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Oracle® Solaris 11.3 でのネットワークデータリンクの管理

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更新: 2016 年 11 月
 
 

データリンクマルチパスアグリゲーション

データリンクマルチパス (DLMP) アグリゲーションは、スイッチ構成を必要とせずに複数のスイッチにわたって高可用性を提供する一種のリンクアグリゲーションです。DLMP アグリゲーションは、トラフィックを送受信するネットワークの継続的な可用性を確保するためにリンクベースの障害検出とプローブベースの障害検出をサポートします。

DLMP アグリゲーションのメリット

DLMP アグリゲーションには次のメリットがあります。

  • トランクアグリゲーションによって実装された IEEE 802.3ad 標準には、複数のスイッチにまたがるプロビジョニングがありません。トランクモードで複数のスイッチ間のフェイルオーバーを可能にするには、ベンダー間で互換性のないスイッチにベンダー独自の拡張機能が必要です。DLMP アグリゲーションを使用すると、ベンダー独自の拡張機能を必要とせずに複数のスイッチ間のフェイルオーバーが可能になります。

  • ネットワーク仮想化での高可用性のために IPMP を使用すると非常に複雑になります。IPMP グループをゾーンに直接割り当てることはできません。ネットワークインタフェースカード (NIC) が複数のゾーンの間で共有される必要がある場合、各ゾーンが各物理 NIC から 1 つの VNIC を取得するように VNIC を構成する必要があります。各ゾーンは VNIC を IPMP グループにグループ化して、高可用性を実現する必要があります。たとえば、多数のシステム、ゾーン、NIC、仮想 NIC (VNIC)、および IPMP グループを含むシナリオなど、構成を拡大するほど複雑さが増します。DLMP アグリゲーションを使用する場合、アグリゲーション上に VNIC を作成するか、ゾーンの anet リソースを構成すると、ゾーンに高可用性 VNIC が表示されます。

  • DLMP アグリゲーションにより、リンク保護、ユーザー定義フロー、リンクプロパティー (帯域幅など) をカスタマイズする機能など、リンク層の機能を使用できます。


注 -  DLMP アグリゲーション上に IPMP グループを構成してはいけません。ただし、トランクアグリゲーション上に IPMP グループを構成することはできます。

DLMP アグリゲーションの動作

トランクアグリゲーションでは、アグリゲーション上に構成されている各データリンクに各ポートが関連付けられます。DLMP トランクアグリゲーションでは、アグリゲーションに構成されているいずれかのデータリンクにポートが関連付けられます。

次の図は、DLMP アグリゲーションの動作を示しています。

図 4  DLMP アグリゲーション

image:この図は、DLMP アグリゲーショントポロジを示しています。

この図は、リンクアグリゲーション aggr0 を含むシステム A を示しています。このアグリゲーションは、ベースとなる 4 つのリンク net0 から net3 で構成されています。vnic0 から vnic4 までの VNIC もアグリゲーション上に構成されています。アグリゲーションはスイッチ A およびスイッチ B に接続されており、これらのスイッチはより広いネットワーク内のほかの宛先システムに接続されています。

VNIC はベースとなるリンクを介して集約されたポートに関連付けられます。たとえば、この図では vnic0 から vnic3 までが、net0 から net3 までのベースとなるリンクを介して集約されたポートに関連付けられます。つまり、VNIC の数およびベースとなるリンクの数が同じ場合には、各ポートはベースとなるリンクに関連付けられます。

VNIC の数がベースとなるリンクの数を超えている場合、1 つのポートに複数のデータリンクが関連付けられます。たとえば、この図では VNIC の合計数がベースとなるリンクの数を超えています。したがって、vnic4vnic3 とポートを共有します。

集約されたポートが失敗した場合、そのポートを使用するすべてのデータリンクはほかのポートの間に分散され、それによりフェイルオーバー中にネットワーク高可用性が提供されます。たとえば、net0 が失敗した場合は、DLMP アグリゲーションは残りのポート net1 を VNIC 間で共有します。アグリゲーションポート間の分散は、ユーザーに対しては透過的に、また、アグリゲーションに接続されている外部スイッチとは無関係に行われます。

次の図は、ポートが失敗した場合の DLMP アグリゲーションの動作を示しています。この図では、net1 は失敗し、スイッチと net1 の間のリンクが停止しています。vnic1vnic0 から net0 までとポートを共有します。

図 5  ポートが失敗した場合の DLMP アグリゲーション

image:この図はポートが失敗した場合の DLMP アグリゲーションを示します。

DLMP アグリゲーションの障害検出

DLMP アグリゲーションの障害検出は、集約されたポートの障害を検出する方法です。ポートはトラフィックを送受信できない場合に失敗したとみなされます。ポートは次の理由により失敗することがあります。

  • ケーブルの損傷または切断

  • スイッチポートのダウン

  • 上位ネットワークパスの障害

DLMP アグリゲーションは、トラフィックを送受信するネットワークの継続的な可用性を保証するために集約されたポートに対して障害検出を実行します。ポートが失敗すると、そのポートに関連付けられたクライアントはアクティブなポートにフェイルオーバーされます。集約されたポートが失敗すると、そのポートは修復されるまで使用不可能なままになります。残りのアクティブポートが機能し続ける一方で、既存のポートが必要に応じて配備されます。失敗したポートが障害から回復すると、そのほかのアクティブなポートのクライアントをそのポートに関連付けることができます。

DLMP アグリゲーションはリンクベースおよびプローブベースの障害検出をサポートしています。

リンクベースの障害検出

リンクベースの障害検出は、ケーブルの切断時またはスイッチポートのダウン時に障害を検出します。したがって、データリンクと 1 ホップ目のスイッチの間の直接接続の損失が原因で発生する障害のみを検出できます。リンクベースの障害検出は DLMP アグリゲーションの作成時にデフォルトで有効です。

プローブベースの障害検出

プローブベースの障害検出は、エンドシステムと構成されたターゲット IP アドレスの間の障害を検出します。この機能はリンクベースの障害検出の既知の制限を克服します。プローブベースの障害検出は、デフォルトのルーターがダウンしているか、あるいはネットワークが到達不能になった場合に役立ちます。DLMP アグリゲーションはプローブパケットを送受信することで障害を検出します。

プローブベースの障害検出を DLMP アグリゲーションで有効にするには、probe-ip プロパティーを構成する必要があります。


注 -  DLMP アグリゲーションに probe-ip が構成されていない場合は、プローブベースの障害検出が無効になり、リンクベースの障害検出のみが使用されます。

プローブベースの障害検出は 2 種類のプローブ (Internet Control Message Protocol (ICMP (L3)) プローブと推移的 (L2) プローブ) の組み合わせを使用して実行されます。これらのプローブは、集約された物理的なデータリンクの状態を判定するために連携して動作します。

  • ICMP プローブ

    ICMP プローブは、ICMP パケットをターゲット IP アドレスに送信して動作します。ソースとターゲットの IP アドレスは手動で指定することも、システムで選択させることもできます。ソースアドレスが指定されない場合、DLMP アグリゲーション上または DLMP アグリゲーション上で構成された VNIC 上で構成されている IP アドレスからソースアドレスが選択されます。ターゲットアドレスが指定されない場合、指定されたソース IP アドレスの 1 つと同じサブネット上にあるいずれかの次のホップルーターからターゲットアドレスが選択されます。詳細は、DLMP のプローブベースの障害検出の構成方法を参照してください。

  • 推移的プローブ

    推移的プローブはすべてのネットワークポートの健全性の状態が ICMP プローブのみを使用して判断できない場合に実行されます。これは、ICMP プローブ用に選択されたソース IP アドレスが特定のポートで構成されているアドレスのリストに含まれない場合に発生する可能性があります。その結果、このポートは ICMP プローブ応答を受け取ることができません。推移的プローブは、構成済みソース IP アドレスのないポートから構成済みソース IP アドレスを持つ別のポートへ L2 パケットを送信することで動作します。その他のポートが ICMP ターゲットに到達でき、推移的プローブを送信するポートがそのポートから L2 応答を受信する場合、これは推移的プローブを送信するポートも ICMP ターゲットに到達できることを意味します。

    DLMP アグリゲーションでは、タグなしトラフィックが制限されている構成をサポートするために ICMP と推移的プローブの両方に使用できる VLAN をオプションで指定できます。probe-vlan-id プロパティーを使用して単一の VLAN ID を指定でき、指定された VLAN は、ターゲット IP への ICMP プローブの送信と、推移的プローブに依存するメンバーポートの健全性のチェックの両方に使用されます。L3 プローブターゲットが、このプロパティーに基づいて自動的に選択されて検証されます。probe-vlan-id プロパティーには 0 - 4094 の値を指定できます。デフォルト値は 0 で、プローブがタグなしであることを示します。

    Oracle Solaris には、ネットワークを介して送信される推移的プローブに対する独自のプロトコルパケットが含まれます。詳細は、推移的プローブのパケット形式を参照してください。