Oracle Solaris 10 以前のリリースでは、ifconfig コマンドは、ネットワークインタフェースの構成に使用される慣例的なツールです。ただし、このコマンドには永続的な構成が実装されていません。これまで、ifconfig コマンドには、拡張によってさらなるネットワーク管理機能が追加されてきました。その結果、コマンドがより複雑になり、使用方法がわかりにくい場合があります。
IP インタフェースの構成と管理に関する別の問題として、TCP/IP のプロパティー (チューニング可能値とも呼ばれます) を管理するための簡単なツールが存在しない点があります。ndd コマンドは長い間このための規定のカスタマイズツールでしたが、ifconfig コマンドと同様に、ndd コマンドは永続的な構成を実装しません。以前は、ブートスクリプトの編集によって、ネットワークのシナリオで永続的な構成をシミュレートすることが可能でした。サービス管理機能 (SMF) の導入により、さまざまな SMF 依存関係の管理が複雑になるため、特に Oracle Solaris インストールへのアップグレードを考慮した場合には、これらのタイプの回避策を使用するとリスクを伴うことがあります。
このリリースで使用するネットワーク管理コマンドに関する次の重要な点に注意してください。
ネットワークインタフェース (データリンクや、IP インタフェースとアドレス) を構成するための ifconfig コマンドが ipadm および dladm コマンドに置き換えられています。ifconfig コマンドは引き続き機能しますが、主に下位互換性のために存在しています。また、/etc/hostname* ファイルに情報を追加する以前の方法は、Oracle Solaris 11 ではサポートされていません。
以前に ifconfig コマンドを使用して実行していたタスクのほとんどは、dladm コマンド (データリンク管理用) または ipadm コマンド (IP 管理用) を使用して実行できます。ほとんどの ifconfig コマンドオプションには、同等の ipadm オプションがありますが、この 2 つのコマンドの間に厳密な 1 対 1 のマッピングは存在しません。同等のオプションについては、ifconfig コマンドと ipadm コマンドの比較を参照してください。ifconfig(5) のマニュアルページも参照してください。
ネットワークパラメータ (チューニング可能値) をカスタマイズするためのツールとして、ndd コマンドも ipadm および dladm コマンドに置き換えられています。ndd コマンドは Oracle Solaris 11 でも引き続き機能しますが、ipadm および dladm コマンドの方が推奨されます。
Oracle Solaris 10 では、ドライバは、ドライバ固有のメカニズム (ndd コマンドや driver.conf ファイルなど) を使用して構成します。ただし、Oracle Solaris 11 では、dladm プロパティーのほか、ドライバ専用プロパティーを介して一部のドライバ専用機能を設定することによって、一般的なドライバ機能を構成します。
ifconfig コマンドと比較すると、ipadm コマンドには次の利点があります。
パラメータと明確に示されたインタフェースおよびアドレスとの相互作用。
両方の現在のシステム状態を管理し、リブート時に自動的に使用するために同期されるその状態の永続的なレコードを保持する構成コマンド。
コミットされた解析可能な出力形式とシェルスクリプトで簡単に使用するための多くのサブコマンド。
管理スクリプトが個々のアドレスを容易に参照するための手段を提供する、ユーザー定義の IP アドレスオブジェクト名 (DHCP または IPv6 アドレス自動構成によって定義される IP アドレスを含む)。
次の表では、選択された ifconfig コマンドオプションと同等の ipadm コマンドを比較しています。これらの変更の追加の説明については、ifconfig(5) のマニュアルページを参照してください。使用可能なすべてのオプションの包括的なリストについては、ipadm(1M) のマニュアルページを参照してください。
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Oracle Solaris 11 には、ifconfig –a コマンドの出力に表示される情報を置き換える単一のコマンドはありません。ただし、ほとんどの場合は、ipadm コマンドをオプションなしで使用しても、同様の情報が得られます。詳細については、ifconfig(5) のマニュアルページを参照してください。
ifconfig コマンドの代替として使用するコマンドを決定するには、次の情報を参照してください。
システムのインタフェースに関する基本情報を表示するには、ipadm コマンドをオプションなしで使用します。
# ipadm NAME CLASS/TYPE STATE UNDER ADDR lo0 loopback ok -- -- lo0/v4 static ok -- 127.0.0.1/8 lo0/v6 static ok -- ::1/128 net0 ip ok -- -- net0/v4 dhcp ok -- 10.134.64.65/24 net0/v6 addrconf ok -- fe80::214:4fff:fefb:bbf0/10
MAC アドレス情報を表示するには、次のオプションを指定して dladm コマンドを使用します。
# dladm show-linkprop -p mac-address -o link,effective
詳細な IP インタフェースの状態またはプロパティー情報は次のように表示します。
# ipadm show-if -o ifname,class,state,current,over # ipadm show-ifprop -o ifname,property,proto,current
詳細な IP アドレスの状態またはプロパティー情報は次のように表示します。
# ipadm show-addr -o addrobj,type,state,current,addr # ipadm show-addrprop -o addrobj,property,current
IP トンネル構成の詳細は次のように表示します。
# dladm show-iptun
引き続き ifconfig コマンドの使用を選択する可能性のある状況は、次のとおりです。
任意のアドレスまたはリンクインデックス番号の論理インタフェース番号を表示する。ipadm ではこの情報が表示されず、一部のアプリケーションではまだこれらの番号が使用されています。
診断ツールとして、ifconfig コマンドは、dladm および ipadm コマンドでは取得できない可能性のある追加情報を提供できます。
次の 2 つの例は、システムのデータリンク (net0) に関する同様の情報の取得に使用された場合の、ifconfig の出力と ipadm コマンドの出力の違いを比較しています。
# ifconfig net0 net0: flags=100001000942<BROADCAST,RUNNING,PROMISC,MULTICAST,IPv4,PHYSRUNNING> mtu 1500 index 4 inet 0.0.0.0 netmask 0 ether 0:d0:b7:b9:a5:8c # ifconfig net0 inet6 net0: flags=120002000940<RUNNING,PROMISC,MULTICAST,IPv6,PHYSRUNNING> mtu 1500 index 4 inet6 ::/10
# ipadm show-if -o ifname,class,state,current,over net0 IFNAME CLASS STATE CURRENT OVER net0 ip down bm46-------- -- sekon# ipadm show-ifprop -o ifname,property,proto,current net0 IFNAME PROPERTY PROTO CURRENT net0 arp ipv4 on net0 forwarding ipv4 off net0 metric ipv4 0 net0 mtu ipv4 1500 net0 exchange_routes ipv4 on net0 usesrc ipv4 none net0 forwarding ipv6 off net0 metric ipv6 0 net0 mtu ipv6 1500 net0 nud ipv6 on net0 exchange_routes ipv6 on net0 usesrc ipv6 none net0 group ip -- net0 standby ip off
ndd コマンドと比較すると、ipadm コマンドには次の利点があります。
プロパティーの現在値とデフォルト値、指定可能な値の範囲などの、各 TCP/IP プロパティーに関する情報を提供します。そのため、デバッグ情報の取得が容易になります。
一貫性のあるコマンド構文に従っているため、より容易に使用できます。
カスタム SMF スクリプトまたは /etc/rc*.d スクリプトの使用を必要としていた、以前は必要とされていたコミットされていない ndd コマンドではなく、ipadm サブコマンドを使用することで可能になるルーティングおよびトランスポート層のチューニング可能値を永続的に構成します。
次の表では、選択された ndd コマンドオプションと同等の ipadm コマンドオプションを比較しています。コマンドオプションのより包括的なリストについては、ipadm(1M) のマニュアルページを参照してください。
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Oracle Solaris 10 では、ndd コマンドを使用して、ネットワークパラメータ (チューニング可能値) や一部のドライバ固有のプロパティーをカスタマイズします。ndd コマンドは Oracle Solaris 11 でも引き続き機能しますが、これらのプロパティーの管理には、dladm コマンドが推奨されます。
Oracle Solaris 10 ではまた、一部のドライバ固有のプロパティーを構成するために driver.conf ファイルも使用されます。Oracle Solaris 11 では、dladm プロパティーのほか、ドライバ専用プロパティーによる特定のドライバ専用機能を設定することによって、いくつかの一般的なドライバ機能を構成できます。
次の 3 つのクラスのチューニング可能値を構成できます。
一般的な汎用プロパティー – これらのプロパティーのほとんどは、dladm コマンドの同等のプロパティーに単純にマップされます。
ndd コマンドパラメータが –get および –set サブコマンドを使用して問合せおよび設定されるのに対して、dladm プロパティーは、show-linkprop および set-linkprop サブコマンドを使用して問合せおよび設定されます。また、reset-linkprop サブコマンドを使用して dladm プロパティーをリセットすることもできます。次の例は、これらの 2 つのコマンドの違いのいくつかを示しています。
次の例では、ndd コマンドを –get サブコマンドとともに使用して、データリンク net0 のリンク速度を取得しています。
# ndd -get /dev/net/net0 link_speed
次の例は、speed プロパティーから情報を取得するための dladm コマンドの使用方法を示しています。
# dladm show-linkprop -p speed net0 LINK PROPERTY PERM VALUE EFFECTIVE DEFAULT POSSIBLE net0 speed r- 0 0 0 --
別の例として、リンク速度およびデュプレックス設定の自動ネゴシエーションを有効にする方法を示します。次の例では、ndd コマンドを使用して、adv_autoneg_cap パラメータを設定しています。
# mdd -set /dev/net/net0 adv_autoneg_cap 1
ndd コマンドでは、リブート後も保持される設定が構成されないことに注意してください。
次の例は、dladm コマンドを使用して adv_autoneg_cap パラメータを設定し、リンク速度およびデュプレックス設定の自動ネゴシエーションを有効にする方法を示しています。
# dladm set-linkprop -p adv_autoneg_cap=1
dladm コマンドを使用した場合は、変更がただちに実行され、システムのリブート後も保持されます。
機能に関連したチューニング可能値 – これらのプロパティーの多くは、Oracle Solaris 11 に同等の dladm コマンドオプションがあります。プロパティーのリストは広範囲にわたります。dladm(1M) のマニュアルページの Ethernet リンクのプロパティーに関するセクションを参照してください。
dladm コマンドをオプションなしで使用してこれらのプロパティーを表示するか、または dladm show-ether コマンドを使用できます。dladm show-ether コマンドにオプションを何も指定しない場合、データリンクの現在の Ethernet プロパティー値だけが表示されます。デフォルトで提供されるもの以外の情報を取得するには、次の例に示すように –x オプションを使用します。
# dladm show-ether -x net1 LINK PTYPE STATE AUTO SPEED-DUPLEX PAUSE net1 current up yes 1G-f both -- capable -- yes 1G-fh,100M-fh,10M-fh both -- adv -- yes 100M-fh,10M-fh both -- peeradv -- yes 100M-f,10M-f both
–x オプションを使用すると、このコマンドは指定されたリンクの組み込み機能や、ホストとリンクパートナーとの間で現在通知されている機能も表示します。
ドライバ固有のプロパティー – Oracle Solaris 11 では、以前に driver.conf ファイル内に格納されていたプロパティーを構成する方法は特定のドライバに依存します。以前にこのファイル内で構成されていた主なプロパティーは、最大転送単位 (MTU) プロパティーです。このプロパティーは、dladm コマンドを使用して管理します。Oracle Solaris 11.3 でのネットワークコンポーネントの構成と管理 のMTU プロパティーの設定を参照してください。
dladm コマンドを使用してカスタマイズできるさまざまなプロパティーの詳細は、Oracle Solaris 11.3 でのネットワークコンポーネントの構成と管理 のデータリンクプロパティーのステータス情報の取得を参照してください。
その他のドライバ専用プロパティーの構成については、そのドライバの製造元のドキュメントを参照してください。