Oracle® Solaris Studio 12.4: C++ ユーザーズガイド

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更新: 2014 年 12 月
 
 

10.4 メモリーバリアー組み込み関数

コンパイラには、SPARC プロセッサと x86 プロセッサ用のさまざまなメモリーバリアー組み込み関数を定義するヘッダーファイル mbarrier.h が用意されています。これらの組み込み関数は、開発者が独自の同期プリミティブを使用してマルチスレッドコードを記述するために使用できます。これらの組み込み関数がいつ必要になるか、また、特定の状況で必要かどうかを判断するには、該当するプロセッサのドキュメントを参照してください。

mbarrier.h によりサポートされるメモリーオーダリング組み込み関数には、次のものが含まれます。

  • __machine_r_barrier()  - これは、read バリアーです。これにより、バリアー前のすべてのロード操作が、バリアー後のすべてのロード操作の前に完了します。

  • __machine_w_barrier()  - これは、write バリアーです。これにより、バリアー前のすべての格納操作が、バリアー後のすべての格納操作の前に完了します。

  • __machine_rw_barrier()  - これは、read—write バリアーです。これにより、バリアー前のすべてのロードおよび格納操作が、バリアー後のすべてのロードおよび格納操作の前に完了します。

  • __machine_acq_barrier()  - これは、acquire セマンティクスを持つバリアーです。これにより、バリアー前のすべてのロード操作が、バリアー後のすべてのロードおよび格納操作の前に完了します。

  • __machine_rel_barrier()  - これは、release セマンティクスを持つバリアーです。これにより、バリアー前のすべてのロードおよび格納操作が、バリアー後のすべての格納操作の前に完了します。

  • __compiler_barrier()  - コンパイラが、バリアーを越えてメモリーアクセスを移動するのを防ぎます。

__compiler_barrier() 組み込み関数を除くすべてのバリアー組み込み関数は、x86 でメモリーオーダリング命令を生成し、これらは mfencesfence、または lfence 命令です。SPARC プラットフォームでは、これらは membar 命令です。

__compiler_barrier() 組み込み関数は、命令を生成せず、代わりに今後メモリー操作を開始する前にそれまでのメモリー操作をすべて完了する必要があることをコンパイラに通知します。この実際の結果として、ローカルでないすべての変数、および static ストレージクラス指定子を持つローカル変数が、バリアー前のメモリーに再度格納されてバリアー後に再ロードされ、コンパイラではバリアー前のメモリー操作とバリアー後のメモリー操作が混在することはありません。ほかのすべてのバリアーには、__compiler_barrier() 組み込み関数の動作が暗黙的に含まれています。

たとえば、次のコードでは、__compiler_barrier() 組み込み関数が存在しているためコンパイラによる 2 つのループのマージが止まります。

#include "mbarrier.h"
int thread_start[16];
void start_work()
{
/* Start all threads */
   for (int i=0; i<8; i++)
   {
     thread_start[i]=1;
   }
   __compiler_barrier();
/* Wait for all threads to complete */
   for (int i=0; i<8; i++)
   {
      while (thread_start[i]==1){}
   }
}