dladm コマンドを使用して一般的なデータリンクプロパティーをカスタマイズすると、次の利点があります。
dladm コマンドは、ネットワークドライバプロパティーの構成に必要な唯一のコマンドインタフェースです。このコマンドは、ndd コマンドと driver.conf ファイルの変更を組み合わせて使用して、ドライバプロパティーを設定するという以前の使用法に代わるものです。
設定するプロパティーにかかわらず、次の一貫した構文が使用されます。
dladm subcommand properties datalink
dladm コマンドの使用は、ドライバの公開プロパティーと非公開プロパティーの両方に適用されます。
特定のドライバに対して dladm コマンドを使用しても、似たタイプのほかの NIC のネットワーク接続に支障が生じることはありません。したがって、データリンクのプロパティーを動的に構成できます。
データリンク構成の値は dladm リポジトリ内に格納され、システムのリブート後も永続します。
dladm コマンドをオプションなしで使用すると、システムのデータリンクに関する一般情報 (クラス、状態、およびベースとなる物理リンクを含む) が表示されます。
# dladm LINK CLASS MTU STATE OVER net0 phys 1500 unknown -- net1 phys 1500 up -- net2 phys 1500 unknown -- net3 phys 1500 unknown -- net4 phys 1500 up -- aggr0 aggr 1500 up net1,net4
データリンクは、物理リンク以外のさまざまなクラス (たとえば、リンクアグリゲーション、仮想 LAN (VLAN)、仮想 NIC (VNIC)) である可能性があります。これらのほかのデータリンクは、dladm コマンドで表示されるデフォルトの情報にも含まれます。たとえば、前の出力では、リンクアグリゲーション aggr0 は物理データリンク net1 と net4 上に構成されています。
リンクアグリゲーションと VLAN については、Oracle Solaris 11.3 でのネットワークデータリンクの管理を参照してください。VNIC については、Oracle Solaris 11.3 での仮想ネットワークとネットワークリソースの管理を参照してください。
dladm show-link コマンドを使用して、システム上の物理データリンクと仮想データリンクの両方を表示します。システムには、取り付けられた NIC と同じ数のデータリンクがあります。このコマンドでさまざまなオプションを使用して、表示される情報をカスタマイズできます。
追加のオプションや引数なしで使用する場合、dladm show-link コマンドは次の情報を表示します。
# dladm show-link LINK CLASS MTU STATE OVER net1 phys 1500 down -- net3 phys 1500 unknown -- net0 phys 1500 up -- net2 phys 1500 unknown -- net11 phys 1500 up -- net5 phys 1500 up -- net6 phys 1500 up --
前の出力では、STATE 列は仮想データリンクの現在の状態を示します。この状態は、up、down、unknown のいずれかになります。仮想データリンクの場合、NIC が複数の VNIC に分割されると、内部で仮想スイッチが暗黙的に作成されます。この仮想スイッチの作成により、物理データリンクが外部ネットワークに接続されていなくても、VNIC およびプライマリデータリンクが同一の VLAN 上に存在するかぎり、相互の通信が可能になります。この関係により、データリンクの仮想状態が形成されます。
–P オプションを使用して、データリンクに関する永続的な構成情報を表示します。このコマンドで表示された情報に基づいて、その後のネットワーク構成を進めることができます。たとえば、システム上の NIC の数を決定したり、IP インタフェースを構成するときに使用するデータリンクを選択したりできます。このコマンドを入力すると、表示される情報は次の例のようになります。
# dladm show-link -P LINK CLASS OVER net0 phys -- net1 phys -- net2 phys --
前の例では、システムに、対応する物理 NIC に直接関連付けられた 3 つのデータリンクが表示されています。phys クラスに属するデータリンク上に構成された特殊なデータリンク (集積体や仮想 NIC など) は存在しません。
システムのデータリンクに関連付けられている物理 NIC に関する情報を表示するには、dladm show-phys コマンドを使用します。このコマンドをオプションなしで使用すると、次の例のような情報が表示されます。
# dladm show-phys LINK MEDIA STATE SPEED DUPLEX DEVICE net0 Ethernet up 100Mb full e1000g0 net1 Ethernet down 0Mb -- nge0 net2 Ethernet up 100Mb full bge0 net3 InfiniBand -- 0Mb -- ibd0
前の出力には、ほかの詳細とともに、汎用リンク名を持つデータリンクが関連付けられている物理 NIC が表示されています。たとえば、net0 は NIC e1000g0 のデータリンク名です。データリンクに設定されたフラグに関する情報を表示するには、–P オプションを使用します。たとえば、r というフラグが設定されたデータリンクは、そのベースとなる NIC が取り外されたことを意味します。
前の出力では、STATE 列は物理データリンクの現在の状態を示します。この状態は、up、down、unknown のいずれかになります。物理リンク状態は、物理デバイスに外部ネットワークとの接続があるかどうか (ケーブルが接続され、そのケーブルの反対側にあるポートの状態が up の場合は接続がある) を識別します。
–L オプションは、使用可能な別の有用なオプションです。このオプションは、各データリンクの物理的な場所を表示します。この場所によって、データリンクのインスタンス番号 (net0、net1 など) が決まります。
# dladm show-phys -L LINK DEVICE LOCATION net0 bge0 MB net2 ibp0 MB/RISER0/PCIE0/PORT1 net3 ibp1 MB/RISER0/PCIE0/PORT2 net4 eoib2 MB/RISER0/PCIE0/PORT1/cloud-nm2gw-2/1A-ETH-2
–m オプションを使用して、システム内の物理リンクの MAC アドレスを表示します。
# dladm show-phys -m LINK SLOT ADDRESS INUSE CLIENT net0 primary 0:11:22:a9:ee:66 yes net0
このコマンドは、ifconfig コマンドと同様に使用します。ifconfig(5) のマニュアルページを参照してください。
システム内のすべてのリンク (物理および物理以外) の MAC アドレスは次のように表示します。
# dladm show-linkprop -p mac-address LINK PROPERTY PERM VALUE EFFECTIVE DEFAULT POSSIBLE net0 mac-address rw 0:11:22:a9:ee:66 0:11:22:a9:ee:66 0:11:22:a9:ee:66 --
システムからデータリンクを削除するには、dladm delete-phys コマンドを使用します。このコマンドは、システムからレイヤー 2 コンポーネントのみを削除します。これには、物理データリンクや、アグリゲーション、VNIC、VLAN、フローなどのその他の L2 エンティティーが含まれます。レイヤー 3 構成 (IP インタフェースおよびアドレスなど) を削除するには、ipadm コマンドを使用します。IP インタフェース構成の削除または変更を参照してください。
データリンクの削除は、物理 NIC の削除と緩やかに結び付いています。たとえば、Oracle Solaris 10 から Oracle Solaris 11.3 への移行 の Oracle Solaris 10 ネットワークプロトコルスタックと Oracle Solaris 11 ネットワークプロトコルスタックの比較で説明されているように、システムから物理 NIC が削除された場合は、ソフトウェアレイヤーがハードウェアレイヤーにバインドされなくなるため、その NIC に関連付けられたデータリンク構成は残ります。したがって、そのデータリンクの名前をほかの NIC に関連付けられたリンクに割り当てることにより、別のベースとなる物理 NIC でこのデータリンク構成を引き続き使用できます。
NIC を交換せずに切り離し、そのデータリンク構成が不要になった場合は、次のようにしてデータリンクを削除できます。
# dladm delete-phys datalink
データリンクの名前を変更するには、dladm rename-link コマンドを使用します。Oracle Solaris システムでは、OS がすべてのデータリンクに対して自動的に汎用名を設定します。汎用データリンク名の詳細は、データリンク構成についてを参照してください。
これらの汎用名には、デフォルトで netn (net0、net1、net2 など) という命名形式が使用されます。OS がこれらの名前を管理しているため、通常の管理タスクの一部としてデータリンクの名前を変更することはありません。リンク名の変更が必要な手順については、あるネットワークデバイスから別のデバイスへ IP 構成を移動する方法を参照してください。
dlstat コマンドを使用して、すべてのデータリンクタイプのランタイムデータリンク統計を取得します。dlstat をオプションなしで単独で使用する場合、次の出力に示すように、システム上のすべてのデータリンクに関する統計情報が表示されます。
% dlstat LINK IPKTS RBYTES OPKTS OBYTES net0 58.00K 9.52M 5.61K 1.91M
dlstat コマンドの使用に関する詳細は、Oracle Solaris 11.3 での仮想ネットワークとネットワークリソースの管理 の 第 8 章, ネットワークトラフィックとリソース使用状況のモニタリングを参照してください。dlstat(1M) のマニュアルページも参照してください。