管理者が、データリンクの上に IP インタフェースを作成します。各データリンクは、開放型システム間相互接続 (OSI) モデルの 2 番目のレイヤー内のリンクオブジェクトを表します。データリンクは、物理ネットワークデバイス (物理リンクと呼ばれる)、物理データリンクのアグリゲーション、仮想ネットワークインタフェースカード (VNIC) などの多数の異なる L2 エンティティーを表すことができます。
リンク名は、関連付けられたリンクオブジェクトの自動作成時に割り当てられるか、データリンクの作成時に明示的にリンク名を割り当てることができます。物理リンク (物理ネットワークデバイスに関連付けられているリンク) は、デバイスの追加時、またはインストール後の Oracle Solaris システムの初回ブート時に自動的に作成されます。この Oracle Solaris リリースでは、物理データリンクの名前と、ネットワークデバイスに関連付けられたベースとなるハードウェアとの結び付きはなくなりました。デフォルトでは、データリンクに割り当てられる名前には、接頭辞として net が、接尾辞としてシステム内のデータリンクの物理的な場所を示す番号が含まれます。たとえば、最初のオンボードネットワークデバイス e1000g0 には名前 net0 が割り当てられ、次の e1000g1 デバイスには名前 net1 が割り当てられる、という具合です。リンクアグリゲーションなど、明示的に作成したデータリンクに任意の名前を割り当てることができます。また、必要に応じて、デフォルトで割り当てられているデータリンクの netN 名を明示的に変更できます。
汎用または柔軟なリンク名には、ネットワーク構成に関して次の利点があります。
単一のシステムでは、動的再構成 (DR) が簡単になります。特定の NIC のためのネットワーク構成を、別の NIC 交換で継承できます。
ゾーン移行のネットワーク設定に関する複雑さが軽減されました。移行先システムのリンクが、移行の前にそのゾーンに割り当てられていたリンクと同じ名前を共有している場合は、移行されたシステム内のゾーンでそのネットワーク構成が保持されます。そのため、移行のあと、そのゾーンでの追加のネットワーク構成は必要ありません。
汎用の命名規則により、インストール時に使用するシステム構成 (SC) マニフェストで指定されたネットワーク構成の複雑さが軽減されました。プライマリネットワークデータリンクには、一般的にすべてのシステムで名前 net0 が付けられるため、net0 用の構成を指定する複数のシステムで一般的な SC マニフェストを使用できます。
また、データリンクの管理も柔軟になります。データリンクで提供される特定の機能が反映されるように、データリンクの名前をさらにカスタマイズできます。
次の表は、ハードウェア (NIC)、デバイスインスタンス、リンク名、およびそのリンク上のインタフェースの間の新しい対応関係を示しています。データリンクの名前は、OS によって自動的に提供されます。
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この表に示すように、デバイスインスタンス名はハードウェアベースのままであるのに対し、データリンクの名前はインストール後に OS によって変更されます。
データリンク、その汎用名、および対応するデバイスインスタンス間のマッピングを表示するには、次のように dladm show-phys コマンドを使用します。
# dladm show-phys LINK MEDIA STATE SPEED DUPLEX DEVICE net2 Ethernet up 1000 full bge2 net0 Ethernet up 1000 full e1000g0 net3 Ethernet up 1000 full nge3 net1 Ethernet up 1000 full e1000g1
物理ネットワークデバイスは、メディアタイプに従って順序が付けられ、特定のタイプが他よりも優先されます。メディアタイプは、次の降順の優先順位で順序が付けられています。
Ethernet
InfiniBand デバイス
Ethernet over IB
WiFi
デバイスがメディアタイプに従ってグループ化およびソートされたあと、これらのデバイスは、その物理的な場所に基づいてさらに順序が付けられます。ここでは、システムボード上のデバイスが周辺デバイスより優先されます。
そのメディアタイプと場所に基づいてより高い優先順位を持つデバイスに、より小さいインスタンス番号が割り当てられます。
SPARC ベースのシステムでは、OpenBoot PROM (OBP) で使用される netN デバイス別名に合わせて netN 名が割り当てられます。x86 ベースのシステムでは、SMBIOS データ (使用可能な場合) を使用してオンボードの Ethernet デバイスが識別され、それらに対して net0、net1、という具合に割り当てが行われます。これらの情報ソースに加え (または情報ソースが存在しない場合)、下位のマザーボードや IO ボード、ホストブリッジ、PCIe ルートコンプレックス、バス、デバイス、および機能上のデバイスは、ほかのデバイスに先立ってランク付けされ、上位のマザーボード、ホストブリッジなどのデバイスよりも下位の net インスタンスが割り当てられます。
Oracle Solaris はまた、iSCSI ブートシステムでのデバイスの汎用の命名もサポートしています。iSCSI ターゲットをブートディスクとして使用する Oracle Solaris システム上のデバイスに汎用名を割り当てることができます。以前にデバイスベースの命名を使用していたシステムをアップグレードしても、既存のデバイスが汎用の命名規則に自動的に移行されるわけではないことに注意してください。これにより、既存の構成が無効になってしまうことが回避されるため、この動作は意図的です。
リンク名、デバイス、および場所の対応を表示するには、次のように dladm show-phys コマンドと –L オプションを使用します。
# dladm show-phys -L LINK DEVICE LOCATION net0 e1000g0 MB net1 e1000g1 MB net2 e1000g2 MB net3 e1000g3 MB net4 ibp0 MB/RISER0/PCIE0/PORT1 net5 ibp1 MB/RISER0/PCIE0/PORT2 net6 eoib2 MB/RISER0/PCIE0/PORT1/cloud-nm2gw-2/1A-ETH-2 net7 eoib4 MB/RISER0/PCIE0/PORT2/cloud-nm2gw-2/1A-ETH-2
![]() | 注意 - 汎用リンク名が自動的に割り当てられる方法は、Oracle Solaris をインストールする前にカスタマイズする必要があります。インストール後は、既存の構成を削除しないかぎり、デフォルトのリンク名をカスタマイズすることはできません。 |
Oracle Solaris では、リンク名の割り当て時に接頭辞 net が使用されます。ただし、eth などの任意のカスタム接頭辞を使用できます。汎用リンク名の自動割り当てを無効にすることもできます。
リンク名の自動割り当てを無効にしたり、リンク名の接頭辞をカスタマイズしたりするには、システム構成 (SC) マニフェストで次のプロパティーを設定します。SC マニフェストは、Oracle Solaris の自動インストーラ (AI) 機能によって使用されます。
<service name="network/datalink-management" version="1" type="service"> <instance name="default enabled="true"> <property_group name='linkname-policy' type='application'> <propval name='phys-prefix' type='astring' value='net'/> </property_group> </instance> </service
前の出力で太字で示されているように、phys-prefix プロパティーの値は、デフォルトでは net に設定されます。
自動的な命名を無効にするには、次の例に示すように phys-prefix プロパティーの値を空の文字列にします。
<propval name='phys-prefix' type='astring' value=''/>
名前の自動割り当てを無効にした場合、データリンク名は、関連付けられたハードウェアドライバ (bge0 や e1000g0 など) に基づきます。
net 以外の接頭辞を使用するには、phys-prefix の値として (eth などの) 新しい接頭辞を指定します。
phys-prefix プロパティーに指定された値が無効な場合、その値は無視されます。その場合、データリンクには、関連付けられたハードウェアドライバ (bge0 や e1000g0 など) に従って名前が付けられます。有効なリンク名に関する規則については、有効なリンク名のための規則を参照してください。
新規にインストールされたシステムでは、データリンクには net0 から netN-1 までの名前が自動的に付けられます。ここで、N はネットワークデバイスの総数を表します。
これに対して、別の Oracle Solaris 11 リリースからアップグレードした場合、データリンクでは、アップグレードの前に確立されていた名前が保持されます。これらの名前は、ハードウェアに基づくデフォルトの名前か、または管理者がアップグレードの前にデータリンクに割り当てたカスタマイズ名のどちらかです。さらに、これらのアップグレードされたシステムでは、そのあとに追加される新しいネットワークデバイスも、汎用名を受け取るのではなく、ハードウェアに基づくデフォルトの名前を保持します。アップグレードされたシステムでのこの動作により、OS によって割り当てられた汎用名が、その他のハードウェアに基づく名前や、アップグレードの前に管理者によって割り当てられたカスタマイズされた名前と混在しないことが保証されます。
両方のハードウェアベース名および OS で指定されたリンク名を、任意のほかの名前で置き換えることができます。通常、システムのネットワーク構成の作成には、OS が割り当てるデフォルトのリンク名で十分です。ただし、リンク名に変更を加える前に次の情報を考慮してください。
システムのリンクにハードウェアに基づく名前が付けられている場合は、これらのリンクの名前を少なくとも汎用名に変更します。ハードウェアに基づく名前を保持した場合は、あとでこれらの物理デバイスを取り外したり、交換したりしたときに、混乱が発生する可能性があります。
たとえば、デバイス bge0 に関連付けられたリンク名 bge0 を保持したとします。リンク構成はすべて、そのリンク名を参照することによって実行されます。あとで、NIC bge を NIC e1000g に交換したとします。以前のデバイスのリンク構成を新しい NIC e1000g0 に再適用するには、リンク名 bge0 を e1000g0 に再割り当てする必要があります。ハードウェアに基づくリンク名 bge0 を関連付けられた別の NIC e1000g0 と組み合わせると、混乱が発生することがあります。ハードウェアに基づかない名前を使用することによって、そのリンクを関連付けられたデバイスからより適切に区別することができます。
ハードウェアに基づくリンク名の置き換えはベストプラクティスですが、それでも、リンクの名前を変更する前には慎重な計画が必要です。デバイスのリンク名を変更しても、その新しい名前が、既存の関連付けられたすべての構成に自動的に反映されるわけではありません。次の例は、リンク名を変更した場合のリスクを示しています。
IP フィルタの構成にある一部の規則は、特定のリンクに適用されます。リンクの名前を変更すると、振り分け規則は引き続き、そのリンクの元の名前を参照します。その結果、リンクの名前を変更したあと、これらの規則は期待どおりに動作しなくなります。新しいリンク名を使用して、そのリンクに適用されるように振り分け規則を調整する必要があります。
ネットワーク構成情報をエクスポートする可能性を考慮してください。前に説明したように、OS によって提供されるデフォルトの net# の名前を使用すると、ゾーンを移行し、ネットワーク構成を別のシステムに容易にエクスポートすることができます。ターゲットシステムのネットワークデバイスに net0 や net1 などの汎用名が付けられている場合、これらのゾーンは単純に、そのゾーンに割り当てられたデータリンクに名前が一致するデータリンクのネットワーク構成を継承します。
そのため、一般的な規則として、データリンクの名前はランダムに変更しないでください。データリンクの名前を変更する場合は、そのリンクの関連付けられたすべての構成が、リンク名が変更されたあとも引き続き適用されることを確認してください。
リンクの名前を変更することによって影響を受ける可能性のある一部の構成は、次のとおりです。
IP 振り分け規則
ipadm コマンドを使用して指定された IP 構成
Oracle Solaris 11 ゾーン
autopush 構成
リンク名を割り当てる場合は、次の規則に従ってください。
リンク名は、文字列と物理接続点 (PPA) 番号で構成する必要があります。
リンク名は、次の制約に従う必要があります。
名前は 3 文字から 8 文字までの間で構成されることが理想です。ただし、名前の最大文字数は 31 です。
名前のための有効な文字は、英数字 (a-z、0-9) とアンダースコア (_) です。
![]() | 注意 - リンク名には大文字を使用しないでください。 |
各データリンクに割り当てるリンク名は、一度に 1 つだけにする必要があります。
各データリンクには、システム内で一意のリンク名を割り当てる必要があります。
リンク名を割り当てるときに、ネットワーク設定内のリンクの機能が役立つリファレンスになる場合があります。たとえば、netmgt0 をネットワーク管理専用のリンクにすることができます。Upstream2 を ISP に接続するリンクにすることができます。混乱を回避するための一般的な規則として、既知のデバイスの名前をリンクに割り当てることはしないでください。