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Oracle® ZFS Storage Appliance 管理ガイド、Release OS8.8.x

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更新: 2021 年 8 月
 
 

複数ターゲット逆転

ソースがプロジェクトを複数のターゲットにレプリケートするように構成された障害回復設定では、ターゲットのいずれかで逆転が実行された場合、複数ターゲット逆転機能によって、新しいソースから最初に構成されたほかのすべてのターゲットに引き続き増分更新を送信する機能が提供されます。

基本設定

一般的な複数ターゲット逆転設定は、次のエンティティーで構成されます。

  • ソース - レプリケーション更新の送信とスナップショット管理の実行を担当するレプリケーションソース。ソースは 1 つのみとする必要があります。

  • 潜在的ソース - 潜在的ソースは、増分レプリケーション更新 (およびスナップショット管理などのほかのタスク) をすべてのターゲットに送信するジョブを引き継ぐ必要のある複数ターゲット逆転構成のレプリケーションターゲットです。潜在的ソースは 1 つ以上とする必要があります。

  • 専用ターゲット - 専用ターゲットは、逆転操作を実行できない複数ターゲット逆転構成のレプリケーションターゲットです。専用ターゲットに必要なスナップショットは、潜在的ソースよりも少なくなります。古いバージョンのソフトウェアが実行されているアプライアンスは、複数ターゲット逆転設定の専用ターゲットとして構成できます。専用ターゲットは、複数ターゲット逆転設定に配置することも配置しないこともできます。

  • 複数ターゲット逆転グループ - 潜在的ソースのいずれかで逆転を実行できる同じデータセットに対するレプリケーションアクションのグループ。逆転のあと、新しいソースは、引き続き最初に構成されたすべてのターゲットに増分更新を送信できます。

次の図で、複数ターゲット逆転設定のこの例は、ソース (S)、3 つの潜在的ソース (PS1PS2PS3)、および専用ターゲット (DT1) で構成されています。ソースは、ターゲットへの更新の送信を担当します。ソースが停止すると、潜在的ソースの 1 つ (この場合は PS1) が新しいソースに選択されます。

image:複数ターゲット逆転グループ設定の図

次の図に示すように、この新しいソースで逆転が実行された場合、引き続きほかのターゲットに増分更新が送信されます。

image:新しいソースで逆転操作が実行された複数ターゲット逆転グループの図

複数ターゲット逆転グループの管理

複数ターゲットグループを作成するには、1 つ以上のプロジェクトレベルのアクションを潜在的ソースとして構成します。潜在的ソースがないと、複数ターゲット逆転グループは作成されません。どのターゲットでも逆転は許可されますが、逆転によって作成されるのは、元のソースに戻すようにレプリケートするレプリケーションアクションのみです。


注 -  複数ターゲット逆転の使用中、複数ターゲット逆転グループのアクションごとに複数のレプリケーションスナップショットを維持できます。

複数ターゲット逆転グループの作成

  1. 潜在的ソースを構成します。

    次の BUI の図に示すように、潜在的ソースは、プロジェクトレベルのレプリケーションアクションで構成できます。

    レプリケーションアクションの構成変更は、レプリケーション更新の一部として伝播されます。このような構成変更が複数ターゲットグループのすべてのメンバーに同時に配信されることは保証されません。

    image:BUI での潜在的ソースの構成の図
  2. レプリケーションターゲットの作成 (BUI)またはレプリケーションターゲットの作成 (CLI)の説明に従って、潜在的ソースでレプリケーションターゲットを作成します。

    潜在的ソースで逆転が実行されると、すべての元のターゲットに対するアクションが作成されます。潜在的ソースに構成されたレプリケーションターゲットがない場合、新しく作成されるアクションにレプリケーションターゲットは存在しません。したがって、これらの新しいアクションはバインドされません。あとで適切なレプリケーションターゲットが作成されると、バインドされていないアクションは正しいターゲットに自動的にバインドされます。


    注 -  ターゲットの IP アドレスは自動バインドプロセスによって使用されるため、元のソースで使用されているものと同じアプライアンスおよび同じ IP アドレスを対象にターゲットを作成する必要があります。

    CLI を使用したソースでのバインドされていないアクションの表示

    1. 適切なプロジェクトを選択します。

    2. そのプロジェクトの replication サブノードに移動します。

    3. 次の図に示すように、show コマンドを使用してアクションを表示します。バインドされていないアクションには <undefined> ターゲットがあります。

    image:CLI でソースのバインドされていないアクションを表示する場合の図

    BUI を使用したソースでのバインドされていないアクションの表示

    1. 適切なプロジェクトを選択します。

    2. 「レプリケーション」をクリックします。

    3. バインドされていないアクションには未定義のターゲット (<なし>) があります。

    image:BUI でソースのバインドされていないアクションを表示する場合の図

潜在的ターゲットのモニタリング

潜在的ソースのレプリケーションパッケージでは、潜在的ターゲットのリストが表示されます。逆転中に、元のソースに戻すようにレプリケートするアクションに加え、潜在的ターゲットに対するアクションが作成されます。リストには、対応するターゲットのターゲット名または IP アドレス、およびパッケージ ID が含まれます。

次の CLI の図に示すように、潜在的ターゲットをモニターできます。

image:CLI での潜在的ターゲットのモニタリングの図

次の BUI の図に示すように、潜在的ターゲットをモニターできます。

image:BUI での潜在的ターゲットのモニタリングの図

競合検出および解決

複数ターゲット逆転グループの次の図で、A はグループのソースです。

image:A がグループソースとなっている複数ターゲット逆転グループの図

任意の時点で複数ターゲット逆転グループに存在できるのは、1 つのソースのみです。次のシナリオに示すように、複数のソースが存在すると競合が発生する可能性があります。

  • 同じレプリケーションソースから更新を受信する 2 つ以上の潜在的ソースで逆転が実行されたときの管理エラーのため。

  • ネットワークセグメンテーションの際に、管理者は、それぞれ独自のソースを持つ複数の複数ターゲット逆転セグメントを作成するように選択できます。このようなネットワークセグメンテーションから回復したあとに、各複数ターゲット逆転セグメントのソースは、相互に更新を送信しようとして競合が発生します。

次の図に示すように、現在、A1B の 2 つのソースがあります。

image:A1 と B の 2 つのソースの図

ソースとターゲットでの競合の検出

  1. 次の図に示すように、2 つ以上のソースが同じターゲットに更新を送信しようとするとターゲットで競合が検出されます。このシナリオでは、1 つのソースからの更新が成功し、そのソースは引き続きターゲットに適切な更新を送信できます。ほかのソースからの更新は特定のアラート付きで失敗し、管理者に正しいソースを選択して競合を解決するように促す競合通知がターゲットに表示されます。競合が解決されると、ターゲットは、管理者が設定したソースから更新を受信します。ただし、正しくないソースが更新の送信を続けている場合、正しくないソースで新しいアラートが発生し、ターゲットで競合解決通知が再度発生します。

    image:ターゲットで検出された競合の図
  2. 次の図に示すように、一方のグループのソース (ノード B) が他方のグループのソース (ノード A1) に更新を送信すると競合が検出されます。送信側ノード (ノード B) の更新はアラート付きで失敗し、更新を受信するソース (ノード A1) には、管理者に正しいソースを選択して競合を解決するように促す競合通知が表示されます。競合が解決されると、正しくないソースは、次の更新でそのプロジェクトをパッケージに変換するため、ターゲットになります。

    image:一方のグループのソースが他方のグループのソースに更新を送信する場合に検出される競合の図

    注 -  ターゲットが正しくないソースから更新を受信すると、正しいソースからの最初の更新中にデータロールバックが実行される可能性があります。

    競合の原因となったソースで発生した CLI アラートの例:

    image:CLI で競合の原因となったソースで発生したアラートの図

    競合の原因となったソースで発生した BUI アラートの例:

    image:BUI で競合の原因となったソースで発生したアラートの図

競合を解決するための一般的な手順

  1. すべてのソースからの更新を無効にします。

  2. 正しいソースを選択します。

  3. ターゲットで、次の CLI または BUI のターゲット手順を使用して、正しいソースを設定することで競合を解決します。

  4. 正しくないソースで、次の CLI または BUI のソース手順を使用して、正しいソースを設定することで競合を解決します。

  5. 正しいソースからの更新を有効にします。


    注 -  1) ほかのソースからの更新によって、対応する競合通知が表示されます。

    2) 競合解決ツールには、情報は永続的に格納されません。なんらかの理由でノードが再起動すると、競合と解決の選択は破棄され、再起動の前に競合の原因となっていたソースからの更新では、競合通知が再度表示されます。


ターゲット: CLI を使用した競合の解決

  1. 適切なレプリケーションパッケージを選択し、プロジェクトに移動して replication を選択します。

  2. プロパティー conflict_detected の値を確認します。true の場合、競合が検出されたことを示します。

  3. 次の図に示すように、サブノード conflict に移動し、プロパティー source の値を正しいソースに設定して競合を解決します。

    image:CLI を使用した競合の解決 (ターゲット) の図

ターゲット: BUI を使用した競合の解決

  1. レプリケーションパッケージを選択します。

  2. 「レプリケーション」をクリックします。

    次の図に示すように、競合通知が表示されます。

    image:BUI での競合通知 (ターゲット) の図
  3. 次の図に示すように、競合通知をクリックしてレプリケーション競合解決のダイアログボックスを開きます。

    image:BUI でのレプリケーション競合解決のダイアログボックス (ターゲット) の図
  4. 正しいソースを選択して「適用」をクリックします。

    そのソースからの更新が成功するようになります。

ソース: CLI を使用した競合の解決

  1. 不適切に逆転されたプロジェクトを選択します。

  2. そのプロジェクトのサブノード replication に移動します。

  3. プロパティー conflict_detected の値を確認します。true の場合、競合が検出されたことを示します。

  4. 次の図に示すように、サブノード conflict に移動し、プロパティー source の値を正しいソースに設定して競合を解決します。

    これ以降、選択したソースからの更新によって、プロジェクトがレプリケーションパッケージに変換されます。

    image:CLI を使用した競合の解決 (ソース) の図

ソース: BUI を使用した競合の解決

  1. 正しくないソースで、意図しない逆転によって作成されたプロジェクトを選択します。

  2. 「レプリケーション」をクリックします。

    次の図に示すように、競合通知が表示されます。

    image:BUI での競合通知 (ソース) の図
  3. 次の図に示すように、競合通知をクリックしてレプリケーション競合解決のダイアログボックスを開きます。

    image:BUI でのレプリケーション競合解決のダイアログボックス (ソース) の図
  4. 正しいソースを選択して「適用」をクリックします。

    そのソースからの最初の更新によってプロジェクトがレプリケーションパッケージに変換され、そのソースからの更新に成功します。

互換性の考慮点

    複数ターゲット逆転を構成する場合、次の互換性規則に従ってください。

  • 複数ターゲット逆転をサポートするか、OS8.7.0 以降のファームウェアを実行しているターゲットのみを、複数ターゲット逆転グループのメンバーにすることができます。

  • 複数ターゲット逆転をサポートするターゲットのみを、潜在的ソースとして構成できます。

  • OS8.7.0 以降のファームウェアを実行しているターゲットのみを、複数ターゲット逆転グループの専用ターゲットとして構成できます。

    互換性に問題があると次の障害が発生します。このリストはすべてを列挙しているわけではありません。

  • 複数ターゲット逆転をサポートしていないターゲットに対するレプリケーションアクションに潜在的ソースを構成すると、エラーが発生します。

  • OS8.7.0 より古いファームウェアを実行しているターゲットに対する既存のレプリケーションアクションを持つデータセットに潜在的ソースを構成すると、エラーが発生します。

  • 既存の複数ターゲット逆転グループで OS8.7.0 より古いファームウェアを実行しているターゲットに対するレプリケーションアクションを構成すると、エラーが発生します。

  • 複数ターゲット逆転グループの一部であり、専用ターゲットとして構成されているが、OS8.8.6 より古いファームウェアを実行しているターゲットは、レプリケーション逆転を実行できます。ただし、そのソースに戻すようにレプリケーション更新を実行することはできません。このようなシナリオでは、レプリケーション関係を回復することはできません。

自動スナップショット保持の影響

自動スナップショット保持が複数ターゲット逆転設定の一部のターゲットに使用され、その他のターゲットに使用されていない場合、逆転のあとに、自動スナップショット保持の値を指定していないターゲットは、新しいソースと同じ数のスナップショットを保持しますが、これはターゲットが前に保持していた数とは異なる可能性があります。この状況を避けるには、複数ターゲットグループのターゲットごとに保持ポリシーを「independent」として構成します。詳細は、ターゲット上の自動スナップショット保持の構成 (BUI)またはターゲット上の自動スナップショット保持の構成 (CLI)を参照してください。

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