disp22
(L + A - P) >> 10
R_SPARC_PCPLT10
29
V-simm13
(L + A - P) & 0x3ff
R_SPARC_10
30
V-simm10
S + A
R_SPARC_11
31
V-simm11
S + A
R_SPARC_HH22
34
V-imm22
(S + A) >> 42
R_SPARC_HM10
35
T-simm13
((S + A) >> 32) & 0x3ff
R_SPARC_LM22
36
T-imm22
(S + A) >> 10
R_SPARC_PC_HH22
37
V-imm22
(S + A - P) >> 42
R_SPARC_PC_HM10
38
T-simm13
((S + A - P) >> 32) & 0x3ff
R_SPARC_PC_LM22
39
T-imm22
(S + A - P) >> 10
R_SPARC_WDISP16
40
V-d2/disp14
(S + A - P) >> 2
R_SPARC_WDISP19
41
V-disp19
(S + A - P) >> 2
R_SPARC_7
43
V-imm7
S + A
R_SPARC_5
44
V-imm5
S + A
R_SPARC_6
45
V-imm6
S + A
R_SPARC_HIX22
48
V-imm22
((S + A) ^ 0xffffffffffffffff) >> 10
R_SPARC_LOX10
49
T-simm13
((S + A) & 0x3ff) | 0x1c00
R_SPARC_H44
50
V-imm22
(S + A) >> 22
R_SPARC_M44
51
T-imm10
((S + A) >> 12) & 0x3ff
R_SPARC_L44
52
T-imm13
(S + A) & 0xfff
R_SPARC_REGISTER
53
V-word32
S + A
R_SPARC_UA16
55
V-half16
S + A
R_SPARC_GOTDATA_HIX22
80
V-imm22
((S + A - GOT) >> 10) ^ ((S + A - GOT) >> 31)
R_SPARC_GOTDATA_LOX10
81
T-imm13
((S + A - GOT) & 0x3ff) | (((S + A - GOT) >> 31) & 0x1c00)
R_SPARC_GOTDATA_OP_HIX22
82
T-imm22
(G >> 10) ^ (G >> 31)
R_SPARC_GOTDATA_OP_LOX10
83
T-imm13
(G & 0x3ff) | ((G >> 31) & 0x1c00)
R_SPARC_GOTDATA_OP
84
Word32
この表のあとの説明を参照してください。
R_SPARC_SIZE32
86
V-word32
Z + A
R_SPARC_WDISP10
88
V-d2/disp8
(S + A - P) >> 2

注 -  スレッド固有ストレージの参照に使用できる再配置はほかにも存在します。これらの再配置については、Chapter 14, スレッド固有ストレージ (TLS)で説明しています。

いくつかの再配置型には、単純な計算を超えたセマンティクスが存在します。

R_SPARC_GOT10

R_SPARC_LO10 に似ていますが、シンボルの GOT エントリのアドレスを参照する点が異なります。また、R_SPARC_GOT10 は、グローバルオフセットテーブルの作成をリンカーに指示します。

R_SPARC_GOT13

R_SPARC_13 に似ていますが、シンボルの GOT エントリのアドレスを参照する点が異なります。また、R_SPARC_GOT13 は、グローバルオフセットテーブルの作成をリンカーに指示します。

R_SPARC_GOT22

R_SPARC_22 に似ていますが、シンボルの GOT エントリのアドレスを参照する点が異なります。また、R_SPARC_GOT22 は、グローバルオフセットテーブルの作成をリンカーに指示します。

R_SPARC_WPLT30

R_SPARC_WDISP30 に似ていますが、シンボルのプロシージャーリンクテーブルエントリのアドレスを参照する点が異なります。また、R_SPARC_WPLT30 は、プロシージャーのリンクテーブル作成をリンカーに指示します。

R_SPARC_COPY

リンカーは、この再配置型を作成して、動的実行可能ファイルが読み取り専用のテキストセグメントを保持できるようにします。この再配置型のオフセットメンバーは、書き込み可能セグメントの位置を参照します。シンボルテーブルインデックスは、現オブジェクトファイルと共有オブジェクトの両方に存在する必要があるシンボルを指定します。実行時、実行時リンカーは共有オブジェクトのシンボルに関連付けられているデータを、オフセットで指定されている位置にコピーします。コピー再配置を参照してください。

R_SPARC_GLOB_DAT

R_SPARC_32 に似ていますが、再配置は GOT エントリを指定されたシンボルのアドレスに設定する点が異なります。この特殊な再配置型を使うと、シンボルと GOT エントリの対応付けを判定できます。

R_SPARC_JMP_SLOT

リンカーは、動的オブジェクトが遅延結合を提供できるようにするため、この再配置型を作成します。この再配置型のオフセットメンバーは、プロシージャーのリンクテーブルエントリの位置を与えます。実行時リンカーは、プロシージャーのリンクテーブルエントリを変更して指定シンボルアドレスに制御を渡します。

R_SPARC_RELATIVE

リンカーは、動的オブジェクト用にこの再配置型を作成します。この再配置型のオフセットメンバーは、相対アドレスを表す値が存在する、共有オブジェクト内の位置を与えます。実行時リンカーは共有オブジェクトが読み込まれる仮想アドレスに相対アドレスを加算することで、対応する仮想アドレスを計算します。この型に対する再配置エントリは、シンボルテーブルインデックスに対して値 0 を指定する必要があります。

R_SPARC_UA32

R_SPARC_32 に似ていますが、整列されていないワードを参照する点が異なります。再配置されるワードは、任意整列が存在する 4 つの別個のバイトとして処理されなければなりません (アーキテクチャーの要求に従って整列されるワードとしては処理されません)。

R_SPARC_LM22

R_SPARC_HI22 に似ていますが、妥当性検証ではなく切り捨てを行う点が異なります。

R_SPARC_PC_LM22

R_SPARC_PC22に似ていますが、妥当性検証ではなく切り捨てを行う点が異なります。

R_SPARC_HIX22

64 ビットアドレス空間の最上位 4G バイトに限定される実行可能ファイルに対して R_SPARC_LOX10 とともに使用されます。R_SPARC_HI22 に似ていますが、リンク値の 1 の補数を与えます。

R_SPARC_LOX10

R_SPARC_HIX22 とともに使用されます。R_SPARC_LO10 に似ていますが、必ずリンク値のビット 10 からビット 12 までを設定します。

R_SPARC_L44

再配置型 R_SPARC_H44 および R_SPARC_M44 とともに使用され、44 ビット絶対アドレス指定モデルを生成します。

R_SPARC_REGISTER

レジスタシンボルの初期化に使用されます。この再配置型のオフセットメンバーには、初期化されるレジスタ番号が存在します。このレジスタに対応するレジスタシンボルが必要です。このシンボルの種類は SHN_ABS です。

R_SPARC_GOTDATA_OP_HIX22R_SPARC_GOTDATA_OP_LOX10、および R_SPARC_GOTDATA_OP

これらの再配置はコード変換に対応したものです。

64-bit SPARC: 再配置型

再配置計算に使用される次の表記は、64 ビット SPARC 固有のものです。

O

再配置可能フィールドの値を計算するために使用される二次的な加数。この加数は、ELF64_R_TYPE_DATA マクロを適用することにより r_info フィールドから抽出されます。

次の表に示す再配置型は、32 ビット SPARC 用に定義された再配置型を拡張または変 更します。再配置型を参照してください。

表 12-17  64-bit SPARC: ELF 再配置型
名前
フィールド
計算
R_SPARC_HI22
9
V-imm22
(S + A) >> 10
R_SPARC_GLOB_DAT
20
V-xword64
S + A
R_SPARC_RELATIVE
22
V-xword64
B + A
R_SPARC_64
32
V-xword64
S + A
R_SPARC_OLO10
33
V-simm13
((S + A) & 0x3ff) + O
R_SPARC_DISP64
46
V-xword64
S + A - P
R_SPARC_PLT64
47
V-xword64
L + A
R_SPARC_REGISTER
53
V-xword64
S + A
R_SPARC_UA64
54
V-xword64
S + A
R_SPARC_H34
85
V-imm22
(S + A) >> 12
R_SPARC_SIZE64
87
V-xword64
Z + A

次の再配置型には、単純な計算を超えたセマンティクスが存在します。

R_SPARC_OLO10

R_SPARC_LO10 に似ていますが、符号付き 13 ビット即値フィールドを十分に使用するために余分なオフセットが追加される点が異なります。