Oracle® VM Server for SPARC 3.3 管理ガイド

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更新: 2015 年 10 月
 
 

アクティブなドメインの移行

アクティブなドメインを移行するときは、移行元ドメイン、ソースマシン、およびターゲットマシンに対して特定の要件と制限があります。詳細については、ドメイン移行の制限を参照してください。


ヒント  - ソースマシンとターゲットマシンの両方のプライマリドメインに仮想 CPU をさらに追加することで、移行全体の時間を短縮できます。各 primary ドメインのコア全体を 2 個以上にすることをお勧めしますが、必須ではありません。

移行処理の間にドメインの「時間が遅れ」ます。このタイムロスの問題を軽減するには、移行元ドメインと、Network Time Protocol (NTP) サーバーなどの外部時間ソースを同期します。ドメインを NTP クライアントとして構成すると、ドメインの日時は移行が完了してからすぐに修正されます。

ドメインを Oracle Solaris 10 NTP クライアントとして構成するには、System Administration Guide: Network Services のManaging Network Time Protocol (Tasks)を参照してください。ドメインを Oracle Solaris 11 NTP クライアントとして構成する場合は、Introduction to Oracle Solaris 11 Network Services のManaging Network Time Protocol (Tasks)を参照してください。


注 - 移行の最後の中断フェーズで、ゲストドメインがわずかに遅延することがあります。特に、TCP のようにプロトコルに再試行メカニズムが含まれる場合、または NFS over UDP のようにアプリケーションレベルで再試行メカニズムが存在する場合、この遅延によって認識できるようなネットワーク通信の遅延が発生しないようにしてください。ただし、ゲストドメインが Routing Information Protocol (RIP) のようにネットワークの影響を受けやすいアプリケーションを実行する場合、操作を試みるとドメインでわずかな遅延や中断が発生することがあります。この遅延は、ゲストネットワークインタフェースが破損してしていて、中断フェーズ中に再作成されるときの短い期間に発生します。

CPU のドメイン移行要件

    次に、移行を実行する場合の CPU に対する要件および制限を示します。

  • ターゲットマシンには、移行元ドメインによって使用されている仮想 CPU の数に対応できる十分な空き仮想 CPU が存在する必要があります。

  • ゲストドメインの cpu-arch プロパティーにより、プロセッサの種類が異なるシステム間でドメインを移行できます。cpu-arch 値を変更するには、ゲストドメインがバウンドまたは非アクティブ状態である必要があります。

    サポートされる cpu-arch プロパティー値は次のとおりです。

    • native は CPU 固有のハードウェア機能を使用して、ゲストドメインが同じ CPU タイプのプラットフォーム間でのみ移行できるようにします。nativeはデフォルト値です。

    • migration-class1 は、SPARC T4 以降の SPARC プラットフォーム用の CPU 間移行ファミリです。これらのプラットフォームでは、移行中と移行後のハードウェア暗号化をサポートするため、サポートされる CPU には下限があります。

      この値は、UltraSPARC T2、UltraSPARC T2 Plus、または SPARC T3 プラットフォーム、または Fujitsu M10 プラットフォーム とは互換性がありません。

    • sparc64-class1 は、SPARC64 プラットフォーム用の CPU 間移行ファミリです。sparc64-class1 値は SPARC64 の命令に基づいているため、generic 値より多い命令数が含まれています。そのため、generic 値に比べてパフォーマンスに影響しません。

      この値は Fujitsu M10 サーバー とのみ互換性があります。

    • generic はすべてのプラットフォームで使用される最低レベルの一般的な CPU ハードウェア機能を使用して、ゲストドメインが CPU タイプに依存しない移行を実行できるようにします。

    次の isainfo -v コマンドは、cpu-arch=generic のとき、および cpu-arch=migration-class1 のときに、システムで使用可能な命令を示します。

    • cpu-arch=generic

      # isainfo -v
      64-bit sparcv9 applications
              asi_blk_init vis2 vis popc
      32-bit sparc applications
              asi_blk_init vis2 vis popc v8plus div32 mul32
    • cpu-arch=migration-class1

      # isainfo -v
      64-bit sparcv9 applications
              crc32c cbcond pause mont mpmul sha512 sha256 sha1 md5
              camellia des aes ima hpc vis3 fmaf asi_blk_init vis2
              vis popc
      32-bit sparc applications
              crc32c cbcond pause mont mpmul sha512 sha256 sha1 md5
              camellia des aes ima hpc vis3 fmaf asi_blk_init vis2
              vis popc v8plus div32 mul32

    generic 値を使用すると、native 値の使用と比較して、ゲストドメインのパフォーマンスが低下する場合があります。パフォーマンスの低下は、ゲストドメインが特定の CPU のネイティブハードウェア機能を使用する代わりに、すべてのサポートされている CPU タイプで使用可能な汎用 CPU 機能のみを使用するため、発生する可能性があります。これらの機能を使用しないことで、generic 値により、さまざまな機能をサポートする CPU を使用するシステム間で、ドメインのマイグレーションの柔軟性が得られます。

    SPARC T4 以上のシステム間でドメインを移行する場合、cpu-arch=migration-class1 を設定して、ゲストドメインのパフォーマンスを向上させることができます。パフォーマンスは generic 値の使用によって向上しますが、native 値もゲストドメインの最適なパフォーマンスを実現します。

    cpu-arch プロパティーが native に設定されているときに psrinfo -pv コマンドを使用すると、次のようにプロセッサタイプを判断できます。

    # psrinfo -pv
    The physical processor has 2 virtual processors (0 1)
      SPARC-T5 (chipid 0, clock 3600 MHz)

    cpu-arch プロパティーが native 以外の値に設定されている場合、psrinfo -pv の出力にはプラットフォームタイプが表示されません。代わりに、このコマンドは sun4v-cpu CPU モジュールがロードされていることを示します。

    # psrinfo -pv
    The physical processor has 2 cores and 13 virtual processors (0-12)
      The core has 8 virtual processors (0-7)
      The core has 5 virtual processors (8-12)
        sun4v-cpu (chipid 0, clock 3600 MHz)

メモリーの移行要件

    ターゲットマシンのメモリー要件は次のとおりです。

  • ドメインの移行に対応できる十分な空きメモリー

  • 空きメモリーは互換性のあるレイアウトで使用できる必要がある

互換性要件は、SPARC プラットフォームごとに異なります。ただし、少なくとも、サポートされる最大ページサイズを基準にした実アドレスと物理アドレスの配置が、移行されるドメイン内のメモリーブロックごとに保持されている必要があります。

ターゲットマシンでサポートされる最大ページサイズを確認するには、pagesize commmand を使用します。

少なくとも Oracle Solaris 11.3 OS を実行しているゲストドメインの場合は、移行されるドメインが小さい使用可能な空きメモリーブロックに収まるように、移行されるドメインのメモリーブロックが移行中に自動的に分割される可能性があります。メモリーブロックは、最大ページサイズに整列された境界でのみ分割できます。

オペレーティングシステム、ファームウェア、またはプラットフォームのその他のメモリーレイアウト要件によって、特定の移行中のメモリーブロックの分割が妨げられることがあります。この状況により、ドメインで使用可能な空きメモリーの合計容量が十分な場合でも移行が失敗する可能性があります。

物理 I/O デバイスの移行要件

物理デバイスに直接アクセスするドメインは移行できません。たとえば、I/O ドメインは移行できません。ただし、物理デバイスが関連付けられているデバイスは移行できます。

詳細については、PCIe エンドポイントデバイスの移行要件および PCIe SR-IOV 仮想機能の移行要件を参照してください。

仮想 I/O デバイスの移行要件

    移行元ドメインによって使用されるすべての I/O サービスが、ターゲットマシン上で使用できる必要があります。つまり、次に示す状態になっている必要があります。

  • 移行元ドメインで使用されている各仮想ディスクバックエンドが、ターゲットマシンで定義されている必要があります。この共有ストレージは、SAN ディスク (NFS または iSCSI プロトコルを介して使用可能なストレージ) にすることができます。定義する仮想ディスクバックエンドは、ソースマシンと同じボリュームおよびサービス名である必要があります。バックエンドへのパスはソースマシンとターゲットマシンで異なる場合がありますが、同じバックエンドを参照している必要があります


    Caution

    注意  - ソースマシンとターゲットマシンで仮想ディスクバックエンドへのパスが同じストレージを参照していなくても、移行は成功します。ただし、ターゲットマシンでのドメインの動作は予測不能になり、ドメインを使用できない可能性があります。この問題を解決するには、ドメインを停止し、構成の問題を修正してから、ドメインを再起動します。これらの手順を実行しない場合、ドメインは矛盾した状態のままになる可能性があります。


  • 移行元ドメインの各仮想ネットワークデバイスには、対応する仮想ネットワークスイッチがターゲットマシン上に必要です。各仮想ネットワークスイッチの名前は、ソースマシンでデバイスが接続されている仮想ネットワークスイッチと同じである必要があります。

    たとえば、移行元ドメインの vnet0switch-y という名前の仮想スイッチサービスに接続されている場合、ターゲットマシン上のドメインは、switch-y という名前の仮想スイッチサービスを提供する必要があります。


    注 - 移行先ドメインが必要なネットワークリソースにアクセスできるように、ターゲットマシン上の物理ネットワークが正しく構成されている必要があります。正しく設定されていない場合、一部のネットワークサービスが移行完了後のドメインで使用できなくなる可能性があります。

    たとえば、ドメインが正しいネットワークサブネットに確実にアクセスできる必要があるような場合です。また、ドメインがターゲットマシンから必要なリモートシステムに到達できるよう、ゲートウェイ、ルーター、またはファイアウォールを適切に構成することが必要な場合もあります。


    移行元ドメインによって使用されていた、自動的に割り当てられる範囲内の MAC アドレスは、ターゲットマシンで使用可能である必要があります。

  • 仮想コンソール端末集配信装置 (vcc) サービスがターゲットマシン上に存在し、1 つ以上のポートが空いている必要があります。移行時には明示的なコンソール制約は無視されます。移行先ドメイン名をコンソールグループとして使用し、制御ドメインで使用可能な任意の vcc デバイスで使用可能なポートを使用して、移行先ドメインのコンソールが作成されます。制御ドメインで使用可能なポートがない場合は、サービスドメインで使用可能な vcc デバイスで使用可能なポートを使用して、コンソールが作成されます。デフォルトのグループ名との間に衝突がある場合、移行は失敗します。

  • 移行されるドメインによって使用されている各仮想 SAN がターゲットマシンで定義されている必要があります。

PCIe エンドポイントデバイスの移行要件

PCIe エンドポイントデバイスが構成されている I/O ドメインでは、ドメインの移行を実行できません。

直接 I/O 機能については、Creating an I/O Domain by Assigning PCIe Endpoint Devicesを参照してください。

PCIe SR-IOV 仮想機能の移行要件

PCIe SR-IOV 仮想機能が構成されている I/O ドメインでは、ドメインの移行を実行できません。

SR-IOV 機能の詳細については、Chapter 7, PCIe SR-IOV 仮想機能の使用による I/O ドメインの作成を参照してください。

NIU ハイブリッド I/O の移行要件

NIU ハイブリッド I/O リソースを使用するドメインを移行できます。NIU ハイブリッド I/O リソースを指定する制約は、ドメインの必須要件ではありません。使用可能な NIU リソースが存在しないマシンにこのようなドメインを移行した場合、制約は維持されますが、この制約が満たされることはありません。

SR-IOV が使われるようになって NIU Hybrid I/O 機能は非推奨になりました。Oracle VM Server for SPARC 3.3 は、この機能を含む最後のソフトウェアリリースです。

暗号化装置の移行要件

暗号化装置のあるプラットフォームで、暗号化装置がバインドされているゲストドメインが暗号化装置の動的再構成 (DR) をサポートしているオペレーティングシステム上で実行されている場合は、そのゲストドメインを移行できます。

移行の開始時に、Logical Domains Manager は移行元ドメインが暗号化装置の DR をサポートしているかどうかを判定します。サポートされている場合、Logical Domains Manager はドメインからすべての暗号化装置の削除を試みます。移行の完了後、移行したドメインに暗号化装置が再度追加されます。


注 - ターゲットマシンで暗号化装置の制約を満たすことができない場合でも、移行処理はブロックされません。このような場合、移行先ドメインの暗号化装置の数が移行処理前よりも減少する可能性があります。

アクティブなドメインの遅延再構成

ソースマシンまたはターゲットマシン上でアクティブな遅延再構成処理が実行されている場合、移行を開始できません。移行の進行中に、遅延した再構成操作を開始することは許可されません。

アクティブなドメインで電源管理のエラスティックポリシーが有効にされている場合のマイグレーション

ソースマシンとターゲットマシンのいずれかで電源管理 (PM) のエラスティックポリシーが有効になっている場合に、ライブ移行を実行できます。

ほかのドメインの操作

マシンでの移行が完了するまで、移行中のドメインの状態や構成が変更される可能性がある操作はブロックされます。ドメイン自体に対するすべての操作のほか、マシン上のほかのドメインに対するバインドや停止などの操作もブロックされます。

OpenBoot PROM からまたはカーネルデバッガで実行中のドメインの移行

ドメインの移行を実行するには、Logical Domains Manager と、移行元ドメインで実行している Oracle Solaris OS の間の調整が必要です。移行元ドメインが OpenBoot またはカーネルデバッガ (kmdb) で実行中の場合、この調整は不可能です。その結果、移行の試みは失敗します。

移行されるドメインが OpenBoot で実行されている場合は、次のメッセージが表示されます。

primary# ldm migrate ldg1 system2
Migration is not supported while the domain ldg1 is in the 'OpenBoot Running' state
Domain Migration of LDom ldg1 failed

移行されるドメインがカーネルデバッガ (kmdb) で実行されている場合は、次のメッセージが表示されます。

primary# ldm migrate ldg1 system2
Migration is not supported while the domain ldg1 is in the 'Solaris debugging' state
Domain Migration of LDom ldg1 failed