デバイス割り当てによって、データの消失、コンピュータウイルス、セキュリティー侵害などからサイトを保護できます。デバイスポリシーと違い、デバイス割り当ては任意です。デバイス割り当ては、割り当て可能デバイスへのアクセスを制限するのに承認を使用します。
デバイス割り当てメカニズムのコンポーネントは、次のとおりです。
svc:/system/device/allocate サービス。詳細は、smf(5) のマニュアルページおよびデバイス割り当てコマンドのマニュアルページを参照してください。
allocate、deallocate、dminfo、list_devices コマンド。詳細は、デバイス割り当てコマンドを参照してください。
Device Management および Device Security 権利プロファイル。詳細は、デバイス割り当て権利プロファイルを参照してください。
各割り当て可能デバイスのデバイスクリーンスクリプト。
これらのコマンドとスクリプトは、次のローカルファイルを使用してデバイス割り当てを実装します。
/etc/security/device_allocate ファイル。詳細は、device_allocate(4) のマニュアルページを参照してください。
/etc/security/device_maps ファイル。詳細は、device_maps(4) のマニュアルページを参照してください。
ロックファイル。割り当て可能デバイスごとに /etc/security/dev ディレクトリに配置します。
各割り当て可能デバイスに関連付けられたロックファイルの変更後の属性。
svc:/system/device/allocate サービスは、デバイス割り当てを制御します。このサービスはデフォルトで無効になっています。
デバイスおよびデバイス割り当てを管理するには、Device Management および Device Security 権利プロファイルが必要です。
これらの権利プロファイルには、次の承認が含まれています。
solaris.device.allocate – デバイスを割り当てるために必要
solaris.device.cdrw – CD-ROM の読み取りと書き込みを行うために必要
solaris.device.config – デバイスの属性を構成するために必要
solaris.device.mount.alloptions.fixed – 固定デバイスのマウント時にマウントオプションを指定するために必要
solaris.device.mount.alloptions.removable – リムーバブルデバイスのマウント時にマウントオプションを指定するために必要
solaris.device.mount.fixed – 固定デバイスをマウントするために必要
solaris.device.mount.removable – リムーバブルデバイスをマウントするために必要
solaris.device.revoke – デバイスを取り消すか、または再利用するために必要
大文字のオプションが指定された allocate、deallocate、および list_devices コマンドは管理コマンドです。それ以外ではこれらのコマンドはユーザーコマンドです。次の表は、デバイス割り当てコマンドを示しています。
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デフォルトでは、ユーザーが割り当て可能デバイスを予約するには solaris.device.allocate 承認を必要とします。solaris.device.allocate 承認を含める権利プロファイルを作成する方法については、ユーザーによるデバイス割り当てを承認する方法を参照してください。
管理者がデバイスの割り当て状態を変更するには solaris.device.revoke 承認が必要です。たとえば、allocate および list_devices コマンドの –U オプションや、deallocate コマンドの –F オプションは、solaris.device.revoke 承認が必要です。
詳細は、Oracle Solaris 11.2 でのユーザーとプロセスのセキュリティー保護 の承認を必要とする特別なコマンドを参照してください。
deallocate コマンドが割り当ての解除に失敗する場合、または allocate コマンドが割り当てに失敗する場合は、デバイスは「割り当てエラー状態」になります。割り当て可能デバイスが割り当てエラー状態となった場合、そのデバイスの割り当てを強制的に解除する必要があります。割り当てエラー状態を処理できるのは、Device Management 権利プロファイルまたは Device Security 権利プロファイルを持つユーザーまたは役割だけです。
F オプションを指定した –deallocate コマンドは、割り当て解除を強制します。あるいは、allocate -U を実行してデバイスを特定のユーザーに割り当てることもできます。いったんデバイスが割り当てられると、発生したエラーメッセージを調査できます。デバイスに関する問題が解決されたあとで、そのデバイスの割り当てを強制的に解除できます。
デバイス割り当てを設定すると、デバイスマップが作成されます。/etc/security/device_maps ファイルには、割り当て可能な各デバイスに関連付けられたデバイス名、デバイスタイプ、およびデバイス特殊ファイルが含まれています。
直観的にはわかりにくい各デバイスのために、device_maps ファイルはデバイス特殊ファイルのマッピングを定義します。このファイルによって、プログラムはどのデバイス特殊ファイルがどのデバイスに割り当てられているかを検出できます。たとえば、dminfo コマンドを使用すると、デバイス名、デバイスの種類およびデバイス特殊ファイルを取得して、割り当て可能なデバイスを設定するときに指定できます。dminfo コマンドは、device_maps ファイルを使用してデバイス割り当て情報を報告します。
device-name:device-type:device-list使用例 4-11 device_maps エントリの例
次の例は、device_maps ファイルのエントリを示したものです。
audio0:\ audio:\ /dev/audio /dev/audioctl /dev/dsp /dev/dsp0 /dev/mixer0 /dev/sound/0 /dev/sound/0ctl /dev/sound/audio810\:0mixer /dev/sound/audio810\:0dsp /dev/sound/audio810\:0 /dev/sound/audio810\:0ctl
device_maps ファイル内の行は、バックスラッシュ (\) で終了することにより、エントリを次の行に続けることができます。コメントも挿入できます。ポンド記号 (#) を付けると、1 つ前の行末にバックスラッシュのない改行まで、それに続くすべてのテキストはコメントになります。どのフィールドでも先行ブランクと後続ブランクを使用できます。フィールドの定義は次のとおりです。
デバイスの名前を指定します。現在のデバイス名の一覧を表示する方法については、デバイスの割り当て情報を表示する方法を参照してください。
汎用デバイスタイプを指定します。汎用名は、st、fd、rmdisk、audio などの、デバイスのクラスの名前です。device-type では、関連するデバイスが論理的にグループ化されます。
物理デバイスに関連付けられたデバイス特殊ファイルを一覧表示します。device-list には、特定のデバイスにアクセスできるすべての特殊ファイルが含まれている必要があります。リストが不完全な場合は、悪意を持ったユーザーでも個人情報を入手または変更できます。device-list フィールドには、/dev ディレクトリに入っているデバイスファイルを指定します。
デバイスを割り当て可能から割り当て不可能に変更したり、新しいデバイスを追加したりするために、/etc/security/device_allocate ファイルを変更できます。
device_allocate ファイル内のエントリは、デバイスが割り当て可能であると特に記載していないかぎり、そのデバイスが割り当て可能であることを示しません。
device_allocate ファイルでは、各デバイスは次の形式の 1 行のエントリで表されます。
device-name;device-type;reserved;reserved;auths;device-exec
次の例は、device_allocate ファイルのサンプルを示しています。
st0;st;;;;/etc/security/lib/st_clean fd0;fd;;;;/etc/security/lib/fd_clean sr0;sr;;;;/etc/security/lib/sr_clean audio;audio;;;*;/etc/security/lib/audio_clean
audio デバイスエントリの 5 番目のフィールドにあるアスタリスク (*) に注意してください。
device_allocate ファイル内の行は、バックスラッシュ (\) で終了することにより、エントリを次の行に続けることができます。コメントも挿入できます。ポンド記号 (#) を付けると、1 つ前の行末にバックスラッシュのない改行まで、それに続くすべてのテキストはコメントになります。どのフィールドでも先行ブランクと後続ブランクを使用できます。フィールドの定義は次のとおりです。
デバイスの名前を指定します。現在のデバイス名の一覧を表示する方法については、デバイスの割り当て情報を表示する方法を参照してください。
汎用デバイスタイプを指定します。汎用名は、st、fd、sr などのデバイスクラス名です。device-type では、関連するデバイスが論理的にグループ化されます。デバイスを割り当て可能にするときは、device_maps ファイルの device-type フィールドからデバイス名を取得します。
Oracle では、reserved で示される 2 つのフィールドを将来の使用に予約しています。
デバイスが割り当て可能であるかどうかを指定します。このフィールドにアスタリスク (*) が入っている場合は、デバイスが割り当て不可能であることを示します。承認を示す文字列が入っている場合や、空の場合は、デバイスが割り当て可能であることを示します。たとえば、auths フィールド内の文字列 solaris.device.allocate は、そのデバイスを割り当てるには solaris.device.allocate 承認が必要であることを示します。このフィールドに単価記号 (@) が入っている場合は、どのユーザーでもそのデバイスを割り当てることができることを示します。
割り当てプロセス中にクリーンアップやオブジェクト再利用防止などの特殊処理のために呼び出されるスクリプトのパス名を指定します。device-exec スクリプトは、デバイスに対して deallocate コマンドを実行するたびに実行されます。
たとえば、sr0 デバイスについての次のエントリは、CD-ROM ドライブが solaris.device.allocate 承認を得たユーザーによって割り当て可能であることを示します。
sr0;sr;reserved;reserved;solaris.device.allocate;/etc/security/lib/sr_clean
デフォルトのデバイスとそれらの定義された特性を受け入れることを決定できます。新しいデバイスをインストールしたあとで、エントリを変更できます。使用前に割り当てが必要なデバイスはすべて、そのデバイスのシステムの device_allocate ファイルと device_maps ファイルで定義する必要があります。現在は、カートリッジテープドライブ、フロッピーディスクドライブ、CD-ROM ドライブ、リムーバブルメディアデバイス、およびオーディオチップが、割り当て可能とみなされます。これらのデバイスタイプには、デバイスクリーンスクリプトが用意されています。
デバイス割り当てによって、セキュリティー監査者がオブジェクト再利用の要件と呼ぶものの一部が満たされます。デバイスクリーンスクリプトは、使用可能なすべてのデータを、再利用の前に物理デバイスから消去するというセキュリティー要件に対応します。データのクリアは、そのデバイスが別のユーザーによって割り当て可能になる前に実行されます。デフォルトでは、カートリッジテープドライブ、フロッピーディスクドライブ、CD-ROM ドライブ、オーディオデバイスには、Oracle Solaris で提供されるデバイスクリーンスクリプトが必要です。このセクションでは、デバイスクリーンスクリプトが実行する処理について説明します。
st_clean デバイスクリーンスクリプトでは、3 つのテープデバイスがサポートされます。
SCSI ¼ インチテープ
アーカイブ ¼ インチテープ
オープンリール ½ インチテープ
st_clean スクリプトは、mt コマンドの –rewoffl オプションを使用してデバイスをクリーンアップします。詳細は、mt(1) のマニュアルページを参照してください。このスクリプトは、システムブート中に実行されると、デバイスを照会し、デバイスがオンラインであるかどうかを確認します。デバイスがオンラインの場合、スクリプトは、そのデバイスにメディアが挿入されているかどうかを調べます。¼ インチのテープデバイスにメディアが挿入されていた場合、このデバイスは割り当てエラー状態になります。この場合、管理者はそのデバイスを手動でクリーンアップする必要があります。
通常のシステム操作中に、deallocate コマンドを対話型モードで実行すると、メディアを取り出すように求めるプロンプトが表示されます。割り当て解除は、デバイスからメディアが取り出されるまで見送られます。
フロッピーディスクドライブと CD-ROM ドライブ用として、次のデバイスクリーンスクリプトが提供されています。
これらのスクリプトは、eject コマンドを使用してドライブからメディアを取り出します。eject コマンドが失敗すると、デバイスは割り当てエラー状態になります。詳細は、eject(1) のマニュアルページを参照してください。
オーディオデバイスは、audio_clean スクリプトを使用してクリーンアップします。スクリプトは、AUDIO_GETINFO ioctl システムコールを実行してデバイスを読み取ります。AUDIO_SETINFO ioctl システムコールを実行してデバイス構成をデフォルトにリセットします。
システムに新しく割り当て可能デバイスを追加する場合は、独自のデバイスクリーンスクリプトを作成する必要があります。deallocate コマンドは、デバイスクリーンスクリプトにパラメータを渡します。次に示すように、パラメータはデバイス名を含む文字列です。詳細は、device_allocate(4) のマニュアルページを参照してください。
clean-script -[I|i|f|S] device-name
デバイスクリーンスクリプトは、成功時には「0」を、失敗時には「0」より大きな値を返す必要があります。オプション –I、–f、および –S は、スクリプトの実行モードを決定します。