電源管理 (PM) を有効にするには、まず Oracle Integrated Lights Out Manager (ILOM) 3.0 ファームウェアで PM ポリシーを設定する必要があります。このセクションでは、Oracle VM Server for SPARC ソフトウェアで PM を使用するために必要な情報をまとめます。
ILOM の詳細については、次のドキュメントを参照してください。
『Oracle Integrated Lights Out Manager (ILOM) 3.0 CLI 手順ガイド』の「消費電力のモニタリング」
『Oracle Integrated Lights Out Manager (ILOM) 3.0 機能更新およびリリースノート』
電源ポリシーは任意の時点でのシステムの電力使用量を管理します。ベースとなるプラットフォームに PM 機能が実装されていれば、次の電源ポリシーがサポートされます。
無効。システムは、使用可能なすべての電力を使用できます。
パフォーマンス。パフォーマンスにわずかな影響しか与えない次の PM 機能を 1 つ以上有効にします。
CPU コアの自動無効化
CPU クロックサイクルのスキップ
CPU の動的な電圧および周波数スケーリング (DVFS)
コヒーレンシリンクのスケーリング
Oracle Solaris Power Aware Dispatcher (PAD)
エラスティック。パフォーマンスのセクションで説明した PM 機能を使用して、現在の使用率レベルに合うようにシステムの電力使用量を調整します。たとえば、リソースの使用率が低いと、電力状態も引き下げられます。
PM の機能は次のとおりです。
CPU コアの自動的な無効化。エラスティックまたはパフォーマンスのポリシーが有効になっている場合、CPU コアのすべてのハードウェアスレッド (ストランド) がドメインにバインドされていないときに、Logical Domains Manager によってそのコアが自動的に無効化されます。この機能は、UltraSPARC T2、UltraSPARC T2 Plus、SPARC T3、および SPARC T4 プラットフォームでのみ使用できます。
CPU クロックサイクルのスキップ。エラスティックポリシーが有効な場合、Logical Domains Manager は、ドメインにバインドされている次の CPU リソースで命令を実行するクロックサイクル数を自動的に調整します。
プロセッサ (Oracle Solaris 10 または Oracle Solaris 11 OS を実行する SPARC T3 または SPARC T4)
コア (Oracle Solaris 10 OS を実行するドメイン上の SPARC M5 のみ)
コアのペア (Oracle Solaris 10 OS を実行するドメイン上の SPARC T5 または SPARC M6 のみ)
SPARC キャッシュクラスタ (SCC) (Oracle Solaris 10 OS を実行するドメイン上の SPARC T7 シリーズサーバーおよび SPARC M7 サーバーのみ)
プロセッサ、コア、コアのペア、または SCC にバインドされたストランドがない場合、Logical Domains Manager はサイクルスキッピングも適用します。
CPU の動的な電圧および周波数スケーリング (DVFS)。 エラスティックポリシーが有効な場合、Logical Domains Manager は、Oracle Solaris 10 OS を実行しているドメインにバインドされているプロセッサまたは SCC のクロック周波数を自動的に調整します。Logical Domains Manager は、バインドされたストランドがない SPARC T5、SPARC M5、および SPARC M6 プロセッサのクロック周波数も低下します。SPARC T7 シリーズサーバーでは、クロック周波数は SCC で削減されます。この機能は、SPARC T5 サーバー、SPARC T7 シリーズサーバー、SPARC M5 サーバー、SPARC M6 サーバー、および SPARC M7 シリーズサーバーでのみ使用できます。
コヒーレンシリンクのスケーリング。 エラスティックポリシーが有効な場合、Logical Domains Manager は、使用中のコヒーレンシリンク数を自動的に調整するようにハイパーバイザに指示します。この機能は、SPARC T5-2 システムでのみ使用できます。
電力の制限。 SPARC T3 サーバー、SPARC T4 サーバー、SPARC T5 サーバー、SPARC T7 シリーズサーバー、SPARC M5 サーバー、SPARC M6 サーバー、および SPARC M7 シリーズサーバーでは、システムの消費電力を制限するための電力の制限を設定できます。消費電力が電力の制限を超えている場合、PM は電力を削減する手法を使用します。ILOM サービスプロセッサ (SP) を使用して、電力の制限を設定できます。
次のドキュメントを参照してください。
『Oracle Integrated Lights Out Manager (ILOM) 3.0 CLI 手順ガイド』
『Oracle Integrated Lights Out Manager (ILOM) 3.0 機能更新およびリリースノート』
ILOM インタフェースを使用して、電力の制限、猶予期間、および制限を超えた場合の動作を設定できます。電力の制限を超えた期間が猶予期間よりも長くなった場合、制限を超えた場合の動作が実行されます。
現在の消費電力が電力の制限を超えている場合、CPU の電力状態の引き下げが試みられます。消費電力が電力の制限以下に低下すると、それらのリソースの電力状態を引き上げることが許可されます。システムでエラスティックポリシーが有効にされている場合、リソースの電力状態の引き上げは使用レベルによって引き起こされます。
Solaris Power Aware Dispatcher (PAD)。Oracle Solaris 11.1 OS を実行しているゲストドメインは、SPARC T5 サーバー、SPARC T7 シリーズサーバー、SPARC M5 サーバー、SPARC M6 サーバー、および SPARC M7 シリーズサーバー上で Power Aware Dispatcher (PAD) を使用して、アイドル状態のリソースや使用率が低いリソースの消費電力を最小限に抑えます。PAD は、Logical Domains Manager の代わりに、CPU または SCC クロックサイクルのスキップレベルおよび DVFS レベルを調整します。
ILOM 3.0 ファームウェアの CLI を使用して電源ポリシーを構成する手順については、『Oracle Integrated Lights Out Manager (ILOM) 3.0 CLI 手順ガイド』の「消費電力のモニタリング」を参照してください。
電源管理 (PM) 可観測性モジュールおよび ldmpower コマンドを使用すると、ドメインの CPU スレッドの消費電力データを表示できます。
ldmd/pm_observability_enabled サービス管理機能 (SMF) プロパティーが true に設定されているため、PM 可観測性モジュールはデフォルトで有効にされています。ldmd(1M) マニュアルページを参照してください。
ldmpower コマンドには、消費電力レポートデータをカスタマイズできる次のオプションとオペランドがあります。
ldmpower [-ehiprstvx | -o hours | -m minutes] | -c resource [-l domain-name[,domain-name[,...]]] [interval [count]]
オプションについては、ldmpower(1M) マニュアルページを参照してください。
このコマンドを非特権ユーザーとして実行するには、LDoms Power Mgmt Observability 権利プロファイルが割り当てられている必要があります。すでに LDoms Management または LDoms Review 権利プロファイルが割り当てられている場合、ldmpower コマンドを実行するためのアクセス権が自動的に付与されます。
Oracle VM Server for SPARC で権利がどのように使われているかについては、Logical Domains Manager プロファイルの内容を参照してください。
これらの権利プロファイルは、ユーザー、またはその後ユーザーに割り当てられる役割に、直接割り当てることができます。これらのプロファイルのいずれかがユーザーに直接割り当てられている場合、CPU スレッドの消費電力データを表示するために ldmpower コマンドを正常に使用するには、pfexec コマンド、または pfbash または pfksh などのプロファイルシェルを使用する必要があります。権利の使用による論理ドメインの管理の委任を参照してください。
次の例では、PM 可観測性モジュールを有効にする方法と、ドメインに割り当てられている CPU の消費電力データを収集する方法を示します。
使用例 20-1 電源管理可観測性モジュールの有効化次のコマンドでは、ldmd/pm_observability_enabled プロパティーが現在 false に設定されている場合に true に設定することによって、PM 可観測性モジュールを有効にします。
# svccfg -s ldmd setprop ldmd/pm_observability_enabled=true # svcadm refresh ldmd # svcadm restart ldmd使用例 20-2 役割および権利プロファイルを使用したプロファイルシェルによる CPU スレッドの消費電力データの取得
次の例では、LDoms Power Mgmt Observability 権利プロファイルによって、ldmpower 役割を作成する方法を示します。この役割により、ldmpower コマンドの実行が許可されます。
primary# roleadd -P "LDoms Power Mgmt Observability" ldmpower primary# passwd ldmpower New Password: Re-enter new Password: passwd: password successfully changed for ldmpower
このコマンドは、sam ユーザーに ldmpower 役割を割り当てます。
primary# usermod -R ldmpower sam
ユーザー sam は ldmpower 役割を前提とし、ldmpower コマンドを使用できます。たとえば、次のように表示されます。
$ id uid=700299(sam) gid=1(other) $ su ldmpower Password: $ pfexec ldmpower Processor Power Consumption in Watts DOMAIN 15_SEC_AVG 30_SEC_AVG 60_SEC_AVG primary 75 84 86 gdom1 47 24 19 gdom2 10 24 26
次の例は、権利プロファイルを使用して ldmpower コマンドを実行する方法を示しています。
権利プロファイルをユーザーに割り当てます。
primary# usermod -P +"LDoms Power Mgmt Observability" sam
次のコマンドは、ユーザーが sam であり、All、Basic Solaris User、および LDoms Power Mgmt Observability 権利プロファイルが有効であることを確認する方法を示しています。
$ id uid=702048(sam) gid=1(other) $ profiles All Basic Solaris User LDoms Power Mgmt Observability $ pfexec ldmpower Processor Power Consumption in Watts DOMAIN 15_SEC_AVG 30_SEC_AVG 60_SEC_AVG primary 75 84 86 gdom1 47 24 19 gdom2 10 24 26
次の例に、ldmpower を使用して、ドメインのプロセッサ消費電力データを報告する方法を示します。
次のコマンドは、すべてのドメインについて、15 秒、30 秒、60 秒のプロセッサの移動平均消費電力データを表示します。
primary# ldmpower Processor Power Consumption in Watts DOMAIN 15_SEC_AVG 30_SEC_AVG 60_SEC_AVG primary 75 84 86 gdom1 47 24 19 gdom2 10 24 26
次のコマンドは、すべてのドメイン (primary、gdom1、および gdom2) について、外挿消費電力データを表示します。
primary# ldmpower -x System Power Consumption in Watts DOMAIN 15_SEC_AVG 30_SEC_AVG 60_SEC_AVG primary 585/57.47% 701/68.96% 712/70.22% gdom1 132/12.97% 94/9.31% 94/9.30% gdom2 298/29.27% 218/21.47% 205/20.22%
次のコマンドは、gdom2 および gdom5 ドメインについて、プロセッサの瞬間消費電力データを表示します。10 秒ごとに 5 回データを報告します。
primary# ldmpower -itl gdom2,gdom5 10 5 Processor Power Consumption in Watts DOMAIN TIMESTAMP INSTANT gdom2 2013.05.17 11:14:45 13 gdom5 2013.05.17 11:14:45 24 gdom2 2013.05.17 11:14:55 18 gdom5 2013.05.17 11:14:55 26 gdom2 2013.05.17 11:15:05 9 gdom5 2013.05.17 11:15:05 16 gdom2 2013.05.17 11:15:15 15 gdom5 2013.05.17 11:15:15 19 gdom2 2013.05.17 11:15:25 12 gdom5 2013.05.17 11:15:25 18
次のコマンドは、すべてのドメインについて、最近 12 時間の平均消費電力データを表示します。データは最後にリクエストされた 1 時間ごとの計算から 1 時間の間隔で表示されます。
primary# ldmpower -eto 12 Per domain MINIMUM and MAXIMUM power consumption ever recorded: primary 2013.05.17 08:53:06 3 Min Processors primary 2013.05.17 08:40:44 273 Max Processors gdom1 2013.05.17 09:56:35 2 Min Processors gdom1 2013.05.17 08:53:06 134 Max Processors gdom2 2013.05.17 10:31:55 2 Min Processors gdom2 2013.05.17 08:56:35 139 Max Processors primary 2013.05.17 08:53:06 99 Min Memory primary 2013.05.17 08:40:44 182 Max Memory gdom1 2013.05.17 09:56:35 13 Min Memory gdom1 2013.05.17 08:53:06 20 Max Memory gdom2 2013.05.17 10:31:55 65 Min Memory gdom2 2013.05.17 08:56:35 66 Max Memory Processor Power Consumption in Watts 12 hour's worth of data starting from 2013.05.16 23:17:02 DOMAIN TIMESTAMP 1 HOUR AVG primary 2013.05.17 09:37:35 112 gdom1 2013.05.17 09:37:35 15 gdom2 2013.05.17 09:37:35 26 primary 2013.05.17 10:37:35 96 gdom1 2013.05.17 10:37:35 12 gdom2 2013.05.17 10:37:35 21 primary 2013.05.17 11:37:35 85 gdom1 2013.05.17 11:37:35 11 gdom2 2013.05.17 11:37:35 23 ...