この例の目的は、クラスタのテイクオーバー、クラスタのフェイルバック、またはターゲットアプライアンスでの逆向きレプリケーションの実行後に、プロジェクトのレプリケーションが続行されるようにレプリケーションを正しく構成することです。
クラスタ化アプライアンスのレプリケーションを構成するときは、次のガイドラインに従ってください。
レプリケーションのソースアプライアンスとターゲットアプライアンスの両方が CLUSTERED 状態であることを確認します。詳細は、表 13 を参照してください。
レプリケーションのソースアプライアンスとターゲットアプライアンスでのレプリケーショントラフィックに使用するネットワークインタフェースと IP アドレスを選択します。
シングルトンネットワークインタフェースを選択します。プライベートネットワークインタフェースとは異なり、シングルトンネットワークインタフェースは、クラスタ内のいずれかのコントローラが失われたあとで、動作しているコントローラによってテイクオーバーされます。シングルトンインタフェースを使用すると、クラスタのテイクオーバーまたはフェイルバックの遷移後にレプリケーションは確実に正常に行われます。シングルトンインタフェースの詳細は、表 12を参照してください。
ソースアプライアンスで選択したネットワークインタフェースと、データのレプリケート元プールの両方を同じコントローラに割り当てます。これは、ソースクラスタが CLUSTERED 状態のときに常に当てはまります。
ターゲットクラスタの場合と同様に、ターゲットアプライアンスで選択したネットワークインタフェースと、データのレプリケート先プールの両方が、同じコントローラに割り当てられている必要があります。ターゲットクラスタが CLUSTERED 状態のときにレプリケーション構成が実行される場合に、この関連付けが保証されます。
ソースアプライアンスとターゲットアプライアンスは、選択したネットワークインタフェースと IP アドレスを使用して正常に通信できる必要があります。
レプリケーションの逆転のあとで、逆転によって現在のターゲットがレプリケーションソースに変換されたら、選択したインタフェースがアウトバウンドレプリケーショントラフィックに確実に使用されるように、ターゲットアプライアンスとソースアプライアンスの間の静的な /32 ホストベースのルーティングを作成します。
静的ルートの作成後に、ターゲットの選択した IP アドレスを使用して、ソースアプライアンスでレプリケーションターゲットオブジェクトを構成します。
ターゲットアプライアンスが OWNER 状態の場合、ネットワークインタフェースとストレージプールを含むすべての共有リソースが、動作中のコントローラのうち OWNER 状態になった 1 つのコントローラによってテイクオーバーされ所有されます。OWNER 状態のコントローラでは、あるコントローラに割り当てられたネットワークインタフェースを選択して、このネットワークインタフェースを使用して、別のコントローラに割り当てられたプールにレプリケーショントラフィックを配信できます。コントローラが CLUSTERED 状態に戻ると、ネットワークインタフェースとストレージプールが、割り当てられたコントローラに返されます。その結果、ソースアプライアンスは、プールを所有しなくなったターゲットコントローラ上のネットワークインタフェースを使用するため、レプリケーションを更新できないことがあります。ターゲットアプライアンスが CLUSTERED 状態のときにレプリケーション構成を実行する場合、この構成エラーが発生することはありません。
この例の手順では、次のソースとターゲットのネットワークインタフェースと IP アドレスを使用します。
ソースアプライアンスクラスタは、ソースコントローラ S1 および S2 で構成されます。ストレージプール sp1 は S1 に割り当てられ、プール sp2 は S2 に割り当てられています。クラスタネットワークインタフェースは次のもので構成されます。
IP アドレス 198.51.100.81/24 を持つ S1 上のプライベートインタフェース ixgbe0
IP アドレス 198.51.100.82/24 を持つ S2 上のプライベートインタフェース ixgbe0
S1 に割り当てられた IP アドレス 192.0.2.101/25 を持つシングルトンインタフェース ixgbe1
S2 に割り当てられた IP アドレス 192.0.2.102/25 を持つシングルトンインタフェース ixgbe2
S1 に割り当てられた IP アドレス 192.0.2.201/25 を持つシングルトンインタフェース ixgbe3
S2 に割り当てられた IP アドレス 192.0.2.202/25 を持つシングルトンインタフェース ixgbe4
次の場合、アプライアンスは最初は CLUSTERED 状態になっています。
S1 は sp1、ixgbe1、および ixgbe3 を所有します
S2 は sp2、ixgbe2、および ixgbe4 を所有します
ターゲットアプライアンスクラスタは、コントローラ T1 および T2 で構成されます。ストレージプール tp1 は T1 に割り当てられ、プール tp2 は T2 に割り当てられています。クラスタネットワークインタフェースは次のもので構成されます。
IP アドレス 198.51.100.83/24 を持つ T1 上のプライベートインタフェース ixgbe0
IP アドレス 198.51.100.84/24 を持つ T2 上のプライベートインタフェース ixgbe0
T1 に割り当てられた IP アドレス 192.0.2.103/25 を持つシングルトンインタフェース ixgbe1
T2 に割り当てられた IP アドレス 192.0.2.104/25 を持つシングルトンインタフェース ixgbe2
T1 に割り当てられた IP アドレス 192.0.2.203/25 を持つシングルトンインタフェース ixgbe3
T2 に割り当てられた IP アドレス 192.0.2.204/25 を持つシングルトンインタフェース ixgbe4
次の場合、アプライアンスは最初は CLUSTERED 状態になっています。
T1 は tp1、ixgbe1、および ixgbe3 を所有します
T2 は tp2、ixgbe2、および ixgbe4 を所有します
次の手順では、プロジェクト Red、Blue、および Green に CLI を使用してレプリケーションを構成する方法について説明します。
ネットワークインタフェースおよび IP アドレスを選択します。
最初に、プロジェクト Red のレプリケーション用のネットワークインタフェースと IP アドレスを選択します。
ソース S は CLUSTERED 状態であるため、選択したネットワークインタフェースと IP アドレスがプライベートではないようにすれば十分です。そのため、S1 では、ixgbe1 または ixgbe3 のいずれかを使用します。
同じことがターゲット T に適用されるため、アプライアンス T1 で ixgbe1 または ixgbe3 のいずれかを使用します。S1 と T1 上の両方の ixgbe1 と ixgbe3 が同じサブネットに属するため、プロジェクト Red のレプリケーションの実行のためにいずれかを選択します。この例では、S1 および T1 上のインタフェース ixgbe1 を選択します。
S1 で静的ルートを設定します。
次の例では、ソースコントローラ S1 でプロジェクト Red のレプリケーションの静的ルートを設定します。
S1:configuration net routing> create S1:configuration net route (uncommitted)> set family=IPv4 family = IPv4 (uncommitted) S1:configuration net route (uncommitted)> set destination=192.0.2.103 destination = 192.0.2.103 (uncommitted) S1:configuration net route (uncommitted)> set mask=32 mask = 32 (uncommitted) S1:configuration net route (uncommitted)> set interface=ixgbe1 interface = ixgbe1 (uncommitted) S1:configuration net route (uncommitted)> set gateway=192.0.2.1 gateway = 192.0.2.1 (uncommitted) S1:configuration net route (uncommitted)> commit S1:configuration net routing> list ROUTE DESTINATION GATEWAY INTERFACE TYPE STATUS ... route-003 192.0.2.103/32 192.0.2.1 ixgbe1 static active
T1 で静的ルートを設定します。
次の例では、ターゲットコントローラ T1 でプロジェクト Red をレプリケートするための静的ルートを設定します。
T1:configuration net routing> create T1:configuration net route (uncommitted)> set family=IPv4 family = IPv4 (uncommitted) T1:configuration net route (uncommitted)> set destination=192.0.2.101 destination = 192.0.2.101 (uncommitted) T1:configuration net route (uncommitted)> set mask=32 mask = 32 (uncommitted) T1:configuration net route (uncommitted)> set interface=ixgbe1 interface = ixgbe1 (uncommitted) T1:configuration net route (uncommitted)> set gateway=192.0.2.1 gateway = 192.0.2.1 (uncommitted) T1:configuration net route (uncommitted)> commit T1:configuration net routing> list ROUTE DESTINATION GATEWAY INTERFACE TYPE STATUS ... route-003 192.0.2.101/32 192.0.2.1 ixgbe1 static active
S1 でレプリケーションターゲットを作成します。
次の例では、プロジェクト Red を sp1 から tp1 にレプリケートするために使用するレプリケーションターゲットオブジェクトを S1 で作成します。
S1:shares replication targets>target S1:shares replication target (uncommitted)> set hostname=192.0.2.103 hostname = 192.0.2.103 (uncommitted) S1:shares replication target (uncommitted)> set label=t1-1 label = t1-1 (uncommitted) S1:shares replication target (uncommitted)> set root_password=******** root_password = (set) (uncommitted) S1:shares replication target (uncommitted)> commit
各プロジェクトのレプリケーションアクションを作成します。
プロジェクト Red をプール sp1 から tp1 にレプリケートします
プロジェクト Blue をプール sp1 からプール tp2 にレプリケートします
プロジェクト Green をプール sp2 から tp2 にレプリケートします
次の例では、プロジェクト Red のレプリケーションアクションを作成します。
S1:> shares select Red replication action S1:shares Red action (uncommitted)> set target=t1-1 target=t1-1 (uncommitted) S1:shares Red action (uncommitted)> set pool=tp1 pool=tp1 (uncommitted) S1:shares Red action (uncommitted)> commit
プロジェクト Blue をプール sp1 から tp2 にレプリケートするように設定します。
最初にインタフェースとアドレスを選択し、S と T の両方が CLUSTERED 状態であり、インタフェースアドレスが同じサブネット 192.0.2.128/25 上にあることを確認して、インタフェース S1/ixgbe3 および T2/ixgbe4 を選択します。次に、上の例と似た静的ルートを両方のアプライアンスで定義します。その後、S1 でレプリケーションターゲットオブジェクト t2-2 を作成して、ターゲットオブジェクト t2-2 を使用して S1 でプロジェクト Blue のレプリケーションアクションを作成します。
プロジェクト Green をプール sp2 から tp2 にレプリケートするように設定します。
最初にインタフェースを選択します。インタフェース S2/ixgbe2 および T2/ixgbe2 を選択します。選択したインタフェースとそのアドレスを使用して S2 および T2 で静的ルートを作成して、T2/ixgbe2 のアドレスを使用してレプリケーションターゲットオブジェクト t2-1 を定義し、最後にターゲットオブジェクト t2-1 を使用してプロジェクト Green のレプリケーションアクションを作成します。
3 つすべてのアクションのレプリケーションを開始します。
プロジェクト Red から開始します。
S1:> shares select Red replication select action-000 S1:shares Red action-000> sendupdate
前の例に従って、プロジェクト Blue と Green のアクションのレプリケーションを開始します。
次の図は、プロジェクト Red、Blue、および Green に対するレプリケーションアクションのレプリケーション更新中のレプリケーションデータパスを示しています。
図 28 通常のレプリケーションデータパス
コントローラ T2 は保守のために停止されていると想定します。T1 はテイクオーバーを実行し、現在はすべてのリソースを所有しています。テイクオーバー中にプロジェクト Blue および Green のレプリケーション更新が進行中の場合、これらの更新は取り消されます。T1 のテイクオーバー後に、これらのレプリケーション更新は手動で再開でき、対応するレプリケーションアクションのスケジュールが構成されている場合は自動的に再開されます。
コントローラ T1 は、テイクオーバーの完了後に、プロジェクト Blue および Green のレプリケーション更新を続行するために必要なインタフェース ixgbe2 および ixgbe4 を所有します。次の図は、T1 がテイクオーバーを完了したあとのレプリケーションデータパスを示しています。
図 29 T1 のテイクオーバー後のレプリケーションデータパス
T2 がオンラインに戻ったあとで、T1 コントローラでフェイルバックが実行され、そのリソースがテイクオーバーされます。プロジェクト Blue および Green のレプリケーション更新が進行中の場合、これらの更新は取り消され、フェイルバックの完了後に再開できます。
次に、コントローラ S2 は保守のために停止され、S1 コントローラ上で実行されるテイクオーバーによって S1 はプロジェクト Green のレプリケーションを続行するために必要なインタフェースを含むすべてのリソースの所有権を取得します。プロジェクト Green のレプリケーション更新が進行中の場合、この更新は取り消され、テイクオーバーの完了後に再開できます。
図 30 T1 でのフェイルバックおよび S1 でのテイクオーバー後のデータパス
関連トピック