Oracle Solaris Cluster リファレンスマニュアル

印刷ビューの終了

更新: 2015 年 9 月
 
 

scdidadm (1M)

名前

scdidadm - デバイス識別子構成および管理用ユーティリティーラッパー

形式

/usr/cluster/bin/scdidadm -b combined-did-instance
/usr/cluster/bin/scdidadm -C
/usr/cluster/bin/scdidadm -c
/usr/cluster/bin/scdidadm -F {pathcount | scsi3 | useglobal} instance
/usr/cluster/bin/scdidadm -G
/usr/cluster/bin/scdidadm -G {pathcount | prefer3}
/usr/cluster/bin/scdidadm {-l | -L} [-h] [-o fmt]… [path | instance]
/usr/cluster/bin/scdidadm -R {path | instance | all}
/usr/cluster/bin/scdidadm -r
/usr/cluster/bin/scdidadm -T remote-nodename -e replication-type
/usr/cluster/bin/scdidadm -t source-instance:destination-instance -e replication-type [-g replication-device-group]
/usr/cluster/bin/scdidadm [-u] [-i]
/usr/cluster/bin/scdidadm -v

説明


注 -  Oracle Solaris Cluster ソフトウェアには、オブジェクト指向のコマンドセットが含まれます。Oracle Solaris Cluster ソフトウェアは従来のコマンドセットもサポートしますが、Oracle Solaris Cluster の手順に関するドキュメントではオブジェクト指向のコマンドセットのみを使用します。オブジェクト指向のコマンドセットの詳細は、Intro(1CL) のマニュアルページを参照してください。

scdidadm ユーティリティーは、デバイス識別子 (DID) の擬似デバイスドライバ did を管理します。

scdidadm ユーティリティーは、主に次の処理を行います。

  • ドライバ構成ファイルの作成

  • ファイル内のエントリの変更

  • 現在の構成のカーネルへの読み込み

  • デバイスエントリと did ドライバのインスタンス番号間の対応付けの一覧表示

起動スクリプトの /etc/init.d/bootcluster は、did ドライバの初期化をする際に scdidadm ユーティリティーを使用します。さらに、scdidadm は、存在するデバイスと、対応するデバイス識別子および did ドライバインスタンス番号との間のデバイス対応付けを更新または照会するときにも使用されます。

devfsadm(1M) コマンドは、ファイルシステムのデバイスエントリポイントを作成します。

このコマンドは、大域ゾーンだけで使用できます。

オプション

次のオプションがサポートされています。

–b

レプリケートされた DID インスタンスを、2 つの別々な DID インスタンスになる前の状態に戻します。構成の間違いを修正したり、元の DID インスタンスに影響を与える構成変更を準備したりするには、このオプションを使用します。

なおこのオプションは、クラスタモードでブートされたノードからしか実行できません。このオプションは大域ゾーンだけで使用できます。

–b オプションを使用する前に、このオプションを使用するすべてのデバイスグループから、レプリケートされたデバイスを削除します。次に、結合された DID インスタンスに吸収された DID インスタンスを持つノードの 1 つから、このオプションを指定します。

このコマンドオプションを使用するためには、solaris.cluster.device.modify RBAC の承認が必要です。rbac(5) を参照してください。

–C

現在のノードから排除されたデバイスに関して、すべての DID 参照を削除するよう指定します。

なおこのオプションは、クラスタモードでブートされたノードからしか実行できません。このオプションは大域ゾーンだけで使用できます。

このオプションは、Solaris のデバイス関連のコマンドでクラスタノード上に存在しないデバイスの参照を削除したあとに指定します。

–F オプションは、構成済みの定足数デバイスのフェンシングプロトコルには影響しません。

このコマンドオプションを使用するためには、solaris.cluster.device.modify RBAC の承認が必要です。rbac(5) を参照してください。

–c

デバイスおよび物理デバイスのカーネル部に対する整合性検査を指定します。

このオプションは大域ゾーンだけで使用できます。

この整合性検査で問題が発見されると、エラーメッセージが表示されます。またこの処理は、すべてのデバイスに対する検査が終了するまで継続されます。

このコマンドオプションを使用するためには、solaris.cluster.device.read の RBAC の承認が必要です。rbac(5) を参照してください。

–e type

複製タイプを指定します。SRDF レプリケーションタイプを指定する場合、このオプションは –t オプションとともにのみ使用できます。

–F

指定した個々のデバイスの、グローバルなデフォルトフェンシングアルゴリズムに優先します。

デバイスのデフォルトのフェンシングアルゴリズムは、次の値の 1 つに設定できます。

pathcount

共有デバイスに接続されている DID パスの数でフェンシングプロトコルを決定します。

  • 使用する DID パスが 3 未満のデバイスには、このコマンドは SCSI-2 プロトコルを設定します。

  • 使用する DID パスが 3 以上のデバイスには、このコマンドは SCSI-3 プロトコルを設定します。

scsi3

SCSI-3 プロトコルを設定します。そのデバイスが SCSI-3 プロトコルをサポートしない場合、フェンシングプロトコルの設定は変更されません。

useglobal

指定されたデバイスのグローバルなデフォルトのフェンシング設定を行います。

デフォルトでは、グローバルなデフォルトのフェンシングアルゴリズムは pathcount に設定されます。グローバルなデフォルトのフェンシング設定についての詳細は、–G オプションの説明を参照してください。

変更するデバイスはそのインスタンス番号で指定できます。このコマンドは、複数のデバイスのスペース区切りのリストを受け入れます。デバイス名の instance 形式の詳細は、–o オプションの説明を参照してください。

–F オプションは、構成済みの定足数デバイスのフェンシングプロトコルには影響しません。

このコマンドオプションを使用するためには、solaris.cluster.device.modify RBAC の承認が必要です。rbac(5) を参照してください。

–G

すべての共有デバイスの現在のグローバルなデフォルトのフェンシングアルゴリズムを設定または表示します。

単独で指定すると、–G オプションは現在のグローバルなデフォルトのフェンシングアルゴリズムの設定を表示します。

設定値を指定すると、–G オプションは、すべてのデバイスのグローバルなデフォルトのフェンシングアルゴリズムをその値に設定します。グローバルなデフォルトフェンシングは、次の値のいずれかに設定できます。

prefer3

すべてのデバイスのデバイスフェンシングアルゴリズムを SCSI-3 プロトコルに設定します。SCSI-3 プロトコルをサポートしないデバイスには、pathcount 設定が割り当てられます。

pathcount

共有デバイスに接続されている DID パスの数でフェンシングプロトコルを決定します。

  • 使用する DID パスが 3 つ未満のデバイスには、このコマンドは SCSI-2 プロトコルを設定します。

  • 使用する DID パスが 3 つ以上のデバイスには、このコマンドは SCSI-3 プロトコルを設定します。

デフォルトでは、グローバルなデフォルトのフェンシングアルゴリズムは pathcount に設定されます。

–G オプションは、構成済みの定足数デバイスのフェンシングプロトコルには影響しません。

このコマンドオプションを使用するためには、solaris.cluster.device.modify RBAC の承認が必要です。rbac(5) を参照してください。

–g

レプリケーションデバイスグループを指定します。

–h

デバイスの対応付けを一覧表示させる際に、ヘッダーを出力するよう指定します。

このオプションは、–l および –L のオプションを指定した場合にのみ有用です。

–i

did ドライバを初期化するよう指定します。

このオプションは大域ゾーンだけで使用できます。

did ドライバへの入出力要求を有効にする場合は、このオプションを使用します。

このコマンドオプションを使用するためには、solaris.cluster.device.modify RBAC の承認が必要です。rbac(5) を参照してください。

–L

リモートホストや DID 構成ファイル内のデバイスなどに関する、すべてのパスを一覧表示させます。

このオプションは大域ゾーンだけで使用できます。

なおこのコマンドによる出力は、–o オプションを使用することでカスタマイズできます。どの –o オプションも指定されていない場合、デフォルトのリストにはインスタンス番号、すべてのローカルおよびリモートのフルパス文字列、およびフルネームが表示されます。

このコマンドオプションを使用するためには、solaris.cluster.device.read の RBAC の承認が必要です。rbac(5) を参照してください。

–l

DID 構成内のローカルデバイスを一覧表示するよう指示します。

このオプションは大域ゾーンだけで使用できます。

なおこのコマンドによる出力は、–o オプションを使用することでカスタマイズできます。–o オプションを指定しない場合、デフォルトの一覧表示であるインスタンス番号、ローカルのフルパスフルネームが出力されます。

このコマンドオプションを使用するためには、solaris.cluster.device.read の RBAC の承認が必要です。rbac(5) を参照してください。

–o fmt

現在 did ドライバが認識しているデバイスを、書式指定 fmt に従って一覧表示させます。

–o オプションは複数指定することが可能です。fmt の指定は、コンマ切りの一覧による書式指定用のオプション引数と解釈されます。このオプションは、–l および –L のオプションを指定した場合にのみ有用です。使用可能な書式指定用のオプション引数は次のとおりです。

instance

did ドライバに対応するデバイスのインスタンス番号を出力させる引数で、たとえば、1 などが返されます。

path

デバイス識別子に対応したデバイスの物理パス名を出力させる引数で、たとえば、/dev/rdsk/c0t3d0 などが返されます。

fullpath

このデバイス識別子に対応したデバイスの物理パス名をフルパスで出力させます。このパス名には、ホスト (たとえば、phys-hostA:/dev/rdsk/c0t3d0) が含まれています。

host

–L オプションと併用した場合、指定されたデバイスに接続するすべてのホスト名を一覧表示させます。–l オプションと併用した場合、指定されたデバイスに接続するローカルホストの名前を出力させます。

name

このデバイス識別子に対応したデバイスの DID 名を出力させる引数で、たとえば、d1 などが返されます。

fullname

デバイス識別子に対応したデバイスのフル DID パス名を出力させる引数で、たとえば、/dev/did/rdsk/d1 などが返されます。

diskid

一覧されたデバイスのインスタンスに対応したデバイス識別子を、16 進数表示で出力させます。

asciidiskid

一覧されたデバイスのインスタンスに対応したデバイス識別子を、ASCII 表示で出力させます。

defaultfencing

デバイスに設定されているデフォルトのフェンシングアルゴリズムを出力します。

–R {path | instance | all}

指定されたデバイスインスタンスに対して、修復処理の実行を指定します。

このオプションは大域ゾーンだけで使用できます。

この場合のコマンドの引数には、新しいデバイスと交換した物理デバイスのパスか、あるいは交換したデバイスのインスタンスを指定します。all のキーワードを併用することにより、scdidadm ユーティリティーは、このノードに接続されたすべてのデバイスの構成データを更新します。

なおこのオプションは、クラスタモードでブートされたノードからしか実行できません。

このコマンドオプションを使用するためには、solaris.cluster.device.modify RBAC の承認が必要です。rbac(5) を参照してください。

–r

データベースを再構成します。

このオプションは大域ゾーンだけで使用できます。

このオプションを指定すると、rdsk および rmt デバイスツリーの完全な検索が実行されます。それまでに認識されていないすべてのデバイス識別子に対して新しいインスタンス番号が割り当てられます。新規に認識された個々のデバイスに対しては、それぞれ新しくパスが追加されます。

なおこのオプションは、クラスタモードでブートされたノードからしか実行できません。

このコマンドオプションを使用するためには、solaris.cluster.device.modify RBAC の承認が必要です。rbac(5) を参照してください。

–T remote-nodename

–e replication-type 引数で指定するストレージベースのレプリケーションタイプで使用するように DID デバイスを構成します。

このオプションは大域ゾーンだけで使用できます。

このオプションは、レプリケートされたデバイスが構成されているいずれか 1 つ のノードだけから実行します。remote-nodename オプション引数を使用して、リモートノードの名前を指定します。

ローカルノード上の DID インスタンスはリモートノード上の対応する DID インスタンスと結合され、レプリケートされたデバイスの各ペアは単一の論理 DID デバイスにマージされます。

このコマンドオプションを使用するためには、solaris.cluster.device.modify RBAC の承認が必要です。rbac(5) を参照してください。

–t source-instance:destination-instance

DID インスタンスを本来の場所から新しい宛先インスタンス (destination-instance オプション引数で指定) に移動します。

このオプションは大域ゾーンだけで使用できます。

このオプションは、ローカルのインスタンスを間違って変更した場合に、DID インスタンスを本来の場所に戻すときに使用します。共有ストレージに接続されたすべてのクラスタノード上でコマンドを実行したあとで、devfsadm および scgdevs コマンドを 1 つのノードから実行して、構成変更により広域デバイスのネームスペースを更新します。

destination-instance がクラスタ内に存在しない場合、source-instance 引数の値に対応する DID デバイスパスは削除され、指定した destination-instance で作成し直されます。

destination-instance がクラスタ内にすでに存在する場合、source-instance のパス (単数または複数) は destination-instance のパス (単数または複数) と結合され、両方のインスタンスのすべてのパスを含む単一の DID 宛先インスタンスになります。

レプリケーションタイプを指定する場合は、–e オプションを含めます。SRDF レプリケーションデバイスを使用している場合は、–g オプションを使用して、レプリケーションデバイスグループを指定します。

このコマンドオプションを使用するためには、solaris.cluster.device.modify RBAC の承認が必要です。rbac(5) を参照してください。

–u

デバイス識別子の構成テーブルをカーネルに読み込むよう指定します。

このオプションは大域ゾーンだけで使用できます。

このオプションを指定した場合、デバイスのパスおよび対応するインスタンス番号に関して、現在認識されているすべての構成情報がカーネルに読み込まれます。

このコマンドオプションを使用するためには、solaris.cluster.device.modify RBAC の承認が必要です。rbac(5) を参照してください。

–v

プログラムのバージョン番号の出力を指定します。

このオプションは大域ゾーンだけで使用できます。

使用例 1 ローカルホストに接続したデバイスの CCR への追加
# scdidadm -r
使用例 2 デバイスの物理パスの一覧表示

次のサンプルコードは、did ドライバのインスタンス 2 に対応するデバイス物理パスを一覧表示させます。

% scdidadm -l -o path 2
/dev/dsk/c1t4d0
使用例 3 書式指定用のオプション引数の複数指定

書式指定用のオプション引数を複数指定するには、次のいずれかの形式で記述します。

% scdidadm -l -o path -o name 2
% scdidadm -l -o path,name 2

いずれの形式の場合も、得られる結果は次のようになります。

/dev/dsk/c1t4d0 d1
使用例 4 EMC SRDF ストレージベースのレプリケーションで使用するための DID デバイスの構成

次の例では、EMC SRDF ストレージベースのレプリケーションで使用するために、ローカルの DID デバイスとリモートの DID デバイスを構成します。このコマンドは、レプリケートされたデバイスが構成されているローカルのソースノードから実行します。ソースノード上の DID インスタンスは、リモートの宛先ノード phys-schost-1 上の対応する DID インスタンスと結合されます。

# scdidadm -t 15:10 -e srdf -g devgroup1
使用例 5 レプリケートされた DID デバイスの構成解除

次の例では、レプリケートされた DID デバイス d25 を、元の DID デバイスコンポーネントに戻します。この DID デバイスは、phys-schost-1 上のパス d15phys-schost-2 上のパス d25 と組み合わせることによって作成されました。2 つのパスが結合された際、パス d15 はパス d25 に統合されたため、phys-schost-1 からコマンドを実行して、パス d15 を確実に復元します。

phys-schost-1# scdidadm -b 25
使用例 6 DID インスタンスの移動

次の例では、移動元インスタンス 15 の DID インスタンスを新しい DID インスタンス 10 に移動したあと、グローバルデバイス名前空間の構成の変更を更新します。

# scdidadm -t 15:10
# devfsadm
# scgdevs
使用例 7 修復処理の実行

次のサンプルコードは、指定したデバイスのパスに対して、修復処理を実施させます。デバイス /dev/dsk/c1t4d0 は、新しいデバイス識別子と対応付けられている新しいデバイスと交換されています。この新しいデバイス識別子が、古いデバイス識別子と対応付けられていたインスタンス番号に対応していることを示すため、データベースが更新されます。

# scdidadm -R c1t4d0
使用例 8 修復処理の実行

修復処理は、デバイスのパスと関連付けられたインスタンス番号を指定しても実行できます。たとえば、先の例で c1t4d0 のデバイスのインスタンス番号 2 であるとすれば、次の構文は先の例と同様の操作を実行します。

# scdidadm -R 2
使用例 9 SCSI プロトコルのグローバルな設定

次の例では、クラスタ内のすべての SCSI デバイス (ただし、構成済みの定足数デバイスと SCSI-3 プロトコルをサポートしないデバイスを除く) を SCSI-3 プロトコルに設定します。SCSI-3 プロトコルをサポートしないデバイスは、pathcount に設定されます。

# scdidadm -G prefer3
使用例 10 単一デバイスの SCSI プロトコルの表示

次の例では、デバイス /dev/rdsk/c0t3d0 の SCSI プロトコル設定を表示します。

# scdidadm -L -o defaultfencing /dev/rdsk/c0t3d0
使用例 11 単一デバイスの SCSI プロトコルの設定

次の例では、デバイス 11 (インスタンス番号で指定) を SCSI-3 プロトコルに設定します。このデバイスは、構成済みの定足数デバイスではなく、SCSI-3 プロトコルをサポートします。

# scdidadm -F scsi3 11

終了ステータス

次の終了値が返されます。

0

コマンドは正常に完了しました。

1

エラーが発生しました。

属性

次の属性については、attributes(5) を参照してください。

属性タイプ
属性値
使用条件
ha-cluster/system/core
インタフェースの安定性
安定

関連項目

Intro(1CL)cldevice(1CL)devfsadm(1M)scgdevs(1M)did(7)

Oracle Solaris Cluster 4.3 システム管理

マルチポート式のテープドライブまたは CD-ROM ドライブはそれぞれ、個々の物理接続をするごとにネームスペースに表示されます。