Oracle® VM Server for SPARC 3.3 管理ガイド

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更新: 2015 年 10 月
 
 

Oracle VM Server for SPARC テンプレートのライフサイクル

このセクションでは、テンプレート作成プロセスの各段階、実行されるアクション、および Oracle VM Server for SPARC テンプレートユーティリティーを使用してこのプロセスを支援する方法について説明します。


注 - アプリケーションや初回ブートスクリプトを使用したテンプレートの作成および開発は繰り返しのプロセスです。ソースコード管理システムを使用してスクリプトとプロパティーを管理することにより、構成のすべての側面を同期させるように注意してください。

    次に、テンプレート作成プロセスの各段階、実行されるアクション、および Oracle VM Server for SPARC テンプレートユーティリティーを使用してこのプロセスを支援する方法について説明します。

  1. テンプレートの作成。事前に作成された汎用のテンプレートを使用できますが、既存のドメインからカスタムテンプレートを作成できます。このドメインには、必要なすべてのオペレーティングシステムコンポーネント、アプリケーションソフトウェア、およびその他のユーティリティーが完全にインストールされている必要があります。

    この環境は通常、環境を完成させるために必要なアクションがごく少数になるように、できるだけ完全に構成されます。メモリー、仮想 CPU、仮想ネットワーク、ディスクなどのすべてのドメイン設定に、必要とする配備が反映されているようにしてください。

    この段階では、1 つまたは複数の「初回ブート」スクリプトを作成します。これらのスクリプトは、指定したプロパティーに基づいて最終的な構成を実行する環境に含めます。これらのプロパティーは必ず、テンプレートごとの README ファイルに記録し、説明を加えるようにしてください。


    注 - いずれかの初回ブートスクリプトがドメイン変数にアクセスする場合は、ゲストドメインに ovmtprop ユーティリティーがインストールされていることを確認してください。
  2. テンプレートの作成。テンプレートを作成する前に、ソースドメインの環境が確実に未構成の状態であるようにして、規定されたアクション (初回ブートスクリプトの一部である場合が多い) によってあとで構成できるようにします。

      たとえば、次の手順を実行します。

    • アプリケーション固有の構成をすべて削除し、あとで再作成されるようにします。

    • 構成ファイルのデフォルト値を使用します。

    • システム名、ネットワーク構成、パスワードなどの Oracle Solaris OS 構成情報をすべてリセットするようにしてください。これらの構成情報は、プロパティー値や構成スクリプトによってあとで指定されます。

    • ルートファイルシステム以外の zpool をすべてエクスポートして、新しいドメインで認識できるようにします。

    これらの手順を実行したら、ドメインを停止し、ovmtcreate ユーティリティーを実行して、そのドメインからテンプレートを作成できます。

  3. テンプレートの名前の指定。次の形式を使用します。

    technology.OS.application.architecture.build.ova

    たとえば、次のテンプレート名は、SPARC プラットフォーム上で Oracle Solaris 11.2 OS のビルド 2 を実行し、WebLogic サーバーのバージョン 12.1.2 を実行するドメインに対するものです: OVM_S11.2_WLS12.1.2_SPARC_B2.ova

  4. テンプレートの配布。このテンプレートは、.ova の拡張子を持つ 1 つのファイルです。このファイルには、配備に必要な圧縮されたディスクイメージとメタデータが含まれています。このテンプレートにはまた、ペイロードファイルチェックサムのマニフェストファイルも含まれています。これは、配布以降に内容が変更されていないことを検証するための全体的なアーカイブチェックサムと結合されている場合があります。

    Web ベースのサービスを使用してテンプレートを配布することも、テンプレートを複製する代わりに中央リポジトリを保持することもできます。

  5. テンプレートの配備。テンプレートにはソースドメインによって認識されるシステムの側面のみが取得されるため、テンプレートの配備をサポートするにはどのサービスが存在している必要があるかを理解する必要があります。

      必要なサービスには次のものが含まれます。

    • テンプレートからの仮想ネットワークが接続される可能性のある適切なインタフェースへの 1 つまたは複数の仮想スイッチ

    • 仮想ディスクサービス

    • コンソールサービス

    • テンプレートの要件に対応できる十分な仮想 CPU およびメモリー

    ovmtdeploy ユーティリティーはこれらの設定の多くをオーバーライドできますが、テンプレートで提供される最小値がベースライン要件を表します。

    ovmtdeploy ユーティリティーを使用すると、仮想ディスクを自動的に抽出し、圧縮解除して配備ディレクトリにコピーしたり、テンプレートに記述されているさまざまな仮想デバイスを構築したりできます。

    この時点でドメインを起動できますが、ドメインが完全に機能するには、ドメインコンソールを使用して手動の構成手順をいくつか実行することが必要になる可能性があります。

  6. ドメインの自動的な構成。テンプレートによって作成されたドメインの構成は、いくつかのタイプのアクションで構成されます。たとえば、初回ブートスクリプトに構成対象の情報を提供するために、プロパティーの名前と値のペアを指定することがあります。また、ドメインのファイルシステムに対して構成ファイルのコピーなどのアクションを実行するために、仮想ディスクを制御ドメインにバックマウントすることもあります。

    ovmtconfig ユーティリティーはこれらのドメイン構成アクティビティーを自動化し、1 つまたは複数のコマンドスクリプトやプロパティーファイルを指定することにより、実行するアクションやドメインを構成するために使用するプロパティーを指定できるようにします。

    Oracle Solaris OS を構成するために、ovmtconfig ユーティリティーはドメインのルートファイルシステムをバックマウントし、指定された構成スクリプトやプロパティーから sc_profile.xml ファイルを作成します。このプロファイルにより、Oracle Solaris OS は最初のブート時に自身を構成できます。

  7. 最初の構成。Oracle Solaris OS が正常に構成され、最初のブートが終了したら、インストールされているアプリケーションをすべて構成する必要があります。構成フェーズ中に、ovmtconfig ユーティリティーは、次のいずれかの方法を使用して配備対象のドメインに構成情報を渡します。

    • 直接のアクション – ovmtconfig ユーティリティーは、ゲストドメインのファイルシステムを制御ドメインにバックマウントし、ファイルおよびファイルシステムに対して直接のアクションを実行します。これらのアクションには、構成ファイルの作成やシステムバイナリのコピーが含まれることがあります。これらのアクションは、ovmtconfig ユーティリティーに指定したスクリプトに記述されています。

      ゲストドメイン内で実行されるように設計されているプロセスは、制御ドメインに影響を与える可能性があるため、通常これらのアクションには含まれません。実行するコマンドを指定するには、ovmtconfig -c コマンドを使用します。

    • ドメイン変数 –ローカルプロパティーファイルに加えて、制御ドメインで ovmtconfig ユーティリティーを実行することにより、あとでゲストドメインで ovmtprop ユーティリティーが使用できるドメイン変数を設定できます。この方法を使用すると、構成が完了したあとに初回ブートスクリプトがこれらのプロパティーに直接アクセスし、ゲストドメインに直接構成情報を提供できます。


      Caution

      注意  - ドメインにパスワードなどの機密情報を渡すために、暗号化されていないプロパティーを使用しないでください。Oracle Solaris OS を構成するために使用されるもの以外のプロパティーは、ldm 変数として平文でドメインに渡されます。これらのプロパティー値は、ldm コマンドの実行を承認されている制御ドメイン上のユーザー、および配備されたドメインにログインしているユーザーに表示されます。 この問題を回避するには、ゲストドメインを配備し、アプリケーションが完全に構成されたあとにドメイン変数を手動で削除します。 ドメイン変数の前には OVMTVAR_ID の文字列が付加されます。ここで、ID は 4 桁です。次の例は、システムのネットマスクに対するドメイン変数宣言を示しています: OVMTVAR_1006=ovmt.prop.key.com.oracle.solaris.network.netmask.0=24。 制御ドメインから、ldm list-variable | grep OVMTVAR_ コマンドを使用してドメイン変数を一覧表示します。次に、ldm remove-variable OVMTVAR_ID コマンドを使用して、機密情報を含む変数をすべて削除します。


      たとえば、ゲストで ovmtprop を実行するスーパーバイザースクリプトを使用し、制御ドメインから ovmtconfig -v を実行することによって、ネットワークにアクセスできない構成の側面の変更を自動化できます。

    この時点で、このドメインは完全に構成され、動作可能になります。