LLDP は、ローカルエリアネットワーク (LAN) のシステムが構成情報と管理情報を相互に交換するために使用します。このプロトコルを使用すると、システムは、接続や管理の情報をネットワーク上のほかのシステムに通知できます。これらの情報には、ネットワーク操作に関連するシステムの機能、管理アドレス、およびその他の情報を含めることができます。またこのプロトコルにより、システムは、同じローカルネットワーク上にあるほかのシステムに関する同様の情報を受信することもできます。
どの LAN でも、システムやスイッチなどの個々のコンポーネントが分離された状態で構成されることはありません。ネットワークトラフィックを効率よくホストするには、ネットワーク上のシステムの構成を相互に調整する必要があります。
各システム、スイッチ、およびその他のコンポーネントを手動で構成する場合、それらのコンポーネントの間で互換性を確保することが課題となります。システムの手動構成にはリスクが伴い、特に複数の管理者が異なるシステムを独立して操作する場合は、構成ミスが発生しやすくなります。より優れた方法は LLDP を使用することです。LLDP はシステムがそれぞれの構成情報をピアシステムに送信でき、構成ミスの検出に役立ちます。
Oracle Solaris は LLDP の使用をサポートして、ネットワーク上のシステム間でのシステムおよびネットワーク接続情報の交換を拡張し、ネットワークリソースの構成ミスのリスクを軽減します。
このリリースでは、ネットワーク診断サービスが LLDP を使用して、ネットワーク接続の制限または機能低下 (あるいはその両方) につながる可能性のある問題を自動的に検出します。LLDP サービスを有効にすると、使用している Oracle Solaris システムのネットワーク診断を実行する機能が強化されます。ネットワークの診断の詳細は、Oracle Solaris 11.3 でのネットワーク管理のトラブルシューティング の 第 5 章, network-monitor トランスポートモジュールユーティリティーを使用したネットワーク診断の実行を参照してください。
Oracle Solaris では、LLDP はデータセンターブリッジング交換プロトコル (DCBX) の TLV (Type-Length-Value) ユニットの交換にも使用されます。DCBX は、優先順位ベースのフロー制御 (PFC) や拡張伝送選択 (ETS) などの DCB 機能に関する構成情報を提供します。DCB の詳細は、データセンターブリッジングを使用した集中ネットワークの管理を参照してください。
LLDP を使用すると、システム管理者は、特に仮想ローカルエリアネットワーク (VLAN) やリンクアグリゲーションなどの複雑なネットワークで、誤ったシステム構成を容易に検出できます。ネットワークを構成しているサーバー、スイッチ、そのほかのデバイス間の物理的な接続を追跡しなくても、ネットワークトポロジに関する情報を簡単に取得できます。
LLDP は、次のコンポーネントを使用して実装されています。
LLDP パッケージ – このパッケージをインストールして LLDP を有効にします。このパッケージには、LLDP デーモン、コマンド行ユーティリティー、サービスマニフェストとスクリプトのほか、LLDP が動作するために必要なそのほかのコンポーネントが含まれています。
LLDP サービス – svcadm コマンドを使用して LLDP サービスを有効にできます。このサービスは、サービス管理機能 (SMF) サービスインスタンス svc:/network/lldp:default の障害管理リソース識別子 (FMRI) を使用して、LLDP デーモン lldpd を管理します。この LLDP サービスは、lldpd デーモンの起動、停止、再起動、またはリフレッシュを行います。LLDP パッケージをインストールすると、このサービスは自動的に有効になります。
lldpadm コマンド – このコマンドは、個々のリンク上の LLDP を管理し、LLDP の動作モードを構成したり、送信される TLV ユニットを指定したり、DCBX TLV ユニットを構成したりするために使用できます。TLV ユニットについては、LLDP エージェントが通知する情報を参照してください。
エージェントごとの LLDP プロパティーとグローバルな LLDP プロパティーを設定したり、特定のエージェントまたはそのピアの LLDP 情報を取得するには、このコマンドを使用する必要があります。
lldpadm サブコマンドについては、次のセクションで説明します。lldpadm コマンドについての詳細は、lldpadm(1M) のマニュアルページを参照してください。
LLDP デーモン – LLDP サービスはシステム上の LLDP エージェントを管理します。また、SNMP (Simple Network Management Protocol) を経由してシステム上で受信される LLDP 情報を取得するために、SNMP のためのデーモンである snmpd とも相互作用します。
LLDP エージェント – LLDP エージェントは、LLDP が有効になっている物理データリンクに関連付けられた LLDP インスタンスです。LLDP エージェントはピアにデータリンクに関する情報を送信し、ピアからの情報の受信も行います。関連付けられた物理的なデータリンクに関する特定の情報を通知するように、LLDP エージェントを構成できます。物理データリンク上の LLDP のみを有効にできます。
LLDP エージェントは、LLDP データユニット (LLDPDU) を送受信します。このエージェントは、次のタイプのデータストア内で、これらの LLDPDU に含まれている情報を管理および格納します。
ローカル管理情報ベース (MIB) – このデータストアには、LLDP エージェントが有効になっているシステムの特定のリンクに関連するネットワーク情報が含まれています。ローカル MIB には、一般的な情報と固有の情報の両方が含まれます。たとえば、シャーシ ID は、システム上のすべての LLDP エージェントの間で共有されている一般的な情報です。ただし、システムのデータリンクのポート ID は異なります。そのため、各エージェントは、独自のローカル MIB を管理します。
LLDP エージェントは、次のモードで動作します。
送信のみ (txonly) – LLDP エージェントは受信 LLDPDU を処理しません。そのため、リモート MIB は空です。
受信のみ (rxonly) – エージェントは受信 LLDPDU のみを処理し、情報をリモート MIB 内に格納します。ただし、ローカル MIB からの情報は送信されません。
送受信 (both) – エージェントはローカル情報を送信し、受信 LLDPDU を処理し、そのためにローカル MIB とリモート MIB の両方を維持します。
無効 (disable) – エージェントは存在しません。
エージェントモードの設定については、特定のポートの LLDP を有効にする方法を参照してください。